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💡この記事でわかること
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BtoBマーケティングとは、企業間取引を通じて顧客企業に「買い続けてもらうための仕組みづくり」のことです。単なる広告出稿やWebサイト制作ではなく、見込み顧客を集め、育て、営業へつなぐ一連のプロセスを指します。
しかし、いざ実践しようとすると「何から手をつけるべきかわからない」「営業部門と連携がうまくいかない」「ツールを導入したが使いこなせない」といった壁にぶつかる担当者も少なくありません。これは、BtoBマーケティングの全体像が見えづらいうえに、施策の実行プロセスが複雑であることが原因です。
そこで本記事では、BtoBマーケティングの基礎知識から、成果を出すための戦略ロードマップ、具体的な施策の選び方までを網羅的に解説します。
目次
TABLE OF CONTENTS
BtoBマーケティングとは?
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💡この章のポイント! 顧客が営業に会う前にWebで情報収集やサービス選定を済ませてしまっている現代において、BtoBマーケティングは商談の土俵に上がるための必須条件となっています。成功の鍵は、複数の関係者が存在する組織的な意思決定に対し、感情ではなく「論理的な導入メリット」を提示して理解・納得してもらうことにあります。 |
BtoBマーケティングとは、企業を対象とした「買い続けてもらうための仕組みづくり」のことです。単なるWebサイト集客や広告だけでなく、見込み顧客(リード)を獲得・育成し、商談化して受注につなげるまでの一連のプロセスを指します。
近年、市場環境は大きく変化しました。最大の変化は、顧客が「営業担当に会う前に、Web検索で情報収集と選定をほぼ終えている」点です。
例えばシステム導入なら、担当者は検索で比較記事を読み、資料をダウンロードし、「良さそうな数社」に絞ってから初めて問い合わせます。つまり、デジタル上で適切な情報を発信していない企業は、営業が提案する前の「土俵」に上がることすら難しい時代なのです。
なぜ今、BtoBマーケティングが重要なのか
現在、BtoBマーケティングの強化が急務とされている理由は「営業効率の限界」と「購買行動の変化」にあります。
以前のテレアポや飛び込みといった「足で稼ぐ」手法だけでは、すでにWebで選定を済ませている顧客には通用しません。
また、営業リソースを最適化するためにも分業が必要です。「興味があるかわからない相手」への架電で営業が疲弊するのではなく、マーケティングを通じて発掘した「見込みのある顧客」に対して商談を行う。この体制を作らなければ、生産性の高い競合他社にシェアを奪われてしまいます。
逆に言えば、マーケティングの仕組みや体制を構築することで、従来のような営業活動の延長でしかなかったマーケティング風活動や、既存顧客からの継続発注頼みという状態から抜け出すことができます。新たな販路を創出したり、新商品の開発につながったり、競合企業との価格競争から抜け出せたりと大きなメリットがあるのです。
BtoBマーケティングとBtoCの違い
BtoBマーケティングの重要性を理解するには、BtoC(個人向け)マーケティングとの違いを把握することが大切です。BtoB(法人向け)とBtoCでは、購買に至るまでのプロセスや意思決定の基準が全く異なるため、マーケティング戦略も大きく変わります。
主な違いを以下の表に整理しました。
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項目 |
BtoB(法人向け) |
BtoC(個人向け) |
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対象 |
企業(組織) |
個人(消費者) |
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意思決定者 |
複数人(担当者、決裁者、複数部門など) |
基本的に本人(家族の場合もあり) |
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判断基準 |
合理的・論理的(費用対効果、機能) |
感情的・感覚的(好き、欲しい) |
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検討期間 |
長い(数ヶ月〜1年以上かかることも) |
短い(即決〜数週間) |
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関係性 |
継続的な取引が前提 |
一回切りの購入も多い |
BtoBの最大の特徴は「関係者が複数いる」点です。担当者が気に入っても、上司や関係する他の部門が納得しなければ購入できません。 そのため、BtoBマーケティングでは感情への訴求ではなく、担当者が社内で稟議を通すための「論理的な導入メリット」や「費用対効果の根拠」を提示することが求められます。
☝️宗像淳から一言アドバイス!
担当者が「良さそう」と思うだけでは不十分です。BtoBマーケティングの真髄は、その担当者が社内で自信を持って「この会社に頼みたい」とプレゼンできる状態を作ることにあります。彼らが上司を説得するための武器(稟議に通るロジックや資料)を、こちらがどれだけ先回りして用意できるか。この「お膳立て」の質こそが、最終的な受注率を劇的に変えるのです。
BtoBマーケティングで成果が出る「3つの基本プロセス」
| 💡この章のポイント! BtoBマーケティングは、将来の顧客情報を広く集め、長い検討期間中も継続的な情報提供を行うことで、購買意欲と信頼をじっくり育て上げるプロセスから始まります。 最終的に、顧客の行動データを分析して「今アプローチすべき熱い顧客」だけを見極めて営業へ渡すことで、商談の無駄を省き受注効率の最大化を実現します。 |
BtoBマーケティングの活動は、大きく4つのプロセスに分かれています。ここでは、BtoBマーケティングにおける3つのプロセスについて解説します。
①認知・想起の獲得(潜在顧客に知ってもらう)
マーケティングの第一ステップは、将来的に顧客になり得る層(潜在顧客層)に自社のことやサービスを知ってもらうことです。人は知らないサービスを購入することはできません。Webサイトや広告を見てもらうことで自社の存在や提案価値を潜在顧客に知ってもらい、いざニーズが顕在化した際に思い出してもらえるような状態にすることです。
具体的には以下のような活動を行います。
- Webサイトの情報を充実させ、信頼に足る企業であると思ってもらう
- 自社の活動やサービスの内容を積極的に発信し、認知と理解を得る
- 定期的な情報接触を続ける
このように、まずは「見つけてもらう」ための基盤を作り強化し続けることが重要です。
②リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)
次に、自社の商品やサービスに興味を持つ担当者情報(リード)を集めるフェーズです。商談の種となる見込み客リストを作ります。
具体的には以下のような活動を行います。
- 展示会に出展して名刺を交換する
- Webサイトにお役立ち資料(ホワイトペーパー)を用意し、ダウンロードしてもらう
- Web広告を出して、問い合わせを募る
ここでは「今すぐ買いたい客」だけでなく、「将来的に買うかもしれない客」も含めて広く接点を持ち、継続的にコミュニケーションをとりやすい状態にしておくことが目的です。
③リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
リードジェネレーションによってコミュニケーションが取れる状態になったリードに対し、継続的に情報提供を行うことで購買意欲を高めたり、積極的にアプローチするタイミングを計ったりすることを目的とした活動です。
BtoBは検討期間が長く、接点を持った直後に売れるとは限りません。「今は不要」でも、半年後の検討タイミングを逃さないよう、メルマガやセミナーで接触し続けます。ここではMA(マーケティングオートメーション)や、インサイドセールスの活動が欠かせません。
接点を持ち続け、「課題解決ならこの会社」と想起される信頼関係を築くことが目的です。
④リードクオリフィケーション(有望顧客の絞り込み)
育成したリードの中から、営業担当がアプローチすべき「確度の高い顧客(ホットリード)」を選別します。
- 資料を何度もダウンロードしている
- 料金ページの閲覧時間が長い
- セミナー後のアンケートで「具体的な話を聞きたい」と回答した
こうした行動データから「今アプローチすれば商談化しやすい」顧客を特定し、営業部門へパスすることで受注効率を最大化します。
☝️宗像淳から一言アドバイス!
4つのプロセスは教科書通りですが、現場で最も失敗するのは④から営業への「バトンパス」です。マーケティング側が「熱い」と判断して渡しても、営業側は「まだ早い」と放置し、対立が起きるケースが後を絶ちません。これを防ぐには、施策を走らせる前に「どんな行動・状態なら営業が即座に動くか」というホットリードの定義(条件)を営業責任者と握り合うこと。ツール設定よりも先に、この「社内合意」こそが成功の鍵ですよ。
▶「質のいいリード」の定義と課題に関する調査レポートはこちら
BtoBマーケティング戦略の立て方・ロードマップ
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💡この章のポイント! BtoBマーケティングの戦略は、最終目標から必要なリード数を逆算して数値を定め、顧客の検討段階に合わせたコンテンツを用意することから始まります。 その上で、マーケティングと営業の間で「リードの受け渡し条件」などの明確なルール(SLA)をあらかじめ合意しておくことが、組織的な連携ミスを防ぎ、確実に受注へ繋げるための鍵となります。 |
BtoBマーケティングで成果を出すためには、明確な戦略とロードマップが不可欠です。ここでは、BtoBマーケティングを立ち上げる際に踏むべき4つのステップを、実務のポイントとともに解説します。
STEP1:現状分析とKGI・KPIの設計
まずはゴール(KGI)とプロセス指標(KPI)を数値化します。「売上を上げたい」という曖昧な目標では、必要なリード数が分からず施策を見誤るからです。
以下のように、最終目標から逆算してシミュレーションします。
- KGI(最終目標):新規受注 10件 /月
- KPI(必要な商談数):受注率30%と仮定 → 33件 の商談が必要 /月
- KPI(必要なリード数):商談化率10%と仮定 → 330件 のリードが必要 /月
このように「月間330件のリードが必要」と決まって初めて、「展示会に出るべきか、Web広告で足りるか」という正しい手段の選択が可能になります。
STEP2:ターゲット(ペルソナ)とカスタマージャーニーの策定
次に、「誰に」届けるか(ペルソナ)と、その人の「行動プロセス」(カスタマージャーニー)を定義します。ターゲットの解像度が低いと、誰にも刺さらない当たり障りのないコンテンツになってしまうからです。
ペルソナを作成する場合は、企業属性だけでなく、担当者個人の悩みまで深掘りします。
【ペルソナの例】
- 企業属性: 従業員数30〜100名、製造業、地方拠点あり
- 担当者ペルソナ: 40代総務課長、ITに詳しくない、アナログな勤怠管理に限界を感じているが導入失敗が怖い
このペルソナが、課題を認識してから契約に至るまでの心理と行動の変化(カスタマージャーニー)を可視化します。これにより、各フェーズで「どんなコンテンツが必要か」が明確になります。
【カスタマージャーニーマップ作成例】
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フェーズ |
①課題認識 |
②情報収集 |
③比較検討 |
④意思決定 |
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顧客の思考 |
「手入力の集計作業が限界だ…ミスも多い」 |
「自社に合うシステムはあるか?失敗したくない」 |
「A社とB社、どっちがいい?費用対効果は?」 |
「上司を説得できる材料が欲しい」 |
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顧客の行動 |
「勤怠管理 効率化」で検索 |
比較サイトやブログ記事を読む |
資料請求し、料金や機能を比較する |
見積もりを取り、稟議書を作成する |
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必要な施策 |
・課題解決型のコラム記事 ・Web広告 |
・「失敗しない選び方」ガイド ・導入事例記事 |
・他社製品との比較表 ・サービス紹介資料 |
・費用対効果シミュレーション ・稟議書テンプレート |
ここまで具体化することで、単なる「製品説明」ではなく、相手の検討フェーズに寄り添った「刺さるコンテンツ」を作れるようになります。
STEP3:フェーズに合わせた施策選定と優先順位
ターゲットが決まったら、彼らにどう接触するかを選びます。すべての施策を同時にやる必要はありません。予算とリソースに応じて、最も効果が見込めるものから選びます。
選定方法についての詳細は、次の章で解説します。
STEP4:営業との連携ルールの策定
最後に、「どこまでをマーケティングが担当し、どこから営業が引き継ぐか」の境界線を決めます。ここが曖昧だと、「送ったリードを営業が放置する」といった対立が必ず起きます。
そこで、「SLA(Service Level Agreement)」を策定します。SLAとは、マーケティングと営業の間で交わす「リードの質と対応に関する合意(約束事)」のことです。 具体的には以下の3点を決めます。
- リードの受け渡し基準:どの状態になったら営業に渡すか(例:資料DL後に電話で予算確認済み)
- 対応期限:営業は受け取ったリードに何時間以内に連絡するか(例:24時間以内)
- 結果の報告ルール:商談結果をどこに記録するか(例:SFAに必ず入力)
これらを明文化して合意することで、「質の悪いリードを渡さない」「渡されたリードは必ず追う」という責任の所在が明確になります。
具体的な定義方法や運用のポイントについては、「BtoBマーケティングを成功させる「仕組み化」の方法」の章で詳しく解説します。
☝️宗像淳から一言アドバイス!
戦略策定で最も陥りやすい罠は、「完璧な計画ができるまで動き出さないこと」です。 初期のKPI設定で使う数値は、あくまで「仮説」に過ぎません。机上でどれだけ計算しても、実際の市場の反応とは必ずズレが生じます。 重要なのは予測の精度ではなく、実行後のデータを見て計画を書き換える「修正スピード」です。まずは60点の戦略で素早く動き出し、走りながら精度を高めていく。この泥臭いサイクルこそが、最短で正解に辿り着く道ですよ。
【手法一覧】オンライン・オフラインの代表的な施策と選び方
| 💡この章のポイント! BtoBマーケティングの施策は、オンラインの効率性やオフラインの信頼構築などそれぞれの特徴が異なるため、全ての施策に手を出す必要はありません。 「予算」「ターゲットの行動特性」「自社の強み」の3つの軸を分析し、自社にとって最も勝ちやすく、無理なく継続できる手法だけを厳選して集中することが成功の秘訣です。 |
BtoBマーケティングの手法は多岐にわたります。自社の商材やターゲットに合わせて適切なものを組み合わせましょう。
まず、代表的な施策の全体像を把握するため、以下の一覧表をご覧ください。
【一覧表】施策ごとの特徴・費用感・即効性・難易度まとめ
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施策名 |
分類 |
費用感 |
即効性 |
難易度 |
特徴 |
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Web広告 |
オンライン |
中〜高 |
高 |
中 |
「今探している人」にアプローチできる。予算があればすぐ開始可能。 |
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SEO(記事作成) |
オンライン |
低〜高 |
低 |
中 |
比較的早期に始めることができ、一度Webサイトに掲載すれば永続的に効果が出続ける。ただし、多くの流入を得るためには質の高い記事を制作・運用し続ける覚悟が必要。 |
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ホワイトペーパー |
オンライン |
低〜中 |
中 |
中 |
役立つ資料を提供し、個人情報を獲得する。リード獲得の定番。 |
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メルマガ |
オンライン |
低 |
中 |
低 |
既存リストへのアプローチ。コストを抑えて関係維持ができる。 |
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セミナー・ウェビナー |
オンライン・オフライン |
低 |
中 |
中 |
オフラインのセミナーでは見込み顧客と直接対話することができ、信頼関係を構築しやすい オンラインのウェビナーであれば、時間や場所を問わず集客できる。録画を活用すれば資産になる。 |
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展示会 |
オフライン |
高 |
高 |
低 |
一度に大量の名刺交換ができる。決裁者と直接話せるチャンスも。 |
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DM・手紙 |
オフライン |
中 |
中 |
低 |
決裁者宛に直接送付できる。開封率を高める工夫が必要。 |
オンライン施策
オンライン施策の中心は「コンテンツ」です。目的(集客・育成)に合わせて使い分けます。
- SEO(検索エンジン最適化)
顧客が検索しそうなキーワード(例:「〇〇 比較」「〇〇 導入手順」)で自社サイトのページを検索結果画面に上位表示させる手法です。効果が出るまで時間はかかりますが、一度上位になれば広告費をかけずに継続的な集客が見込める「資産」になります。 - リスティング広告
Googleなどの検索結果に連動して表示されるテキスト広告です。「今すぐ課題を解決したい」と考えて検索している層にピンポイントで表示できるため、即効性が高いのが特徴です。予算さえあれば明日からでも開始できます。 - ホワイトペーパー
ノウハウブックや調査レポートなどの「お役立ち資料」です。Webサイト上で公開し、ダウンロードの際に会社名や連絡先を入力してもらうことで、リード情報を獲得します。「業界の動向レポート」や「〇〇のチェックリスト」など、現場担当者が実務で使えるものが好まれます。
また、ホワイトペーパーはリード獲得だけではなくリードナーチャリングにも活用することができます。 - ウェビナー(オンラインセミナー)
Zoomなどを使って開催するセミナーです。会場費がかからず、全国どこからでも参加できるため集客のハードルが下がります。開催後の録画データは、後日アーカイブ配信として再利用することも可能です。 - メルマガ(メールマガジン)
獲得した名刺やリード情報に対して、定期的に情報を届ける施策です。展示会やホワイトペーパーで接点を持った顧客に対し、自社の存在を忘れさせず、少しずつ関心を高めていく(ナーチャリング)ための基本施策です。
これらを単体ではなく、「SEOで集客し、ホワイトペーパーで情報を得て、メルマガで育てる」と組み合わせることで効果を最大化します。
オフライン施策
デジタル全盛の今だからこそ、対面ならではの信頼構築や、Webではリーチできない層へのアプローチとして「リアル」の価値が見直されています。
- 展示会
東京ビッグサイトなどの会場に出展し、一度に大量の名刺(リード)を獲得する手法です。その場で製品デモを行ったり、直接顔を合わせて熱量を伝えられたりするのが最大の強みです。 - セミナー(リアル開催)
会議室やホールに見込み顧客を集めて行う講演会です。ウェビナーよりも参加ハードルは高いですが、その分「本気度の高い顧客」が集まります。終了後に個別相談会を実施し、そのまま商談化する流れを作りやすいのが特徴です。 - DM(ダイレクトメール)
紙の案内状や手紙を郵送する手法です。Web広告やメールを見ていない層に、物理的に情報を届けられます。特に決裁者宛に「手書きの手紙」を送るなど、特別感を演出して開封率を高めるアプローチもあります。 - タクシー広告
タクシーの後部座席モニターで流す動画広告です。乗客の多くがビジネス層や富裕層(決裁者)であるため、BtoB商材と非常に相性が良く、認知拡大や指名検索数の増加につながります。
特に製造業や不動産業など、古くからの商習慣が残る業界では、展示会や紙のDMが依然として強力です。また、Web広告では反応しない経営者層(決裁者)を狙う場合も、手元に届く手紙の方が確実に「目に入る」ケースが多くあります。
自社に合う施策の選び方(予算×ターゲット×自社の強み)
施策は無数にありますが、全てやる必要はありません。以下の3つの軸を掛け合わせ、自社にとって最も効率が良い(=勝てる)土俵を選びます。
- 予算: 広告費が潤沢に出せるなら、即効性のある「Web広告」が最優先です。予算が限られているなら、時間はかかりますがコストを抑えられる「SEO」「SNS」や、手持ちの名刺を活用する「ハウスリストへのメール配信」から始めます。
- ターゲットの行動特性: エンジニアやマーケターなど、PCの前で検索する習慣がある職種なら「Web施策」が適しています。一方で、建設業や飲食業など、日中は現場に出ている職種がターゲットなら、「FAX DM」や「業界紙への出稿」の方が確実に届きます。
- 自社の強み(リソース): 社内に人前で話せる専門家がいるなら「ウェビナー」が強力な武器になります。開発力や技術的な知見が強みなら、深い情報を発信する「技術ブログ」や「ホワイトペーパー」が信頼獲得につながります。
これら3つの要素を冷静に分析し、自社のリソースで無理なく続けられる施策を選定してください。
☝️宗像淳から一言アドバイス!
施策を選定する際は、単発の「点」ではなく、素材の使い回しができる「面」で考えてください。 賢いマーケターは「ワンソース・マルチユース」を徹底しています。例えば、1回のウェビナーを録画してアーカイブ動画にし、内容を文字起こしして記事化し、資料をホワイトペーパーにする。 毎回ゼロから作るのではなく、1つの素材を形を変えて徹底的に使い倒す。これがリソース不足を解決し、成果を最大化する鉄則ですよ。
BtoBマーケティングを成功させる「仕組み化」の方法
| 💡この章のポイント! マーケティングと営業の連携不全を解消するには、リードの定義や対応期限といった「共通言語とルール(SLA)」をあらかじめ合意し、相互の責任範囲を明確にすることが第一歩です。 その上で、両者の間をつなぐインサイドセールスの設置やツールによる情報共有を徹底し、確度の高い商談だけをスムーズに営業へ渡す体制を築くことが成功への近道となります。 |
戦略や施策を実行しても、社内の連携がうまくいかなければ成果は出ません。「マーケが送ったリードを営業が放置する」「質が悪いとクレームになる」といった問題は、両者の間に明確な「共通言語」と「行動ルール」がないことが原因です。
ここでは、組織として成果を出し続けるための、具体的な仕組み作りを解説します。
マーケと営業の「共通言語」:MQL・SQLの定義とSLA
STEP4で定めた「SLA(連携ルール)」を実際に運用しようとすると、現場では「このリードは質が良い・悪い」という認識のズレが必ず発生します。これを防ぐために、曖昧な「良質なリード」という言葉を廃止し、明確な定義(共通言語)を導入します。
- MQL (Marketing Qualified Lead) マーケティング部門が育成し、SLAの基準を満たした(営業に渡す価値がある)と判断した見込み顧客。
- SQL (Sales Qualified Lead) 営業部門が受け取り、「商談化して追う価値がある」と認めた引き合い。
最低限、この2つを定義することで、SLAの運用が具体的になります。
- 運用イメージ 「マーケティングはMQL(予算・時期特定済みリード)を月30件創出する」 「営業は渡されたMQLを、24時間以内にSQL(案件)化するか判断し、SFAに入力する」
このように共通言語を使ってSLAを回すことで、互いに責任を持って数字を追えるようになります。
連携を円滑にするインサイドセールスの重要性
マーケティングと営業の間に、「インサイドセールス(内勤営業)」という専門機能を設けることを推奨します。 マーケティング部門が集めたリードをそのまま渡すと、確度の低いものが混ざり、営業の負担になるからです。
インサイドセールスがまず電話やメールでコンタクトを取り、課題感や緊急度をヒアリングします。そこで「商談化しそうだ」と判断したものだけを外勤営業にトスアップ(引き継ぎ)します。
インサイドセールスは、前述のリードナーチャリングとリードクオリフィケーションを効果的に進めるための重要な役割です。 この機能を整備することで、外勤営業は確度の高い商談だけに集中でき、組織全体の受注率が向上します。
ルールを機能させる土台:MA・SFA・CRMの役割
定義したルールを運用するには、ツールによるデータの一元管理が必要です。記憶やExcel管理では、共有漏れやアプローチ忘れによる機会損失を防げないからです。
- MA (Marketing Automation):見込み顧客の行動・検討状態を可視化する。
- SFA (Sales Force Automation):商談の進捗を共有する。
- CRM (Customer Relationship Management):顧客情報を蓄積する。
データを個人の持ち物ではなく「会社の資産」として管理・活用するための基盤作りが重要です。
ツールを導入・定着させるための運用フロー構築
ツール導入で失敗しないコツは、導入前に「運用ルール」を確定させることです。高機能なツールを用意しても、現場が入力しなければデータは蓄積されません。最低限、以下の3つを定義します。
- 入力担当者: インサイドセールスが入力するのか、営業が入力するのか
- 必須項目: フェーズごとに「何が埋まっていればOK」とするか
- タイミング: 架電後すぐに入力するのか、夕方にまとめて行うのか
まずはスプレッドシート等でこのフローを運用し、定着してからMAなどの専用ツールへ移行するのが最も確実な方法です。
☝️宗像淳から一言アドバイス!
仕組み化で最も重要なのは、ツールや定義書そのものではなく、定期的な「フィードバックの場」です。 SLAを決めても、現場では必ず認識のズレが起きます。「このリードはなぜダメだったのか」「次はどういう情報があれば動けるか」。マーケと営業が膝を突き合わせ、互いの定義をチューニングし続ける会議体。これがあって初めて、箱であるツールが生きた資産に変わるのです。
業界別・商材別にみるBtoBマーケティングの攻略ポイント
BtoBマーケティングに「万能の正解」はありません。業種や商材の特性、ターゲット企業の規模によって、有効な施策は大きく異なります。
以下の表に、代表的な業種・ターゲット別の攻略ポイントと推奨施策をまとめました。自社の状況に近いものを参考に、戦略を組み立ててください。
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業種・ターゲット |
攻略のポイント |
注力すべき施策例 |
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SaaS・サブスク型 |
「トライアル」と「LTV最大化」 |
・無料トライアル |
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製造業・メーカー |
「技術力の翻訳」 |
・展示会×メール追客 |
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コンサル・無形商材 |
「信頼の可視化」 |
・詳細な事例記事 |
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SMB(中小企業) |
「わかりやすさと即決性」 |
・Web広告 |
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エンタープライズ(大企業) |
「安心材料と個別アプローチ」 |
・セキュリティシート |
BtoBマーケティングのよくある失敗パターンと回避策
| 💡この章のポイント! BtoBマーケティングでの失敗は、運用ルールがないままツールを導入したり、ターゲット設定が曖昧なまま短期的な成果を求めたりすることに起因します。 これを防ぐには、ツールよりも先に運用フローを固め、たった一人の心に響くほどペルソナを絞り込み、中長期的な視点でじっくりと成果を追う姿勢が不可欠です。 |
多くの企業が陥る失敗には、共通のパターンがあります。主に「準備不足」や「ターゲット設定の甘さ」が原因です。ここでは、代表的な失敗事例と、その回避策を解説します。
ツール導入が目的化し、誰も使わなくなる
ツール導入自体を目的にしてはいけません。ツールはあくまで道具であり、「運用ルール」がなければ誰も使いこなせないからです。
専任担当や入力ルールがないままMAツールを導入し、半年後に解約するケースは後を絶ちません。まずはスプレッドシート等で手動運用し、フローが固まってからツール導入を検討するのが鉄則です。
ペルソナ不在のまま広告やコンテンツを乱発する
「誰に」伝えるかを極限まで絞り込んでください。BtoBマーケティングではターゲットが具体的でないメッセージは、誰の課題意識にも刺さらないからです。
「業務効率化ツールです」ではなく、「従業員50名以下の製造業の社長様、手書きの日報管理をゼロにしませんか?」と伝えるべきです。「20代〜50代の会社員」といった広い設定は捨て、「たった一人の担当者」に響く言葉を選びましょう。
短期成果に振り回され、仕組みづくりが中途半端になる
BtoBマーケティングは中長期的な投資です。検討期間が長いため、種をまいてから実る(顧客が成果を実感する)までに時間がかかります。
開始3ヶ月で「売上が上がらない」と判断して施策を止めるのは早計です。まずは「リード獲得数」などの中間指標(KPI)を評価軸に置き、成果が出るまでのタイムラグについて事前に経営陣と合意しておくことが重要です。
BtoBマーケティングでよくある質問集
| 💡この章のポイント! 現場で飛び交う専門用語の基礎知識から、「兼務で忙しい」「予算がない」といった切実な悩みまで、よくある質問にQ&A形式でお答えします。教科書的な正解だけでなく、限られたリソースの中で着実に成果を出すための「現場の知恵」を持ち帰ってください。 |
ここでは、BtoBマーケティングについて多くの担当者が抱く疑問にお答えします。日々の業務の参考として、ぜひお役立てください。
Q. 覚えておくべき専門用語はありますか?
BtoBマーケティング界隈は略語が多いですが、まずは以下の5つを押さえておけば現場での会話に困りません。
- CV(Conversion / コンバージョン)
最終的な成果のこと。「資料請求」や「問い合わせ」など、設定したゴールにユーザーが到達することを指します。 - CTA(Call To Action / 行動喚起)
Webサイト上で、ユーザーに次の行動を促すボタンやリンクのこと。「資料ダウンロードはこちら」といったボタンなどがこれにあたります。 - CPA(Cost Per Acquisition / 顧客獲得単価)
1件のコンバージョン(成果)を獲得するためにかかった費用のこと。広告の費用対効果を見る際によく使います。 - LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)
1社の顧客が、取引開始から終了までの期間にもたらす利益の総額。SaaSなどのサブスクリプション型ビジネスで特に重要視されます。 - ROI(Return On Investment / 投資対効果)
かけた費用(投資)に対して、どれだけの利益が出たかを表す指標です。
これ以外は、実務の中で出てきたタイミングで都度調べれば十分です。無理に最初から全て暗記する必要はありません。
Q. 専任のマーケティング担当者がいません。兼務でもできますか?
可能です。ただし、あれもこれもやろうとせず、施策を絞ってください。まずは「既存リストへのメルマガ配信」や「外部パートナーを使った広告運用」など、工数をかけずにできることから始め、成果が出てから増員を打診するのが現実的です。
Q. 予算がほとんどありません。どうすればいいですか?
お金をかけられないなら、時間と知恵を使います。社内にあるノウハウを記事化する(SEO)、過去の名刺すべてに丁寧なメールを送る、無料のウェビナーを開催するなど、コストゼロでできることは沢山あります。コンテンツの種(情報)は社内に必ず眠っています。
Q. 外部の支援会社やコンサルタントを入れるべきですか?
社内に知見が全くない場合は、立ち上げ期のみ外部のプロを入れるとスピードが上がります。ただし「丸投げ」は厳禁です。将来的に自走できるよう、ノウハウを社内に蓄積する契約にすることをお勧めします。
自社の現在地を確認し、次の一歩を決めよう
本記事の要点を以下にまとめました。
- 本質的な違い: BtoBマーケティングは組織の課題解決を支援するサービスを提示することであり、論理的な判断と稟議プロセスへの支援が成功の鍵。
- 基本プロセス: 「知ってもらう」「集める(ジェネレーション)」「育てる(ナーチャリング)」「絞り込む(クオリフィケーション)」の3段階で案件を創出する。
- 戦略の定石: ブログやSNSに飛びつく前に、まずは休眠顧客への連絡など「受注に近い施策」から着手し、早期に実績を作る。
- 組織連携: ツール導入よりも先に、営業とマーケティングで「有望なリードの定義(SLA)」を握ることが最重要。
BtoBマーケティングに「唯一の正解」はありませんが、「失敗しないためのセオリー」は存在します。まずは、自社が今どのフェーズにいるのかを確認してください。
リード(名刺)が足りないのか、リードはあるが商談化しないのか、商談後の受注率が低いのか。ボトルネックによって打つべき施策は変わります。
社内だけで戦略を立てるのが難しかったり、実務を回すリソースが不足していたりする場合は、外部の専門家を頼るのも賢い選択です。
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【戦略から実行まで、BtoBマーケティングの「伴走」が必要な方へ】 「Webマーケティングを強化したいが、社内に知見がない」 「ツール導入やコンテンツ制作など、やるべきことが多すぎて手が回らない」 そんな悩みをお持ちのマーケティング担当者様へ。 イノーバでは、単なるコンサルティングや代行ではなく、お客様のチームの一員として「売れる仕組み」を一緒に構築する伴走型支援を行っています。 戦略設計から、Webサイト改善、コンテンツ制作、MAツールの運用定着まで。 御社のフェーズと課題に合わせ、最適なロードマップを提案・実行します。
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