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オウンドメディアのPVはなぜ消えたのか──検討ファネル前半を奪う「AI Overviews」の正体|連載・指名されるメディアへ - 01
宗像 淳 / イノーバCEO2026/10/05 10:00:031 min read

オウンドメディアのPVはなぜ消えたのか──検討ファネル前半を奪う「AI Overviews」の正体|連載・指名されるメディアへ - 01

AI時代の到来により、「SEOによる記事量産と検索流入に依存する」オウンドメディアの集客モデルは、限界を迎えている。

本連載『指名されるメディアへ(全11回)』では、PV偏重の運用から脱却し、検討層から確実に「指名・確認」されるメディアへ移行するためのロードマップを提示する。当社が実務で得た一次情報と実践的なテンプレートを交えながら、メディア再建の手順を解き明かしていく。

 

 

第1回となる本記事では、「検索行動がAIにどう代替されつつあるか」という構造的な変化と、検討ファネルへの影響を解説する。

検索上位でも流入は3割減

2025年以降、私たちが支援する複数のオウンドメディアにおいて、無視できない変化が起きている。

長年運用を続け、月間数十万セッションを安定して獲得していた大規模メディアでさえ、オーガニック検索流入が数か月の間に約3割減少するケースが見られた。

当初はアルゴリズムアップデートによる順位変動が要因と推測された。しかし、主要キーワードの掲載順位を調査すると、上位を維持している記事が多いにも関わらず流入が減少しているという事実が浮かび上がった。

「順位は維持されているものの、クリック数が減少している」

この現象の主な要因は、競合他社の動向ではない。Googleの検索エンジン自体の仕様変更にある。

2024年に米国で導入され、日本でも展開が進んだ「AI Overviews(AIによる概要)」や、対話的な検索体験を提供する「AI Mode」などの機能により、ユーザーは検索結果の画面上で直接AIから必要な回答を得られるようになった。「わざわざリンクをクリックして企業のサイトを訪問し、記事の中から答えを探し出す」という手間は、もはや不要になったのだ。

もし貴社のオウンドメディアで「順位は下落していないが、PVや流入が減少している」という状況にあるなら、それはコンテンツの品質や運用リソースの問題ではない。検索エンジンの構造的な変化による影響と見るべきだ。

従来の「検索集客モデル」の見直し

「良質なコンテンツを継続的に制作し、SEOによって検索流入を獲得する。資産性が高く、中長期的な費用対効果に優れている」

このアプローチは、オーガニック集客の定石として、BtoB・BtoCを問わず主流の考え方だった。「○○とは」「○○ 始め方」といった情報収集キーワード(ToFu:Top of Funnel)で幅広く流入を獲得し、ホワイトペーパーのダウンロードやメルマガ経由のナーチャリングを経て商談化を図るモデルである。

多くの企業がこのファネルを前提にメディアを運用してきた。しかし今、このモデルは根本から再考を迫られている。

ユーザーの行動様式が変わった

背景には、ユーザーの行動様式そのものの変化がある。

業務上の単純な用語検索やテンプレート探し、業界トレンド収集などにおいて、Google検索の上位記事を複数読み比べる行動は過去のものになりつつある。「まず生成AIに質問する」「検索結果最上部のAI Overviewsの要約を見て終了する」という行動が定着した。不可逆の変化だ。

検討ファネル前半(ToFu)は完全にAIのものに

この変化をマーケティングの「検討ファネル」に当てはめると、構造が浮き彫りになる。

多くの現場で「サイト全体の流入は減少している一方、問い合わせに至る顧客の検討度や商談化率は向上している」という、量と質の分離が観測されている。

理由は明快。

検討ファネルの前半がAIに代替され、後半のフェーズのみが自社サイトに残される構造に変わったから。

従来
検索中心
現在
回答中心
ToFu 情報収集
検索して記事を読む
自社サイトに流入
AIの回答で完結
サイトには来ない
MoFu 比較・検討
検索して記事を読み比べる
自社サイトで比較される
一般的な比較はAIで完結
一次情報だけは読まれる
BoFu 確認・意思決定
サイトで確認し問い合わせ
同じサイトで完結
サイトで確認
重要度はむしろ高まる
前半はAIに代替され、後半だけがサイトに残る。
=流入は減るが、訪れるユーザーの検討度は高まる。

従来は、検索から記事を読み、サイトで確認して問い合わせるまでが、同じサイト上で完結した。現在は、情報収集と比較検討の多くがAIの回答で完結し、サイトを訪れるのは、候補を絞り込んだ後に確認するユーザーが中心になった。

オウンドメディアの新たな役割

流入減少に直面すると「AI Overviews対策(AIO対策)」や「LLM最適化(LLMO)」といった短期的なPV回復施策に投資したくなる。しかし、それは根本的なユーザー行動の変化に逆行する施策でしかない。

Googleの公式ガイダンスは「特別な技術的最適化は不要であり、コンテンツの品質向上とユーザーの意図に応えることが重要である」と明言している。見直すべきは「検索エンジンを前提とした大量のPV獲得モデル」であって、オウンドメディア自体の価値ではない。

情報収集の効率化が進む環境下だからこそ、企業の一次情報や独自の知見を発信する公式メディアの重要性はむしろ高まる。これからのオウンドメディアは「検索による集客装置」から「比較検討・意思決定のタイミングで想起され、信頼を得る場所」へと役割を転換しなければならない。

次回は、国内外の最新の調査データをもとに、これらのトレンドを裏付ける具体的な指標を明らかにする。


▶ 次回予告

第2回 検索結果の68%がゼロクリックという衝撃──データが暴く「検索からAIへ」の実態

「検索結果の68%がゼロクリックで終わる時代」「AI要約が出るとリンククリック率は半減する」──。公開データを基に、AI検索による検索行動の変化を深掘りする。


参考文献・出典:

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。

2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。

2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
最新刊 旧作1 旧作2