セールスイネーブルメントとは?営業活動の改善を促すメリットや成功のポイントを解説

経営・ビジネスハック

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、企業の営業に関するパフォーマンスを向上させる仕組みや取り組みのことです。

セールスイネーブルメントを実施することで、営業体制の改善や営業力の標準化などを進めることができます。

営業部門はもちろん、それに関する社内のあらゆる部門の現状を見直して新たなシステム作りを行えることから、営業成績を伸ばしたい企業や、営業に携わる人材育成に力を入れたい企業などから注目されているのです。

こちらではセールスイネーブルメントの基本的理念と、具体的なメリットや成功のポイントを解説します。

セールスイネーブルメントとは?

セールスイネーブルメントとは、営業で成果を出すための取り組みや仕組み作りのことです。

営業で継続して成果を出すための人材育成のシステム構築や、組織全体のパフォーマンスを向上させるための施策などがセールスイネーブルメントに当てはまります。

これまで実施されてきたOJTトレーニングのような部門ごとの研修などを行うのではなく、関連する組織全体で営業人材を育成するプログラムの計画や営業プロセスの構築、営業成果の分析や検証をしていくのが特徴です。

営業活動を特定の部門やチームに委ねるのではなく、全体で支援していくことで組織そのものの営業力を高めるのがセールスイネーブルメントの狙いだと言えるでしょう。

セールスイネーブルメントツールの市場は拡大している

セールスイネーブルメントに関するツールや製品を販売する市場は、近年拡大傾向にあります。

株式会社アイ・ティ・アールの調査結果によると、国内の​​セールスイネーブルメントの市場は2016年以降年々上昇し、2017年度の売上金額は前年度比6.1%上昇の14億円を達成しているのです。

2022年度には​​セールスイネーブルメント市場の売上は、31億円にまで達すると見込まれています。

将来性が高い点も、セールスイネーブルメントの特徴のひとつとなるでしょう。

セールスイネーブルメントが注目される理由

セールスイネーブルメントの市場が盛り上がり、そのメリットに注目が集まっている背景には、いくつかの理由があると考えられます。

以下からは、セールスイネーブルメントが注目される背景について解説します。

マーケティングツールが定着したことで獲得するリード数が増加している

近年はマーケティングツールを活用して営業を行うケースが増えたため、リード顧客の獲得ペースが上がっていることが、セールスイネーブルメントが注目される理由のひとつです。

マーケティングツールを上手く活用してリード顧客を獲得しても、営業が対応しきれなければその後のフォローがおざなりになってしまいます。

結果的にリード顧客を逃す結果にもなりかねないため、セールスイネーブルメントで営業力を高めて効率良く対応するシステムが必要になっているのです。

営業の属人的な面が強いことも理由のひとつ

営業は属人的な面が強く、個人の能力や裁量に依存しがちな特徴がある点も、セールスイネーブルメントが注目される理由のひとつです。

属人的な面が強いために、営業への貢献度や社員それぞれの能力を可視化できず、成果を教育トレーニングやノウハウの構築などに活用できません。

そのため仮に安定して営業の成果を出す人が職場を辞めてしまうと、どのように営業を成功させていたのかが分からなくなり、これまで通りの売上を出すことが難しくなってしまいます。

そこでセールスイネーブルメントの考えを活用して、営業情報の共有や営業力の平準化を行うことに注目が集まっているのです。

コロナウィルスによる営業方法の見直しが進んでいる

コロナウィルスの影響によって、これまでの営業方法を見直す企業が増えたことも、市場拡大およびセールスイネーブルメントが注目される要因です。

これまでのように直接対面での商談やアプローチが取れなくなったため、新たにWebを中心とした営業方法に力を入れる企業は増加しています。

コロナウィルスは人々の認識を変えることにもつながり、以前は否定されがちだったネットを使った営業なども、近年は多くのシーンで受け入れられるようになっているのです。

新時代に通用する営業方法を確立するために、今後もセールスイネーブルメントに注目が集まっていくでしょう。

セールスイネーブルメントのメリット

セールスイネーブルメントを実施することには、さまざまなメリットを得ることにつながります。

以下を参考に、セールスイネーブルメントによるメリットをチェックしてみましょう。

社内全体の営業力の向上につながる

セールスイネーブルメントは、営業部門や個人の営業力を高めるのではなく、社内全体の営業力向上につながる点がメリットです。

営業力を属人化させないように、セールスイネーブルメントで人材育成のプログラムや営業ツールの開発を行うことで、組織全体の営業の平準化を図れます。

営業を行う個々人でスキルや実力に差が出ないように調節できるため、全体の営業力の底上げを進められるでしょう。

営業に役立つ情報を適切に管理・保管できる

セールスイネーブルメントは、営業に応用できる情報を管理・保管して役立てられるというメリットもあります。

専門のCRM・SFAなどのツールを使うことで、営業に関する情報を一元管理可能です。

必要に応じてこれまでのデータや事例を参考にすれば、最適なアクションを選択できるようになるでしょう。

営業を続けるほどに情報量は増えていくので、それらをきちんと管理・保管できる仕組みをセールスイネーブルメントで作成することはひとつのポイントです。

顧客の需要をより明確にできる

セールスイネーブルメントに取り組むことで、営業部だけでなくさまざまな部署との連携が行えるので、顧客のデータやリード状況から現在の需要を明確にしやすい点もメリットです。

営業部とマーケティング部が情報を共有できるようになるため、意思疎通がしやすくなってそのときに求められているアクションが把握できます。

セールスイネーブルメントは各部門のパイプとなるシステム作りに活かせるので、より顧客の需要に合わせた営業が行えるようになるでしょう。

営業情報を共有して営業メールやオンライン商談などに応用できる

セールスイネーブルメントを実施することで、営業情報を共有して営業メールやオンライン商談などの行動に応用できます。

成功につながった営業プロセスやノウハウを再利用できるため、営業成果を出す流れの再現性を高めることが可能です。

営業成果を継続して出すことにつなげられる点も、セールスイネーブルメントのメリットになります。

営業施策ごとに貢献度をチェックできる

セールスイネーブルメントの活用は、営業施策ごとに企業への貢献度をチェックできる点でもメリットがあります。

営業施策や人材育成計画の実施後に、効果の検証と分析を行うプロセスが行われるため、具体的にどの程度貢献したのかを確認可能です。

営業施策や人材育成への投資効果を把握できるため、今後さらなる投資をすべきなのか、それとも別のプロジェクトに着手すべきなのかといった判断材料になります。

セールスイネーブルメントの基本となる実行フロー

それではここから、セールスイネーブルメントを実施するにあたって基本となる実行フローを解説していきます。

セールスイネーブルメントの実行フローの例

例えばセールスイネーブルメントの実行フローには、以下のような流れが考えられます。

  1. 営業に関係するデータの収集と管理

  2. セールスイネーブルメント専門の部署を立ち上げる

  3. 適切な人材選定を行う

  4. プロセスの設計と共有を行う

  5. トレーニングやコーチングを実施する

  6. 専用プログラムの開発、コンテンツ管理、システムの整備を行う

  7. 成果の検証と分析を行って上司および担当者への報告を行う

上記のような流れを軸に、目標に合わせて調節を行っていくことが、セールスイネーブルメントの実行フローの特徴となっています。

実行フローは固定せずに、検討と分析に合わせて修正を行い、自社にとって最適なものを構築するのがポイントです。

セールスイネーブルメントの具体的な取り組み

以下からは、セールスイネーブルメントの具体的な取り組みについて解説します。

組織の営業能力をデータ化して改善策を提案する

セールスイネーブルメントの取り組みには、組織全体の営業能力をデータ化して改善策を提案することが含まれます。

例えばCRM・SFAなどの専用ツールを使って、受注率、進捗率、売上予測などの営業能力を数値化し、分かりやすく可視化した上で数値改善のための施策を提案することが考えられるでしょう。

数値などの明確なデータとして営業能力を取り扱い、具体的な改善方法を見つけるのがセールスイネーブルメントへの取り組み方法のひとつです。

成果を出している営業担当者の行動やノウハウを、誰でも使える形で共有する

実際に成果を出している営業担当者の行動・ノウハウの共有も、セールスイネーブルメントに関する取り組みです。

営業担当個人に頼った属人化をなくし、誰でも同じレベルの成果を出せるように教育システムを整えることが、セールスイネーブルメントの目的のひとつになります。

行動やノウハウといった曖昧なものを誰でも使える形にするには、デジタル化を行うのがひとつのポイントです。

例えばこれまで各々が作成していた営業資料や提案書などを紙からデジタルに移行することで、誰でも同じスタイルの内容を活用できるようになります。

営業データを参考に育成プログラムや営業ツールの作成を行う

営業によって得られたデータを参考にして、人材の育成プログラムや営業ツールの作成を行うこともセールスイネーブルメントの取り組みのひとつです。

自社の事業規模や営業指標などにピッタリと合ったプログラム・システムを構築することで、より営業活動および人材育成の効率化に期待できます。

育成プログラムや営業ツールの作成を行う際には、専門的な知識を活用するためにデータ解析専門のアナリストと、ツール開発の担当者をそれぞれ設定するケースがあります。

顧客満足度アンケートなどを実施し、顧客のヘルススコアを測定する

セールスイネーブルメントで営業成果の詳細をデータ化し、精度の高いプログラムを開発するためには、CRM・SFAの専用ツールで得られる情報だけでは不十分なことがあります。

そこで顧客満足度アンケートなどを実施して、顧客の現状のヘルススコア(今後も継続して契約してくれる可能性がどれくらいあるのかを示す指標)を測定することも重要です。

顧客のヘルススコアをアンケートなど別の方法で取得することで、よりいまの営業に必要な施策や改善案が見えてきます。

営業データに加えてヘルススコアをデータとして併用し、営業の売上アップや人材育成プログラムの作成につなげるのも、セールスイネーブルメントの取り組みとなるでしょう。

営業のトレーニングやコーチングを実施する

営業のトレーニングやコーチングを実施して、個別に必要な能力を伸ばしていくこともセールスイネーブルメントの取り組みです。

コーチングのサイクルやカリキュラムを作成し、その内容に合わせて上司やベテランが部下にトレーニングやコーチングを実施します。

その後実施状況や成果を評価して、改善や変更を繰り返して最適な教育環境を構築していくのがポイントです。

ほかにも、専用アプリを作成して営業資料や各種データ、実際の営業の様子を記録した動画・音声などをモバイル端末で閲覧できるようにすることで、能動的なトレーニングを促すことも考えられます。

専用アプリを作成することでネットを通してのコーチングも可能となるので、より効率的な人材育成が可能となるでしょう。

セールスイネーブルメントを成功させるポイント

セールスイネーブルメントを成功させるには、いくつかのポイントを把握しておくことが重要です。

以下からは、セールスイネーブルメントの実施時にチェックしておきたい成功のポイントを紹介します。

CRM・SFAツールを上手に活用する

CRM・SFAツールの活用は、セールスイネーブルメントの成功に欠かせない要素です。

CRMとは「顧客関係管理システム」を、SFAとは「営業情報の管理などを行う営業支援システム」をそれぞれ意味します。

いずれも営業プロセスを円滑にし、重要なデータを管理するための基盤となるため、セールスイネーブルメントの取り組み時に役立つのです。

CRM・SFAツールは世界中でさまざまな機能を持つものが提供されているので、自社の環境や目的に合ったものを選別することからはじめてみましょう。

CRM・SFAについては以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

セールスイネーブルメント専用の部署を立ち上げる

セールスイネーブルメントの実行時には、専用部署を立ち上げることも重要です。

営業関係者だけに全てを任せるのではなく、セールスイネーブルメントに特化した部署を1から作ることで、必要な人材の確保や適切な情報共有が行えるようになります。

セールスイネーブルメントの専門部署には営業経験者だけでなく、マーケティング担当者、人事担当者、システム開発担当者など、各業務のプロフェッショナルを集めて構築するのがポイントです。

それぞれの部署のプロを集めれば、専門的な意見やアイデアをすぐに反映できるようになるため、セールスイネーブルメントへの取り組みの精度とスピードを向上させることができます。


セールスイネーブルメントのツールも増えている

セールスイネーブルメントの実行にはCRM・SFAツールの活用が重要だと解説しましたが、近年はセールスイネーブルメント専用のツールも増えてきています。

営業トレーニングの支援、営業資料の作成、営業情報共有の効率化など、セールスイネーブルメントを支援する機能に特化したツールは決して少なくありません。

そういった専用ツールの導入も、今後セールスイネーブルメントの成功を目指す際には必要になる可能性があるでしょう。


セールスイネーブルメントツールは海外産のものに限らず、国産のものも増えてきています。

例えば営業資料の管理や閲覧状況をチェックできる「Sales Doc」や、見込み顧客への適切なアプローチタイミングを見極める「CallidusCloud Sales Enablement」などがあります。

海外ツールにはUI面などで使いづらさを感じることも多いので、まずは国産のセールスイネーブルメントツールを活用してみることがおすすめです。


セールスイネーブルメントが今後の営業活動を支える

セールスイネーブルメントは、今後の営業活動を支える軸になり得るシステムです。

セールスイネーブルメントへの理解を深めることが、結果的に自社の営業力を高めて大きな成果を出していくことにつながるでしょう。

この機会にセールスイネーブルメントの基本とポイントを確認し、実際に取り組む準備を進めてみてはいかがでしょうか。