インターネット・パソコンの普及が第一次IT革命とするなら、スマートフォンやタブレットの普及は第二次IT革命といえるでしょう。場所・時間を問わずユーザーはインターネットにアクセスすることができ、好奇心を満たす道具であるだけでなく購買行動も大きく変えました。ある店舗で気に入った商品を見つけたら、その場でネットにアクセスして価格を多店舗と比較し安い方のお店で購買する、そのような購買活動は珍しくなくなっています。さらに近年のコロナ問題はオンライン化へのシフトを急速に拡大させました。これまでオフラインでマーケティングをしていた会社も外出自粛の流れの中、オンライン戦略をとらざるをえなくなっています。
このような状況の中、認知を拡大させているのがデジタルマーケティングです。オンライン環境でいかに顧客を獲得していくかにフォーカスしたこのマーケティング手法は時代背景も後押しとなって急速に導入する企業が増えています。しかし、デジタルマーケティングをうまく機能させることができず成果がだせていない企業が多いのも事実です。その原因の一つが、デジタルマーケテイングの特徴である領域の広さ。幅広い範囲をカバーできあらゆる業種・業態に対応できる反面、複雑に見えてうまく設計できず成果に結びつかないようです。しかし、デジタルマーケティングも分解すれば一つ一つの手法の組み合わせにすぎません。ここでは各手法の特徴と手法を効果的に組み合わせていく方法を解説していきます。
デジタルマーケティングは戦略設計がうまくいけば手法選定もうまくいく
デジタルマーケティングの成果を最大化させるには、戦略から検討することが重要です。デジタルマーケティングもあくまでマーケティングの一つですので、戦略なくして戦術(手法やツール)は機能しません。しかし、「今は動画がトレンドだから動画マーケティングをやろう」、「この媒体が安いから実施しよう」といった手法ありきで進めてしまうケースが多いようです。逆にいうと戦略が明確になれば、戦術である手法の選定は難しくありません。どんな手法を選べばよいかわからない場合、まず戦略が明確かを疑いましょう。
マーケティングの戦略は3つの要素で成り立ちます。「誰に、何を、どのように」です。
まず、ターゲットを設定しましょう。その際、「30代管理職の男性」といった無機質なターゲット像ではなく、ペルソナを設定することが大切です。ペルソナとは、ターゲットを血の通ったリアルな人物像として描くことです。例えば、日ごろ抱えている仕事上の不満、家庭上の不満、休日の過ごし方、家族構成、学歴、年収など、リアルに描いていきます。ペルソナを設定することで、どのようなアプローチをしていけば刺さるかが判断しやすくなります。
次に「どのように」を検討します。マーケティングのプロセスは、見込み客を集客し、育成(ナーチャリング)を施して販売、そしてリピートと段階があります。各ステップで自社がどこに問題があるかを発見しましょう。集客をしたいのに、育成を促すメールに力をいれても思うような結果はでません。
⇒そもそもデジタルマーケティングとは?という方はこちらの記事をチェック 【2021年版】デジタルマーケティングとは?基本手法から事例・ツールまで網羅的に解説
デジタルマーケティングの基本手法
それでは基本手法の解説をしていきましょう。手法にはそれぞれ“効き目”があります。ある手法は集客フェーズでは効果的だがリピート販売には向かない、ナーチャリングに最適だが集客には難しいというように、各手法には特徴があるのでまずはそれを押さえるようにしましょう。同じ媒体でも使い方によって集客に使えたり、リピートに使えたりしますので一つのやり方に固執するのもよくありません。特徴を把握し、どう使うかを意識しながら読み進めてください。また、手法はどれか一つを選ばないといけないわけではありません。むしろ複数の手法を組み合わせて使うことで、失敗リスクを軽減できますし、相乗効果で成果を高めることが可能です。
- WEBサイト
デジタルマーケティングで中心的なメディアとなるのがWEBサイトです(例外もあります)。マーケティングの流れを設計する際にWEBサイトにどのような役割をもたせるかを起点にすると設計がスムーズになるでしょう。そのためWEBサイトはその役割を明確にすることが重要です。企業ブランディングのためのコーポレートサイト、購入を促すECサイト、問い合わせ等のコンバージョンを獲得するための集客サイトが代表的です。
BtoBでデジタルマーケティングを促進していくなら集客サイトの制作がおすすめ。一般的に企業間取引はBtoCと比較して高額で比較検討も長くなります。また、購買決定に複数の人が関与します。そのため自社の商品・サービスに潜在的なニーズをもつ顧客を集客し、サイト上で育成を行い、問い合わせに繋げてセールスに引き渡す、という役割をWEBサイトにもたせてあげることが効果的です。
- コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、ブログやオウンドメディアを利用して、見込み客と信頼関係を構築して商品・サービスへの興味関心を高め、問い合わせや資料請求等の次にしてほしいアクションへと誘導していく手法です。顧客を追いかけるのではなく、“見つけてもらう”手法となるので、初回の接点から見込み客の興味関心が一程度あるのが特徴です。見つけてもらった後は、BtoCの場合ならお試しサンプルや体験セミナー、BtoBならホワイトペーパーや無料セミナーなどを用意し、見込客情報を獲得していくのがポイントです。リストを獲得できればメール等でさらに情報を発信していくことができます。大切なのは、“顧客のためになる情報を発信すること”です。せっかくブログやオウンドメディアにきてくれたからといって、売り込みばかりしていると見込客はすぐに離脱してしまいます。じっくりと信頼関係を築いていくことを意識しましょう。
SEOとは検索エンジンを最適化していく活動のことです。主に、GoogleやYahoo!の二大検索エンジンで、自社のコンテンツを検索結果(キーワード)で上位表示させることで、自社サイトへの流入を促進させる手法です。SEOのポイントは「キーワードの設定」と「コンテンツの充実」です。キーワードは見込み客が検索窓に打ち込む言葉となります。自社のターゲットがどのようなキーワードで検索するかを推測するのが第一歩となります。そして、関連キーワード発見ツールで狙うキーワードの候補を広げていくのがポイントです。最後にGoogleキーワードプランナーなどで十分な検索ボリュームがあるかをチェックしてください。もう一つのポイントは、コンテンツの充実です。以前は被リンクを数多く貼って上位表示を目指すやり方が効果的だったこともありましたが、現在はいかにユーザーにとって有益なコンテンツを提供するかが大切となっています。SEOはユーザーの自然な検索に対応するものですので、上位表示させることができれば優秀な見込み客を大量に獲得することができます。
- WEB広告
WEB広告には様々なものが開発されており、目的やターゲットに応じて選ぶことができます。
特定の広告を買い取って出稿できる純広告(バナー広告等)は、ターゲットが集まりそうな媒体を選べば認知やアクセスを獲得しやすいでしょう。
リスティング広告は、希望したキーワードでユーザーが検索したときに検索上位に表示される広告です。クリック数に応じて課金されるので、費用対効果に優れた広告といえます。ポイントは運用力です。出稿したら放置してしまうのではなく、反応を分析しながら随時改善していく必要があります。
ディスプレイ広告は、「GDN(Googleアドネットワーク)」や「YDN(Yahoo! ディスプレイアドネットワーク)」などのネットワークを活用してWebサイトやアプリの広告枠に配信する広告です。ネットワークの活用で広く告知することができ、認知を高めたいときに有効です。また、自社サイトやLPに訪れた人・また既に会員となっている既存顧客をターゲットとして広告を配信する「リターゲティング(リマーケティング)」も可能です
- SNSマーケティング
SNSマーケティングとは、Twitter、Facebook、Instagram、LINEなどのSNSを通して情報を発信する手法です。情報を拡散し自社サイトへのアクセスを増加させたり、ファンを育成したりすることで、マーケティングを促進させることができます。
現代のマーケティングではSNSが重要な位置づけになっています。以前は若者の媒体という認識が一般的でしたが現在は年代を問わず利用されています。価値ある情報を発信できれば、ユーザーが別のユーザーに口コミとして発信され、情報の拡散が期待できます。
また、SNSは通常投稿以外にも広告が用意されています。登録プロフィールをもとに年齢や性別・勤め先・役職・学歴などで細かくターゲティングができ、狙っているターゲットに的確に広告を配信できるというメリットがあります。
- 動画マーケティング
スマホの普及およびコロナ問題で急速に利用者が増えたのが動画です。動画プラットフォームに動画を投稿し問い合わせや購入を促進させるのが目的です。代表的なプラットフォームはYouTubeで、他にもVIMEOやInstagramでも配信が可能です。
動画はテキストや写真と比較して、情報の浸透力が高く短時間で伝えることができます。さらに、社員が出演することで親しみや信頼を醸成する効果もあります。ポイントは、動画を観た後に視聴者に次にとってほしいアクションを示すことです。動画を視聴しただけで関係が途切れてしまい、コンバージョンにつながらないケースが多いので導線をしっかり作ってから始めましょう。
- メールマーケティング
メールマガジンや広告メールで、マーケティングをしていく手法です。ユーザーに役立つコンテンツを提供してナーチャリングを施したり、商品案内を送付しWEBサイトに誘導して購買を促したりなど、目的に応じて様々な活用ができます。比較的低単価であるメール配信スタンドを利用してメールを送付するのが一般的で広告費用を抑えることができます。
SEOやコンテンツマーケティングは自社へのアクセスを促す受け身型の媒体といえますが、メールは顧客に直接アプローチできる積極的な媒体です。自社からアプローチできるので、配信内容によっては高い反応率をあげることができます。また、定期的にメールを配信することは、顧客に自社を忘れさせない効果もあり、継続的な購入を期待できます。
マーケティングオートメーションとは、「メール配信、Webサイトのアクセス履歴、セミナー管理、フォーム機能、リード(見込み顧客)管理、スコアリング」など、マーケティングの一連の業務を簡素化・自動化(オートメーション)するシステムです。
事前にシナリオを設定しておけば、自動でマーケティングを進めてくれるのでルソースの少ない中小企業でもきめ細かいマーケティングが可能です。人的処理によるヒューマンエラーも発生しにくくなります。見込み客のリストを所持しながらも活用しきれていない場合、マーケティングオートメーションはぜひ検討したいところです。
また、デジタルマーケティングの基本は見込み客のリストや行動のデータを蓄積していくことです。これを人的に対応しようとすると膨大な時間がかかってしまいます。しかし、マーケティングオートメーションを導入することで、既存顧客や、見込み顧客の行動データを蓄積・管理・分析し、顧客の属性に合わせたマーケティングを効率的に実施できます。
- アプリマーケティング(MEO等)
スマートフォンのアプリを利用してマーケティングをしていく手法です。他社アプリに広告を出稿したり、自社アプリをダウンロードしてもらいプッシュ通知などでコミュニケーションを図ったりすることができます。スマートフォンは常に持ち歩くもので他媒体と比べて閲覧時間も長い傾向にあります。スマートフォンの画面に自社のアプリを表示させることに成功すれば、それだけで忘れられにくくなります。
また、最近注目されているのがMEOです。これは、Google等で検索した際に表示される地図上に自社を宣伝できる手法です。例えば、「飲食店 神田」と打ち込めば、そこに自店舗が表示されます。地図検索する際、ユーザーは目的意識を強くもって検索しており、来店を促しやすい手法といえます。
- IoT活用(デジタルサイネージ等)
近年になって様々な分野で活用されているのがIOTです。モノのインターネット化という意味で、身の回りの物をインターネットに接続することで、より便利にしていく考え方となります。例えば、テレビやゲーム機はインターネットに接続することで、インタラクティブなやりとりやオンライン上で他者と交わったりすることができるようになりました。
マーケティングにおいてもIOTは活用されており、自販機にインターネットを搭載しスタンプを貯められる仕組みを作ったコカ・コーラの事例は話題になりました。今や町中にあふれているデジタルサイネージもIOT活用の好例です。
自社にマッチする手法を組み合わせて成果を高めよう
デジタルマーケティングは、急速に認知を拡大させている手法です。様々な手法があり混乱しがちですが、マーケティングの原点に戻り、「誰に、何を、どのように」を一つ一つ設計していけば、決して難しい方法論ではありません。自社の商品・サービスの特性とターゲットをよく分析し、集客から教育、育成、リピートまで導線を設計してきましょう。一度仕組みを設計してしまえば、後は振り返り・改善のメンテナンスをしていくのみで、中長期的には負担を減らしながら効果的に販売を進めていくことができるようになります。
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