「なんとなく去年と同じ施策を続けている」
そんな状況に、心当たりはありませんか?
背景にあるのは、「マーケティング=コスト」という固定観念かもしれません。
「なるべくお金をかけたくない」という前提のもと、限られた枠の中で“とりあえず”予算が組まれ、成果の評価も曖昧なまま施策が繰り返されると、「マーケティングなんて意味がない」と予算も削減、ますます成果が出にくくなる…といった悪循環に陥ってしまいます。
でも、マーケティングは本来「投資」であるべきなのです。
事業成長に貢献する“成果”を生み出す活動だからこそ、達成すべき目標に基づいて予算を設定することが求められています。
本シリーズでは、マーケティングを「コスト」ではなく「投資」として捉え直し、成果を最大化するための予算設計の考え方をわかりやすく解説します(全3回)。
目次
TABLE OF CONTENTS
この記事を読んで得られること:
- マーケティングが“コスト扱い”されがちな背景を理解できる
- 日米の予算の違いから、企業戦略としての“マーケティングの位置づけ”を再認識できる
- ROIの考え方を通じて「マーケティング=投資」という視点を持てる
なぜマーケティングは“コスト扱い”なのか
そもそも、なぜマーケティングは「コスト」として扱われがちなのでしょうか。
背景には、「目に見える成果がすぐに出にくい」という特性があります。
広告やコンテンツ、展示会など、どれも認知→興味→検討→購買といったプロセスを経て効果が現れるため、成果が出るまでに時間がかかる上に、直接的な因果関係もなかなか見えにくいのです。
たとえば、あるリード(見込み顧客)がWeb広告経由で接点を持ち、その後ホワイトペーパーをダウンロードし、数ヶ月後に営業と商談を行い、最終的に受注につながったとします。このような流れの中で、「どの施策がどう効いて受注に至ったのか」を特定するのは簡単ではありません。
そのため、経営層にとっては「何にいくら使って、どう成果が出たのか」が見えづらく、「費用対効果がわかりにくい→成果が出ていない?→注力しなくていい or 不要かもしれない」という認識を持たれてしまうことも少なくありません。
日米でこんなに違う“マーケティング予算”
マーケティングが「コスト」として扱われやすい傾向は、実際の予算配分にもはっきりと表れています。
米企業における位置づけ
たとえば、マーケティング先進国のアメリカでは、マーケティング部門が収益成長を主導する役割を担っている企業は全体の38.4%にのぼります。こうした企業では、マーケティングを単なる施策実行部門ではなく、事業成長をけん引する戦略部門として位置づけられているのです。
そして興味深いのは、そうした企業ではマーケティング部門に割り当てられる予算も大きくなるという事実です。
調査によると、収益成長をマーケティングが主導している企業では、全社予算に占めるマーケティング予算の割合が平均14.5%。一方で、主導していない企業では10.8%にとどまっています。
▶参照:Marketing Budgets Vary by Industry - WSJ
この数字は、単に「お金をかけている/いない」の話ではありません。
マーケティングの果たす役割が明確になればなるほど、予算の説得力も増し、より大きな裁量が認められるようになるという構造を示しています。
裏を返せば、成果が語れなければ、マーケティングは“コスト”として軽んじられてしまうということでもあるのです。
日本企業における位置づけ
一方で日本のBtoB企業では、売上に対するマーケティング支出の割合が平均でわずか0.19%というデータもあります。
※非SaaS BtoBマーケティング担当者アンケート調査結果 2024年版 | 株式会社メディックスのデータをもとに、イノーバにて推計。
この数字だけを見ても、日本企業ではまだまだマーケティングが「成長の原動力」として期待されていない現状が浮き彫りになっています。
▶関連記事:CEOブログ第3回【前編】|アメリカ企業はなぜ日本企業の50倍のマーケティング予算を使うのか?
日米の違いから見えてくるもの
このように、アメリカと日本では、マーケティングの「位置づけ」と「期待される役割」に大きな違いがあります。
アメリカでは、マーケティングが収益成長を担う役割として明確に認識され、その重要性に見合った予算が確保されています。
一方、日本では、成果が見えにくいから予算がつかず、だから成果も出にくいという悪循環が続いているのです。
もちろん、マーケティング予算が多ければ必ず成果が出るとは限りません。しかし、「成果を出すべき活動」としてマーケティングに明確な期待がかけられ、適切なリソースが割かれているという事実は、企業が「成果を前提に戦略を設計しているか」という根本的な違いを示しています。
“コスト”から“投資”に変えるには?
ここまで見てきたように、マーケティングが“コスト扱い”される背景には、「何をどれだけやって、どれだけ成果が出たか」が語れない構造があります。
だからこそ必要になるのが、「投資対効果=ROI(Return on Investment)」という視点です。
ROIとは、「かけた費用(=投資額)に対して、どれだけの効果(=利益)を得られたか」を示す指標。
マーケティング活動を“コスト”ではなく“成果を生む手段”として説明するための、共通言語ともいえます。
たとえば、展示会で100万円をかけて、結果的に300万円の利益が出たなら、ROIは300(=300万÷100万×100)。
このように、活動が「どれだけ価値を生んだか」を数値で語ることで、マーケティングの立場は大きく変わってきます。
▼ROIについてもっと詳しく学びたい方へ
- 関連記事:ROI攻略②|ROI計算の第一歩:リード管理の基本
- 関連資料:成果を引き出す!ROI逆算法
まとめ
マーケティングを“コスト”ではなく“投資”として捉えるためには、 「何にいくらかけて、どんな成果を生んだのか」を示すことが欠かせません。
その第一歩が、「ROI(投資対効果)」の視点を持つこと。
とはいえ、ROIを語るには、まず何を基準に、どのように数字を組み立てればいいのかを整理しておく必要があります。
次回「“ROIを語る”ための下準備」では、成果から逆算してマーケティング活動を組み立てる方法を、わかりやすく解説します。
▼「マーケティングはコストじゃない」シリーズ(全3記事)
