業界・業種を問わずにDXの推進が進む現在、営業部門でもDXが必要とされています。営業部門はどの企業にも存在するうえ、電話や訪問など比較的古いやり方が残っているところも多く、DXが進んでいるとはいいにくかったのです。
しかしここ数年のコロナ禍で、従来のやり方である訪問営業が激減しました。さらにインターネットの普及で、顧客の行動も大きく変わってきています。営業部門でもこれまでとはやり方を変え、ビジネス環境の変化に対応していかなければなりません。
ここでは、営業DX化の概要と効果、失敗や成功のポイントなどを説明します。
営業DXとは
営業DXとは営業活動にITシステムやツールを取り入れた効率化を利用して、営業プロセスや組織を再構築し、顧客との接点や購買行動を最適化して利益を向上させていくこと。営業DXを実現すると、顧客や環境の変化に柔軟に対応できます。そのためビジネス環境の変化が激しいBtoB営業ではとくに重要です。
「営業DX」と「営業のデジタル化」
営業DXは、単なるデジタル化とは異なります。DXにおけるIT技術はあくまで業務を進めるための手段であり、営業力を底上げするために導入するものです。よってDXにはデジタルツールの導入だけでなく、次のような部分が必要といえます。
- 現在の営業活動を細部まで可視化する
IT技術を利用して現在の業務フローを分解し、顧客や担当者の動きを細部まで可視化します。
- 営業部門やプロセスを再構築する
可視化した営業活動からムラや無駄をなくして、業務プロセスを再構築します。同時にシステム化によりノウハウや業務プロセスを共有して、業務の属人化をなくします。
- 顧客をより深く理解して、顧客との関係を最適化する
顧客の動きを細分化して分析すると、顧客についてより深く理解できます。それによってより顧客に合わせた営業活動を進めて関係を最適化し、その関係を維持していけるのです。
営業DXに使われるツール
営業DXに利用されるツールはセールステック(Sales Tech)ともいいます。営業の業務効率化をサポートするシステムやツールで、よく利用されるのは次の3つです。
- MAツール(Marketing Automation)
新規顧客を獲得するためのマーケティング活動を効率化・自動化し、管理するツールです。
- SFA(Sales Force Automation)
営業支援システムともいいます。営業活動の進捗状況やその他の情報を保存・管理し、効率化して、営業活動をサポートするツールです。
- CRM(Customer Relationship Management)
「顧客管理システム」ともいいます。顧客情報や顧客とのやり取りの履歴を管理し、良好な関係性を管理・維持するためのツールです。そのほか、顧客とオンラインでコミュニケーションするためのチャットツールやオンライン会議システムなどもよく利用されます。
ツールについては、次の記事も参考にしてください。
「貴社にピッタリなマーケティングオートメーションはどれか?代表的なMAツール15選を比較」
「SFAを徹底解説!メリットから機能、失敗しないための導入方法までを完全ガイド」
なぜ営業DXが必要なのか
営業DXにより、次のように営業活動が進化して、変化に対応しやすくなります。そのため、営業DXは業界・業種を問わず求められているのです。
- 営業活動にIT技術を導入し、業務プロセスを見直すと、大きな業務効率化につながる
- 顧客に関する情報を細かく保存・管理・分析して顧客をより深く理解すると、顧客のニーズの変化に素早く対応できる
- IT技術を取り入れて業務を自動化するとスピーディーな営業活動ができ、ビジネス環境の変化に対応しやすくなる
- コロナ禍で一気に普及したオンライン営業活動にも対応できる
- インターネットの普及で盛んになった「インサイドセールス」を進めやすくなる
インサイドセールスについては、次の記事も参考にしてください。
「ABMの成功にインサイドセールスは必須!地道なアプローチが案件獲得への早道」
- 顧客データや営業データはオフィス以外の場所に保存されるため、災害時で安心できる
営業DXの効果
BtoB営業で営業DXを実践すると、次のような効果があります。
業務効率化・生産性向上
ツールの導入によりデータ連携や作業の自動化ができ、大きな業務効率化を実現できます。
データの一元管理と利活用
ツールの導入・連携により、営業活動に関するデータをデジタル化して一元管理できます。それによって、データの利活用の幅が広がるでしょう。
コストの可視化と最適化
業務プロセスと同時にコストも細部まで可視化すると、無駄を省けるためコストを最適化できます。
潜在顧客の発見
マーケティングのデータを分析すると、潜在的な顧客や新たな市場を発見できます。
新しいニーズの発見
顧客データやマーケティングデータを分析すると、新しいニーズを発見したり、商品開発につなげたりできます。
顧客ごとのニーズの最適化
顧客ごとに細かくデータを保存・分析すると、個別の顧客に合わせた商品の提案が可能になります。
属人化の排除
ツールの導入により、これまで担当者個人のノウハウであった知識や情報を共有し、営業活動から属人性をなくします。
営業管理の効率化
各担当者の営業活動を細部まで可視化できると、管理職のマネジメントも効率化できます。
確認しておきたい!営業DXが失敗する原因6つ
ただし営業DXを進めても必ず成功するとは限りません。失敗する営業DXには、次のような原因があります。
DXをよく理解していない
DXに必須である「業務の可視化や再構築」に至らず、単なるデジタル化に留まる企業も多いです。
アナログベースの営業が根強い
たとえば、次のような場合です。
- 古い営業スタイルのままでITツールが定着しない
- どこからデジタル化に手をつけていいのかわからない
- どんなITツールを導入すべきかわからず、「Microsoft ExcelからGoogleスプレッドシートに変える」にとどまるといった中途半端なIT化に終わる
明確な目的がない
どうすれば営業DXが実現できるのか、最終的に目指す「営業DX」の形がわからない場合です。
DXを推進する人材がいない
DXの推進には、業務とIT技術の両方に知見があり、なおかつDXを理解して担当者のスキルアップやサポートまで進められる人材が必要です。DX人材がいなければ、DX推進は難航してしまいます。
経営戦略と現場の意識にズレがある
経営陣や管理職がDXを理解せず単なるデジタル化で満足している、またはその逆の場合です。管理部門と現場での意識にズレがあれば、DX推進にもブレーキがかかってしまいます。
ツールを導入したままで見直しや改善がされていない
DXは一度で終わるものではなく、つねに見直しと改善が必要です。ツールの導入だけで終わってしまうと、ただのデジタル化でとどまってしまいます。
営業DXを成功させるポイント7つ
では営業DXを成功させるにはどうしたらよいのでしょうか。そのポイント7つを見ていきます。
最終的な目標を決める
まずは目的を明確にして目標を決め、そこまでの全体図を設計します。
営業DXに専任のスタッフを用意する
DXの推進に必要な人材がいなければ、できるだけ育成します。
できるだけ自社に合うツールを選ぶ
SFA/CRMなどのツールは、それぞれ特徴や個性があります。できるだけ自社の営業スタイルに合うものを選び、導入しましょう。
現在の営業プロセスを細かく洗い出す
営業DX推進前の営業活動をできるだけ細かく洗い出して可視化することで、現状の問題を把握できます。
営業ツールの導入に合わせて営業プロセスや組織を再構築する
ツールを導入するときには、再構築して効率化した営業スタイルに合わせてカスタマイズし、導入します。それによって、もとの業務プロセスにツールを導入するよりも大きな業務効率化が可能です。
機能分化に合わせて分業する
最近の営業活動はマーケティング、フィールドセールス(対面営業)、インサイドセールス(社内からの営業活動)の3つの業務に分けられ、業務ごとそれぞれに担当者を割り振ります。それによって、担当者がノウハウを蓄積し、専門家を育てることが可能です。
情報は一元管理する
営業活動の中でも機能に合わせて分業し、それぞれ別なツールを使うこともあります。しかし、情報は一元化して共有できるようにしておきましょう。すべての担当者が最新の情報を共有できるようにしておくのが重要です。
営業DXを進めると営業力が向上する
コロナ禍によりオンライン営業もずいぶん普及しました。しかしまだ「足で稼ぐ」意識のある営業担当者も多いようです。とはいえ顧客の意識や行動は大きく変化しています。これからは営業DXを推進して営業活動全体を変革していかなければなりません。
とくに効率やメリットを重視するBtoB営業では、IT技術を利用して環境の変化に対応し、顧客のニーズを理解する必要があります。それによって、より大きな効果を生み出せるでしょう。