BtoC企業に比べ顧客との長期的な関係性構築が欠かせないBtoB企業にとって、Webを活用した顧客へのアプローチは重要なマーケティング施策の一つです。ただひと口にWebマーケティングといってもその種類は多様で、どの施策を活用するかで成果は大きく異なります。そこで重要となるのが、目標達成までのプロセスを具体的な数値に落とし込むKPI設定です。今回は、KPIの概要を見たうえで特にBtoBのWebマーケティングにおけるKPI設定についてお伝えします。BtoB企業のマーケティング担当者の方はぜひ、参考にしてください。
KPIとは?
KPIとは、Key Performance Indicatorの略称で、日本語では「重要業績評価指標」もしくは「主要業績評価指標」と訳されています。具体的には、成果目標の進捗状況を定量的に評価するための指標です。
BtoBのWebマーケティングにおけるKPIとは
たとえば、Aという製品を半年間で300個販売するという目標を実現させるための施策で考えてみましょう。
- 広告で1ヶ月に10,000人集客をする
- 集客した人のなかで2,000人にメルマガ登録をしてもらう
- メルマガ登録したなかから300人に製品問い合わせ、商談化を実現させる
- 300人のなかから、50人に製品を販売する
この場合で、広告集客、メルマガ登録、問い合わせ(商談)の数がBtoBのWebマーケティングにおけるKPIの一例です。ちなみに、最終的な目標はKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標もしくは主要目標達成指標)といいます。
BtoBのWebマーケティングでKPI設定が重要な理由
BtoBマーケティングにWebが適している理由
BtoB企業のWebマーケティングでKPI設定が重要な理由を知るには、なぜBtoB企業にとってWebマーケティングが重要なのかを知らなければなりません。主な理由は次の2点です。
- 継続して使い続けてもらう必要がある
近年、BtoBではサブスクリプションやSaaSなど購入して終わりではなく、継続して使い続けてもらうことで利益を上げるビジネスモデルが増加しています。そのため、以前は営業による対面での対応が主でしたが、現在では営業に加え、継続的なサポートを行うプラットフォームとしてWebが活用されるようになっています。
- 認知から購入に至るまでのプロセスが長い
BtoBは購入に至るまでに複数人の承認が必要なうえ、多くが高額商品であることから、BtoCのような衝動買いはほぼありません。そのため、認知から購入に至るまでのプロセスに沿った情報提供が必要であり、Webを活用したアプローチが欠かせないものとなっています。
BtoB企業のWebマーケティングにKPI設定が必要な理由
BtoBマーケティングにWebが適している理由を把握したところで、なぜ、KPI設定が重要なのかについて解説します。
- データの有効活用につながる
Webマーケティングでは、アクセス解析を通してさまざまなデータを収集できますが、収集するだけでは成果を上げるのは困難です。収集したデータを有効活用するには、KPI設定により数値目標を立てることで戦略の方向性が明確になり、具体的な施策立案につながります。
- 迅速な対策の実行が可能になる
アクセス解析のデータはリアルタイムで収集できるため、KPI設定をしていればリアルタイムで施策の効果が確認できます。その結果、迅速に対策の修正、実行が可能です。
- ROIの最大化が果たせる
KPIの設定により、広告費やメルマガ運用を行った際の投資対効果(ROI)が適切かどうかの判断が可能になり、ROIの最大化を果たせるようになります。
Webマーケティングでの主なKPI指標
Webマーケティングにおける主なKPIの指標は次のとおりです。
- Webサイトへの訪問者数
Webサイトへ訪問したユーザーの数を見ますが、重要なのはどこからの訪問数が多いかです。検索、広告、SNS、メールなどそれぞれからの誘導数もKPIとすることで、誘導施策の改善が可能になります。
- リード獲得数(コンバージョン率)
メルマガ登録やホワイトペーパーダウンロード、製品・サービスの問い合わせ、資料請求などによって顧客のメールアドレスをどれだけ獲得したかです。数値が悪ければ、Webサイト内の誘導バナーやボタンの位置、デザインなどの改善が必要であるとわかります。
- メールの開封率・クリック率
配信したメールがどれだけ開封されたか、メッセージに記載されたURLをクリックしてどれだけのユーザーを目的のWebページに誘導できたかです。開封率が悪ければ、メールの件名や配信日時を見直します。クリック率が悪い場合は、メールの内容、誘導するためのテキストの再考が必要です。
- SNSのエンゲージメント率
SNSでの投稿に対し、プロフィール閲覧、いいねやブックマーク、拡散、URLクリックなどの行動がどれだけ取られたかです。反応が悪い場合は、投稿内容や投稿日時の見直しが必要でしょう。
KPIと密接にかかわる「KGI」「KSF」とは
「KGI」とはKey Goal Indicator(重要目標達成指標)の略で、企業やビジネス、プロジェクト、部門などの最終目標となる数値を指します。通常、売上高や利益額がこれに該当します。
「KSF」とはKey Success Factor(主要成功要因)の略で、KGI達成の成功につながる要因を指します。目標に対し、何をするべきか、どのような施策が効果的かのような「するべきこと」であり、行動を設定します。
「KPI」は「KSF」と混同されやすいですが、「売上目標●%UP」というKGIに対し、「自社の知名度を上げる」「既存顧客からも売上を上げる」等がKSFであり、「オーガニック検索での流入が増える」「既存顧客の継続率が上がる」等、KSFに当てはめながら数値で具体性を高めます。
KSFを明確にすれば最短距離でKGI達成につながるKPI設定ができる可能性が高まるといえます。
適切なKPIを設定する流れ
BtoBマーケティングの運用として適切なKPIを設定するための基本的な流れを解説します。
1.KGIの設定
まずは、最終目標となるKGIを設定します。KPI同様、定量的なものにすることがポイントです。ここでは新製品を半年で100個販売することをKGIとして解説を進めていきます。
2. KSFの設定
まずやるべきは、KGIを達成させるために必要な要素(KSF)を明らかにすることです。
一般的に新製品の売上目標を達成するには、「製品自体の認知向上」が欠かせません。その後、「他社製品と比較した際の優位点のアピール」を行い、新製品を認知した顧客に対し、競合と比較したうえでの優位点をアピールし、資料請求や商談化などのコンバージョンへつなげます。
このように、認知獲得から商談に至るまでの間に顧客がどのような態度変容をするか、どのような行動を取るかという要素(KSF)を洗い出していきましょう。
3. KGI、KSFに沿ったKPIの設定
設定したKGIとKSFを達成するための具体的な成果であり、中間指標として設定するのがKPIです。
たとえば、製品を半年で100個売るというKGIのために設定されたKSFが「製品自体の認知向上」であれば、SNSのフォロワー数や、Webサイトのアクセス数などがKPIの一例です。KSFが「他社製品と比較した際の優位点のアピール」であれば、ホワイトペーパーのダウンロード数、セミナー(ウェビナー)の参加者数などをKPIとして設定します。
4. 施策の実施
KGI、KSF、KPI設定を終えたら実際に仮説を基にした施策の実施です。思ったような成果が出なければ改めて設定を見直し、また仮説立案を行う。この繰り返しによりKGI達成を目指します。
図:KFSに基づいたKPIツリー
目標達成のために、正しいKPI設定をしましょう。
目標達成のために、正しいKPI設定をしましょう。企業が売上目標を達成したり、大きなプロジェクトを成功に導くためには、チームメンバー全員が目標を共有し一丸となって取り組むことが重要です。KPIを設定することで、企業や部門の目標が明確になり、達成までの道のりを可視化できます。
適切なKPI設定は、企業の業績向上だけでなく、業務の円滑化やメンバーのモチベーション管理にもつながります。イノーバでは、BtoBマーケティングを戦略策定・計画立案から、伴走支援、各種コンテンツ制作まで幅広く、中長期的にサポートする伴走型マーケティング支援サービスを提供しています。戦略に紐づいた目標設定 (KGI/KPI)等もお手伝いいたします。BtoBマーケティングの目標達成に向けて、ぜひイノーバにご相談ください。
FAQ
Q: KPIとKGIの違いは何ですか?
A: KGIは企業やプロジェクトの最終目標を指す数値目標で、KPIはKGI達成のための中間指標です。
Q: KPIを設定するメリットは何ですか?
A: 目標が明確になり、達成までの道筋が可視化されます。また、データの有効活用や迅速な対策実行、ROI最大化にもつながります。
Q: BtoBのWebマーケティングで重要なKPIにはどのようなものがありますか?
A: Webサイトへの訪問者数、リード獲得数(コンバージョン率)、メールの開封率・クリック率、SNSのエンゲージメント率などがあります。
Q: 適切なKPIを設定する流れを教えてください。
A: ①KGI(最終目標)の設定 ②KSF(目標達成に必要な要素)の設定 ③KGI、KSFに沿ったKPIの設定 ④施策の実施、の流れで行います。
Q: KSFとは何ですか?
A: Key Success Factorの略で、KGI達成の成功につながる要因のことです。「するべきこと」を行動レベルで設定します。
Q: KPIを設定したら、あとは何をすればよいですか?
A: 設定したKPIに基づいて施策を実施します。思ったような成果が出ない場合は、設定を見直して仮説を立て直します。このサイクルを繰り返してKGI達成を目指します。