5W1Hは、コミュニケーション、社内・外でのメール、プレゼンテーション、マーケティング戦略やコンテンツ制作に至る、あらゆるビジネスシーンにおいて応用可能な、新入社員や部下の人材育成にも使える基本のフレームワークです。
物事を整理し、聞き手を納得させられる、説得力あるプレゼンテーションを作りたい。STP分析、4P分析などのマーケティングのフレームワークでマーケティング戦略を練るものの、思考が行き詰まってしまったときに、この5W1Hは有用です。?
目的や場面によって、5W1Hの応用方法と正しい順番を習得することができれば、専門的なマーケティングフレームワークを駆使することなく、シンプルに、過不足なく論点を整理し、新たな問題解決の糸口を見出す可能性が広がります。
ここでは、5W1Hの意味、基礎の順番から、さまざまな目的や場面に使え分けが可能な応用パターンを解説したのち、実践に役立つケース・スタディをご紹介していきます。
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目次
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マーケティング戦略で使える5W1Hとは?
だれでも一度は耳にしたことがある5W1Hですが、マーケティングの現場では、3C分析やSTP分析、4P分析などのフレームワークと同様に、有用なフレームワークとして使われています。
3C分析やSTP分析、4P分析は、それぞれ限られた目的で使うフレームワークですが、5W1Hは汎用性の高いフレームワークであり、使いこなれせるようになればその他のフレームワークを網羅することのできるシンプルで高機能なフレームワークです。それでは、5W1Hについて解説していきましょう。
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5W1Hは、すでにご存知の通り、それぞれの頭文字をとった略称です。
When: いつ
Where: どこで
Who: だれが
What なにを
Why: なぜ
How:どのように
すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、この5W1Hには、マーケティングフレームである4P分析(Product、Price、Place、Promotionの視点からターゲット市場を分析するという考え方)が含まれています。
4P分析を突き詰める中で、戦略が断片化してしまった場合、この5W1Hを使って一つのまとまったストーリーで思考を整理することもできます。また、全てのW(問い)はそれに関連する論点に置き換えることができ、その他のフレームワークと同じ機能を持てる汎用性の高さが5W1Hの特徴です。それでは、5W1Hの持つそれぞれの役割について具体的に解説していきましょう。
When: 販売期間
製品の販売開始時期、販売期間や期限、キャンペーンの開始時期、消費者が製品を求めている時期やタイミングなど、あらゆる「When(いつ)」を分析します。自社製品だけでなく、競合他社の製品の販売期間やキャンペーンの期間、消費者の年間イベントに伴う消費者行動などから最適なタイミングを探し出します。
Where: 販売するチャネル
製品を消費者に届けるための販売チャネルや流通経路を分析します。実店舗やネット通販、または、これらを組み合わせる手法(オムニチャネル)など、ターゲットとなる消費者が利用しやすいチャネルがどこであるのか、どういった場面やシチュエーションであるのかを分析します。
Who: ターゲットになる人物(ペルソナ)
企業が製品をだれに売りたいのか、購買に意思決定者はだれか、どういった消費者属性を持った人物が製品を購入したいと考えるのかを分析するのが「Who」です。ターゲットのみに囚われず、プロジェクトに関わるあらゆる「Who」を分析することも可能です。製品開発チーム、マーケティングチームやセールス部門、ディストリビューターや小売店に至るまで、ターゲットの手に届くまでに関わる人物を分析することで、他のマーケティングフレームワークでは分析しきれなかった問題点やアイディアを発見することができます。
What: 製品・製品価値
実際に売る製品やサービスを分析する「What」です。また、現在のマーケティング戦略では、製品本体だけでなく、「製品が顧客に提供する価値」についての分析にも注目が必要です。ご存知の通り、現代の消費者は製品を買うことで自身にもたらされる価値の有無によって購買行動を起こす傾向があるため、顧客に価値を創造する「What」は重要な論点になります。逆を辿れば、企業がその製品を通じてターゲットにどんな価値を提供したいのかを明確化することになります。
Why:目的・ゴール、ターゲットの購買理由
製品やサービスを販売する目的やゴールを分析するのが「Why」です。製品を市場に展開する企業の背景や意義は、製品価値にもつながる論点です。顧客目線に置き替えると、市場や消費者がなぜその製品を欲しているかという論点の掘り下げであり、市場のニーズを分析することができます。
How:販促や集客のためのプロモーションや手段
ターゲットに製品を知ってもらい、実店舗やサイトに訪問してもらうための最適な販売促進や集客方法について分析します。例えば、マスメディアを使った広告でのアプローチ方法、既存顧客リストを使ってDMを発送し告知する方法やソーシャルメディアを使ったキャンペーンの展開、はたまた全てのメディアを駆使したクロスメディアでのプロモーションなどその手段はさまざまです。媒体や頻度、予算や社内の体制についても最適な方法を選択するために分析し、定義していきます。
知っておきたい5W1Hの派生系フレームワーク
ここまでご紹介した5W1Hの他にも、5W1Hの派生系フレームワークというものが存在します。目的やシチュエーションによって使え分けることができますので、いくつかご紹介します。
5W2H
5W1Hに「How much(いくら)」が加わった派生系フレームワークです。高いプライシングでいくのか、値引きをするのかといった価格戦略や、資金計画も含めたお金に関わる戦略を分析します。
5W3H
5W2Hに「How Many(どのくらい)」が加わった派生系フレームワークです。市場に出回る製品の数量や出荷頻度など、プロジェクト全体の規模について分析します。
6W2H
5W2Hに「Whom(だれに)」が加わったフレームワークです。「Whom」はどのような消費者を対象にするかという論点にフォーカスしたWです。6W2Hのフレームワークを使う場合には、「Who(だれが)」は、マーケティング戦略を実施する側の人物を指します。
2W1H
5W1Hを簡略化したフレームワークです。「Why」「What」の観点から問題を提議し、改善方法「How」を導き出す方法です。Why-What-Howのセットを繰り替えし使う手法は、社内コミュニケーションやプレゼンテーションなどに有用です。
6W
5W1Hと同義です。欧米の英語圏では5W1Hを6W(six w)と表現することが多くあります。
他のフレームワークにはない5W1Hの強み
1.汎用性の高いマルチなフレームワーク
3C分析やSTP分析、4P分析などのマーケティング戦略で使われるフレームワークはそれぞれの目的や場面によって使い分ける性質を持つ一方で、5W1Hは、その他のフレームワークの役割を網羅することができるマルチな機能を持っています。
例えば、STP分析は「ターゲットの発見とポジショニングの決定」、3C分析であれば全体を俯瞰する外部環境と内的環境に注力した「事業戦略の分析」などそれぞれ具体的な目的を持っています。しかし、これらのフレームワークを使ってそれぞれの項目を分析する中で、論点が分断化されてしまい整理ができなくなってしまったり、フレームワークに当てはまらない項目の分析が漏れてしまったり、自由な発想が失われアイディアに行き詰まってしまうケースもあります。
こういった問題点を補うことができるのが、5W1Hです。それぞれの「いつ、どこで、だれが…」というW(問い)を、目的やシチュエーションにあった具体的な問いに置き換えることで、さまざまなマーケティングフレームワークに変化します。この、汎用性の高さと柔軟性に富んだフレームワークが5W1Hの強みの一つです。
2.納得できる順で分析するストーリー仕立てのフレームワーク
人間が物事を納得する思考の順序は、Why-What-Howの順であるとされています。5W1Hを使ってまず、5つのWを掘り下げHowに辿りつくことが、問題の根本に迫り、問題を理解し、納得して解決策を提議する理想的な思考順といえます。
しかし、人は問題にぶち当たった時、まず「How」(どのように解決するか)から考え、それに囚われる傾向があります。問題の根本はその他のWにあり、まずはその他のWを分析することが問題の本質を解明する手立てになります。
3.自由自在に組み換え、カスタマイズできるフレームワーク
5W1Hは目的や分析したい課題に合わせて、Wを自由自在に組み替えることが可能です。製品ありきでマーケティング戦略を立てるのであれば、まずは「What」から分析することもできますし、顧客中心、価値主導とされる現代のマーケティング理論にのっとり戦略を練るのであれば、まず「Why」から分析することがセオリーでしょう。ターゲットの見直しをしたいのであれば、「Who」の分析を突き詰め、とりまく環境となるその他のWを分析し、Howを導き出します。
関連資料:「5W3H」を使ってマーケティングをフレームワークに落とし込む!
プロモーション戦略に行き詰まったら5W1Hを活用しよう
ここまでは、マーケティング戦略策定全般における5W1Hの活用の仕方をご紹介しました。
ここからは、一歩踏み込んで、プロモーション戦略(マーケティング戦略全般における「How」)を考えるときに5W1Hをどのように生かすかをご紹介します。
前提として、ターゲット(「Who」ですね。) について詳細を深堀し明確に設定されている必要があります。ターゲットはマーケティングにおいて「ペルソナ」とも呼ばれます。ペルソナ設定ではより具体的なターゲット設定が行われます。
ターベット設定は、戦略を策定するうえでも最も重要な要素です。ターゲットを明確にすることは、プロモーションの方向性が定める時だけでなく、後に詳細を検討する過程で選択すべき方法に迷ったときの判断指針にもなります。
最初のステップは、ターゲットとなる消費者が普段「どのようなところ」(Where)から情報を入手するのかリサーチです。街中の広告からなのか、SNSを媒体とした口コミからなのかなどの傾向に応じて、プロモーションの媒体を決定します。
次に、「いつ」(When)、商品購入を決定しているのか、商品の情報を入手しているのかを把握します。これにより、先に決定したプロモーション媒体での施策の具体化が可能になります。たとえば、平日の昼頃にメルマガからの購入アクションが多いことが分かれば、その時間帯のメルマガに、新商品の広告を多く載せるという策を講じることができます。
最後に、自社製品やプロモーションしたいサービスに関わらず、ターゲット層の消費者は「どんな」(What)商品やサービスを好んで「なぜ」(Why)購入しているのか、その傾向の把握が大切です。プロモーションしたい商品が、ターゲット層の好む商品とどのくらいマッチしているのかを調査・把握して、プロモーション活動での情報提供内容や方法を決定する必要があります。
実践で使える5W1Hのケーススタディ7選
それでは、実際に、下記の7つのシチュエーションで、5W1Hの活用方法をご紹介してきます。
1. 社内活動「残業ゼロ」の導入
経営戦略の一環である社内活動の導入事例を、5W1Hで分析します。
分析結果
Who 役員、社員、派遣社員、アルバイト、パートナー会社
Why 会社の業績を向上させるために社内コストの見直しを行う
従業員の時間単位の生産性を向上させる
?従業員のワーク・ライフ・バランスを実現する
What 「残業ゼロ」活動
Where 社内
When 毎日
How 夜20時以降の残業を禁止し、朝6時から9時までの朝型勤務へ変更
残業代の代わりに割増賃金を支給する
会議数や時間の見直し、ペーパーレスを同時に遂行し、社内業務プロセスや間接コストを削減する
経営戦略に関わる社内活動の場合、「Who」が経営サイドと従業員サイドの2つに分かれる点に注意です。それぞれの「Why」(目的)を掘り下げ、「How」(手段)がなにであるかを導き出すことが、従業員を納得させ、導入を成功させるためのプロセスです。
2. 美容化粧品を販売するECサイトのブログコンテンツ
コンテンツマーケティングにおけるブログコンテンツの企画を例にとり、分析します。
分析結果
Why ?ECサイトの売上をアップさせるために訪問者を増やす
What 毎日サイトを訪問したくなるターゲットの役に立つブログコンテンツ
Who ターゲットである20代後半、キャリア思考の独身女性
(残業が多く美容にかける時間がない、睡眠時間が少ない、接待や会合が多く食生活が不安定)
Where ECサイトに併設しているブログサイト
When ブログサイト上で週3回の更新
How 24時間営業のジム・スパの特集、翌日予約の取れるエステ特集、30代管理職キャリア思考女性の美容術特集、朝活特集
コンテンツ作成においては、「Who」であるペルソナの掘り下げが重要になります。Whoを細かく分析し、熟知することで自然とその他のWとHが導き出されます。
3. 社内プレゼン資料
社内コミュニケーションの一例として、社内向けのプレゼン資料を5W1Hで分析します。
分析結果
Who 上司向け
Why 店舗拡大による大幅な新規スタッフ増員に伴い、顧客からの接遇に関するクレームが増加。店舗への訪問者数が減少し、競合店へ顧客が移行。改善策の提案
What 「接遇改善」活動の実施
When 決議後すぐに
Where 特に訪問者数が落ちている店舗10店舗を対象に開始
How ?顧客からあった具体的な接遇に関するクレームを対象に、改善策や接遇方法をマニュアル化し、研修プログラムを作成。社員、派遣社員、アルバイトを含む接客担当者および店舗管理者向けへの研修を速やかに実施する
社内プレゼンテーションでは、上司に同意を得てもらい行動してもらうことを目的としています。まず、なぜこのプレゼンテーションを行うのか、なぜこの問題が起きているのかの「Why」を明確にし、「How」を提案することが行動を喚起させるポイントになります。
4. 製品販売戦略
マーケティング業務の一環である、製品販売戦略を例にとって分析します。
分析結果
Why 小売店での集計作業のミスやミスによる時間のロスを削減のためのソリューション
顧客満足度の向上により、顧客の固定化を図り売上をアップさせる
Who 中小規模の小売店、総務担当者
What 製品:クラウド型POSシステム
製品価値: 初期費用とメンテナンス費用が低く、ハードの買い替えやアップデートが不要、頻繁に行われるシステムアップデートにより脆弱性に強い
Where ECサイトおよび訪問型販売
When ITソリューションの展示会6ヶ月前からプロモーションを開始
How 既存顧客リスト向けに総務担当者が持つ悩みや問題に対するお役立ち情報となるコンテンツをメールで定期配信する。コンテンツの定期購読の申し込みがあった顧客向けに、ソリューションとなる新製品の案内をDMで送付し、インサイドセールスがアポイントを取り付ける
競合製品が乱立するような市場で製品販売戦略を立案する場合には、ターゲットがなぜその製品が欲しいと思うかの「Why」、そして製品価値である「What」の分析も重要です。「Why」は表面的な問題点だけでなく、買い手となる企業が目指す本質的なゴールまで掘り下げていきましょう。徹底した顧客目線で分析を行うことで、ターゲットに胸に刺さる製品価値が創出されるはずです。
5. 新しいスマホアプリゲーム
スマホアプリは毎日新しいものが大量に生まれています。あるパズルゲームを例にとって分析してみます。
分析結果
When 通学・通勤中の隙間時間、仕事や勉強の休憩時間
Where? (スマートフォンがあるところならば)どこでもできる
Who スマートフォン世代の若者、パズル好きな人
What パズルゲーム、難易度の高いパズルを解く達成感、ランキングで競い合う高揚感
Why 気軽に楽しいゲームができる、気晴らしになる
How 芸能人を使ったCM広告、ネット広告、検索エンジンでのおすすめ表示
スマートフォンさえあれば、誰もがどこでもできるという気軽さと楽しさ(WhereとWhy)を売りにしています。消費者がスマートフォンを利用している人たち(Who)になるので、プロモーション媒体として、彼らが利用しているSNSを介した口コミも効果的です。
6. 野外ロックコンサート
期間限定的に行われているコンサートを例にとってみます。
分析結果
When 夏の数日間
Where? コンサート会場(普段は訪れることのない非日常な場所)
Who ロックが好きな人、盛り上がりたい若者
What コンサートで盛り上がる高揚感、プロのミュージシャンの生歌、コンサート会場の一体感
Why 好きなミュージシャンの生歌が聞ける、同じ趣味の人に会える、非日常を味わえる
How CMや新聞広告、出演ミュージシャンによる告知
コンサートでは、そこ(WhereとWhy)でしか味わえない非日常感が付加価値となっています。この特別感がファンの獲得やリピーター増加(Who)のキーになっています。
7. 新発売の食パン
最後に、実店舗に並ぶ新商品を例にとって分析します。
分析結果
When 朝食時
Where? 自宅
Who 家族全員が(食べる)、母親が(料理する)
What 食パンの旨味
Why 朝食に欠かせない要素として食パンがあげられるから
How CM、商品についているシールを集めたキャンペーンの実施
新商品の食料品を購入してもらうには、家庭の人たち(Who)がその商品の美味しそうというイメージが大切です。次に、リピーターになってもらうには、その商品を繰り返し購入することのメリットを提示する必要があります。その具体例として、シールなどのポイント集めがあげられます。(How)
このように企業の販売・マーケティング戦略を5W1Hでみていくとなぜ売れているのか、なぜ売れていないのかがみえることもあります。自社の分析だけでなく、競合他社分析においても、5W1Hのフレームワークは役立ちます。
まとめ
5W1Hは、さまざまなシーンで使える汎用性の高いマルチなフレームワークです。マーケティング戦略の出口が見えなくなってしまった時には、5W1Hでまずはシンプルに、そして納得できる思考順で戦略を見直してみてください。
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