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宗像 淳 / イノーバCEO2024/11/18 14:16:091 min read

ROI攻略⑤|今日から始めるROI改善アクション

▶前回「ROIの可視化がもたらす組織変革」はこちら

「とにかく新規のリードを増やしたい」 

「新しいマーケティング施策を始めたい」

ROI改善に向けて、多くの企業がまずこのような発想から入りがちです。

「外部への積極的なアプローチ」を通じて、新たなビジネスチャンスを創出するのも確かに重要ですが、本当にそれが最も優先すべきことなのでしょうか?

 

なぜ「受注に近いところから」始めるべきなのか

日本の営業組織には見逃せない特徴があります。多くの営業担当者は、日々の顧客対応、社内の会議、報告書の作成などに追われ、新規案件に十分な時間を割けない状況が続いています。

HubSpot Japan株式会社の調査によると、営業担当者が顧客とのやりとりに使っている時間は業務時間の54%に留まり、残りの時間は社内業務や事務作業に追われていることがわかります。

実に、稼働時間の半分近くを本来の営業業務以外のことに使ってしまっているのです。これでは、受注活動に集中できているとは、とても言えない状態ですよね。

 

このような状況で安易に新規リードの獲得を増やすと、どうなるでしょうか?

想定される問題:

  • 営業担当者が質の低いリードの対応に追われる
  • 重要な商談の準備時間が確保できない
  • 顧客との関係構築が不十分なまま進行
  • 結果として成約率が低下

つまり、新規リードの増加が、かえって組織全体の効率を下げてしまう可能性があるのです。

 

優先順位の考え方:効率から考える最適な順序

では、限られたリソースを最大限活用するには、どのような順序で施策を進めるべきでしょうか?

よくあるケースをご紹介します。

 

1.既存顧客からの追加受注

ある企業では、まず既存顧客に対する定期的なレビューミーティングを実施することにしました。その結果、

  • 追加の課題やニーズが次々と発見される
  • 具体的な提案に即座に結びつく
  • 信頼関係を基にスムーズな商談が進む

実際の成果として、既存顧客からの追加受注が前年比で165%に増加。しかも、通常の新規案件と比べて商談期間は半分以下で済んでいます。

 

2.過去取引顧客の復活

次に注目したのが、過去に取引があった顧客です。なぜこのアプローチが効果的だったのでしょうか?

これらの顧客には、いくつかの重要な特徴がありました。

  • 製品やサービスについての基本的な理解がある
  • 自社の強みや特徴を知っている
  • 過去の取引経験から、具体的な改善点が提案できる

実際、ある製造装置メーカーでは、過去3年以内に取引のあった顧客にアプローチしたところ、45%という高い商談化率を達成。新規顧客への営業活動と比べて、商談期間も30%短縮できました。

3.過去商談顧客へのアプローチ

続いて注目したのが、過去に商談まで進んだものの、成約に至らなかった顧客層です。一見すると「失注した案件」と消極的に捉えがちですが、実はここに大きな可能性が潜んでいました。

なぜなら、

  • 具体的な検討まで進んだ背景には、明確なニーズが存在
  • 競合製品の導入後の評価を確認できる
  • 前回の商談内容を基に、より的確な提案が可能

あるIT企業では、過去2年間の失注案件を分析し、導入時期や予算の問題で見送られた案件に再アプローチ。その結果、35%の案件で商談が再開し、最終的に28%が受注に至りました。

4.新規リード獲得

これらの「受注に近い」アプローチである程度の成果が見えてきた段階で、初めて新規リード獲得の強化に着手します。この順序が重要な理由は明確です。

  • 組織の基礎体力が向上している
  • 成功パターンが確立されている
  • リソースに余裕がある

この段階で新規リード獲得に取り組むことで、効率的な活動が可能になるのです。

 

具体的なアクションプラン

以上の内容を踏まえ、明日から始められる具体的なアクションをご紹介します。

1週目:現状把握

  1. 過去2年分の商談データの分析
  2. 既存顧客のセグメント化
  3. 優先アプローチ先のリストアップ

2~4週目:クイックウィン創出

  1. 有望既存顧客への集中アプローチ
  2. 成功パターンの抽出
  3. 初期成果の可視化

2~3ヶ月目:活動基盤の確立

  1. 定期レビューの仕組み構築
  2. KPIモニタリングの開始
  3. 成功事例の組織的共有

このような段階的なアプローチを取ることで、確実な成果創出とその定着化が可能になるでしょう。

 

まとめ:シリーズ全体を通して

マーケティングROIの改善は、決して容易な道のりではありません。しかし、本シリーズで解説してきた体系的なアプローチを実践することで、確実な成果を手にすることができます。

私たちは5回にわたって、以下のテーマを深く掘り下げてきました。

  • リード管理の基本:質の高いリードを育成し、効果的に商談化する方法
  • 組織変革の進め方:データに基づく意思決定と部門間の連携強化
  • チーム別KPIの設定:各部門の役割と評価指標の最適化
  • 具体的な改善アクション:明日から始められる実践的な取り組み

これらの要素は、それぞれが独立して存在するのではなく、強く結びついています。その連携こそが、真の改善を可能にするのです。

重要なのは、「新しいことを始める」前に、「すでにある機会を最大化する」という基本姿勢です。華やかな新規施策に目を奪われがちですが、まずは足元をしっかりと固めることが、持続的な成長への近道となります。

 

本シリーズを通じて強調してきたように、ROI改善は単なる数字の向上ではありません。それは、

  • 営業とマーケティングの信頼関係の構築
  • データに基づく冷静な判断と迅速な行動
  • 顧客により良い価値を提供するための組織力の向上

これらすべてを包含する、組織全体の変革なのです。

まずは自社の現状を見つめ直し、できることから一つずつ始めていきましょう。その最初の一歩は、小さなものかもしれません。しかし、本シリーズで学んだアプローチを実践することで、その一歩は確実に大きな変革への道を切り開いていくはずです。

マーケティングROIの改善に、終わりはありません。しかし、だからこそ、その過程には無限の可能性が広がっているのです。さあ、今日から、あなたも組織変革の第一歩を踏み出してみませんか?

▶ROI攻略シリーズ記事一覧

ROI攻略①|待ったなし!なぜ今、マーケティングROIが重要なのか

ROI攻略②|ROI計算の第一歩:リード管理の基本

ROI攻略③|具体例で学ぶ!マーケティングROIの計算方法

ROI攻略④|ROIの可視化がもたらす組織変革

ROI攻略⑤|今日から始めるROI改善アクション【本記事】

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携をまとめた。 2011年6月にコンテンツマーケティング支援の株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。