企業ブランディングの基礎知識、事例、浸透させるまでのプロセスまとめ

コンテンツマーケティング
製品やサービスが溢れかえる現代の市場において、競合他社との差別化を図る ブランディングはますます難しくなっています。
製品ブランディングと比べて、企業ブランディングは、価値観、従業員、文化、伝統、企業風土や強みなど、多くの要素から構成されるため、差別化が図りやすいブランディング手法です。
しかし、企業ブランディングが世の中に浸透するにはある一定の時間を要すため、長期的なプランが必要です。
ここでは、企業ブランディングの基礎知識、事例、企業ブランディングを浸透させるまでのプロセスについて解説します。
ブランディングを含めた「戦略策定・計画立案」から、幅広くかつ中長期に渡ってお客様をご支援する、イノーバの伴走型マーケティング支援サービスも是非ご参照ください。
目次
ブランディングとは?
まず、ブランディングとは何かを考えてみましょう。
ブランディングとは、企業が自社の商品やサービス、企業のイメージを構築し、ターゲットとなる顧客に共通イメージを持ってもらうことです。
そして、ブランディングが目的とするのは、自社の価値向上や他社との差別化を図り、自社の商品やサービスを選んでもらうことです。
ブランディングとよく似た言葉に、マーケティングやプロモーションがあります。以下ではそれらの違いについて解説します。
マーケティング、プロモーションとの違いは?
ブランディング、マーケティング、プロモーションは、どれも商品やサービスの認知度向上を目指し、売上につなげることを最終的な目標とした戦略で、お互いに密接に関連しています。
ブランディングはマーケティング戦略の上流にあり、プロモーションはマーケティング戦略の一部にあたります。
これらの関係についての詳細は以下の記事をご覧ください。
企業ブランディングとは?
企業ブランディングは、コーポレート・ブランディングとも呼ばれ、企業を取り巻く個人や社会に対して自社の企業イメージを浸透させ、イメージを高めるための施策全般を意味します。
その対象は、顧客や取引先、一般消費者、株主、地域社会や、自社の社員なども含まれます。
企業の社会的イメージは、企業理念や企業風土、伝統、文化、強みなどさまざまな要素から構成され、営業・マーケティング活動だけでなく、採用活動や広報など様々なコミュニケーション活動を通じて形成されます。
これらを通じて、対象に自社が伝えたい価値観やイメージを共有して他社と差別化を図り、よりよい価値を持つ企業だと識別されるための一連の施策を企業ブランディングと呼びます。
企業のブランディングに関する用語
まずは、企業ブランディングに関連する用語を7つ紹介します。
インナーブランディング
インナーブランディングは、社内に対して企業ブランディングを行うことで、主に社員を対象とします。
インナーブランディングによって、企業理念や価値観を共有することで、社員が企業の一員として企業理念を体現しながら業務を行っていくことが期待できます。
リブランディング
リブランディングとは、時代や市場の変化に合わせて既存のブランド価値を見直し再構築することです。
すでに有名なブランドでも、時代や市場が変化するとブランドが持つ価値が変わり、顧客のニーズに合致しなくなる場合があります。また、新しい市場に参入し、これまでとは異なるターゲット層にアプローチする場合に、従来の企業ブランドが適していないケースがあります。そうした時に効果的なのがリブランディングです。
現代に合わせた価値を再構築するためには、ロゴマークなど表面的なイメージだけでなく、ブランドの価値自体を根底から見直すことが重要です。
デブランディング
デブランディングとは、ロゴマークや社名といった企業色をあえて排除したマーケティング戦略のことをいいます。ブランドイメージを強く押し出すのではなく、消費者に寄り添うことを目的とした戦略です。
特にBtoCの分野でデブランディング戦略を取り入れる企業が多く、ナイキやスターバックス、マスターカードなどがロゴから企業名を取り除いた施策がデブランディングの事例としてよく知られています。
周年事業ブランディング
周年事業ブランディングは、10周年など企業の創立の節目に行うブランディングです。
記念イベントを開催したり、特設ウェブサイトを開設したり、SNSを活用したキャンペーン企画を実施したりといった戦略があります。
採用ブランディング
採用ブランディングは、採用活動を通じて自社の魅力を発信し、「この企業で働きたい」と思ってもらうための取り組みです。対象は、求職者はもちろん、その周囲の人、つまり、家族や友人、教職員なども含まれます。
技術ブランディング
技術ブランディングは、企業が持つ技術をブランド化することです。
技術の価値を分かりやすく提示して、技術の名前を広く知ってもらうことで、その技術を使った製品を欲しいと思ってもらうための戦略です。
よく知られた事例としては、ユニクロの「ヒートテック」、シャープの「プラズマクラスター」などが挙げられます。
製品ブランディング
製品ブランディングは、プロダクト・ブランディングとも呼ばれ、言葉通り「製品」をブランディングする戦略を意味します。
商品名やパッケージ、広告やキャッチコピーなどで消費者に共有したいイメージを発信し、他社の類似製品との差別化を図り、製品のブランドを確立するための戦略です。
企業ブランディングの目的と効果とは?
企業ブランディングとは、企業がステークホルダーに共有したい、企業の社会的イメージです。下図のように、企業ブランドは多くの要素から構成されており、製品ブランドと比べ、ブランドの差別化がしやすいことが特徴です。
※コア・バリューとは、ブランディングになる核となる方針で、全てのブランディングに共通するものです。
企業ブランディングに必要な4つの「価値」
上図の企業ブランディングの構成要素の一つ、「価値」に注目しましょう。というのも、この「価値」は、ブランディングを世の中に浸透させるためのエッセンスとなるので、理解を深めておく必要があります。
「実利価値」
「品質」「性能」「ユーザビリティ」「利用用途」などの実利から消費者が得られる喜びを指します。
「感性価値」
「デザイン」「イメージ」が自分の感性にフィットすることによって消費者が得られる喜びを指します。
「情緒価値」
「実感」「体験」から消費者がポジティブな気持ちが得られる喜びを指します。
「共鳴価値」
「自己実現」「社会実現」を通して消費者の自尊心が満たせる喜びを指します。

企業ブランディングとは、これらの4つの価値いずれか、もしくは組み合わさったものを企業がステークホルダーに発信、提供することであり、ステークホルダーがその価値に共感・共鳴した場合にそれが「ブランド」となって世の中に認知されます。
それぞれの価値を発信してブランド力をつけた企業の事例を後ほどご紹介します。
企業ブランディングのメリット
企業ブランディングを実施するメリットを見ていきましょう。
資金調達しやすくなる
企業のブランド価値が高いと、社会的な信用度が高まり、投資家や金融機関からの信用も高くなります。そのため、資金調達がしやすくなるメリットがあります。
優秀な人材を確保しやすくなる
企業ブランディングによって企業イメージが高まることで、採用活動もスムーズになります。
毎年発表される新卒学生の就職人気ランキングには有名企業が多くランクインするのはよく知られています。
企業のブランド価値が高いことで「将来性がありそうなこの企業で働きたい」と思ってもらいやすくなり、優秀な人材が集まる可能性が高まります。
社員のモチベーションが向上
企業ブランドが確立されることは、企業理念が社員も含めたステークホルダーに浸透していることを意味します。全社員が企業理念を理解して自分のものにすることができれば、社外に発信するメッセージのトーンも統一されます。
また、社会貢献度が高い企業に勤めることは自分の仕事に誇りとやりがいを感じることにもつながります。企業ブランドが高まることで、社員がやりがいを感じ、モチベーションも高まるでしょう。
マーケティングに役立つ
ブランディングがマーケティングの戦略と密接に関わっていると前に述べましたが、企業のブランド価値を高めることは、マーケティング戦略にとっても役立ちます。
類似商品が多い場合、消費者はブランド価値が高く、より社会に貢献しているイメージがある企業の商品を選ぶ傾向があります。
また、新商品を開発した際も、ブランド価値が高い企業の商品なら認知されやすく、SNSなどでシェアされやすくなります。ブランド価値を高めることでマーケティングなど販促活動にかかるコストも削減することが可能となるわけです。
価格競争で有利
市場に類似サービスや商品が多くなると、価格競争に陥りやすくなります。
しかし、ブランド価値が高い企業ならブランド力で差別化できるので、価格を下げなくても競争力が保てます。
一般的に消費者は「ブランド価値が高い企業のサービスや製品は、価格が高くても、品質が高く、安心だ」というイメージを持っているため、価格が高くても購入されやすいのです。
顧客ロイヤリティが向上する
消費者はブランド価値が高い企業のサービスや商品を繰り返し購入する傾向があります。これは、企業やサービス、製品に対する愛着(顧客ロイヤルティ)が高まるためです。
顧客ロイヤルティが高まると、他社の安い類似品に乗り換えることなく、何度も同じ商品やサービスを購入するリピーターとなってくれます。
企業ブランディングのデメリット
次に、企業ブランディングを進める際のデメリットについて見てみましょう。
時間とコストがかかる
企業ブランディングを成功させるためには、企業ブランドの認知度を高めて、消費者や顧客にブランド価値を浸透させる必要があります。
そのためには長い時間とコストがかかります。事前に十分に計画を立てておくことが大切です。
新規参入が難しい
すでに高いブランドイメージを確立している企業が参入している、いわゆるレッドオーシャンの場合、新規参入は非常に難しくなります。市場を十分に分析したうえで企業ブランディング戦略を立てる必要があるでしょう。
効果検証がしにくい
企業ブランディングは目に見えない価値を伝えるものであり、非常に効果検証がしにくいものです。Web施策であれば、キーワードの検索回数など、施策によって、どんな数値を指標として設定して追っていくのかを決めることが重要になります。
企業ブランディングの構築方法
では、企業ブランディングは実際にどのように構築されていくのでしょうか? 手順を5つのステップに分けてご紹介します。
ステップ1 環境分析・現状把握
ステップ1は、環境分析と現状把握です。
ここでの分析対象は大きく2つに分けられます。
1つは、環境分析です。世の中の流れを把握し、外部の要因が自社に与える影響を読み解き、社会のなかでどのような方針をとるべきかを分析します。ここで役立つフレームワークがPEST分析です。
外部環境を、政治的要因(Politics)、経済的要因(Economy)、社会的要因(Society)、技術的要因(Technology)に分けて分析します。
もう1つは、自社の現状把握です。
自社が社会的にどのように認知されているか、強みや弱みは何か、他社との差別化が図れる点は何か、といった自社の事業展開に関する課題を分析して経営戦略を立てます。
分析には、3C分析のフレームワークが有用です。3Cとは、自社(Company)、競合他社(Competitor)、顧客(Customer)を意味します。
以上の分析をしっかり行うことで社会が自社に求めていることをしっかり把握して戦略を立てることが可能となります。
ステップ2 ブランドコンセプトの策定
次に、ブランドのコンセプトを策定していきます。
ブランドコンセプトとは、普遍的な価値である企業理念や、目指す未来像を分かりやすく表したシンプルなフレーズのことです。
企業イメージを決める重要な要素なので、企業内外のステークホルダーに愛着を感じてもらえるものでなければなりません。
広く社会に貢献するコンセプトを打ち出し、消費者に愛されるだけでなく、従業員が誇りを持てる企業理念とビジョンを示すことが重要です。
ステップ3 ブランドの提供価値の明確化
ブランドの提供価値とは、先ほども説明したブランドから得られる喜びなどの4つの価値のことです。ステークホルダーに共感をもってもらうことでブランドの確立が可能となる、ブランディング戦略で非常に重要なものです。
ステップ4 伝達方法のプランニングと実施
次に、企業ブランドを世の中に浸透させるための方法をプランニングして実施していきます。
具体的には、ロゴマーク作成、テレビCM、Webサイトの開設などがあります。ここで最も重要なのは、メッセージに一貫性を持たせることです。
ステップ5 認知度の検証
定期的にブランド価値の認知度を検証します。
方法としてはアンケート調査などがあります。検証することで、認知度が予想より低かったり、認知されているブランドイメージにズレがあるなどの課題が見つかれば、戦略を修正したり、戦略自体を見直す必要もあるかもしれません。
企業ブランディングの事例
最後に、企業ブランディングの重要な要素となる先述の4つの価値が、実際にどのように企業ブランディングに関わっているのかを具体的な事例を取り上げて解説します。
事例1:トヨタ 「実利価値」
トヨタは、継続して高い製品やサービスを輩出し続けることを組織のステートメントとした企業ブランディングを築き上げています。
数あるブランドからトヨタを選ぶのはこの実利価値に共感していることが理由です。
トヨタは、ステークホルダーとなるサプライヤーへも目を向ける新しい取り組みをしたことでも有名です。品質維持にはサプライヤーからの安定供給が欠かせません。トヨタは、サプライヤーの生産性を落とさず人員を減らす手法や、在庫リスクを下げる手法(ジャストインタイム方式)を広める活動を実施し、ステークホルダーからの多くの共感を得ました。
事例2:タニタ 「情緒価値」
タニタは、体温計や体重計などを個人、法人ともに販売している企業です。
企業ブランディングが成功する前はどちらかというと地味で突出したイメージのない企業でした。タニタが、企業ブランディングに成功したきっかけは、「人々の健康づくりに貢献する」という社会的意義を大きく掲げたことです。この活動に一貫として始まった「タニタ社員食堂」や「レシピ本」を通して、消費者は、健康を実感し、タニタの提供する社会的意義に共感しました。
ホームページは、タニタが発信したい企業ブランディングそのものです。まずは、タニタが製品を通して、人々の健康をどう作っていくかに注力したキャッチコピーやコンテンツが目に飛び込んできます。
消費者の幸福に注目した企業ブランディングは、競合ブランド間の蹴落としあいから、開放され独自の市場を築き上げることができます。
事例3:ユニリーバ 「共鳴価値」
ユニリーバは「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」という環境保護活動を行っています。この活動では、貧困層の生活改善、再生可能エネルギーの利用割合の増加、自社で使う農産物の100%を持続可能な方法で調達することを目指し、ユニリーバの社会的意義、位置づけを発信しています。
環境保護活動を通したポジティブな企業ブランディングによっては、従業員はに誇りを持つようになります。これは、従業員のモチベーションの維持、外部へのポジティブな情報発信や情報のトーンの統一といった効果が生みます。もちろん、環境保全に興味関心のある顧客層やステークホルダーの取り込みも期待されます。また、社会実現価値を発信する企業へのマイナスイメージをもつステークホルダーは極めて少ない傾向にあり効果的です。
事例4:Apple 「感覚価値」「実利価値」
Apple社の企業ブランディングは、イメージやデザインから得る「感覚価値」とユーザビリティにこだわった「実利価値」を組み合わせた企業ブランディングの事例です。
Appleというと、多くの人がスタイリッシュでクリエイティブなイメージを思い浮かべます。ユーザーはデザイン性に優れたAppleの製品を保有したり、Appleショップを訪問したりすることで、自分がスタイリッシュな生活を手に入れていることに喜びを感じています。これは感覚価値から創出されているブランドです。
また、Appleは徹底した消費者目線で、ユーザビリティにこだわり、iPhoneやiPadといった製品を発信し、世界の人々の生活を豊かでクリエイティブなものにしてきました。次に、彼らが今新たに取り組んでいることは、アクセシビリティです。高齢者や障害者を含むあらゆる人が、どんな場所からでもアクセスできる製品です。
こういった、Apple製品への期待や信頼は、これまで発売してきた製品のユーザビリティの高さ「実利価値」によって作られたブランド力でしょう。
企業ブランディングで競合との差別化を図ろう
近年では、企業ブランディングを専任とする部署を設置する企業も増えています。企業ブランディングは、その概念を浸透させるまでにある一定の時間が必要とされ、大掛かりなプロジェクトとなりますが、その分、企業が得られるメリットは多岐に渡ります。
競合がひしめく現代の市場で戦うには、商品やサービスだけでは差別化に限界があります。企業ブランディング力は今後ますます必要となるでしょう。
しかし、このようなマーケティングの取り組みは、分析から戦略の策定、そして効果測定などを地道に行う必要があり、一朝一夕にはいきません。イノーバでは、経験と知見のすべてを注ぎ、クライアント様の企業ブランディングを効果的にすすめつつ、「集客」から「リード創出」「リード育成」のプロセスをすべてイノーバでサポートする「伴走型マーケティング支援サービス」を提供しております。関心のある方はご覧ください。
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