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イノーバマーケティングチーム2025/05/02 10:52:071 min read

RevOps②|いま求められている“連携”の仕組み

前回の記事では、「成果が出ないのは、“組織構造”に問題があるのでは?」という視点から、マーケティング・営業・CSが“バラバラに動く”ことのリスクを解説しました。

今回焦点を当てるのは、その「バラバラ組織」問題を引き起こしている真の原因。

実は、各部門がそれぞれのKPIやデータ、業務プロセスに合わせて“個別最適”を追求していることが、結果として組織全体の非効率を生んでいるのです。

本記事では、このような分断された構造が、どのようにして全体としての成長を妨げているを紐解きながら、バラバラな各部門の活動を“ひとつの売上創出プロセス”としてつなぎ直すRevOpsの本質的な価値を、より具体的に解説していきます。

目次

この記事を読んで得られること

  • 各部門のKPIの違いが生む“顧客側の違和感”がわかる
  • RevOpsによってどのように分断を乗り越えるかがわかる
  • RevOpsの最新動向と注目企業の取り組みがわかる



部門ごとのKPIが、かえって“連携の壁”になる

BtoB企業では、各部門がそれぞれのKPIを持ち、部門最適で成果を追求する体制が一般的です。しかしこの体制、目の前の数字には強くても、部門をまたいだ成果の連携には弱いという側面があります。

具体的には、各部門ごとに以下のようなリスクが生じてしまうのです。

部門

主なKPI

KPIに基づく判断・行動傾向

その結果生じるリスク

マーケティング

リード数

「とりあえず資料だけ見てみたい人」と「導入を前提に具体的な比較検討をしている人」を区別せずに営業へ渡してしまう

営業からの不満・低い商談化率

営業

商談数・受注数

商談相手の検討段階や温度感、過去の接触状況を把握していない

非効率な商談・提案のズレ

カスタマーサクセス(CS)

解約率

解約率を下げることに注力しすぎるあまり、オンボーディング時の情報連携が疎かになる

認識ズレによる顧客の不満・解約リスク

このように、各部門が“自分のKPI”だけを追っていると、組織全体として成果を出せなくなってしまいます

そしてその影響は、社内だけに留まりません。こうした“部門間のズレ”は、顧客の立場から見ても大きな違和感につながります。

たとえば、

  • 「ちょっと資料を見てみたかっただけなのに、“今週中に商談いかがですか”って連絡が来て、正直びっくり…」
    →マーケティングがリードの温度感を見極めずに営業に引き渡してしまうことで、資料ダウンロードなどの行動がすべて“導入検討”と見なされる。結果、顧客がまだ準備できていない段階でアプローチがされ、「この会社、こちらの状況をちゃんと見てくれてないな」という不信感につながる

  • 「ダウンロードした資料に書いてあったこと、営業さんは全然知らないみたいだけど…本当に同じ会社?」
    →マーケティングが発信していたホワイトペーパーの内容を営業が把握しておらず、話がかみ合わない

  • 「最初の営業さんには伝えたはずなのに、また一から説明しないといけないの?」
    →営業からCSへの情報共有がされておらず、顧客が同じことを何度も説明させられる

  • 「それ、こっちの現場ではもう試してて、あんまり効果なかったんだけどな…」
    →CSが得たフィードバックがマーケティングや営業に共有されず、過去に断られた提案やうまくいかなかった施策が繰り返される

こうした“ちぐはぐな対応”が続くと、顧客は「この会社、大丈夫かな?」と不信感を抱き、静かに離れていきます。一度ついた悪い印象は簡単には覆せず、せっかくつながった商談や契約のチャンスが、知らないうちに失われているかもしれません。

つまり、KPIや体制のズレは、単なる社内の都合だけの話ではなく、売上に直結する構造的な課題なのです。

その背景にあるのは、部門ごとに最適化されたKPIと、それぞれがバラバラに動く業務の進め方──つまり、“連携を前提としない仕組み”そのもの。

前回ご紹介したRevOps(レベニューオペレーション)は、まさにこの“仕組みの問題”を解消するためのアプローチなのです。

 

RevOpsは“全体最適”を仕組みで実現するアプローチ

では、具体的には、RevOpsによってどのように分断を乗り越え、何が実現できるのでしょうか?ここからは、その鍵となる3つの効果を見ていきましょう。

 

① データの統合と活用

RevOpsの導入でまず整えられるのが、「情報の土台」=顧客データの統合と活用です。

従来の分業型組織では、マーケティング・営業・CSがそれぞれ別のツールやフォーマットで顧客情報を管理しており、「誰が何の情報を持っているか分からない」「申し送り時に抜け漏れが出る」といった問題が起きがちでした。

RevOpsでは、各部門が扱う顧客情報をひとつのデータ基盤に集約。
すべての顧客データが“同じフォーマット・同じ場所”に揃い、全社で共有・活用できる状態をつくります。

たとえば:

  • マーケティングが取得した属性データや閲覧履歴を営業が参照し、商談優先度を判断
  • 商談履歴や対応ログをCSが確認し、顧客の不安や期待を把握したうえでフォロー
  • CSの対応メモがマーケティング施策改善の材料になり、継続的な訴求力向上に

バラバラだった顧客情報が一元化されることで、社内全体が“同じ顧客像”を共有できるようになります。

 

②顧客接点の一貫性

情報基盤が整うと、次に変わるのが顧客との“やりとりの質”です。
RevOpsによって、各部門が共通の顧客情報をもとに対応できるようになると、顧客とのコミュニケーションに“一連のつながり”が生まれます。

たとえば、RevOpsの仕組みが整っていると以下のような対応が可能になるのです。

  • 営業が見込顧客の閲覧履歴を確認し、「◯◯の基礎ガイドをダウンロードされていましたね。もしご興味があれば、導入検討前の情報収集に役立つセミナー資料もありますので、よければお送りします」と、顧客の温度感に合わせた自然なナーチャリングができる
  • 「〇〇の導入事例をご覧になっていたので、あの資料で紹介されていた“現場主導の活用プロセス”について詳しくご説明できます。御社でも似た課題をお持ちでしょうか?」と、内容に踏み込んだ会話ができる
  • CSが商談ログから「立ち上げ時に現場メンバーの習熟度に不安がある」とのやり取りを把握し、「オンボーディング期間中にトレーニングコンテンツを重点的にご案内しますね」と事前に懸念をカバー
  • CSが得た「新人メンバーでも使いやすかった」「この手順でやるとうまくいった」といった具体的な活用ノウハウをマーケティングが受け取り、次回の資料やセミナー内容に活かす

顧客から見れば、「毎回同じ説明をしなくて済む」「話がちゃんと通ってる」という安心感が生まれ、 “分断されていない企業”としての信頼感が醸成されていきます。

結果的に、提案の精度・顧客満足度・LTV向上にもつながっていきます。

 

③ 売上創出プロセスの可視化と継続的改善

RevOpsが実現するもうひとつの大きな変化は、マーケティング・営業・CSの売上創出プロセス全体が“見える化”され、改善しやすくなることです。

部門ごとの各プロセスを大きなひとつの流れとして捉えることで、
「どこでリードが停滞しているのか」「どんな提案が成約につながっているのか」「どの施策が解約リスクを下げているのか」などを、データで把握できるようになります。

 

たとえば、

  • マーケティングが、過去の成約に繋がったコンテンツやキャンペーンを分析し、再現性の高い施策を洗い出す
  • 商談フェーズごとの進捗率や失注理由を可視化し、営業チーム全体で改善パターンを共有
  • CSが、サポート対応後の顧客満足度データをトラッキングし、「どの対応が長期継続につながっているか」を分析してナレッジ化

こうした“プロセスを可視化したうえで改善を回せる組織”になることで、施策は属人化せず、再現性のある成果を生み出す“強い体制”がつくられていきます。

 

国内外で広がるRevOpsの波

こうしたメリットの大きさから、RevOpsは米国を中心に積極的な導入が進んでいます。

もともとは、2015年前後から注目を集め始めたRevOps。
特に2018年以降は、各種ビジネスカンファレンスでも「RevOps」が頻出キーワードとなり、現在では米国企業の約7割がRevOps体制を導入済みと言われています。

また、米LinkedIn上での求人分析では「Revenue Operations責任者」が最も人気のあるポジションの一つとなっており、いまや“売上を支える司令塔”として不可欠な機能として定着しつつあるのです。

そしてこの動きは今、日本でも着実に広がり始めています。

  • 富士通株式会社:2023年4月に「CRO室(Chief Revenue Officer室)」を設置し、役員直下でRevOps体制を推進
  • ソフトバンク株式会社:2023年10月にRevOpsチームを立ち上げ。15~20名の専任体制で本格運用中
  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社:同じく2023年10月に「CRO準備室」を発足し、現在は「CROグループ」として運用中

いずれも業界をリードする大手企業であり、「売上プロセスの一体管理」が競争力の源泉になっていることがうかがえます。

国内企業にとっても、もはやRevOpsは「いつか取り組むべきもの」ではなく、“いまから取り組むべき経営の仕組み”と捉え直すタイミングに来ているのかもしれません。

 

まとめ:バラバラな構造では、成果の限界が来る

部門ごとに異なるKPIや進め方で動く体制は、一見すると合理的に見えますが、実は「連携できない仕組み」をつくり出していました。その結果、一貫性のない顧客体験、売上の取りこぼし、施策の属人化といった課題が、少しずつ組織の成長を阻んでいきます。

 

この構造的な問題に対し、RevOpsは“連携を前提とした仕組み”を組織に埋め込むアプローチです。データ・接点・プロセスを部門横断で統合・可視化することで、施策の再現性を高め、成果の最大化を実現できるでしょう。

 

次回「連携強化の第一歩は“小さな見直し”から」では、「RevOpsの重要性はわかったけど、一体何から始めれば…」という方に向けて、具体的な導入の第一歩を紹介していきます。


▼RevOpsシリーズ(全3記事)

RevOps①|成果が出ない原因は“組織の構造”にあり?

RevOps②|いま求められている“連携”の仕組み

RevOps③|連携強化の第一歩は“小さな見直し”から

 

出典:

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