株式会社イノーバは、『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』出版を記念して、ゲストをお招きした対談セミナーをシリーズ開催しています。
2026年4月23日(木)に実施された第4回のゲストは、インドを本拠点とするデジタルマーケティング企業 STORYTELLING LLPの創業者/CEO 見上すぐり氏。
日本のデジタルマーケティング黎明期、広告ありきの手法に強い違和感を覚えていたという見上氏。宗像の提唱する「無理やり売りつけるのではなく、顧客に価値を届けて信頼を得る」というコンテンツマーケティングに深く共感し、当時はすがるような思いで取り組み始めたといいます。
その後、国内外の市場で着々と実践を重ね、成果を生み出し続けた見上氏は、「コンテンツマーケティングは誰でもできて、どこでも通用する再現性の高い手法です」と語ります。
本記事では、こうした同氏の実体験をベースに対談をダイジェスト形式でレポートします!
目次
TABLE OF CONTENTS
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💡この対談のポイント ・環境の変化をポジティブに捉え、自らのキャリアを柔軟に再定義する姿勢が活路を開いた ・地道なコンテンツ発信の継続が「信頼」を積み上げ、大手案件を引き寄せた ・AI検索時代だからこそ、「ニッチな領域×独自の事例」が強力な強みに ・ソートリーダーシップの確立が、採用・営業コストを劇的に下げた |
登壇者プロフィール
STORYTELLING LLP 創業者/CEO
見上 すぐり氏
明治大学卒業後、三井住友信託銀行に入社。その後、海外IR・マーケティング支援会社にてITを中心とした欧米企業の日本向けローカライゼーションを支援。
2016年、夫の駐在に伴いインドへ移住し、フリーランスとして活動を開始。2019年、インドを本拠点とするデジタルマーケティング会社 STORYTELLING LLP を創業。現在は、インド人を中心とする異文化チームと共に、グローバル企業の日本・インド・中東市場における事業展開を、コンテンツマーケティングを軸としたデジタルコミュニケーション戦略の立案から実行まで一貫して支援し、日本ブランドと海外市場をつなぐ現場に立ち続ける。2児の母。
株式会社イノーバ 代表取締役社長CEO
宗像 淳
2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。
「駐妻」がインドで起業したきっかけ
宗像:本日お話しいただく見上さんですけれども、インドで起業して会社をやられていて、しかも子育て中の女性でいらっしゃって…というところで、ぜひたくさん学ばせていただきたいな思っております。よろしくお願いいたします。
見上氏:ありがとうございます。10年前にデジタルマーケターとして駆け出しだったころ、宗像さんの本をバイブルのように読んでいまして。本日ここでご一緒させていただけるということでとてもありがたいです。よろしくお願いいたします。
宗像:ありがたいお言葉です。本当に感謝でございます。
早速なんですけれども、見上さんは旦那さんの駐在の関係もあってインドに行かれた中で、最初は会社を立ち上げるというよりは、フリーランスのような形で仕事をされていたんでしょうか。
見上氏:そうですね。実はちょうどインドに来る直前くらいから会社員をしながらパラレルワーク(2種類以上の仕事を同時に手がける働き方)を少し始めていて。実はイノーバさんを見つけて、ライターとしての業務委託のお仕事をいただいたところから、私のフリーランスジャーニーがスタートしました。
宗像:そうなんです、実は弊社でライターとしてご活躍いただいていたんですよね。その節はありがとうございました。
見上氏:それがきっかけで、フリーランスというお仕事ができるんだという気づきと、ちょうどそのとき夫のインド赴任が決まってしまって。子育てをしながら細々とキャリアを途絶えさせない、学びの一環のような形で、数社様のSEOライティングであったり、デジタルマーケティングのコンサルタントのようなことをやらせていただいていました。
第二子がすぐ生まれたこともあって、2、3年はほぼ専業主婦兼、MBAのパートタイム(平日夜間や週末に授業を受けて取得する経営学修士)を取ったり……という形でインドで過ごしていました。
宗像:なるほど。そんな中で自分で会社を立ち上げるというのは、結構なジャンプというか、ホップステップジャンプくらいあるかなと思うんですけれども(笑)、そこに至るきっかけは何だったのでしょうか。
見上氏:「駐在員の妻」というポジションになかなか馴染めなかったということもあり、何か自分でやりたいことを見つけないといけないと思っていました。
そんな中でたまたま同じマンションに住んでいて出会ったのが、ロシアとかアメリカ、スペインなどから来ている駐在員の女性たちで。奥様が大黒柱で旦那様が着いてきているという、日本では結構珍しいパターンの方たちだったんです。メイドさんとかヘルパーさんをガシガシ雇って全部アウトソースして、仕事も家族も自分も楽しむという彼女たちにすごく刺激を受けました。
あとは、インドって起業家文化が非常に強いんです。サラリーマンでいるよりも、起業家がゴール、という感じで。うちは最終的に夫も元居た会社を辞めて私の会社に入ったので、インド人からは「Congratulations!(おめでとう!)」でした(笑)。
でも当初は、起業というよりは「フリーランスとして自分でお金を稼ぎたい」という目的で、ビザの関係もあり会社を設立した形ですね。そうして一人で仕事を始めるというところがスタート地点でした。
宗像:面白い!インドという異国の地でご自身のキャリアを見直されたと同時に、欧米の「駐妻」ならぬ「駐夫」のような真逆のシチュエーションを目の当たりにして、インスピレーションを感じられたところもあったんですね。
宗像から見上氏への質問が止まらない、大盛り上がりの対談でした

夫の参画は「究極のリファラル採用」
宗像:インドで起業されてから、お客さんは割とスムーズに集まっていったんでしょうか。
見上氏:実は最初に1社だけ、もし起業したらお願いしたいと言ってくださっていた会社様がいらっしゃったんです。1ヶ月10万円にも満たない規模ではありましたが、とりあえずもう何でもやってみよう!というところから始めました。
で、ちょうど創業してすぐコロナ禍になったので、多くの企業様がデジタルマーケティングへのシフトを迫られているタイミングだったんです。なので、私のデジタルマーケティングという業種にとっては好機でした。政府のお仕事が舞いこんできたり、大きな会社さんとのつながりが持てたり……という感じでしたね。
宗像:今は現地で社員の方を何人か雇っていらっしゃるんですか?
見上氏:今全体で私たち夫婦も含め10名くらい。トップは私と夫で日本人なんですけれども、他はインド人と、あと中東にもチームがあって、日系企業様向けのインド向け・中東向けのご支援をさせていただいています。
▶STORYTELLING LLPの紹介ページがこちら
宗像:中東もなんですね!
すみませんちょっと興味津々で質問が止まらないんですけれども(笑)、旦那さんが途中でジョインされたのは、どういう経緯だったんでしょうか?
見上氏:実は夫が来たいと言ったというよりも、私がもう仕事がオーバーフロー(キャパオーバーの状態)してしまって。もう回せなくって、会社を畳むか、日本に帰るか……みたいな感じだったんです。コロナ禍でチーム作りもなかなか難しくて。なので、「お願いだから駐在員をやめてうちの会社に来てください」と。
宗像:なるほど、ある種の「究極のリファラル採用」みたいな感じだったんですね(笑)
見上氏:そうなんです(笑)。
コンテンツ発信を積み重ねることで、お客様が増えた
宗像:見上さんご自身がコンテンツマーケティングを実践されて、コンテンツの発信を積み重ねてお客さんが来て……みたいなことがあったのかなと思うんですが、具体的にはどうやって開拓されていったんでしょうか。日本の大手企業の支援もされているし、しかもインドにいらっしゃって、というところの実体験をお伺いできればうれしいです。
見上氏:基本的には、私もイノーバさんで修行をさせていただいたので、「イノーバ流」でやっているんですけれども(笑)。まずは記事をしっかり書いていくということですね。特にインドって、今AIで検索しても正しい情報が出てこない、というくらい正確な情報がまだまだ足りていないんです。より基礎的なこととか前提条件みたいな情報が求められていたり、「これについて日本人から聞きたい」みたいなニーズもあったりする。そういったコンテンツを積み上げていきました。
▶「イノーバ流」コンテンツマーケティングの解説はこちら
あとは日本人の方が結構見られているFacebookをしっかりと更新していくということも意識してやっていました。そして、お客様の名刺が200社くらいになってからHubSpotを導入して、メールマーケティングで書いたブログを出す。とにかく計画するよりも書いて出す!というのをひたすら2,3年続けました。
▶HubSpotについて詳しくはこちら
その中で、インドに参入される日本企業から「5社ぐらいでコンペをするので参加してください」といったお話しが定期的に入ってくるようになりました。うちの会社は今7年目なんですけれども、本当に大きい案件というのが入ってくるようになったのは5年目くらいからですね。当初ゼロだったものが信頼という形で積みあがっていったと言いますか。
今はインド系企業からのお仕事も全体の2割くらいいただいているんですが、そちらはLinkedInが主戦場ですね。お客様の事例や自分が登壇した講演風景みたいなもの、あとはちょっとしたインサイトを投稿し続ける。そうすると、「見上すぐりってこういう人間なんだな」ということを皆さん理解してくださって、色んな引き合いが入ってくるようになりました。
宗像:いやぁ、素晴らしいですね。
大きい会社さんから案件がくるまでに5年かかったとおっしゃっていましたが、それまでには詰み上がっていく実感みたいなものはあったんでしょうか?継続的にコンテンツを出していくことで、サイトのアクセス数が増えるとか、問い合わせがくる、というような。
見上氏:もうあの、デジタルマーケティングの素晴らしいところは明確に数字が見えるというところだと思ってまして、徐々に閲覧数が増えていくのは目に見えてわかりました。弊社は敢えてデジタルブランディングとマーケティングに絞って出しているので、市場を見てくださるお客様っていうのは非常に限られているんですね。なんですけれども、その中で今度はすべての記事のランキングを5位以内にみたいなところまでいったりとか、デジタル上での信頼の積み重ねみたいなものが非常によくわかりました。
その中で引き合いがポンと入ってきたり、メールマガジンも開封率が上がっていったりとか。お客様が社内でメールマガジンを50人くらいに転送してくださって、次にお会いしたときに「あれ見たよ!」みたいなこともありました。デジタル上での営業接点で、お話が次につながりやすい、みたいなことはいつも体感していましたね。
「インド進出したくなってきた」という宗像に、見上氏が「ぜひ来てください!」と応える場面も

AI検索が台頭しても、サイト流入は落ちなかった
宗像:今、Google検索にもAI Overviewsみたいなものが登場したり、いわゆる「AI検索」が普及してきていますよね。そうした中でアクセスが落ちているというご相談をよくいただくんですが、御社サイトのアクセスの変化っていかがですか?
▶AI検索について詳しくはこちら
▶SEOの世界的権威との対談セミナーレポートはこちら
見上氏:うちはニッチすぎて落ちないんですよ。
宗像:あっすごい!そうなんですね。
見上氏:うちはもともと広くとっていないので、「平たすぎる情報」ではないんですよね。そこがちょっと課題感でもあるんですけど。なのであまり影響はなかったですね。
宗像:見上さんのところみたいにピンポイントで、ニッチでロングテール(検索ボリュームは少ないものの、具体的でニッチなニーズを持つユーザーに向けたWebサイト)で、みたいなサイトはたぶん影響が出にくいんでしょうね。基礎的な情報はAI検索で完結するにしても、具体的な価格のように最後はWebサイトにいかないと得られない情報もある。そこがうまく発信できていると、良いんでしょうね。
見上氏:うちの場合は、価格というよりは事例を絶対その記事内に入れるようにしていますね。クリックして見ないといけない、みたいな状態にしているのがロングテールでやっていて良かった点かなと思っています。
採用費ゼロ⁉ 1投稿で50件応募が来るLinkedIn活用術
宗像:見上さんは採用費ゼロで現地の人材を雇っていると伺ったんですが、それって本当ですか?
見上氏:ゼロです。社内コスト(人件費など)はもちろんありますけれども、外部のベンダーを使ったりとかは一切していないです。
宗像:それはどうやって実現されているのでしょうか?秘密をちょっと伺ってもよろしいですか。
見上氏:これはサービスとしても提供していますし、どこにでもありふれたシンプルなセオリーなんです。
まず、LinkedInに自社のアカウントを持つ。そこに、本当に月2個とかでいいので、会社が「何をやっているのか」であったり「どんな創業ストーリーがあるのか」といったシンプルなことを掲載していく。
そして、インドはソートリーダーシップが非常に大事なんですけれども、AIの時代になって、さらに「誰が話すか」ということが重要になっているんですね。なので、私自身も自分のアカウントを持って月に5個ぐらい発信するということをやっています。もう忙しくて手が回らないので会社の投稿をリポストするとかなんですが。
そして、こういう人材が欲しいとなったときに、広告なしで「こういうポジションの人が欲しいです」という投稿をするだけです。基本的に1回投稿すると、50件くらいのレジュメ(職務経歴書)がバーッと来ます。
宗像:50!すごい。
見上氏:そもそも今デジタルマーケティングという産業が盛り上がっているのもありますね。トップのCxO(特定の専門領域を統括する最高責任者)であればヘッドハンティングとかじゃないと難しいかもしれないですけど、LinkedInで一番バリューがある40歳以下くらいのジュニアミドル層からはたくさん応募が来ます。50人来た中でいいなって思う人は残念ながら5人いかないくらいなんですけれども。その中から1人採用くらいのペースで、四半期に1回くらい採っていますね。
宗像:すごいな。計画的に採れるという良さがすごくありそうですね。1投稿で1人取れるくらいの目算が立つわけじゃないですか。
見上氏:そうですね。ある程度うちの会社のカルチャーみたいなものはLinkedInの投稿で理解してもらった上で面接に入りますので、そこが通常のメディアを使った採用よりはマッチ率が高いと思います。
あとは、メッセージを直接やり取りする中でコミュニケーションのスタイルとかもわかるので、その時点である程度の絞り込みはできますね。昨年50人くらい採用したうちの半分くらいはLinkedInからでした。
宗像:ものすごくコスパがいいですね。
見上氏:日本と違った大変さはありますが、LinkedInの使用者が世界で2番目の国でもあるので、インドにおいてはLinkedIn活用の採用は結構楽というか、いろいろやりようがあるかなと思います。
まとめ
今回の対談を通じて再確認できたのは、コンテンツマーケティングが単なるテクニックではなく、国境を越えて通用する「誠実なビジネスの土台」であるということです。
見上氏がインドの地で体験してきたエピソードの数々は、AI時代において私たちが立ち返るべき「個の視点」や「ビジョンの重要性」を示唆するものでした。1時間の枠では到底足りないほど興味深いトピックが次々と飛び出し、「ぜひ続編を!」との声が社内外で上がっています。
セミナー本編では本レポートの内容に加え、見上氏が現地で見てきた「日本企業が海外進出でぶつかる壁」や、インド特有のビジネス文化、現地採用をする中で直面した困難などさらに掘り下げた実体験のエピソードについて熱いトークが展開され、大好評の対談でした。
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ご好評いただいている対談セミナー企画は、ただいま続編を企画中です。
引き続き多彩なゲスト×CEO宗像で熱いトークを展開する予定です。どうぞお楽しみに!
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