マーケティングに携わる方なら、「ブランディング」という言葉を一度や二度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかい、いざ「ブランディングの意味を説明せよ」と言われると、すぐには答えられない人も少なくないはずです。
この記事では、知っているようで意外に知らない「ブランディング」の意味を解説し、あわせてブランディングの重要性やメリット、やり方や事例なども紹介します。
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ブランディングとは?
ブランディングとは、読んで字のごとく「ブランド」を形作るための様々な活動を指して使われる言葉です。
「ブランド」というのは、簡単に言えばある商品を、別の(類似した)商品から区別するための一連の要素です。商品のデザインやシンボルマーク、ブランドロゴ、商標、名称、キャッチフレーズ、記号など、様々な要素が組み合わさってブランドを形作ります。そして、そのような「ブランド」を消費者に認知させ、市場におけるニーズを知り自社(製品、商品)の強み・ポジションを明確化するのが「ブランディング」という活動です。
分かりやすく言うと、「〇〇といえばあの商品」「このシンボルマークはあのサービス」…といったイメージを、ターゲット市場にうえつけ、浸透させるのがブランディングという活動の目的です。
「ブランド=高級品」は間違い!?
「ブランド」という言葉からつい高級品を連想してしまう人もあるかと思いますが、ブランドは高級品のためだけの概念ではありません。
例えば、どこのコンビニでも目にするチロルチョコは、かつて1個10円という分かりやすく買いやすい価格で人気になり市場に広く認知されていました。これは決して高級品ではありません。昭和生まれの方なら、「チロルは10円」を連呼するCMメディアを覚えていらっしゃるかもしれませんが、あのブランド戦略により「10円で買えるお菓子といえばチロルチョコ」という意識が市場に広く浸透したのです。
ブランディング、マーケティング、プロモーションの違い
ではブランディングは、マーケティングやプロモーションとどう違うの?という疑問がでるかもしれません。
ここでは、ブランディング、マーケティング、プロモーションについてそれぞれ解説します。
ブランディング | 消費者のイメージ高めたり他社商品・サービスとの差別化を図ったりする戦略のこと |
マーケティング | 商品・サービスの売上を伸ばすためのトータル戦略 |
プロモーション | 商品・サービスの売り方に当たるマーケティング領域の一部 |
つまり、ブランディング戦略は、自社の社名や商品・サービス名の認知度や印象を上げることに重きを置いており、マーケティング戦略の上流に位置します。
マーケティング戦略はブランディング戦略で向上した認知度や印象を活かし、いかに商品・サービスの売上を伸ばすかという戦略全般に関わっており、プロモーションはそのマーケティング戦略の一部になります。
ブランディングの種類
ブランディングは一般的に、対象者別、内容別に、以下の種類に分けられます。
対象者別
対象者別には、アウターブランディングとインナーブランディングとあります。
アウターブランディングは、商品やサービスの知名度をあげて安定的な販売や新規顧客の獲得につなげ、リピーターになってもらうための、外部に対する商品のブランディングです。対象は顧客や取引先だけでなく、ステークホルダーである投資家も含まれます。
一方インナーブランディングは、自社の社員に対して行うブランディングです。取り扱う商品やサービスそのものではなく、会社がいかに働きやすく、ベネフィットがあるかを社員にアピールすることで、会社に対するエンゲージメントやモチベーションを高めるためのものです。従来インナーブランディングは、マーケティングの観点では重視されていませんでしたが、人手不足解消や、競合他社からの引き抜き防止、定着率向上、無駄なコスト削減により業績にも影響をあたえるという点で、認識されるようになりました。
内容別
内容別では、企業ブランディングと商品ブランディングとあります。言うまでもなく、企業ブランディングは企業の、商品ブランディングは商品の、認知度を高めるのが目的です。
企業ブランディングはいわゆる企業イメージのアピールで、自社の株主やサプライヤー、一般消費者、地域社会、行政機関、金融機関などのステークホルダーに、信頼される企業としての地位を確立するためのものです。
製品ブランディングは、ある目的や用途に対して、その製品ならではの、他の製品と差別化された付加価値をアピールすることです。
Webマーケティングにおけるブランディング
Webマーケティングにおいても、ブランディングに活用できる施策は数多くあります。
Webサイトをブランディングに役立てることもできますし、ブログを通じたコンテンツマーケティングや、SNSの運用、広告、アフィリエイトといった施策を通じて顧客に接してもらう機会を作ることでブランディングを行うことももちろん可能です。
前項で述べたように、ブランディングのためだけの特別な施策があるというより、Webマーケティングで展開される様々な施策をブランディングに役立てるのだと考えると分かりやすいです。
WebサイトにしてもSNSアカウントの運用にしても、ブランディングを全く意識することなく展開されることは少なくありません。一方で、ブランディングを意識して活用すれば、同時にその方面への効果をも上げていくことが可能です。
なお、ブランド認知度を高めることを目的としてマーケティング活動を行う場合ももちろんあります。例えば、広告は一般に集客のために用いる施策ですが、動画広告や大手サイトにおけるバナー広告などをブランドの認知度向上に役立てることもできます。
なぜブランディングが必要なのか
ブランディング施策は、企業のマーケティングにおいて必ず実施しなければならない活動というわけではありません。現に、ブランディングを目的とした特別な活動は行っていないという企業はいくらでもあります。
では、敢えてブランディングを行うのはなぜでしょうか。ブランディングには、以下のメリットがあります。
価格競争に陥らない
ブランディングにより、このブランドだったら多少値段が高くても買うという意識を持たせることが可能となり、無理な安売りによる顧客や市場の獲得を避けることができます。
ロイヤルユーザーを獲得できる
ブランディングが成功するとブランドに対する顧客の信頼が確立され、ロイヤルユーザーによる安定的で継続した販売が期待できます。
広告宣伝費が最小限に抑えられる
ブランドが確立されると、特に積極的な販促活動をしなくても集客が可能となり、製品やサービス自体のさらなる向上に専念できます。
人材確保につながる
インナーブランディングにより社員のモチベーションやエンゲージメントが高まれば、人材の確保につながり、採用コストの削減にもつながります。また社員の潜在的な転職意欲の排除にもなるでしょう。
新製品の導入と新しい市場の開拓がしやすい
既に認知されているブランドは常に注目されているため、新製品の導入や新しい市場の開拓を実施するときに認知獲得施策にかけるコストの削減につながります。
知的財産の法的保護が受けられる
ブランドはロゴやキャッチコピーなどを伴います。ブランディングの過程でこれらを知的財産として法的に保護することで、模倣品や類似品の排除が可能となります。
ブランディングの進め方
ブランディングは、次の4つのプロセスで行います。
①環境分析と現状把握
まず自社が社会的ポジションのなかで、どこに位置しているのか、社外からどう見えているのかを分析します。自社をとりまく環境の効果的な分析としては、PEST分析、3C分析、SWOT分析、STP分析などの手法があります。
②ブランドの定義
現状が把握出来たら、続いて自社のブランドを定義します。その際には、次のポイントを考慮します。
- ブランドの特長
- ブランドの社会的な役割
- ブランドのビジョン
- ブランドのパーソナリティ(差別化)
- ブランドの提供価値*
- ブランドのシンボル(ロゴやキャッチコピー、デザインなど)
*ブランドの提供価値においては、消費者が商品やサービスを手にした際に得られる喜びや満足感である「実利価値」や、好みや感性にフィットすることで得られる「感性価値」、実感や体験などのポジティブな気持である「情緒価値」、自尊心を満たせる喜びである「共鳴価値」を意識します。
③ 伝達方法のプラニングと実施
次に、①の分析で決めた自社のターゲットに対して、どのような手段や方法を使えばもっとも効果的に自社のブランディングを発信していけるかを決めます。伝達手段としては、メディアの利用、商品やサービス自体の活用、イベントや店舗など消費者との直接対面、広告・PR・キャンペーンなどがありますが、自社のターゲットがもっとも利用する媒体を選択するのがポイントです。
④ ブランディングの評価と検証
さまざまな手段を使って自社のブランドを伝達したうえで最後に、ブランディングの評価と検証を行います。ここでのポイントは、単純に認知度が高まっているかどうかを見るのではなく、自社の製品・サービスが、消費者にとって第一想起のブランドになっているかどうかの検証を定期的に行うことです。そのための方法としては、CSI(Customer Satisfaction Index=顧客満足度指数)、CSIの日本版であるJCSI、NPS(Net Promoter Score=どれだけ人に勧めたいかの採点評価)などがあります。
ブランディングで意識すべきポイント
ブランディングを展開する上では、以下のポイントをおさえる必要があります。
誰に何を伝えるのか
先にも述べたように、ブランディングとはターゲットに対して自社の商品の価値を分かりやすく伝えていくという活動です。何を伝えるのか、つまりどの商品のどんな価値を伝えるのかが明らかになっていなければ、伝えるべきメッセージを組み立てることができません。また、誰がターゲットなのかが曖昧であれば、ターゲットの心に届くメッセージを作ることもできないでしょう。
自社のブランド確立の可能性検証
もう一つ、ターゲット市場で自社のブランドを確立できる可能性があるかどうかを、情報を整理し事前にきちんと検証しておくことも大切です。ターゲット市場に既に強力なオンリーワンが存在する場合、それを切り崩して自社のブランドを確立するのは簡単ではありません。困難であると知りつつ敢えて立ち向かうのも一つのやり方ではありますが、その準備がないのであれば、ターゲット市場とポジショニングを見直した上で、自社商品のブランドを再定義して挑む方が無難です。
ブランディングの成功事例
良く知られているブランドが、ブランディングをどのように成功させたのかの事例を、いくつか挙げてみましょう。
アマゾン
単なるオンライン書店だったアマゾンが通販の代名詞ともなるほど成長した秘訣に、顧客満足に徹した点が挙げられます。サービス開始当初から、顧客サービスにおける迅速なレスポンスに努め、顧客からのフィードバック収集とその的確な分析・対応を怠りませんでした。こうした日々の努力の積み重ねが、ブランド確立に至っています。
スターバックス
スターバックスの場合は、どこにでもあるという利便性の追求、コーヒー以外の高品質のメニューの取り揃え、おしゃれで過ごしやすい店舗のこだわりなど、普段の行動範囲内でいつもと違う別空間を求めるユーザーに的を絞ったブランディング戦略に徹しています。ターゲットとする客層が明確で、コンセプトがしっかり確立されていたことが、成功につながっています。
アップル
ブランディングの代表ともいえるアップルは、確固としたビジョンに基づく差別化に徹しました。今何が売れているかの市場分析ではなく、今後市場にどのようなニーズが生まれるかを先取りしたことも、成功の重要ポイントとなっています。
刷新的で独創的、クリエイティブなブランドのユーザーは、同じように刷新的で独創的、クリエイティブだとういう意識を消費者にうえつけることに成功し、差別化が際立つブランドを達成しています。
正しい理解に基づいて効果的なブランディングを行おう
正しい理解に基づいて効果的なブランディングを行おう この記事ではブランディングの意味、メリット、方法、ポイント、注意点について解説しました。縮小する日本市場で勝ち残るためにも、ブランディングの重要性は今後ますます高まります。グローバル化したメディア環境では、海外市場でのブランディングも視野に入れることが可能です。自社商品と顧客、競合を正しく理解し、効果的にブランディングを事業戦略に組み込むことが成功の鍵となるでしょう。
しかし、マーケティングの実践には様々な悩みや課題が付きまといます。そこでイノーバでは、企業の皆様に寄り添う伴走型マーケティング支援サービスをご用意しております。ブランディングを含めた戦略策定から計画立案、実行まで、中長期的な視点でお客様の事業成長をサポートいたします。ぜひご相談ください。
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FAQ
Q. ブランディングとは具体的にどのような活動ですか?
A. ブランディングとは、商品やサービスの認知度を高め、他社との差別化を図り、顧客の心に残るイメージを確立するための様々な活動を指します。ロゴやデザイン、キャッチフレーズなどを通じて、ブランドの個性や価値を訴求していきます。
Q. ブランディングを行うメリットは何ですか?
A. ブランディングにより、価格競争に巻き込まれにくくなり、ロイヤルユーザーの獲得、広告宣伝費の削減、人材確保、新製品導入や新市場開拓の円滑化、知的財産の保護などのメリットが期待できます。
Q. ブランディングの成功事例にはどのようなものがありますか?
A. アマゾンは顧客満足を徹底追求し、スターバックスはターゲット層を明確にしたコンセプトの確立、アップルは独創性を際立たせた差別化戦略により、それぞれブランディングに成功しています。
Q. 効果的なブランディングのポイントは何ですか?
A. ブランディングでは、ターゲットを明確にし、伝えるべき価値を具体化すること、自社ブランドの市場における優位性を見極めること、一貫性のあるメッセージを発信し続けることがポイントとなります。
Q. ブランディングを行う際の注意点はありますか?
A. ブランディングは一朝一夕には成果が出ません。長期的視点に立ち、一貫性を保ちながら地道に活動を継続することが肝要です。また、顧客の声に耳を傾け、柔軟に施策を改善していくことも必要不可欠です。