「ちゃんとやってるのに、なぜか成果が出ない…」
マーケティングも営業もカスタマーサクセスも、それぞれがしっかり目標を立てて、手を抜かずに動いている。それなのに「売上につながらない」「お客様からの評価がいまひとつ」「なんとなく成果が噛み合わない」といった“もやもや”を感じたことはないでしょうか?
実はその感覚、あなたのチームの努力が足りないのではなく、「組織の構造」に原因があるかもしれません。
本シリーズでは、成果が出にくいBtoB組織にありがちな“見えにくい構造的課題”を紐解きながら、いま注目されている新たなアプローチ「RevOps(Revenue Operations)」の必要性から実践のポイントまでを全3記事で解説します。
目次
TABLE OF CONTENTS
この記事を読んで得られること
- 「THE MODEL型」分業体制に潜む課題がわかる
- 連携不全により「売上の取りこぼし」が発生する理由がわかる
- RevOpsが注目される理由とその基本的な考え方がわかる
よくある「バラバラ組織」の課題
多くの企業では、売上に関わる部門――マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス(営業)、カスタマーサクセス(以下CS)――が、それぞれ独自の目標をもって活動しています。
このような、いわゆる「THE MODEL型」の分業体制そのものは決して悪いものではありません。むしろ専門性を高めるためには有効な体制です。
しかし、問題は部門間の連携が取れていないことにあります。
たとえば、以下のような状態に心当たりはないでしょうか?
- マーケティングは見込み顧客を獲得しているが、営業にうまく引き継がれていない
- 営業は個人の属人的なやり方で商談を進めており、ナレッジがCSに共有されない
- CSが蓄積した顧客のリアルな声が、マーケティングにも営業にも伝わらない
それぞれの部門が頑張っているにもかかわらず、部門間の情報共有がされず、施策も顧客対応も“つながらない”。その結果、売上がスムーズに生まれにくくなるのです。
▶関連記事:セールスベロシティ①|リードが商談につながらないのはなぜ?
「バラバラ組織」が進行するとどうなる?
こうしたバラバラの状態が進行すると、やがて以下のような構造的な問題が起こります。
①サイロ化
各部門が自分たちの目標や成果だけに集中し、「全社の売上成長」という共通ゴールがぼやけた状態。
マーケティング部門が獲得したリードの質に営業が不満を持ったり、CSから営業へのフィードバックが活かされなかったりと、部門間の不信感が生まれやすくなります。
②階層化
「決める人」と「実行する人」が分断され、現場の動きと経営判断がズレてしまう状態。
経営陣が全体像を把握できないまま、各部門に対して“部分最適”の改善要求を出してしまい、さらに会社全体としての動きがバラバラになります。
③属人化
属人的なナレッジややり方に依存しすぎて、チームとして再現性ある成果が出せない状態。
特定の担当者に成果が依存していると、引き継ぎ時に対応が遅れたり、失注のリスクが高まります。チームとしての再現性が生まれず、売上の安定成長が難しくなるのです。
こうした構造的な“ゆがみ”は、企業の成長にブレーキをかけるだけでなく、日々の営業活動の中で目に見えない「売上の損失」を生み出しています。
では、その“取りこぼし”は実際にどこで起きているのでしょうか?
売上の“取りこぼし”の正体
部門間が適切に連携できていないことで、以下のような形で売上機会が失われている可能性があります。
- マーケティングが獲得したリードが、営業のアプローチタイミングを逃して“鮮度が落ちたリード”になる
- 商談化できなかった理由が組織に共有されず、マーケティング施策の改善につながらない
- 既存顧客からのフィードバックがCS内にとどまり、営業やマーケティングの改善に活かされない
こうした“取りこぼし”は、個別に見れば小さなミスかもしれません。
しかし、それが積み重なれば、本来得られるはずだった売上が、気づかぬうちに大きく失われているリスクがあるのです。
▶リードの“鮮度”を解説する関連記事:セールスベロシティ②|受注までの効率性を測る新たな指標
解決の糸口としてのRevOps
では、どうすればこの「バラバラ組織」状態を解消し、「売上につながる組織」に変えていけるのでしょうか?
そこで注目されているのがRevOps(Revenue Operations、レベニューオペレーション)。
RevOpsとは、「マーケティング・営業・CSといった“収益を生み出す部門”を横断的に連携させ、プロセスとデータを一体化し、全体最適で売上を最大化する仕組み」のこと。
従来のように、マーケティングはリード獲得、営業は商談数や受注数、CSは解約率といった、それぞれのKPIだけに最適化された施策を積み上げるだけではなく、
- 顧客体験を一貫させ、
- 売上プロセスを見える化し、
- 再現性ある成果を生み出す
たとえば、マーケティングで獲得したリード情報が自動で営業に引き継がれ、商談状況や受注結果が一目で確認できるダッシュボードが全社で共有されている状態を想像してみてください。
顧客対応の履歴もCSにリアルタイムで共有されることで、部門をまたいだ連携が自然に生まれ、組織として一貫した顧客体験と、再現性ある成果の創出が可能になります。
そんな“仕組み”を支えるのがRevOpsの役割なのです。
次回以降では、このRevOpsの仕組みをどう実現し、実際に成果を出す組織をどう作っていくべきか、具体的なステップに踏み込んで解説していきます。
まとめ:自分たちの“構造”を疑うところから始めよう
「それぞれの部門はちゃんと頑張っているのに、成果が出ない」
その原因は、やり方ではなく“構造”そのものにあるかもしれません。
まずはこの第1回をきっかけに、「うちも一度“組織の構造”から見直す必要があるのかも」と考えるきっかけになれば幸いです。
次回「いま求められている“連携”の仕組み」では、KPIやデータ、プロセスのバラバラさが組織の成果にどう影響しているのかを紐解きながら、RevOpsの仕組みがなぜ“全体最適”に役立つのかを詳しく解説していきます。
▼RevOpsシリーズ(全3記事)
