株式会社イノーバは、『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』出版を記念して、ゲストをお招きした対談セミナーをシリーズ開催しています。
2026年3月11日(水)に実施された第2回のゲストは、サイバーエージェント新卒1期生からVC取締役、大手執行役員、スタートアップCOOまでを歴任し、デジタルマーケティングの黎明期から現在に至るまでの変遷を最前線でリードしてきた大下徹朗氏。
本セミナーでは、書籍の第7章「これからのマーケターに必要なスキルセット」を深掘りし、AI時代に「生き残る」マーケターになるためにはどうすべきかを考えます。
この記事では、マーケター自身のキャリア形成と、管理職・経営層側のマーケター育成に関するトピックを中心に、ダイジェスト形式でレポートします。
目次
TABLE OF CONTENTS
|
💡この対談のポイント ・優秀なマーケターの定義は「細かいこだわりのある人」 ・マーケターに欠かせないスキルは「言語化」 ・これからのマーケティング部門は「経営視点」が不可欠 ・マーケターのキャリア形成では「いろんな立場の視点を知ること」が重要 ・優秀なマーケターを育てるには「まずやらせてみる」 |
登壇者プロフィール
株式会社Macbee Planet 事業開発Vice President
大下 徹朗氏
サイバーエージェントに社員番号40番台の新卒一期として入社、のちに広告代理店事業の統括メンバーとして約400名の組織を牽引し売上高を5年間で180億円から500億円へと成長。その後、同社VCにて取締役を務め、40社への投資判断と経営支援を実施。
同社退職後は2社のスタートアップ経営に参画、さらにアイスタイルでは営業部門責任者として2年間で売上を1.5倍に拡大。
パーソルホールディングスグループの組織人事コンサル事業会社にて執行役員も務め、B2Bビジネスにおける戦略と組織運営を実践。
スマートニュースではIndustry Sales部門の責任者を経て、買収子会社のCOOとしてPMIをリード。
現在はMacbee PlanetにてHD代表直下の事業開発Vice Presidentに就く。
慶應義塾大学総合政策学部卒。
株式会社イノーバ 代表取締役社長CEO
宗像 淳
2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。
「優秀なマーケター」とは、「こだわりのある人」
宗像:大下さんはこれまでサイバーエージェントに始まりメディアやマーケティングの事業会社側にいらっしゃったわけですが、経営にも関わる中で、大下さんの考える「優秀なマーケター」の定義とは、どんなものでしょうか。
大下氏:「優秀なマーケター」として私が想起する人って何人かいるんですけれども、共通項は、皆さん非常に「いい意味で細かいこだわりがすごくある人」ですね。社内での部署異動やご転職があっても、その人ならではの細かいこだわりが常に生きていると感じます。
例えば、今私がいるMacbee Planetのグループ会社で、クライアント企業のマーケティング支援で制作物を作る立場の人間がいるんですけれども。彼女は社内チャットに自分のチャンネルのようなところを作って、「あのクリエイティブはこういう点がこういう理由で良い」「このターゲットに向けてのクリエイティブはこういう表現を使うと最初のアテンションが増える」など、独自のこだわりを毎日のように発信しているんです。そうすることで、何十人、何百人という社員がいる中でもやはり目立つんですよね。「〇〇業界向けのクリエイティブといえば〇〇さん」というブランドが出来上がっている。
マーケターも同じで、まずは自社のマーケティングでも他社のマーケティング支援でも、最低限「社内で目立っている」必要があるかなと。
マーケティングは、たくさんの方々からの第一想起を得て「こういうときはこの会社」と思ってもらわないといけないので、つまり社内でも他の人からの注目を得ることすらできない人は、たぶん社外の注目を得ることはもっと難しいと思います。
宗像:なるほど。まさにこだわりがあるからこそ意見が言える、発信できる。それを周りの人が聞いて、「じゃあちょっと次はこの人に頼んでみよう」と思ってもらうことが、社内でも必要だし、対社外でも必要ということですね。
マーケターに欠かせないのは「言語化」スキル
宗像:こだわりについて、僕もその通りだと思っているんですが、その「細かい差」っていうのは一体何から生まれてくるんでしょうか?
あまり好きな言葉ではないのですが(笑)、いわゆるマインドセットのように、どういった考え方の軸を持っていると、その「正しい細かさ」「こだわり」にたどり着けるのでしょうか。どうしてもマーケターは、「まだまだ私なんて」という「駆け出し意識」みたいなものが強いとも思うんですけど、そういった皆さんに「こういう風に考えたらいいよ」というアドバイスをいただきたいです。
大下氏:コツとアドバイスというところでいうと、やっぱり常に言語化しましょうというところですね。
「この広告いいな」とか「このマーケティング施策いいな」と思ったときに、じゃあなんで良いと思ったのか、そこを自分に2,3回問うぐらい細かく正確に言語化して、50文字くらいに起こして残しておく。書いておく、ということがすごく大事です。それで、さっきのクリエイティブ担当者のような発信をすると、なお良いと思います。
なぜ言語化するのが良いかと言うと、やはり実際にマーケティング活動もしくはマーケティング支援活動をしていると、市場環境の変化など色んなことが起きてうまくいかないときがあるんですよね。その時に「うまくいっていたこと」がちゃんと言語化できていれば、それを再現しやすいんです。言語化は非常に大きなコツだと思います。
よく観察して、構造化して、言語化するというところを繰り返すトレーニングが、マーケターがレベルアップするための大事な要素じゃないかなと思いますね。
宗像:そういう意味だと、ますます変化が早くなっている時代の中で、やはり常に自分の中での虎の巻みたいなものを常にアップデートし続ける、うまくいった/いかなかったことを正しく振り返ることは重要ですね。
配信時には、書籍を手に取ってお話しされた場面も
これからのマーケティング部門は“経営視点”が不可欠
宗像:このセミナーのタイトルでもありますが、マーケターがAI時代に“生き残る”条件とか陳腐化しないスキルといったところにおいても、こうした言語化や振り返りがあてはまるでしょうか。
大下氏:そうですね。自社マーケティングの場合、会社さんによってはマーケティング部署の存在感が他の部署に比べて弱いという場合もあると思うんです。やっぱりそれじゃダメだと思うので、マーケとしては、「こういうお客さんにはこういう対応をして、市場はこういう風に見ていて、営業がより決定率を上げるにはこうするべきだ」みたいな意見をちゃんと持った上で、発信をして、しっかり予算を確保する。そして、部署のプレゼンス(存在感)を上げていって、ひいては、自社のサービスが世の中から第一想起される、みたいなところ。マーケティングはそういった視点も包括的に考えられるポジションだと思いますので、そのあたりも念頭に置いて活動されるとよいのではと思います。
宗像:面白いですね。やはりマーケティングの目先のゴールだけではなく、会社の利益を伸ばしていくという視点で分析したり、考えをまとめたり、経営者とコミュニケーションをとったりというところがまず必要になるということですね。
大下氏:おっしゃる通りです。ありがちなのは、例えば「今月発生したリードは何件でした」とか「リードから商談に転換したケースは何件で何パーセントでした」ってすごく大事な部分ですし、今月再来月の業績に直接ヒットする部分だとは思うんですけれども。経営視点で言うと、やっぱり「長期的に勝ち続ける」ことを考えるべきですよね。
仮に今コンタクトしていただけたリードの総数が累計1万あるとすると、その1万人から実際すぐ購買に至る人っていうのはごくわずかだと思うんですが、日本で働いている方が5,6千万人いるなかで、そのうち1万人が来ているということは、0.02%しかないというめぐり合わせじゃないですか。たまたま情報収集しただけなのかもしれませんけど、せっかく接点を持てた方を放っておくということは、経営側はしないと思うんですね。次に何かタイミングが来た時に、自社のサービスを第一想起してもらいたい。そのためには…と設計することが、経営視点を共有することだと思います。
マーケターの「理想的な職歴」とは?
宗像:大下さんは、マーケターのキャリアにおいて理想的な職歴であったり、絶対持っておいたほうがいい要素みたいなものって何だと思われますか。
大下氏:業界を広く知っておく、いろんな立場の人たちを知っておくことは大事だと思います。
例えば、最初は広告代理店やマーケティングを支援するような会社に入って、お客さんに揉まれるで、次は逆に発注する側に行ってみて、社内で予算取りをしてマーケティング活動をする。実はそっちの方がプレッシャーは大きいんですけどね(笑)。
このように経験を重ねて、前後してもいいんですけども、マーケティング活動を支援するツールやシステムの会社に行ってみるとか。複数の視点を持っている方というのは、やはりいろんな発送が柔軟に出てくるなと思います。
宗像:たしかに。
大下氏:一方で、同じ会社の中で複数の職種をご経験されて、今もマーケでバリバリやられている方というのも相当手ごわいので、そういったキャリアも非常に強いと思いますね。
宗像:マンネリ化していはいけないってことかもしれませんし、あるいは「マーケティング=細部にこだわらなきゃいけないアート」なんだとしたときに、いろんな角度から良い作品をたくさん見る、あるいはたくさん作り切ってくることによって、その能力が磨かれるということもあるかもしれないですね。
優秀なマーケターを育てるには「まずやらせてみる」
宗像:採用や育成の話で言うと、「マーケターの採用をしたいです」というときに、理想としてはやはり経験者を取りたいところですが、経験者でベテランで、しかも会社に与えられた給与予算内で…というと厳しい部分もありますよね。未経験の人を採用するとなったときに、大下さんは何を見て採用されますか?
大下氏:やはり「喋っている内容がわかりやすくて、センスがあるかどうか」ですね。やはり言語化がうまい人は社内も動かせますし。基本マーケティングは十分な予算がない中で予算を取らなきゃいけない部署だと思うので、しっかり言語化ができる人で、人の心も動かせる人というのは大事ですね。
営業職は採用しづらいと言われていますが、じゃあマーケ人材をひとり採用すれば営業5人分の効果が出せます、ということもあるので。そういう風に狙っていく中では、ジュニアクラスにどんどん育成の機会は出てくると思います。
宗像:育成で言うと、マーケってやはり業務に追われがちな職種でもあるかなと思います。一方で自分のスキルアップだけに余念がない人が活躍できるかというとそうでもない。仕事に没頭してそこで成果を出すことと、能力開発のバランスをうまくとれる人がいいような気もしますけれども、「人はいるけど育てられなくて困っている」みたいなケースもある。
こういうとき、大下さんならどんなアドバイスをされますか?
大下氏:そうですね、その場合は「ちょっと意思決定をしてみなさい」と言ってみますね。与えられた条件はこうなんだけど、この中で何をやるべきかをひとつ意思決定してみなさい、というトレーニング。過去データがない状況で正解がよくわからないままAIに頼っても決定しづらいというときに、こう考えて意思決定をするという練習をして、そこで上司も納得できたのであれば、一緒にそのプロジェクトを進めていけばいいと思いますし。
宗像:基本はやっぱり本人が一旦考えて案を出してみる。上司が伴走でことをやり切ってみる、みたいなところが一番の育成につながるんですね。
今日ご参加いただいた方はマーケターとして専門性を深めたい方もいれば、管理職として部署を伸ばしたいという方もいれば…と多岐にわたるバックグラウンドの方たちだと思うんですが、最後に大下さんから皆さんにメッセージをいただけないでしょうか。
大下氏:社内でも、業界でも、「〇〇といえば誰々さん」と言われるような、その〇〇を決めきればいいんじゃないかと思います。それは自分の得意技とか領域とかなんでもいいんですけれど、その個性で人やお金、お客様も動いてくるんじゃないでしょうか。
まとめ
AI時代のマーケターに求められるのは、ツールを使いこなす技術以上に、「細部へのこだわり」を自らの言葉で「言語化」し続ける姿勢です。
短期的な数字(リード数など)に一喜一憂するのではなく、経営的な視点を持って「いかに長期的に勝ち続けるか」を考え、自ら意思決定の場数を踏むことが、代替不可能なキャリアを築く最短ルートとなります。
まずは社内外で「〇〇の領域ならあの人」と第一想起される独自のこだわりを磨くこと。その積み重ねこそが、変化の激しい時代を生き抜くマーケターの最強の生存戦略と言えるでしょう。
セミナー本編では、大下氏がサイバーエージェントに就職したきっかけなど、生きた体験談もお話しいただき、視聴者の皆さまからも、「マーケターとしてあるべき姿の根幹が知れた」「非常に勉強になった」と大好評の対談セミナーでした。
\出版記念の対談セミナーは、今後もシリーズ開催いたします!/
多彩なゲスト×CEO宗像が、AI時代×コンテンツマーケティングに関してさまざまな切り口で熱いトークを展開します。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!
▼開催予定
【4/16,17開催】世界的権威と読み解く“AI検索時代のSEO”
【4/23,24開催】世界で通用する「コンテンツマーケティング」の真価
▼開催済(セミナーレポート)
【3/4,5開催】リード獲得数が10倍に!Webサイトが“営業の武器”に進化した舞台裏

