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宗像 淳 / イノーバCEO2024/11/06 14:32:111 min read

BtoBブランディング②|デジタル時代の顧客行動とは?データで見る劇的な変化

▶前回の記事はこちら

「営業に会わなくても、価値の高い情報を手に入れやすくなった」

「営業からの電話やメールに対して、顧客が次第に反応しなくなる」

これは、デジタル時代における顧客行動の変化を端的に表す現象です。

ある営業責任者は、こう嘆きます。

「以前は、新規開拓の営業担当者が飛び込み営業で案件を取ってきました。でも今は、いくら訪問しても会ってすらもらえない。何が変わったのでしょうか?」

その答えは、BtoB取引における顧客の情報収集と購買行動の劇的な変化にあります。データを基に、この変化の本質を理解し、これからのBtoBビジネスのあり方を考えていきましょう。

 

購買行動の具体的変化:データが示す現実

新しい情報収集のトレンド

全研本社株式会社 2021年3月

全研本社株式会社の2021年の調査によると、顧客の情報収集方法には明確な傾向が見られます。

リストの上位に入っているのは、

  1. 企業のサイトでの資料ダウンロード
  2. 商品・サービスサイトの閲覧
  3. インターネット検索
  4. 展示会

注目すべきは、従来型の営業活動による情報収集が上位に入っていないという事実です。

 

検討プロセスの実態

IT製品・サービスの選定に至るまでの情報収集源とは?【BtoBマーケティング調査報告】

メディックス社の調査ではさらに衝撃的な事実を明らかにしています。

  • 購買検討の7割は、営業に声をかける前に完了している
  • 残り3割での営業接触時には、すでに本命が決定済み
  • 多くの場合、営業接触時点では「当て馬」として選ばれているリスクが高い

これらの調査結果は、顧客の購買行動が根本的に変化していることを示しています。では、この変化の本質とは何でしょうか。従来のモデルと比較しながら、詳しく見ていきましょう。

 

購買行動モデルの劇的な変化

従来型:シンプルな直線的プロセス

B2B Buying: How Top CSOs and CMOs Optimize the Journey

従来の購買行動は、比較的シンプルな直線的プロセスでした。

  1. 問題認識
  2. 解決策の調査・検討
  3. 要件定義
  4. 評価・選定
  5. 購入の意思決定

このモデルの特徴は、営業担当者が主要な情報源となり、顧客と売り手の間に明確な情報の非対称性が存在していた点です。顧客は営業担当者を通じてしか、製品やサービスの詳細な情報を得ることができませんでした。

 

現代:複雑化する意思決定プロセス

B2B Buying: How Top CSOs and CMOs Optimize the Journey

しかし、現代の購買行動は、はるかに複雑化しています。この購買行動モデルが示すように、

  • 各段階でオンライン調査が行われる
  • 検討と意思決定が並行して進む
  • 社内での検討と外部からの情報収集が絡み合う
  • 予期せぬ要因で検討がリセットされることも

最も重要な変化は、このプロセス全体を通じて、顧客が主体的に情報収集を行っているという点です。この変化は、より根本的な顧客心理の変化を反映しています。

 

デジタルファーストの顧客心理

情報収集における主体性の確立

かつて顧客は、営業担当者という「情報の門番」を通じてしか、必要な情報を得ることができませんでした。しかし今や、製品情報から導入事例、さらには口コミや評判まで、あらゆる情報にオンラインでアクセスできます。

この変化は、単なる情報収集手段の変更ではありません。顧客が主体的に情報を収集し、自らの判断で選択肢を絞り込んでいくという、購買行動の本質的な変化を意味しています。

 

「待ってから会う」という新しい判断基準

「まだ営業には会いたくない」

この言葉には、現代の顧客心理が集約されています。彼らは必要な情報が十分に揃い、ある程度の方向性が定まるまでは、営業との接触を意図的に避ける傾向があります。

なぜでしょうか。それは、顧客が自社のペースで検討を進めたいと考えているからです。一方的な営業アプローチは、このプロセスを乱す要因として受け止められ、むしろマイナスの印象を与えかねません。

 

アナログ発想からの脱却:新時代の顧客接点戦略

デジタル時代の新しい接点作り

では、企業はどのように顧客との接点を作ればよいのでしょうか。ポイントは、顧客の自主的な情報収集をサポートする体制の構築です。

まず必要なのは、充実したオンライン情報の提供です。検索エンジンで見つけやすいコンテンツの整備、具体的な価値提案の明確化、そして顧客の課題解決に直結する情報提供が重要です。

これらの情報は、複数のデジタルチャネルを通じて効果的に発信する必要があります。ウェブサイトを中心に、ブログやSNSでの情報発信、メールマガジンによる定期的なコミュニケーション、ウェビナーやポッドキャストによる深い知見の共有など、それぞれのチャネルの特性を活かした統合的な展開が求められます。

 

実践のためのアクションプラン

では具体的に、どのようなステップで取り組めばよいのでしょうか。

以下に、段階的なアプローチをご提案します。

Step 1:現状分析

まずは自社のデジタルプレゼンス(=オンライン上での見え方)を客観的に評価します。競合他社の分析も重要です。特に注目すべきは、顧客がどのように情報を収集し、どんな判断基準で選択を行っているのかという点です。

 

Step 2:基盤整備

分析結果を基に、デジタル施策の基盤を整備します。ウェブサイトのSEO対策は必須です。同時に、長期的なコンテンツ戦略の策定と、それを実現するための社内体制の構築も進めます。

 

Step 3:コンテンツ展開

顧客の課題に応じた価値ある情報を、継続的に提供していきます。具体的な解決事例や、専門性を示す技術情報は、特に重要なコンテンツとなります。

 

Step 4:効果測定と改善

定期的なアクセス解析を実施し、施策の効果を測定します。結果を基にコンテンツを改善し、必要に応じて新たな施策を検討・導入していきます。

このサイクルを回し続けることで、デジタル時代に適応した、効果的な顧客接点を構築することができます。

 

まとめ:デジタル時代の新しい顧客接点戦略

「対面営業でここまでやってきたのだから、これからもそれでいい」

こう考える経営者は少なくありません。しかし、これは企業側の都合であって、顧客の行動の実態を見誤った危険な発想です。

この記事でご紹介したデータが示す事実を改めて確認しましょう。

  1. 購買検討の7割は営業接触前に完了している
  2. 情報収集の大半はデジタルチャネルで行われている
  3. 顧客は自社のペースで主体的に情報を集めている

このような変化の中で、企業に求められる対応は明確です。

  • オンラインでの充実した情報提供
  • 顧客の課題に即した価値提案
  • 適切なデジタルチャネルの選択と活用
  • 継続的な情報発信と関係構築

デジタル時代において、顧客接点の在り方は根本的に変化しています。この変化に適応できない企業は、「世の中に存在しないのと同じ」状態に陥るリスクがあります。

しかし、見方を変えれば、これは大きなチャンスでもあります。デジタルの特性を活かせば、企業の規模や知名度に関係なく、優れた情報発信と価値提供で顧客の信頼を獲得できるのです。

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BtoBブランディング①|なぜイメージ広告だけでは不十分なのか?
BtoBブランディング②|デジタル時代の顧客行動とは?データで見る劇的な変化【本記事】
BtoBブランディング③|技術や機能の説明だけでは競争力を持てない理由
BtoBブランディング④|3社の成功事例から学ぶ具体的手法
BtoBブランディング⑤|実践ステップ:小さな成功の積み重ね方
BtoBブランディング⑥|よくある疑問を一挙解決!

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携をまとめた。 2011年6月にコンテンツマーケティング支援の株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。