SEOは、マーケティングにおける集客施策の王道です。しかし今、その“勝ち筋”が大きく変わろうとしています。背景にあるのは、Google×AIによる検索体験の劇的な変化。検索エンジンは「Webページを探す場」から「答えが返ってくる場」へ進化しつつあります。
では、このAI時代に「顧客に見つけてもらい、選んでもらう」ためには、何が必要なのでしょうか。
本記事では、世界的に有名なWebマーケターであり、SEOのエキスパートでもあるNeil Patel氏のYouTube動画を参考に、AI時代のSEOの行方について考察します。
目次
TABLE OF CONTENTS
いま、何が起きているのか
変わり始めている“検索の常識”
これまで、Webでの情報収集は、知りたいことがあれば関連するキーワードで「検索」し、検索結果の画面に並んだページの中から良さそうなものをクリックして情報を得る、という行動が一般的でした。
しかし今、その常識が変わりつつあります。人々は「ページを探す」のではなく、検索エンジンに直接質問し、欲しい答えをその場で得るようになってきました。
実際、こうした変化は数字にも現れています。
- ChatGPTは2025年4月、月間訪問数51.4億を記録。トップ10サイトで唯一13%増加
- 一方、Googleの世界シェアは2023年3月の約93%から2025年3月には89.7%に低下
- Wikipediaのアクセスは同時期に6.1%減少
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つまり、情報収集が従来の「検索」から「AIへの質問」にシフトしつつあり、検索結果に並んだページは以前ほどクリックされにくくなっています。
こうした状況を受け、GoogleもAIの対応を急速に強化しています。その象徴のひとつが、AI Overviewという新しいシステムです。
AI Overviewとは?
AI Overviewは、Googleなどの検索エンジンが導入している最新のAI技術です。「検索したときに、AIが複数の情報源から重要なポイントをまとめて、ページの最初にわかりやすく提示してくれる機能」と聞くと、「そういえば最近、検索結果の一番上に“まとめ”が出るようになったな」と思う方も多いのではないのでしょうか。
▼2025年7月現在の検索結果画面
AI Overviewは、ユーザーの質問や検索ワードの意図や文脈をAIが推測し、Web上の多数のページから信頼できる情報を収集。その中から重要なポイントを抽出し、要約やリスト形式でわかりやすく提示します。これらの処理はすべて一瞬で行われ、ユーザーは特定のページを開かずとも欲しい答えを得ることができるのです。
検索行動の変化はチャンスになりうる
世界的に有名なWebマーケターであり、SEOのエキスパートでもあるNeil Patel氏によると、質問形式の検索は、わずか8か月で38%から87%に急増し、人々はこれまで以上に「文章形式の質問」を入力するようになったと言います。
もはや人々は単純なキーワードを打ち込むだけではなく、直接「リアルな質問」をし、その場で「完全な答え」を期待しているのです。
さらに、Patel氏はGoogleの1日の検索回数が85億回から137億回へ増加しており、年間では5兆回を超えると指摘しています。
本記事の冒頭で述べたように、検索行動はAIへと移行しつつありますが、一方でGoogleもAIによって「より良い答え」を返すようになったことで、検索の機会自体はむしろ増えています。つまり、情報収集の選択肢は広がっていますが、Googleでの検索も依然として活発で、むしろ頻度が増えていると言うのです。
つまり、検索結果に並んだリンクがクリックされにくくなっても、嘆く必要はありません。いま考えるべきは、この新しい検索体験の中で「どう露出するか」。むしろこの変化は、露出を増やす大きなチャンスだとも言えます。
マーケティング視点で見る、AI Overviewの“狙い目”
Patel氏によると、Googleの検索を「情報検索・ナビゲーション検索・商用検索・トランザクション検索」の4タイプごとに分析によると、AI Overviewの表示率は次のようになるそうです。
検索タイプ |
概要 |
検索全体に占める割合 |
AI Overviewの表示率 |
備考 |
情報検索 |
手法や知識を調べるための検索 |
約50% |
45.9% |
- |
ナビゲーション検索 |
特定のWebサイトや情報に直接アクセスするための検索 |
34.6% |
1.5% |
目的地が決まっているためAI要約は不要 |
商用検索 |
購入前に商品やサービスを比較・検討する検索 |
14.8% |
17.8% |
- |
トランザクション検索 |
購入や申し込みなど、アクションを起こす直前の検索 |
8% |
6.1% |
- |
マーケティングの観点で特に注目すべきは、AI Overviewが表示されやすいのは、情報収集や比較を経て「購入するかどうか」を決める直前の段階だということです。ここで自社のコンテンツが要約に取り上げられなければ、単にアクセスを逃すだけでなく、顧客に選ばれるチャンスそのものを失いかねません。
つまり、AI時代に重要なのは、検索順位を上げることよりも、GoogleのAIに「購入を検討している人に紹介すべき情報源」として選ばれることなのです。
AIに「選ばれる」ための3つの視点
では、AIに「信頼できる情報源」として選んでもらうためには、どうすればいいのでしょうか?
そのためには、次の3つの視点が重要です。
1. すでにAIに選ばれているコンテンツを知る
AIは、これまで多く読まれ、信頼されてきたコンテンツを参考にしやすいと言います。
そこでまずは、自社と同じテーマで上位に出ている記事や、AI Overviewに引用されているページを観察しましょう。
- どんな切り口で説明しているのか
- 見出しや文章構成はどうなっているか
- どんなデータや事例を引用しているか
こうした分析から、「AIが評価するポイント」が見えてくるはずです。
2. まだ自社が出していない「需要のあるテーマ」を狙う
次に、競合がすでに検索上位を取っているのに、自社がカバーできていないテーマを見つけましょう。
たとえば、
- 競合サイトでよく読まれている記事テーマ
- 自社ブログで触れていないが、顧客からよく質問されるテーマ
こうした需要のある「空白」を埋めることが、AIに選ばれる近道になります。
3. 読む人がすぐ理解できる形にする
AIは、長い文章よりも「整理されたわかりやすい情報」を評価します。Patel氏は、特に最近は視覚的に理解しやすいコンテンツが引用されやすい傾向があると指摘しています。
たとえば、
- 要点だけをまとめた1~2分の短い動画
- 比較や手順を整理した図解やフローチャート
- データを一目で理解できるインフォグラフィック
このように「読む人が迷わず理解しやすい情報」は、AIに選ばれる確率も高くなると言えるでしょう。
AI時代のSEOでは、これまで以上に「人がどんな情報を求めているのか」から逆算して考えることが重要です。AIが評価しやすいコンテンツを作ることを追求すると、それはユーザーにとって価値ある情報を提供することにもつながります。
まとめ
AIの台頭による検索行動の変化は、ユーザーとの接点の作り方そのものが変わることを意味します。
AIに「信頼される情報源」として選ばれることは、そのための手段にすぎません。突き詰めれば、今後ますますユーザーが求める答えを「正確にわかりやすく」伝えるコンテンツの価値が高まっていくでしょう。
これはつまり、これまで以上に「コンテンツの質」が問われる時代になったということに他なりません。SEOの技術的な最適化も大切ですが、本質的に重要なのは、ユーザーの疑問や課題に対して、真に価値ある情報を提供できているかどうかです。
私たちマーケターは、この変化を「脅威」ではなく「チャンス」として捉え、改めてユーザーにとって価値ある情報の提供を突き詰めていく必要があります。AIという新しい「仲介者」を通じて、より多くのユーザーに価値を届けるための挑戦が、いま始まったのです。
▼参考
How To Train Google's AI To Send You Customers|Neil Patel
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