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「リード数は増えているのに、なぜ受注に結びつかないのか?」
「営業部門から『質の悪いリードばかり』と言われてしまい、肩身が狭い」
このような悩みを抱えているマーケティング担当者は少なくないのではないでしょうか。
実は、これらの課題を解決する鍵は、適切なリード管理にあります。BtoBマーケティングにおいて、リード管理が特に重要となる理由は、その特殊性にあります。
BtoBマーケティングの特徴を理解する
BtoBマーケティングは、BtoCと比較して以下のような特徴があります。この違いを正しく理解することが、効果的なマーケティング活動の第一歩となります。
1. 購買サイクル
- BtoC:数時間から数日程度
- 例:スマートフォンの購入を検討し、1週間程度で決定
- BtoB:数週間から数ヶ月、時には1年以上
- 例:生産設備の導入を検討し、半年から1年かけて検討
- 例:生産設備の導入を検討し、半年から1年かけて検討
2. 意思決定者
- BtoC:個人または家族単位
- 商品価値の判断基準が比較的シンプル
- BtoB:複数の部門や役職者が関与
- 技術部門:製品スペックの評価
- 製造部門:運用面の検討
- 経理部門:投資対効果の算出
- 経営層:最終承認
3. マーケティングの焦点
- BtoC:ブランド認知と即時購買の促進
- 感情に訴えかける訴求も効果的
- BtoB:リード獲得とナーチャリング(育成)
- 長期的な信頼関係の構築が重要
- 長期的な信頼関係の構築が重要
4. セールスプロセス
- BtoC:主にマーケティングで完結
- 店頭やECサイトでの購買決定
- BtoB:複数チームの連携が必要
- マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス
- 各段階での適切なフォローが不可欠
5. ROI算出の複雑さ
- BtoC:比較的シンプル
- 広告費用→売上の因果関係が明確
- 短期的な効果測定が可能
- BtoB:複雑で長期的な視点が必要
- 複数の接点を経て成約
- 長期の検討期間による効果の測定難度
このような特徴を持つBtoBマーケティングでは、BtoC的な効果測定方法(例:広告表示回数や即時売上)では、真の成果を測定することができません。なぜなら、
- 検討期間が長期に及ぶため、施策と成果の因果関係が見えにくい
- 複数の意思決定者が関与するため、個々の接点の価値評価が難しい
- 各段階での状況把握と適切なフォローが必要
そのため、BtoBマーケティングでは、
- 長期的な視点での効果測定
- 段階的なリード管理
- 質を重視したアプローチ
が不可欠となります。
単純なリード数の増加だけを目指すのではなく、質を重視したリード管理を行うことで、初めて効果の可視化と具体的な数値化が可能となるのです。
リード管理の基本フレームワーク:購買サイクルを攻略する
では、どのようにリード管理をしていけば良いのでしょうか。
リード管理の第一歩は、BtoBビジネスにおける購買サイクルを正しく理解することです。先ほど見たように、BtoBビジネスは長期の検討期間が特徴です。そのため、この期間をいくつかの段階に分けて管理し、各段階での適切なアプローチを行う必要があります。
リードステータスの定義
1.獲得リード
- リード情報(連絡先情報)の獲得
- サイトでの資料請求やホワイトペーパーダウンロード
- 展示会での名刺獲得など
- 一定の基準(属性や興味度合い)を満たすリード
- フォローアップの価値があると判断されたリード
- 興味度合いが高まり、マーケから営業(インサイドセールス)に引き渡されたリード
- セミナー参加者や問い合わせリードなど
- 営業が評価し、商談に入れると判断したリード
- 商談が成功し、受注したリード
さらに、既存顧客となった後の追加受注や、紹介案件の獲得なども視野に入れた長期的な関係構築を考える必要があります。
このように、各ステージでの適切な対応が、最終的な受注率を大きく左右します。重要なのは、これらのステージを明確に定義し、組織全体で共有すること。それにより、部門間での引き継ぎもスムーズになり、効率的なリード育成が可能となるのです。
測定の落とし穴:安易な数値収集に注意
しかし、多くのBtoB企業は、測定のしやすさから以下のような指標のみを重視してしまう傾向にあります。
よくある測定指標の例
1.Google Analytics 4 (GA4)- 測定数字:ページビュー数、セッション数、直帰率
- 問題点:ウェブサイト訪問の量を示すが、売上貢献の実態は不明
- 測定数字:開封率、クリック率、配信停止率
- 問題点:メールの効果を短期的に評価するが、受注への影響が見えない
- 測定数字:いいね数、シェア数、フォロワー増加数
- 問題点:エンゲージメントは示すが、実際の商談や売上には直結しにくい
これらの指標は、確かに測定は容易ですが、真の成果を示すものではありません。
リードの質を重視した数値管理
では、具体的にどのような数値を追うべきでしょうか。
SiriusDecisionsのデータを基に、リードから受注までの標準的な推移を見てみましょう。
※数字はSirusDecisionによるデータを元に作成
平均的な企業の場合
1000件の獲得リードからの推移
- 獲得リード1000件のうち、基準を満たすMQLは41件(4.1%)
- その41件のMQLから、営業フォロー対象のSALに進むのが25件(62%)
- 25件のSALから実際の商談に進むのが12件(47.5%)
- 最終的に受注に至るのは3件(22.1%)
つまり、1000件のリードから最終的に3件の受注、成約率0.3%というのが平均的な姿です。
上位グループの場合
同じ1000件から、
- MQLへの転換率が向上し、58件に(5.8%)
- より質の高いリードを厳選しているため、SALへの転換も38件に増加
- 商談数21件、最終受注6件を実現
平均的な企業と比べて、受注数は2倍に向上しています。
トップグループの場合
さらに優れた実績を示すグループでは、
- MQLへの転換率が9.7%と大きく向上し、97件に
- SALは72件と、MQLの74%が営業フォロー対象に
- 商談数44件、最終受注13件を達成
平均的な企業と比べて、受注数は約4倍になっています。
なぜこのような差が生まれるのか?
この大きな差は、以下のような要因から生まれます。
1.リード獲得時の質の違い
- ターゲティングの精度
- 獲得施策の適切性
- 情報提供の質
2.リード育成プロセスの違い
- フォローアップの適切性
- コンテンツの質
- タイミングの最適化
3.営業連携の質の違い
- 引き渡しの基準明確化
- 情報共有の質
- フォローアップ速度
つまり、「単にリードを集めること」と「質の高いリードを育成すること」には、大きな差があるのです。トップグループでは、同じ1000件のリードから13件の受注を実現できているのに対し、平均的な企業では3件に留まっています。この4倍以上の開きは、マーケティング活動の質の違いが生み出す結果と言えます。
この差を埋めるために、私たちは何をすべきでしょうか。次の章では、具体的なチーム別のKPIと改善の考え方について見ていきましょう。
チーム別のKPIと改善の考え方
このようなリードファネル管理を効果的に行うためには、各チームの役割と評価指標を明確にする必要があります。
マーケティングチーム
主要KPI:
- リード獲得数
- MQL転換率
- コンテンツエンゲージメント率
- マーケティングROI
改善の視点:
- ターゲットペルソナの精緻化
- コンテンツの質と関連性の向上
- 新しいチャネルの効果的な活用
- リードスコアリングの精度向上
インサイドセールスチーム
主要KPI:
- MQLからSALへの転換率
- アポイント設定率
- 応答率
- リードの質スコア
改善の視点:
- 初回コンタクトの成功率向上
- リードの優先順位付けの最適化
- フォローアップタイミングの改善
- 営業チームとの情報共有強化
営業チーム
主要KPI:
- SALからSQLへの転換率
- 受注率
- 平均商談期間
- 顧客生涯価値(LTV)
改善の視点:
- 商談プロセスの効率化
- 顧客ニーズに適したソリューション提案
- 競合との差別化明確化
- クロスセル・アップセル機会の創出
重要なのは、これらのKPIが独立したものではなく、連携して機能させる必要があるという点です。例えば、以下のような連鎖的な効果が期待できるでしょう。
マーケティングチームの改善
- より質の高いMQLの創出
- インサイドセールスの効率向上
- 営業の商談化率の上昇
インサイドセールスチームの改善
- MQLからSALへの転換率向上
- 営業への質の高いリード提供
- マーケティング施策へのフィードバック充実
営業チームの改善
- 商談化率の向上
- 受注率の改善
- マーケティング施策への具体的な要望提示
このように、各チームのKPIは相互に関連し、影響し合っています。一つのチームの改善が、他のチームのパフォーマンス向上にも寄与するのです。
ファネル管理がもたらす具体的な効果
実際の企業では、このようなKPI管理を導入することで、以下のような効果が表れています。
1.可視化による改善点の明確化- 各段階での具体的な数値目標設定が可能に
- ボトルネックの特定が容易に
- 改善施策の優先順位付けが明確に
- 共通の指標による対話の活性化
- 相互理解の促進
- 協力体制の構築
- データに基づく施策の評価
- 迅速な改善アクション
- 継続的な最適化
これらのKPIと改善の考え方は、単なる数値管理ツールではありません。むしろ、組織全体でリード育成の質を高めていくための「共通言語」として機能します。各チームが自身の役割と目標を明確に理解し、かつ他チームとの関係性を意識することで、組織全体としての成果向上が実現するのです。
まとめ:次のステップに向けて
適切なリード管理は、BtoBマーケティングにおけるROI計算の基礎となります。ここで重要なポイントは、
1.ファネル全体の可視化- 各段階での数値を把握
- 転換率の継続的なモニタリング
- ボトルネックの特定
- 共通のKPI設定
- 情報共有の仕組み作り
- 改善サイクルの確立
- データに基づく施策の評価
- ベストプラクティスの共有
- 組織的な学習と進化
リード管理の改善は一見難しいものに思われるかもしれませんが、本記事で解説した基本的なフレームワークと数値目標を意識することで、確実に成果を上げることができます。まずは自社のリードファネルを可視化することから始めてみませんか?
次回「具体例で学ぶ!マーケティングROIの計算方法」では、具体的な計算方法について学んでいきましょう。
▶ROI攻略シリーズ記事一覧
ROI攻略①|待ったなし!なぜ今、マーケティングROIが重要なのか
ROI攻略②|ROI計算の第一歩:リード管理の基本【本記事】