客先へ訪問する外勤型のフィールドセールスに対し、内勤で電話やメールでのコミュニケーションを通して営業をするインサイドセールス。
今、企業の営業活動はフィールドセールスからインサイドセールス重視型へとシフトしてます。特に昨今は新型コロナウイルスの拡大により訪問営業や展示会など対面でのアプローチが制限され、非対面での営業活動を行うインサイドセールスを導入しようと考えている企業はますます増加傾向にあります。
しかしながら、インサイドセールスに求められる要素は多岐にわたりますので、どのように取り組めばよいかわからない、取り組んでみたが思い通りの成果があがらないというケースも多く見られます。
弊社イノーバは、セールスフォースの資本が会社設立初期に入ったこともあり、7,8年以上インサイドセールスに取り組んできました。また、インサイドセールスが流行り始めた2016年には、インサイドセールス取り組みのパイオニアとしてインタビューを受けたこともございます。
本記事では、イノーバの実体験をふまえて、インサイドセールスの基本から、導入に向けての課題や更なる活用ポイントまでについて紹介します。
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インサイドセールスとは何か?
「インサイドセールス」とは、電話やメールなどの非対面チャンネルを活用して顧客とコミュニケーションを重ね、関係構築を図る営業手法のことです。
これに対して、顧客のオフィスを訪問し、面談のうえで行う営業活動を「フィールドセールス」と呼びます。
はじめに、従来の営業活動に多いフィールドセールスとの対比で考えてみましょう。
フィールドセールス
フィールドセールスとは、取引先をいくつもまわって商談を掘り起こす、という従来の外勤型営業のこと。しかし、この営業活動は多くの人材を必要とするうえ、1日にまわれる顧客数も限られているため、非常に効率が悪いです。
インサイドセールス
インサイドセールスとは、客先を訪問せず電話・メールで営業活動をおこなう内勤型営業をさします。
インサイドセールスの発祥はアメリカです。国土の広いアメリカでは、取引先をまわることが難しいため、電話での営業活動が活発でした。そしてその部門のことを内勤型営業、つまりインサイドセールスと呼んでいました。
これだけ書くと「インサイドセールスって、要するにテレアポ(電話勧誘販売)のこと?」と思う方もいるかもしれません。しかし、インサイドセールスはテレアポとは根本的に異なるものです。
インサイドセールスでは商品を積極的には売り込まず、顧客の温度感に合わせた臨機応変なコミュニケーションをとることで、中長期的な信頼関係の醸成から受注確度の高い商談の創出を目指します。
現代の主流は、インサイドセールスとフィールドセールスの組み合わせ
今、主流になってきているのはインサイドセールスとフィールドセールスの組み合わせです。両社はハンター型とファーマー型と言われるように、もともと得意分野が違います。ハンター型は短期間で売上を上げる活動、ファーマー型は顧客との長期的な関係構築が得意。両者を組み合わせることで、効率も良く、成果も出せる最強の営業組織を作り上げることができるのです。
従来の営業スタイルにおいては、顧客リストの整備からアポ獲得、商談のクロージング、さらには購入後の顧客フォローにいたるまで、営業担当者ひとりで担当することが一般的でした。これでは業務量が膨大になりますし、営業効率を高めることは難しいのは言うまでもありません。
そこで長期的な関係構築を得意とするインサイドセールスと、短期的な売り上げを上げる活動が得意なフィールドセールス、両者の役割を明確にしたうえで作業を分担し営業活動の効率化を図る動きが活発化したわけです。
インサイドセールス重視型へのシフトはデータでも証明されています。
米国におけるインサイドセールスの合計成長率は成長傾向にある。
縦軸は非小売業のインサイドセールス担当者の増加数を表している。
営業部門の人員増減を比較したグラフによると、
フィールドセールスは減少傾向にあるがインサイドセールスは増加傾向にある。
参照元:Inside Sales Growing 300% Faster Than Traditional Field Sales
インサイドセールスの役割と流れ
では具体的に、どのような流れでインサイドセールスが加わった営業活動が行われるのでしょうか。
下記【図1】をご覧ください。
顧客はまず、商品やサービスの存在を「認知」し、次第にそれに「興味・関心」を持ちはじめます。
そして、「興味・関心」がある程度高まると、商品やサービスの「検討・評価」を行ったうえで、購入するか否かを決定します。
初期段階の「認知」「興味・関心」を担当するのがマーケティングで、最終段階で実際の商談を担当するのがフィールドセールスになりますが、インサイドセールスはこの二者の橋渡し役を担います。
つまり、潜在的な顧客のなかから商談が成立する可能性の高い顧客をピックアップし、その情報をフィールドセールスにつなげて、効率的な営業活動を実現するのがインサイドセールスです。
まず、インサイドセールスが見込み顧客のデータベースに電話をし、興味をもって情報収集をはじめた見込み客に対し、ヒアリングを行います。
その時はまだ、商品の購入に至らなくても、情報提供などで連絡を絶やすことなく関係を維持し、「そろそろ提案したら受注できるのでは」、という顧客の関心が高まった段階まで育成することが重要です。
その後、選定されたリード顧客を営業側に引き渡します。その際も、顧客のニーズがどのように顕在化したか、その経緯を情報として伝えることで、営業部門はスムーズに営業活動や商談を行えるのです。
インサイドセールスの最も重要なミッションは、「BANT情報収集」です。
BANTとは、B=Budget(予算)、A=Authority(権限)、N=Needs(ニーズ)、T=Timing(タイミング)をいいます。
どれだけ商品やサービスへの関心が高くとも、BANTがない相手(=商談成立の可能性が低い相手)に時間を割くのは効率が悪いでしょう。そのため、BANTがある顧客を中心に営業をかけることが肝要となりますが、このために情報を収集してターゲットの絞り込みをするのが、インサイドセールスというわけです。
以上に述べたのが従来のインサイドセールスの考え方ですが、イノーバではより広くその役割を位置づけています。
イノーバが考えるインサイドセールスの役割を図に表したものが下記【図2】です。
イノーバにおけるインサイドセールスは、顧客にコンタクトを取って情報を収集するだけでなく、ニーズ(課題)を聴取しながら有益な情報をタイミングよく提供することで、顧客の「興味・関心」を徐々に高める役割を担っています。
加えて、顧客とつかず離れずの適度な距離感を保ちながらサポートすることにより、顧客のイノーバに対する好感度・ロイヤリティを自然にあげていくことも企図しています。
なぜ今インサイドセールスが注目を集めているのか?その背景にある市場の変化
インサイドセールスは、リーマンショック後の米国で急速に取り入れられるようになりました。当社を含め、既にインサイドセールスを導入している企業は日本にもあり、日本国内においてもそのニーズは確実に高まっていますが、あらためてその背景を考えてみます。
1,企業の売上アップの打ち手が限られてきている
今の時代に、革新的に新しいモノを作って売る、ということは難しくなってきています。
また、売上アップのために単純に営業担当の人数を増やしたくても、ネット上には営業に対するネガティブな情報が溢れているので、人材を採用することは非常に難しい状況です。顧客のもとに足しげく通って信頼関係を築き、商談をまとめる。このような旧来の営業手法は、最近は通用しなくなっています。
このような状況にある企業が、インサイドセールスやコンテンツマーケティングなど新しい形の営業方法をの導入を検討しています。企業の売上アップの施策が頭打ち状態の今、これらの方法は大きな解決策の1つになるはずです。
2,インターネットの発達と顧客の知識増大
インターネットの発達に伴い、顧客は営業担当者と面談しなくとも、商品やサービスについて多角的に情報を収集できるようになりました。
そのため、「興味・関心」の高い顧客ほど面談前に商品やサービスについて相当の知識を得ており、面談時には高度な(ときにはニッチな)質問を投げかけてくるという事態が生じています。
顧客のニーズについてあらかじめ情報を収集して、こちらもある程度の準備をしてから面談しないと「なんだ、こんなこともわからないのか……」という事態になるおそれがあるのです。
3,ITの世界で見られる安価なクラウドサービスの台頭
たとえば、ヨーロッパ最大のソフトウェア企業であるSAPという会社も、かつては大企業と数億円規模でのビジネスをしていましたが、今では中小企業をターゲットにした小規模のビジネスにシフトしています。すると、必然的に顧客数も増やしていかなくてはいけない。そのような場合に、営業活動の効率を上げるインサイドセールスは非常に有効な手段になります。
4,商品数の急増
顧客の多種多様なニーズに対応すべく、企業側も商品やサービスを多様化させています。特に歴史の長い企業ほどこの傾向が顕著です。
そうなると、営業担当者が自社の商品やサービスの全容を把握しきれていないことも。この場合、結局自分がよく知っている商品(自分が説明しやすい商品)を顧客に推奨するという流れになりがちで、顧客のニーズにピッタリと合致した商品提供が困難になります。その結果として受注率が下がり、顧客の満足度も低くなってしまうのです。
結果としてフィールドセールスの前段階であるインサイドセールスのその役割に注目が集まるようになりました。
5,ベンチャー企業における人手不足の問題
ベンチャーではなかなか採用の人数も増やせないため、少人数で多くの顧客をカバーする必要があります。効率よく営業活動を行うにはどうすればいいか。
その答えがインサイドセールスなのです。?
6,コロナ禍における、オンラインマーケティングの取り組み加速
特に2020年以降は、コロナ禍におけるオンラインマーケティングの取り組み加速により、インサイドセールスにもより注目が集まるようになりました。
従来のような訪問営業がより難しくなったからです。一方で、在宅勤務が増加したことで、電話がつながりにくいというインサイドセールス視点の新たな課題も出てきています。
7,インサイドセールスの活動を促進するツールの進化・多様化
インサイドセールスに使えるツールについては後ほど詳しく解説しますが、従来のマーケティング活動に活用されてきたCRM、SFA、MAといったツールに加え、フォーム入力支援の専門ツール、電話の録音・文字起こし・音声解析のツールなど、インサイドセールスの活動を促進するようなツールが次々に増えてきています。
弊社イノーバも2022年1月からレブコム社のミーテルを導入しました。導入して間もないですが、ブラックボックスになりがちなコールの内容を可視化できることは意義が大きいと感じています。
ツールの進化・多様化が取り組みのハードルを下げており、ツールの活用によってインサイドセールスの重要性を再確認することにも繋がるということも言えると思います。
インサイドセールスがもたらす4つのメリット
インサイドセールスには大きく分けて4つのメリットがあります。
少人数で成果が挙げられることによる、営業活動の効率化、受注率の向上
従来のフィールドセールスでは、商談の時間や移動時間を含めて考えると、アプローチできる顧客数は、1日あたり多くて4件ほどでしょう。しかし、インサイドセールスでは、1日に40件以上、月に600件程度電話をかけることも可能なので、同じ時間のなかで10倍の顧客にコンタクトすることが可能になり、営業業務の効率を格段に上げることができます。
1日4件 VS 1日40件。
どちらの効率が良いかは明白です。単純に顧客先のカバー率が上がるので、成果も表れやすいです。
そしてインサイドセールスの導入により、フィールドセールスは成約可能性の高い顧客をターゲットに、顧客のニーズに応える営業が可能になります。
これにより、フィールドセールス段階での受注率は大きく上昇するのです。
イノーバではインサイドセールス導入から約半年で受注率が2倍に跳ね上がりました。
見込み顧客に対するナーチャリング(顧客育成)の効率化
フィールドセールスの場合、「売上」という数字を取りにいく必要があるので、商談成立までに時間がかかりそうな顧客への対応はおざなりになりやすいです。
結果として、潜在的な顧客とのコンタクトが不十分になり、受注機会を喪失してしまうことも。
しかしながら、フィールドセールスとインサイドセールスを分ければ、商談成立間際の顧客にフィールドセールス部門が集中している間に、インサイドセールス部門が次の商談相手となるべき相手にコンタクトをとり、準備をすることができます。
中長期的な視点に立てば、2部門に分けて対応したほうが、受注機会の喪失を防ぐことにより、よりよい成果をあげることができるのです。
顧客のロイヤリティ向上
インサイドセールスをうまく実施すれば、顧客のロイヤリティを向上させ、気持ちよく商品やサービスを購入してもらうことが可能となります。
実は、僕がインサイドセールスを知ったのは、自分の体験がきっかけです。
2009年のことになりますが、前職の会社で営業組織構築にあたり、米国セールスフォース社のソフトウェアに興味を持ちました。
そこで株式会社セールスフォース・ドットコムのホームページから資料請求の申し込みをしてみたのですが、申し込み後すぐに同社の担当者からの着信が。
当初は商品の売り込みかと思ったのですが、そうではなく、資料請求をしたいきさつなどについて担当者から質問をされました。
話をするなかで、イノーバにどのような課題があるのか、その担当者に聞いてもらったことを覚えています。
その後も2か月に一度くらいの割合でメールや電話で連絡があり、課題について現況を話したり、セミナーの案内をいただいたりしていました。
結局、僕は、資料請求から約半年後にセールスフォース社のソフトウェア導入を決めます。
同種のソフトウェアはほかにもいろいろとありましたが、同社が半年にわたってフォローアップをしてくれたことから「どうせならセールスフォースのにしよう」という気持ちに自然となっていきました。
“つかず離れずの距離感で、必要な情報を適宜提供し、ていねいに顧客に寄り添う”。
セールスフォースのこのやり方が「インサイドセールス」というものだと知ってからは、イノーバでもその手法を積極的に取り入れるようになり、今日に至っています。
人材の有効活用
特に女性の人材活用という点において、非常に有効な手段であると考えられます。長年インサイドセールスをやっている会社では、営業経験がない女性でも、最初に少し企業側でフォローをすれば、徐々にインサイドセールスのスキルを身につけ、キャリアアップできたという実例もあります。
さらに、電話を使うという業務の特性から働き方の多様性も実現できます。遅い時間まで働くことが難しい女性は、会社次第では在宅勤務で業務を行うことも可能です。
また女性だけでなく、シニア人材の活用にも役立ちます。
特に大企業では豊富な経験を持つシニア人材の活用が、うまくできていないケースがあるようです。こういった場合に、もともと営業で活躍していた人などをインサイドセールスのチームのマネージャーに任命し、全体を統括してもらうこともできます。
中小企業やベンチャー企業では、少人数での営業組織づくりに。
大企業では、人材の最適配置に。
インサイドセールスは、それぞれの企業や組織の規模によって違ったメリットをもたらしてくれるのです。?
インサイドセールスの導入手順
ここまでで、インサイドセールスでどのようなことが実現可能か、おおよそ理解いただけたのではないでしょうか。次に、実際にインサイドセールスを導入する際の手順を説明しましょう。
1.インサイドセールスがアプローチできるリード数の確保
もそもインサイドセールスがアプローチ可能なリード数が十分でなければ活動のしようもありません。
インサイドセールスの活動は基本的にインバウンドで獲得したリードへのアプローチになります。自社内にインバウンドリードが十分にストックされていないという場合は、インサイドセールスの立ち上げ以前に、まずはその前のマーケティング段階でリード獲得施策の見直しを優先して行いましょう。
2.インサイドセールスと他部門との役割分担、部門間を横断する定量的なKPIの設定
スタート時点でまず大切なのは、マーケティング部門およびフィールドセールス部門との間で、どこからどこまでがインサイドセールスの守備範囲なのかをしっかりと決めておくことです。この取り決めがないと、業務の混乱や、場合によっては部門間での軋轢(あつれき)が生じてしまいます。
客観的な基準に基づき、各部門の担当範囲が明確に把握できるよう、あらかじめ制度設計をしておくことが肝要です。
ここでいう基準とは、定性的なものではなく定量的なKPIを定める必要があります。
具体的には以下のような観点からKPIを設定していきます。
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マーケティング部署は営業予算を達成するために十分なリード数を獲得できているか⇒リード獲得数
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マーケティング部署が送り出したリードにたいしてインサイドセールスの活動量は十分か⇒コール数
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インサイドセールスは、営業予算達成に十分な有効商談数を引き渡せているか⇒有効商談化件数
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営業はインサイドセールスから受け取った商談を適切にさばき切れているか⇒受注件数・金額
部門間のKPIを共通認識としてもって、各部署の目標に対する活動の質・数が保たれているかチェックする体制を整えていく必要があるのです。
上記を整理し、インサイドセールス部署としてどのように数字を追っていくべきか制度設計をしていきましょう。
3.インサイドセールスのシナリオ作成
インサイドセールスの業務は、顧客との電話やメールでのコミュニケーションが主軸となります。顧客とのコミュニケーションは、個々の担当者の能力に依拠するのではなく、統一した対応ができるようあらかじめ周到に準備した「シナリオ」に沿って行うようにしましょう。
たとえば、顧客からAという反応があったらこのように対応する、Bという反応ならこうする、というふうに、シナリオごとに対応をマニュアル化する必要があります。
ただし、シナリオにとらわれてトークを展開し、結果テレアポ的になってしまう、といった失敗もよくみられるため注意が必要です。ひとつのシナリオ通りにトークすることを目的とするのではなく、シナリオはインサイドセールスの活動実態にあわせて追加・改善を重ねていくことを前提に作成していきましょう。
4.顧客データベースのシステム化、ツールの導入
役割分担やシナリオ作成がすんだら、次は顧客データベースのシステム化です。
インサイドセールスにおいては、顧客との電話でのやりとりのなかから得た情報を記録し、フィールドセールスの活動に繋げるというプロセスが非常に重要になります。これを正確に行うためには、セールスフォースオートメーション(SFA:営業支援ツール)のような顧客のデータベースは最低限必要でしょう。フィールドセールスが適切な提案を実施するためにも、インサイドセールス段階でどこまでどのようなやり取りがあったのかを明確なデータとして残しておく必要があります。
ただし、ツールありきでインサイドセールス導入を進めてしまうと失敗しやすいのも事実です。ツールはあくまで「手段」ですから、目的が明確でないままトップダウンでツール導入を進めたが使いこなせなかったといった状況は絶対に避けましょう。
5.インサイドセールスのアプローチに必要な情報の整備とリストの作成
BANT情報収集がインサイドセールスの最重要ミッションであると先に説明しましたが、これをすべてインサイドセールスのトークスキルに任せきりにするのではなく、その前のマーケティング段階で工夫することが可能です。顧客データベースのシステム化と合わせて、整備していくことをおすすめします。
下記にイノーバの実例を示します。
上図はイノーバのセミナー申込みフォームですが、会社名に加えて部署や役職、目的の項目を加えることで、初回コール時でもある程度BANTの中身にあたりをつけてインサイドセールスがアプローチすることが可能になります。
また昨今はコロナ禍における在宅勤務の増加により、会社番号では連絡がつきづらくなっています。そこで単純に「電話番号」と表示するのではなく、「連絡のつきやすい電話番号」と表示してあげることで、インサイドセールスが連絡可能な番号の入力を促すことも可能です。
ただ入力フォームはいたずらに自社の都合だけで項目を増やしてしまうと顧客の入力ハードルがあがってしまい、途中離脱の要因となってしまいますので、目的の応じて、項目数や内容を検討する必要があります。本例の場合、セミナーに参加したい人であれば相応に温度感も高いため、多少項目が多くても入力してくれるという判断のもと、他のフォームよりも項目を多めに設定しています。
取得した情報はそのまま渡すのではなく、インサイドセールスの活動の優先順位をつけるべく、リスト作成を実施してあげましょう。
6.適切な人材の確保、トレーニング
最後に人材面ですが、インサイドセールスは顧客とのコミュニケーションから潜在的なニーズなどの情報を引き出す必要があるので、やはり営業力は欠かせません。営業力があり、かつロジカルな思考で仕組み化ができるような人材に、最初はインサイドセールスを任せた方がいいでしょう。
電話担当のオペレーターを取りまとめるスーパーバイザーやマネージャーも、一度はオペレーターとして電話業務を経験することをおすすめします。トークの企画を立てたり、オペレーターを教育したりする際に役立つためです。
また、電話を担当するオペレーターはアルバイトや派遣社員、正社員など、さまざまなパターンが考えられますが、取りまとめ役のスーパーバイザーは正社員の起用が適切でしょう。
当社では、営業部長をしていた社員が実際にインサイドセールスの業務を行っています。それでも改善を重ねて、ようやく現在の形になり、成果を上げることができました。営業経験のある者でも2,3カ月、一般的には半年もしくは1年ぐらいを目安にし、しっかりと腰を据えて取り組むべき施策です。
また、インサイドセールスを含む、部門間を横断してマネジメントする立場の人材を配置することも重要です。先述のとおり、部門間で役割や数値目標を分担していくので、部署を横断して中立的なマネージメントができる人間がいないと、責任の押し付け合いとなって導入失敗に終わってしまうことも容易に想定されます。
7.活動の効果測定、改善
インサイドセールスに限ったことではありませんが、成果を上げていくためにも日々の活動の振り返りを行うことは必須です。
一月ごと、半期ごとなど定期的に効果測定を実施し、改善をはかりましょう。
ここでポイントとなるのは、先にKPIの項目でもお話ししましたが、部門間を横断した振り返りを実施することです。なぜKPIを達成できたのか、できなかったのか、関連部署であるマーケティング、フィールドセールスと会話を重ねながら、次回策を検討していきましょう。
インサイドセールスの効果を上げるためのポイント
インサイドセールスの業務プロセスについてポイントとなる点を紹介します。
下記【図5】は、イノーバにおける顧客情報の流れをフローで示したものです。
マーケティング部門は、ホームページからのお問い合わせや展示会・セミナーなどで、見込み顧客に関する情報(MQL=Marketing Qualified Lead)を獲得すると、このうちインサイドセールス対象となるべき顧客情報(ISQL:Inside Sales Qualified Lead)をインサイドセールス部門に渡します。
インサイドセールス部門はさらにこのなかからフィールドセールス対象となるべき顧客情報(SQL:Sales Qualified Lead)をフィールドセールス部門に渡します。そして、フィールドセールス部門が顧客と商談を実施する流れです。
商談が成功すればそれでよし、商談がうまくいかなくとも、その顧客に対する情報はインサイドセールス部門の管理下に入ります(Recycled ISQL)。再度の商談のタイミングを測るためです。
このように、イノーバでは中長期的な視野に立って、顧客情報の管理・活用を実施しています。
その核を握っているのが、インサイドセールス部門なのです。
以下、運用のポイントとなる点を順に説明します。
1 ステージ分け
インサイドセールスが担当する顧客は、イノーバのサービスに「興味・関心」がある顧客になりますが、ひと口に「興味・関心」があるといっても相当の幅があるでしょう。そこでイノーバでは、顧客を4つのステージに分けて情報を管理しています。
ステージはさまざまな要素により決定しますが、たとえばWebサイトのログ(閲覧履歴)は考慮要素の1つです。
ホームページのどの部分をどのくらいの時間閲覧しているかを分析し、それにより顧客の「興味・関心」の度合いを測るようにしています。
2 企業規模別の対応方針
同じステージの顧客であっても、規模が大きい企業の場合には、商談の規模が大きくなる可能性が高まります。
そのため、企業規模別に対応方針を柔軟に定めることが大切です。
たとえば、大企業であれば、BANT条件の「N(ニーズ)」のみを満たした段階で、早めにフィールドセールスにリードを引き渡すよう設定しています(下記【図6】参照)。なぜなら、大企業の場合は予算拡張の可能性が高いため、はじめに営業が会うほうが受注金額を最大化できるからです。
【図6】
3 業種・商材別の対応方針
また、企業規模の切り分けでなく、複数の業界を相手にしたり、複数商材を扱う場合も、優先順位の検討が有効です。
インサイドセールスの立ち上げ期は、担当者が1人か2人と少人数でスタートするケースが多いです。
まずは優先ターゲットに寄せた対応方針を決めてスモールスタートで始め、仕組みが回り始め成功体験を積み上げたうえで、他の業種や商材へ取り組みの量、範囲を拡大していく、という進め方をおすすめします。
4 ナーチャリング(Nurturing:顧客育成)
顧客の「興味・関心」を高めて商談へとつなげるマーケティング手法を、ナーチャリング(Nurturing)といいます。
イノーバでは、下記【図7】のように、顧客の興味段階ごとにナーチャリング方針に違いを設けています。
たとえば、興味関心が低い段階の見込み顧客に対しては、相手にとって有用な情報の提供を軸にコミュニケーションをとります。
ニーズの高まりに応じて顧客一人ひとりの課題を聞き出し、個別の解決策の提案をして商談につなげるのです。
【図7】
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インサイドセールスに必要なシステム、ツールとは
インサイドセールスの業務には、顧客情報を見える化し、管理するためのシステムが必ず必要になります。
システムを選ぶうえでまず重要なのは、入力した顧客情報が検索しやすいこと。そして、過去のインサイドセールスやフィールドセールスによるメールや電話、訪問などのアクション時期とその内容、また、次のアクション日とその内容がわかりやすく時系列で表示されていることです。
各担当が電話などのアクションを行う際には、必ず過去の顧客とのやりとりを確認するでしょう。
それが見つけにくいところにあったり、見にくかったりすると、それだけで業務効率が悪くなります。
また、マネジメントの視点では、架電数や接続数、メール数などの指標を日々マーケティングやフィールドセールスと確認しながらチューニングを図る必要があります。そのため、KPIや予実を管理、共有するためのダッシュボード機能もあると、PDCAを回すうえで非常に便利でしょう。
イノーバでは現在、Salesforce社が提供するSalesCloudというSFAツールと、PardotというMAツールを使用しています。
SFAはフィールドセールス用に設計されているため、1対1の顧客対応には最適です。SFAだけだと、セグメントごとにリストを抽出して1対Nで顧客対応をするインサイドセールスには不向きな面がありますが、MAツールと連携させることでターゲットの絞り込み、リストの作成、スコアや属性情報の閲覧など、インサイドセールスも活動しやすい環境を整えています。
また、SFAやMAといった旧来からマーケティング活動に使われているツール以外にも、インサイドセールス専門、あるいはインサイドセールスに特化したツールも数多く登場しています。例えばイノーバではST&Eというフォーム入力支援ツールを利用してインサイドセールスの活動に必要な顧客情報の収集・クレンジングを行っています。またMiiTelに代表される電話の録音・文字起こし・音声解析ツールなども、インサイドセールスの活動効率を大幅にアップしてくれるでしょう。
◆インサイドセールスに役立つツールは以下の記事でも詳しく解説しています
インサイドセールスは外注すべきか、内製すべきか
米国はもちろんのこと、日本でもインサイドセールスを専門とする企業が存在します。
このような企業に外注するのがよいか、それとも自社内で内製するのがよいかという点も検討が必要でしょう。
内製の場合に問題となるのは、適切な人材の確保です。前述のような人材要件を満たす人を中途採用で確保することは容易ではありません。
仮に自社内に適任者がいたとしても、フィールドセールスの中核になっているような場合が多いです。
そのため、人材の層が薄い中小企業は、外注も1つの手段として検討することになるでしょう。
また、外注先の選定もなかなか難しい課題です。
ここでは、外注にあたって考慮いただきたいポイントをいくつか紹介しておきます。
まずは、外注先に依頼する内容を決めましょう。
商談育成のためのコール企画を含むのか、または自社で作成したトークスクリプトに基づく電話代行のみを依頼するのか、それによって外注先に求める要件が変わってきます。
外注先への依頼に商談育成のためのコール企画を含む場合、リードの属性や状態に応じた商談育成ができる企業はまだまだ少数のため、これまでの実績やどういうアプローチで行っているのか、具体的な方法を聞き出す必要があります。
一方、代行型の場合は自社でコール戦略を企画する必要があるため、負担が大きく、外注先のコール部隊を十分に使いこなせない可能性も。
アポ取りがメインのテレマーケティングなどの企業に依頼をするときは、自社でコール戦略が立てたられる自信があるときのみにしましょう。
最後に
インサイドセールスの取り組みは、日本でも年々伸びてきており、コロナ禍におけるオンラインマーケティングの取り組み強化でその動きはますます加速しています。
インサイドセールスは一度サービスを経験すると、非常にそのメリットや成果が分かりやすいです。そして、営業の効率アップや売上アップの見込みが高く、効率化と売上はどの企業も抱えている悩みなので、この点は非常にニーズが強いです。さらに、今いる人材を活かしつつ、少人数で効率よく営業活動をしていく新たな手法としての可能性の大きいです。
大企業にとっては、もう一度営業力の強化に。中小企業であれば、組織全体での営業力の向上に。ぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
インサイドセールスをより企業視点でご説明するダウンロード資料「インサイドセールスが解決 眠っている見込み顧客リストをいますぐ客へ」も、是非ご参考にしてください。