Skip to content
イノーバマーケティングチーム2025/04/04 10:25:371 min read

【対談】ITよもやま話-4|なぜ日本のIT企業は海外で成功できないのか?

前回までは、IT企業のマーケティングにおける「顧客の明確化」や「自社の強みの言語化」など、基盤となる戦略について掘り下げてきました。第4回となる今回は、そこから一歩踏み込み、「なぜ日本のIT企業は海外で成功できないのか?」という問いに向き合います。

日本国内のマーケット縮小が叫ばれる中、「海外展開」はもはや一部の大手企業だけの話ではありません。しかし実際には、多くの企業が海外に出たいと思いながらも、成果を出すことができていないのが現状です。

なぜ日本のIT企業は、世界で戦うのに苦戦しているのか? 宗像・高村の2人が、それぞれの経験を交えてリアルな課題と打ち手を語ります。

イノーバCEO / 宗像 淳

東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。

MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメディアマーケティング立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携をまとめた。

2011年6月にコンテンツマーケティング支援の株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。

イノーバ執行役員 / 高村 治男

慶應義塾大学法学部卒業。

NTT→NTT東日本にて、企業向けネットワーク等の実装および運用の企画提案・プロジェクトマネジメントを行う。その後マイクロソフトにて、Office 365 を中心としたクラウドサービスのソリューションスペシャリストとしてセールス・マーケティングを推進。

イノーバでは、インハウスマーケティングを経てマーケティングコンサルティングに従事。

目次

 

なぜ日本のIT企業は海外で成功できないのか?

高村:
今回のテーマは「日本のIT企業はなぜ海外で成功できないのか?」。
これ、ずっと気になっているテーマなんですよ。

 

宗像:

確かに、日本のIT企業って国内中心のビジネスが多いですよね。

 

高村:

そうなんです。

私自身、ずっとIT企業にいて、インターネット黎明期やクラウドが出てきたときなど、日本企業が海外に出ていけるタイミングってこれまで何度かあったと思うんです。でも、実際に海外で本当に成功している例って少ないなと。

 

宗像:

ですね。実際、日本市場が縮小する中で「海外に出たい」って話は僕もよく聞くんですけど、そこから先に進めてる企業って本当に少ない気がしますね。

 

高村:

ですよね。そういった企業の支援ができないかなと思っていまして。

今回の対談では、IT企業が海外進出するにあたっての課題や気づきを少しでも浮き彫りにできたらと思っています。

重要なポイント

  • 日本のIT企業において、海外進出の成功例は少ない
  • 「海外に出たい」というIT企業の声は多く聞かれるが、実行に移せていない例がほとんど


明確なニーズがあれば、話は一気に進む

高村:
私が思うに、日本企業って多くが「トヨタになりたがってる」というか、「自社の得意なもの、いいものを押し出せば通用する」と思いがちですよね。そこをとにかくアピールして説得していけば、ワンアンドオンリーな会社として海外に進出ができるはずだ、と。そういう戦略に基づいちゃってるところがそもそもの問題じゃないかと。

 

宗像:
「技術を説明すればわかってもらえる」っていう、技術中心の戦略ですね。
でも実際は、製品そのものの良し悪しだけじゃなくて、「どの文脈で、どんな人に、どう届けるか」が重要ですよね。

特に海外では、日本と前提がまるで違うから、同じ“強み”でも受け取られ方が全然違うことが多いですし。

 

高村:
ですよね。どんなに良いプロダクトであっても、現地の文化や商習慣に合っていなければ売れない。

 

宗像:

僕が以前いた富士通では、もともとハードウェアは通信キャリア向け機器などで海外展開をしていましたし、ヨーロッパには強いパートナー企業もいました。ソフトウェアはその後に海外展開が必要だと認識されて、おそらくアジアでは現地法人を作って社員を雇って、ヨーロッパでは会社を買収して…というように、展開の仕方は色々だったんです。

 

高村:

やっぱり会社によって、あるいは地域によって、展開の形もずいぶん違ってきますよね。

一律の「海外戦略」みたいなものが通用しないのも、難しさのひとつというか。

 

宗像:

そうなんですよね。大事なのは「きっかけづくり」だと思います。海外って、言語も文化も違う中で、顧客ニーズや市場のトレンドに触れるきっかけがなかなかない。それが大きな壁になっている気がするんですよね。

 

高村:

たしかに。国内だと展示会とか既存顧客からの紹介とか、自然とチャンスが生まれやすいですけど、海外ではそうはいかないですもんね。

 

宗像:

そうそう。ひとつエピソードを紹介すると、僕が富士通にいた頃、ブラジルの子会社から突然連絡があったんです。ブラジルには日系人が多くて、日系の農業協同組合が花を育てている、と。で、彼らが競り市場を作ろうとしていたんだけど、ITシステムはオランダ製ばかり。でも「日本人としては日本製のシステムが使いたい!」という話になり、調べたら富士通製の競りシステムがあるらしい、となったそうで。だからブラジルに持ってきたいと依頼があったんです。

そこから社内の関係部門を探して繋げていったんですが、やっぱり現地の明確なニーズがあると、話が一気に進むんですよね。

 

高村:

なるほど。そうやって「使いたい」と言ってくれるお客さんが現地にいて、そこにうまくつながれば、確かにスピード感が全然違いそうですね。

でも、そういうニーズって、待ってるだけじゃ出会えないですもんね。

 

宗像:

そう。でも、日本のIT企業が海外進出を考えるときって、飲み会の会話レベルでは「日本は先が暗いよね」「ベトナム進出したいな」みたいな話になるけど、実際に案件化しにくいんですよ。ニーズや課題にちゃんと触れられないから、社内でも「まぁ来年考えましょうか」ってなってしまう(笑)。でも、逆に、明確なニーズが見えていれば「いや、現地の人がこれ欲しいって言ってるんだからやりましょうよ!」って話になると思うんですよ。

高村:

たしかに、明確なニーズが見えていると、話は一気に動きやすくなりますよね。

でも、それだけだと「単発」で終わってしまうことが多くて、本格的な海外展開にはつながりにくい。やっぱり、継続的に広がっていくには、もっと多くのニーズを掴んでいく必要があるんじゃないでしょうか。そのためには、現地の市場や顧客の情報をきちんと集める力が求められるわけですが、日本企業って、そのあたりの情報収集があまり得意じゃないのかもしれないな、とも感じます。

 

宗像:

それも大事ですね。やっぱり現地を知る手段とか、顧客との接点を意図的に設計していく必要があるんでしょうね。このあたりが、海外展開を本気で考える上での第一歩になるのかも。

重要なポイント

  • 「いいモノを作れば売れる」という技術中心の発想だけでは通用しない
  • 海外展開には明確なニーズが重要で、それがあると話が一気に進みやすい
  • 単発で終わらせずに継続的に展開するには、現地の情報収集や接点づくりの設計が不可欠


日本企業は「強みの言語化」が弱い

高村:

以前の対談の際にも話しましたけど、日本企業は自社の強みをしっかり言語化できていないという課題もありますよね。海外企業は、「ウチにはこういうポリシーのサービスがあって、ここが強い」っていうのを、はっきり伝えるんですよ。嘘か本当かわからない部分はありますが(笑)。日本企業は、その「強みの言語化」が弱い気がするんです。

 

宗像:

うんうん。日本人って、自分たちの強みに無自覚なところがありますよね。
ちょっと脱線しますが、新渡戸稲造が『武士道』を書いたきっかけをご存知ですか?彼が海外で「日本には宗教がないのか?どうやって道徳教育しているんだ?」と聞かれて、「たしかに…」と思ったところから、自分たちの価値観のルーツを考え直し、それをまとめたのが『武士道』なんです。つまり、外に出たことで自分たちの内側にある強みや規範に気づいた、という。

 

高村:

まさに象徴的な話ですね。

海外に出て初めて、「自分たちは何者なのか」を問われる日本人。

 

宗像:

欧米の人たちは「常に攻めたり攻められたり」の歴史があるから、自分が何者かを明確にしないと生き残れない、という背景があるんですよね。常に「自分が何者か」を主張する文化で、それがアイデンティティになっているけど、日本はそこを言語化しなくてもなんとかなっちゃう文化。こうした「言わなくても伝わる」という感覚は、個人だけでなく企業文化にも現れていて、結果的に“会社としての自己紹介”が曖昧になってしまうんでしょうね。

高村:

なるほど、たしかに。日本国内だとそれでも通じてしまう部分があるから、余計に意識しにくいんでしょうね。

 

宗像:

そうそう。で、強みが言語化されていないと、当然会社のリソース配分も曖昧になりますし、戦略的な判断もぼやけます。「競合がやってるからうちも」みたいな、追随型の戦略に陥りがちなんですよ。

 

高村:

となると、やっぱり海外を見据えるなら、まずは「自社の強みとは何か」をちゃんと掘り下げて、誰に、どんな価値を提供できるのかを明確にすることが大事ですね。

特に、「日本向けの強み」と「海外にも通用する強み」は必ずしも同じとは限らないので、そこをきちんと出し分けて整理しておくといいんじゃないでしょうか。

重要なポイント

  • 日本企業は自社の「強みの言語化」が苦手で、企業としての自己紹介が曖昧になりがち
  • 強みを明確にしないと、戦略やリソース配分も曖昧になり、競合追随型の動きになってしまう
  • 海外進出には、「誰にどんな価値を提供できるか」を明確にすることが不可欠

 

まとめ

今回の対談では、「なぜ日本のIT企業は海外で成功できないのか?」という問いからスタートし、主に3つのポイントが浮き彫りになりました。

  • 「技術があれば売れる」という発想だけでは、海外では通用しない
  • 明確なニーズがあると展開は進みやすくなるが、継続には現地の情報収集や接点づくりが不可欠
  • 自社の強みを言語化し、「誰に、どんな価値を提供するのか」を明確にすることが重要

日本企業が持つ強みをきちんと捉え直し、戦略的に海外市場を見据えていくことで、可能性は確実に広がっていくでしょう。

 

次回予告

次回「海外進出の第一歩、デジタル時代の“助走”戦略」では、海外展開の始め方について掘り下げます。

デジタル化が進んだ今、海外に拠点を構える前に、日本にいながらもできることがあるのでは?その可能性に迫ります。どうぞお楽しみに!

avatar

イノーバマーケティングチーム

株式会社イノーバの「イノーバマーケティングチーム」は、多様なバックグラウンドを持つメンバーにより編成されています。マーケティングの最前線で蓄積された知識と経験を生かし、読者に価値ある洞察と具体的な戦略を提供します。