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宗像 淳 / イノーバCEO2024/12/26 17:24:531 min read

CEOブログ第3回【前編】|アメリカ企業はなぜ日本企業の50倍のマーケティング予算を使うのか?

はじめに

皆さんの会社では、マーケティング支出として、売上の何パーセントくらいを投下しているだろうか?即答できない会社も多いかもしれないが、一度、ぜひ、確認してほしい。

実は、アメリカのBtoB企業は、平均すると売上の9%程度をマーケティング予算として投下している。これに対して、日本のBtoB企業は、約1/50程度、売上比で0.2%程度の金額しか、マーケティングに投下していない。

今回は、この日米のマーケティング支出の差を紹介しつつ、なぜ、このようなマーケティング支出の差が生まれるのかを紐解きつつ、日本企業として、マーケティング力を上げるためのヒントを提示していきたいと思う。

 

第1章:売上比9%ものマーケティング支出を行う米国企業 

日本では、あまり紹介されていないが、重要なデータとして、BtoB企業におけるマーケティング支出の水準がある。業種別のマーケティング支出のデータがあるので、下記に提示したい。サービスコンサルティング領域が20%超と高く、製造業や輸送が5%未満とやや低めではあるが、平均すると、米国のBtoB企業は、平均して売上の9%をマーケティングに投資している。(図1)

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一方で、日本企業のマーケティング支出はどうかというと、実は、そもそも、調査データ自体が、ほぼ存在していない。しかし、手がかりとなるのが、株式会社メディックスが行っている、「BtoBマーケティングアンケート調査結果」である。

 

彼らの調査データは、必ずしも、売上に対するパーセント聞いているわけではないが、企業規模別に支出額の分布を調査しているため、この調査データを利用して、イノーバとして、売上対比のマーケティング支出を算出してみた。その結果が以下のグラフである。

 

2-3※MEDIX社2024年非SaaS BtoBマーケティング担当者アンケート調査結果のデータをもとに、イノーバにて推計。

 

この試算結果によれば、日本のBtoB企業のマーケティング支出は売上比0.19%である。これは、米国のマーケティング支出が売上比9%に対して、48倍、丸めると50倍の差があるという事になる。

 

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私は、長年、米国企業はマーケティング支出が多く、日本企業は少ないという印象を持っていたが、改めて、メディックス社のデータをもとに試算してみて、これほどの差があるのかと驚いたのが率直なところだ。

 

第2章:なぜ、米国企業はこのほどまでにマーケティングに投資するのか? 

では、米国のBtoB企業は、なぜこれほどまでにマーケティング支出が多いのであろうか?それは、日本とアメリカにおける「マーケティングのとらえ方の差」が大きく影響していると考えている。

 

具体的に言うと、米国企業にとっては、マーケティングは、受注・売上を伸ばすための活動であり、「顧客獲得コスト」と呼ばれている。

 

最近は、ITを活用してマーケティング支出が、受注・売上にどのように結びついているのかを追跡できるので、受注1件当たりの獲得コストを試算し、許容可能な獲得コストを設定しながら、マーケティング施策のチューニングを行う事で、成長スピードを最大化するのが、一般的になっているのである。

 

この結果、現代のBtoBマーケティングは、従来のBtoBマーケティングと異なる役割を担っている。従来は、展示会への出展による認知度アップや、カタログ作成のような営業補助業務であった。しかし、今日のBtoBマーケティングは、極めて広範な活動を担い、売上や商談を推進していく、重要な活動に生まれ変わっているのである。

イノーバ作成:B2Bマーケティング施策の全体像

 

この新しいBtoBマーケティング施策は、基本的に、獲得志向、受注思考であり、営業部隊にどれだけ大量の商談を供給するか、ということを焦点に展開されている。

 

第3章:デジタル化が米国のBtoBマーケティングの高度化をもたらした

私は、今回の記事を執筆するにあたり、改めて、米国と日本のマーケティング支出の差がどこから生まれたのかというのを考えてみた。それは、ずばり、ITを活用することにより費用対効果が見える化されたこと、要するに、マーケティングのデジタル化に起因するものだと気づくに至った。以下、簡単に説明しよう。

 

実は、私が富士通に入社した1998年頃、米国と日本のマーケティングの位置づけにはそれほど差は生じてなかった。当時、私は、米国にコンピュータを輸出する部門にいたが、話題の中心はあくまで「営業活動」であり、「マーケティング活動」ではなかった。しかし、その後、急速に、BtoBマーケティングのデジタル化が進展していったのだ。

 

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詳細の説明は割愛するが、上記の年表の第2世代の部分、ここで、マーケティングオートメーションと呼ばれる、ソフトウェアが開発され、従来だと不可能であった、顧客一人一人の動きの追跡、商談1件1件の追求が可能になったのである。ここで、マーケティングは、展示会やカタログ資料作りのような、「イメージ戦略・資料作成部隊」ではなく、営業に商談を供給するための、戦略的な役割へと発展したのである。

 

マーケティングオートメーション(MA)の導入前後のマーケティングの在り方の違いを下図にまとめておく。導入前は「手動での追跡や主観的な判断」(=要するに勘と経験)に依存していたのに対し、導入後は、データに基づく評価が可能になり、ROIの正確な測定や顧客行動の完全な把握が実現したということだ。

 

 

まとめ

以上、今回の記事では、米国のBtoB企業でのマーケティング支出が、日本に比べて50倍であるというデータを紹介し、米国のBtoB企業がマーケティング支出を行う理由が、マーケティングオートメーションというIT技術によって、顧客一人一人、一社一社を追跡し、ROIを最大化していった結果である事を指摘した。その結果、ROIが測定できることにより、マーケティングの役割が、「商談数を最大化し、受注金額を最大化させるための役割」として戦略的に変化した事を説明した。

 

次回の記事では、日本でも、このようなROI発想のマーケティング行っている企業の例を紹介しつつ、一般のBtoB企業がROI発想のマーケティングを取り入れるための方策を考察したいと思う。

 

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携をまとめた。 2011年6月にコンテンツマーケティング支援の株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。