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イノーバマーケティングチーム2025/05/15 15:23:341 min read

マーケティングはコストじゃない③|社内を動かす“数字の伝え方”

本シリーズは、第1回で「マーケティングは投資である」という視点の重要性を取り上げ、第2回では、「ROIを語るために必要なKPI設計の考え方」を整理しました。

最終回となる今回は、「マーケティングの価値をどう社内に伝えるか」にフォーカス。

どれだけ丁寧にKPIを設計しても、その意味や価値を正しく共有できなければ、マーケティングは「意味のない活動」と見なされかねません。

マーケティングを“投資”として捉えてもらうためには、その成果をわかりやすく、納得感のある形で社内に共有することが不可欠です。

本記事では、社内の理解と協力を得るために「数字をどう伝えるか」に焦点を当て、実務に活かせるヒントをご紹介します。

目次

この記事を読んで得られること:

  • マーケティングの価値を伝えるのに役立つ“3つの視点”がわかる
  • 他部門にKPIを「納得感を持って伝える」方法が理解できる
  • 社内会議や報告資料ですぐに使える“伝え方の工夫”が見つかる

 

押さえておきたい3つの視点

これまで、「マーケティングは投資である」という視点を持ち、ROIを語るためにKPIをどう設計すべきかを整理してきました。
つまり、マーケティングの“価値”を説明するための材料は揃ってきたと言えます。

しかし、その価値を「正しく伝える」ことを疎かにしてしまうと、社内の理解や協力は得られません。マーケティングが「よくわからない活動」「成果に結びつかない活動」と見なされてしまうのを防ぐには、伝え方の設計も欠かせないのです。

ここで重要なのが、以下の3つのステップです。

  1. 相手と“共通目標”でつながる
  2. 経営や営業の関心軸で示す
  3. 数字を「ストーリー」で語る

この3つを押さえることで、マーケティングの取り組みは「戦略的な投資」として社内に浸透しやすくなります。

それぞれの具体的なポイントを見ていきましょう。

 

1. 相手と“共通目標”でつながる

たとえば、「今月はホワイトペーパーが30件DLされました」と伝えるだけでは、「で、それは売上にどうつながったの?」という反応で終わってしまいます。

 

第2回で解説したとおり、これは“活動KPI”だけに焦点を当てており、その先の成果にどうつながっているかが見えていない状態。活動と成果のつながりが整理されていなければ、数字をいくら示しても納得感にはつながらず、マーケティングの価値が伝わりません。

 

しかし、「このMQLのうち〇〇件が営業に引き渡され、商談化率は〇〇%。つまり、今月の施策が全体の商談創出数にこれだけ貢献しました」と語れば、営業や経営と“同じゴール”を見ていることが伝わり、成果への貢献も明確になります。

 

そのためには、

  • KPIを営業や経営の視点と接続しておく
  • 全体の売上・商談・利益といった成果指標から逆算した施策設計にする
  • セールスベロシティなど「部門をまたぐ視点」で、売上プロセス全体を俯瞰する

といった準備が欠かせません。

マーケティングを孤立した活動にしないためには、「何をもって成果とするか」という共通認識を他部門とつくり、共通の“言葉”と“視点”で語れる関係性を築くことが重要なのです。

 

▼セールスベロシティについて詳しく知りたい方へ

関連記事:セールスベロシティ①|リードが商談につながらないのはなぜ?

関連資料:セールスベロシティ入門

 

2. 経営や営業の関心軸で示す

共通言語での接続ができても、相手の関心ごとに合わせた“伝え方”ができていなければ、マーケティングの価値は十分に伝わりません。

 

たとえば、経営層が知りたいのは「それがどれだけ売上や利益に貢献したのか」営業部門が気にするのは「商談の数や質がどう変化したのか」
こうした関心ごとは、マーケティング部門で使われる指標(DL数やMQL数など)とはズレていることが多いのです。

 

だからこそ重要なのが、KPIを「相手の言葉に翻訳して伝える」こと。

 

たとえば、

  • Before:「今回の施策でMQLが30件創出されました」
    • After(経営層向け):「商談化率・受注率ベースで見ると、今回の施策から〇件、〇〇百万円の受注が見込めます。短期的なROIは〇〇〇になりそうです。
    • After(営業向け)「この30件のうち、すぐに商談化できそうなものが〇件あります。すこし時間はかかりますが、さらに〇件の商談につながりそうです。


  • Before:「新規ホワイトペーパーが50件ダウンロードされました」
    • After(経営層向け):「今回のホワイトペーパー施策で約50万円の受注が見込めそうです。ホワイトペーパーの制作費は5万円だったので、ROIは10.0です。
    • After(営業向け):DLからの商談化率がこれまで10%だったので、今月は5件の新規商談が見込めます。受注率が20%受注単価をは50万円くらいなので、50万円ほどの受注になりそうですね

このように、「どの成果が、どの数字につながるのか」「それが誰にどんな価値をもたらすのか」を相手の関心領域に落とし込んで伝えることで、マーケティングの役割や意義が“自分ゴト”として受け取られやすくなります。

 

3. 数字を「ストーリー」で語

どれだけ正確な数字を示しても、それが“どう変化したのか”“なぜそうなったのか”が語られなければ、聞き手の納得にはつながりません。

マーケティングの価値を伝えるうえで重要なのは、「数字に至るまでの流れ」や「そこから得られた学び」まで含めて共有することです。

たとえば、

Before:「ホワイトペーパー施策の成果が改善しました

After:「前回はDL後のフォローが遅れたため商談化が低迷しましたが、今回は営業部門との連携を強化し、3営業日以内に電話フォローを徹底。結果、商談化数が2件→6件に伸びました

 

Before:「展示会での名刺獲得数は500件でした

After:「前回の展示会での反省点を活かし、ブースの展示物とアフターフォローのメッセージを統一し、来場者の記憶に残りやすい工夫をしたことで、展示会後の商談数は約2倍になりました。

 

このように、ただの「結果」だけではなく、「背景→アクション→成果」という流れで伝えることで、マーケティング施策の意味や価値がより伝わりやすくなります。

数値を単に並べるだけでは、「結果がどうだったか」の報告にとどまり、なぜその数字になったのか、何が良かったのか/悪かったのかが伝わりません。


一方で、その数字に至るまでの背景や工夫、そこから得られた学びや今後の示唆までを一貫したストーリーとして語ることで、「なぜそれが価値ある結果なのか」が伝わりやすくなります。

 

こうした“意味のある結果”としての伝え方ができれば、施策の意図が共有され、社内の理解や納得が得られやすくなるだけでなく、次のアクションの判断材料としても機能します。

 

今すぐできるアクション

ここまでの内容を読んで、「なるほど、伝え方って大事なんだな」と感じた方も多いかもしれません。とはいえ、いきなり社内のあらゆる報告を変えるのは難しいもの。まずは、以下のような“小さな一歩”から始めてみてはいかがでしょうか。

 

  • 活動と成果の“つながり”を一文で語れるようにする
     → 「DL数が30件」ではなく、「DLから3件の商談につながり、1件の受注が生まれた」といった“流れ”を伝える習慣をつけてみましょう。

  • KPIを「誰に向けて伝える数字なのか」で整理してみる
     → その数字は経営層に?営業部門に?伝えるべき相手とその関心ごとを意識して、KPIを見直してみましょう。

  • 1つの数字に“背景”と“学び”を添える
     → たとえば「商談数が倍増した」の裏に、「新たなフォロー体制を組んだ結果」というエピソードを添えるだけでも、伝わり方は大きく変わります。

まずは次回の報告や定例会議などで、1つでも実践してみること。それが、マーケティングの価値を伝える第一歩です。

 

まとめ

全3回にわたってお届けしてきた本シリーズでは、「マーケティングはコストではなく、戦略的な投資である」という視点を軸に、 「ROIという視点を持つこと」、そして「そのROIを語るためのKPI設計と社内への伝え方」がいかに重要かを整理してきました。

単に「数字を整える」だけでは、マーケティングは評価されません。
大切なのは、成果から逆算して活動を設計し、その因果を自ら語る力を持つこと

そして、部門を超えて共通のゴールを見据え、マーケティングが「売上にどう貢献したか」を自分たちの言葉で伝えていくことです。

マーケティングの価値は、正しく設計され、正しく語られて、はじめて伝わるものです。
「なんとなくやっている活動」から、「成果に向けた投資」としてのマーケティングへ。
その一歩を、あなたのチームからぜひ踏み出してください。

 

▼「マーケティングはコストじゃない」シリーズ(全3記事)

マーケティングはコストじゃない①|“投資”としての予算設計

マーケティングはコストじゃない②|“ROIを語る”ための下準備

マーケティングはコストじゃない③|社内を動かす“数字の伝え方”

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