企業ブランディングの基礎知識、事例、浸透させるまでのプロセスまとめ

コンテンツマーケティング

製品やサービスが溢れかえる現代の市場において、競合他社との差別化を図るブランディングはますます難しくなっています。

製品ブランディングと比べて、企業ブランディングは、価値観、従業員、文化、伝統、企業風土や強みなど、多くの要素から構成されるため、差別化が図りやすいブランディング手法です。ただし、企業ブランディングが世の中に浸透するにはある一定の時間を要すため、長期的なプランが必要です。ここでは、企業ブランディングの基礎知識、事例、企業ブランディングを浸透させるまでのプロセスについて解説します。

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企業ブランディングの目的と効果は?

企業ブランディング(コーポレート・ブランディング)とは、企業がステークホルダーに共有したい、企業の社会的イメージです。下図のように、企業ブランドは、多くの要素から構成されており、製品ブランドと比べ、ブランドの差別化がしやすいことが特徴です。

また、製品ブランディングは消費者へのブランディングを目的としていますが、企業ブランディングでは、ステークホルダーである、株主、従業員、行政、取引先、地域社会など全体への発信を目的としている点が、大きな違いです。 

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※コア・バリューとは、ブランディングになる核となる方針で、全てのブランディングに共有する傾向がある。

 

企業ブランディングに必要な4つの「価値」

上図の企業ブランディングを構成要素の一つ、「価値」に注目しましょう。というのも、この「価値」は、ブランディングを世の中に浸透させるためのエッセンスとなるので、理解を深めておく必要があります。

 

「実利価値」

「品質」「性能」「ユーザビリティ」「利用用途」などの実利から消費者が得れる喜びを指します。

 

「感性価値」

「デザイン」「イメージ」が自分の感性にフィットすることによって消費者が得れる喜びを指します。

 

「情緒価値」

「実感」「体験」から消費者がポジティブな気持ちが得られる喜びを指します。

 

「共鳴価値」

「自己実現」「社会実現」を通して消費者の自尊心が満たせる喜びを指します。

 

企業ブランディングとは、これらの4つの価値いずれか、もしくは組み合わさったものを企業がステークホルダーに発信、提供し、ステークホルダーがその価値に共感・共鳴した場合に「ブランド」となって世の中に認知されます。

それぞれの価値を発信してブランド力をつけた企業については、次の事例の章で具体的に解説します。

図2.png

 

企業ブランディングを実施するメリット

企業ブランディングによって、ステークホルダーからポジティブな企業イメージを持ってもらえるようになり、信頼を得るようになります。その結果、下記のようなさまざまなメリットが創出されるのが企業ブランディングの魅力です。 

1) 製品ブランドのブランド力を強化する

新しい製品やサービスを販売する際に、企業のブランド力によって得ている信頼感が顧客に安心感を与え、販売しやすい環境を作る効果があります。(エンドーサー効果)

 

2) 資金調達がしやすくなる

継続した品質維持や実績の積み重ねによって作られたブランド力に、投資家の、将来性への期待は高まります。ブランド力は資金調達に必要な信用力となります。

 

3) 人材採用がしやすくなる

就職活動や転職活動をするにあたって人が注目するポイントは、財務状況、理念やビジョン、事業や仕事内容、社員、風土、条件面などがあります。これらの多くが、企業ブランディングの構成要素に含まれています。つまり、ポジティブな企業ブランドが確率されていれば、必然的に人材が集まりやすい企業になります。

 

4) 組織文化が統一され外部への発信トーンが統一される

企業ブランディングが確立されるということは、企業理念やステートメントが、従業員を含むステークホルダーに浸透していることを意味します。経営層と従業員の組織文化が統一されることを意味し、顧客やその他のステークホルダーに向けた発信トーンが統一されます。

 

5) 従業員のモチベーションが維持される

ポジティブな企業ブランドが確立されると、そこで働く従業員は、自分が企業を通して社会へ働きかけている活動に喜びや、誇り、充実感を感じるようになります。幸福的価値を享受することで、従業員のモチベーションは高く維持され続けます。

 

6) マーケティング戦略の一貫となる

企業ブランディングは、マーケティング戦略にも大きく影響します。例えば、2つの製品が並んでいてどちらを購入するか悩んでいる時、一社は、貧困層の社会問題解決のための活動を行っている企業であることを思い出します。これが、購買を決定する動機となります。企業の社会的意義を明確にする企業ブランディングは、購入決定を後押しするし、マーケティングの効果を高めます。

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企業ブランディングの事例

それでは、企業ブランディングの重要な要素となる4つの「価値」が、実際にどのように企業ブランディングに関わっているのかを事例で解説します。 

事例1:トヨタ 「実利価値」

高品質・高性能という組織価値観を体現することで作りあげた企業ブランディング 

継続して高い製品やサービスを輩出し続けることを組織のステートメントとし、トヨタは企業ブランディングを築き上げました。数あるブランドからトヨタを選ぶのはこの実利価値に共感していることが理由です。トヨタは、一ステークホルダーとなる、サプライヤーへも目を向ける新しい取り組みをしたことでも有名です。品質維持にはサプライヤーからの安定供給が欠かせません。トヨタは、サプライアーの生産性を落とさず人員を減らす手法や、在庫リスクを下げる手法(ジャストインタイム方式)を広める活動を実施し、ステークホルダーからの多くの共感を得ました。

  

事例2:タニタ 「情緒価値」

実生活で実感、体感して得れる幸福に注目した企業ブランディング 

タニタは、体温計や体重計などを個人、法人ともに販売している企業です。企業ブランディングが成功する前はどちらかというと地味で突出したイメージのない企業でした。タニタが、企業ブランディングに成功したきっかけは、「人々の健康づくりに貢献する」という社会的意義を大きく掲げたことです。この活動に一貫として始まった「タニタ社員食堂」や「レシピ本」を通して、消費者は、健康を実感し、タニタの提供する社会的意義に共感しました。

ホームページは、タニタが発信したい企業ブランディングそのものです。まずは、タニタが製品を通して、人々の健康をどう作っていくことに注力したキャッチコピーやコンテンツが目に飛び込んできます。

消費者の幸福に注目した企業ブランディングは、競合ブランド間の蹴落としあいから、開放され独自の市場を築き上げることができます。

 

事例3:ユニリーバ 「共鳴価値」

自己実現、社会実現を連想する企業ブランド 

ユニリーバは「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」という環境保護活動を行っています。この活動では、貧困層の生活改善、再生可能エネルギーの利用割合の増加、自社で使う農産物の100%を持続可能な方法で調達することを目指し、ユニリーバの社会的意義、位置づけを発信しています。

環境保護活動を通したポジティブな企業ブランディングは、従業員に誇りを持つようになります。これは、従業員のモチベーションの維持、外部へのポジティブな情報発信や情報のトーンの統一といった効果が生まれます。もちろん、環境保全に興味関心のある顧客層やステークホルダーの取り込みも期待されます。また、社会実現価値を発信する企業へのマイナスイメージをもつステークホルダーは極めて少ない傾向にあり効果的です。

 

事例4:Apple 「感覚価値」「実利価値」

デザインやイメージと徹底したユーザービリティの提供が企業ブランディングに 

Apple社の企業ブランディングは、イメージやデザインから得る「感覚価値」とユーザービリティにこだわった「実利価値」を組み合わせた企業ブランディングの事例です。Appleというと、多くの人がスタイリッシュでクリエイティブなイメージを思い浮かべます。ユーザーはデザイン性に優れたAppleの製品を保有したり、Appleショップを訪問することで、自分がスタイリッシュな生活を手に入れていることに喜びを感じています。これは感覚価値から創出されているブランドです。

また、Appleは徹底した消費者目線で、ユーザビリティにこだわり、iPhoneやiPadといった製品を発信し、世界の人々の生活を豊かでクリエイティブなものにしてきました。次に、彼らが今新たなに取り組んでいることは、アクセシビリティです。高齢者や障害者を含むあらゆる人が、どんな場所からでもアクセスできる製品です。こういった、Apple製品への期待や信頼は、これまで発売してきた製品のユーザービリティの高さ「実利価値」によって作られたブランド力でしょう。

 

企業ブランディングの構築方法

では、企業ブランディングは実際にどのように構築されていくのでしょうか?構築手順を4つのステップに分けてご紹介します。

 

ステップ1 環境分析・現状把握

まずは、自社が社会的にどのポジションでいるのか?どう見えているのかを分析し、現状把握します。下記の図の手順で、フレームワークを使って分析すると、漏れなく、効率的に現状把握をすることができます。外部環境と内部環境を分析(PEST分析、3C分析、SWOT分析)し、次に、自社が市場のどのポジションに位置しているか、ターゲットとなる層の特定をしていきます(STP分析)。

 

ステップ2 ブランド定義

自社の市場におけるポジションが分析できたら、自社のブランド定義を決めましょう。このブランド定義を、ブランド・アイデンティティと呼んでいます。

企業がステークホルダーに約束できるメッセージを考えていきましょう。

 

ブランド・アイデンティティは6つのポイントから検討していきます。

  • ブランドの特徴
  • ブランドの社会的な役割
  • ブランドビジョン
  • ブランドパーソナリティ(差別化)
  • ブランド提供価値(4つの価値)
  • ブランドシンボル(ロゴやコピー、デザインなど)

 

ステップ3 伝達方法をプランニング、実施

どのように自社のブランディングを発信していくかを計画します。ステップ1で分析し、特定したターゲット層へ、もとも効果的に伝達することのできる手段を選定します。

手段には下記のような手法があります。 

・メディア(ウェブサイト、紙媒体など)

・商品やサービス

・コミュニケーション(SNS、イベント、店舗など)

・広告やPR活動、キャンペーン

 

ステップ4 認知度の検証

企業ブランディングの定義でも解説しましたが、ブランドはステークホルダーが共感し、認知されることで生まれるものです。企業ブランディングを開始し、ある一定の期間を追いてアンケート調査をすることで、プロジェクトの進捗確認をし、思うような効果が出ていない場合にはプランのPDCAが必要です。

企業によっては、ブランディングを発信する前の戦略段階で数年を要している場合もあります。そこから、ステークホルダーに認知されるのに数年かかり、大掛かりなプロジェクトとなるケースもあります。一方で、ザッポスのようなベンチャー企業では、これを数年で成し遂げる企業もあり、企業ブランディングの構築期間はさまざまです。

 

まとめ

近年では、コーポレートブランディングを専任とする部署も設置する企業も増えています。企業ブランディングは、その概念を浸透させるまでにある一定の時間が必要とされ、大掛かりなプロジェクトとなりますが、その分、企業が得るメリットは多岐に渡ります。 

商品やサービスだけでは、差別化に限界があります。競合がひしめく現代の市場で戦うには、企業ブランディング力は今後ますます必要となるでしょう。

しかし、このようなマーケティングの取り組みは、一朝一夕にはいきません。弊社では、経験と知見のすべてを注ぎ、クライアント様の「集客」から「リード創出」「リード育成」のプロセスをすべてイノーバでサポートする「伴走型マーケティング支援サービス」を提供しております。関心のある方はご覧ください。

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