前回、情報収集層(ToFu)における検索の多くがAIに代替される傾向を解説した。今回は、公開されているデータを用いて、検索行動の変化とそれに伴う影響を客観的に検証する。
2024年に米国Gartner社が「2026年までに従来型検索の検索量が25%減少する」と予測した際〔1〕、当時は懐疑的な見方も存在した。しかし現在、その予測は現実のものとなりつつある。
検索結果におけるゼロクリックの増加
検索結果ページ(SERPs)におけるユーザー行動において、外部サイトへ遷移しない「ゼロクリック」の割合が増加している。
SparkToroが2026年6月に公表した分析(Similarwebのパネルデータに基づく)によると、米国Google検索におけるゼロクリック率は、2024年の60.45%から2026年1〜4月には68.01%へと上昇した〔2〕。
この背景にはAI Overviews(AIによる概要)の普及がある。Pew Researchの2025年7月のデータによれば、AI Overviewsが表示されない通常の検索結果でのリンククリック率が15%であるのに対し、AI Overviewsが表示された場合は8%に低下する。さらに、AI Overviews内に含まれるリンクがクリックされる確率はわずか1%に留まる〔3〕。
Ahrefsが2026年2月に公表した最新分析では、AI Overviewsが表示されるクエリにおいて、オーガニック1位のクリック率(CTR)は58%低下している〔4〕。
ユーザーのAI利用動向と送客の実態
ChatGPTの週間利用者数は、2026年2月時点で9億人に到達したとOpenAIが公表している〔5〕。また、GoogleのAI Overviewsの月間利用者数は、2026年5月のGoogle I/O基調講演で25億人超と明かされた〔6〕。この規模でユーザー行動がAI経由に置き換わった以上、影響は一部の先進的な使い方にとどまらない。
では、日本の現在地はどうか。総務省「情報通信白書」令和7年版によれば、国内個人の生成AI利用経験率は26.7%(2024年度)で、前年度の9.1%から約3倍に急伸したものの、米国(68.8%)・中国(81.2%)にはなお大きく水をあけられていた〔7〕。
ところがこの差は、わずか1年で急速に縮まりつつある。令和8年版(2026年7月24日公表)では、利用経験率が58.8%まで上昇した(同時点の米国・ドイツは75.6%、中国は93.6%)〔8〕。ICT総研の2026年2月の調査でも、直近1年以内に生成AIサービスを利用した人は54.7%に達し、2024年6月時点の29.0%から25.7ポイント上昇している〔9〕。
日本は立ち上がりが遅れていた分、これから利用率が急伸する局面にある。「ゼロクリック化」や「送客なきクロール」といった構造変化は、利用率が先に高水準へ達した米国で顕在化した現象であり、日本ではむしろこれから本格化する余地が大きい。
従来は「検索して記事を読む」という一本道だったユーザー行動は、現在、下図のように「二重の壁」に分岐し、いずれの経路でもオウンドメディアには到達しなくなっている。
【従来と現在で変わったユーザー行動──「二重の壁」】
問題は、この「壁」の外側——つまりAIが実際に外部サイトへ送客しているケース——にも及ぶ。Similarwebなどの調査によれば、生成AIから外部サイトへの流入数自体は増加傾向にあるものの、これまで検索が担ってきた流入総量を代替するには程遠く、絶対量としては限定的なままだ。
その背景には、AIプラットフォームが情報を収集(クロール)する量に対し、ユーザーを送り返す(リファラル)量が著しく少ないという構造がある。Cloudflareが2025年に公開したデータによれば、「クローラーの訪問数に対する、人間への送客数の比率」は、Google検索で約3:1から30:1程度で推移した。これに対しOpenAIのChatGPTは約1,700:1、AnthropicのClaudeは約71,000:1であり、収集する規模に見合う送客がほとんど生じていない〔10〕。
検索エンジンが体現してきた「クロールした分だけ送客する」という価値交換は、生成AIプラットフォームには成立していない。
業界全体への影響と流入の質の変化
この現象は特定のサイトに限った話ではない。
米国では、Penske MediaがAI Overviewsによるトラフィック減少を理由にGoogleを提訴した事案において、2026年8月の審理で担当判事が同社の運用実態を「極めて不公平に見える」と指摘するなど、係争が続いている〔11〕。同様に、教育系サービスのCheggも2025年2月、AI Overviewsによる自社サイトへのトラフィック減少を理由に、別途Googleを提訴している〔12〕。両社は別々の訴訟だが、いずれもAI Overviewsが既存メディア企業の経営に与える影響の大きさを象徴する事案だ。私たちが支援する企業の大規模オウンドメディアにおいても、同時期に約3割の流入減少が観測された。
一方で、流入するユーザーの質には肯定的な変化も見られる。
Semrushの2025年7月の調査では、AI検索経由の訪問者のコンバージョン価値は、従来のオーガニック検索経由の約4.4倍と推計されている〔13〕。Adobeの2026年のレポートでも、生成AI経由の訪問者はコンバージョン率が非AI経由より約42%高く、訪問あたりの売上も約37%多い〔14〕。
なぜ逆転現象が起きるのか。AIが情報収集層(ToFu)を代替する「フィルター」として機能しているからだ。「〇〇とは」といった単純な情報収集はAIの回答で完結するため、そのユーザーはサイトへ到達しない。
結果として、サイトに到達するのは、AIの回答だけでは満足せず、裏取りや他社比較、導入判断のための詳細情報を求めて能動的にクリックしたユーザー、つまり比較検討・意思決定層(MoFu/BoFu)に近い購買意欲の高いユーザーに絞り込まれる。母数が減る一方で純度が上がるため、平均的なコンバージョン価値が押し上げられていると考えられる。
このことから、情報収集層(ToFu)の流入が減少する一方で、比較検討・意思決定層(MoFu/BoFu)の質の高い流入は維持されていると言っていい。
流入減少期に取るべき2つの打ち手
ユーザーの利便性を追求するAIの進化は不可逆的なトレンドであり、従来のような検索からの大規模な流入を前提としたモデルは、すでに終わりを迎えつつある。
では、流入は減り、質は上がるこの時代に、企業は何をすべきか。打ち手は、大きく2段階に整理できる。
第一に、比較検討・意思決定層(MoFu/BoFu)に対して、ウェブコンテンツの内容や位置づけ——場合によってはUI/UXまで含めて——を見直すことだ。AI経由で流入するユーザーは、すでにAIの回答で基本情報を得た上で「裏取り」や比較のために能動的に訪れている。初心者向けの説明を厚くするよりも、比較表や事例、導入判断に直結する情報を前面に出す設計に転換する必要がある。
第二に、AIに代替された情報収集層(ToFu)のリーチを、検索以外の手段で補うことだ。オウンドメディア単体で情報収集層との接点を維持するのが難しくなる以上、SNSやコミュニティ、あるいはAIの回答内で自社が「指名」されるための対策(AIO/AEO)など、複数のチャネルを組み合わせてToFu層との接触機会を確保する必要がある。
この2段階は対象とする顧客の時間軸が異なるため、どちらか一方では代替できない。
第一の打ち手は、すでにサイトへ到達している少数の高意欲ユーザー(MoFu/BoFu)から得られる価値を最大化するためのものだ。
第二の打ち手は、サイトに来なくなったToFu層に対し、他のチャネルで認知と比較候補としての地位を確保するためのものだ。ToFu層もいずれMoFu/BoFuへ移行する。その段階で接点も認知もなければ、比較検討の候補にすら挙がらず、先々のMoFu/BoFu流入そのものが先細る。優先順位の問題ではなく、両方を並行して手当てすべきものだ。
次回は、この変化に適応するための「指名されるメディアへの4つの転換」を解説する。
▶ 次回予告
第3回 検索窓口から「裏取りの場」へ──指名されるオウンドメディアに必要な4つの転換
AI時代におけるオウンドメディアの役割再定義と、検討層に確実に情報を届けるための具体的な4つの転換(役割・対象・入口・チャネル)を明らかにする。
参考文献・出典:
- 〔1〕Gartner. Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents(2024年2月19日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-02-19-gartner-predicts-search-engine-volume-will-drop-25-percent-by-2026-due-to-ai-chatbots-and-other-virtual-agents - 〔2〕SparkToro. In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click(2026年6月9日、6月18日更新/Similarwebパネルデータに基づく分析)
https://sparktoro.com/blog/in-2026-less-than-one-third-of-google-searches-still-send-a-click/ - 〔3〕Pew Research Center. Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results(2025年7月22日)
https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/ - 〔4〕Ahrefs. Update: AI Overviews Reduce Clicks by 58%(2026年2月4日、Ryan Law)
https://ahrefs.com/blog/ai-overviews-reduce-clicks-update - 〔5〕OpenAI. Accelerating the next phase of AI(2026年2月、ChatGPT週間利用者数900百万人を公表)
https://openai.com/index/accelerating-the-next-phase-ai/ - 〔6〕Google. Google I/O 2026: Sundar Pichai's opening keynote(2026年5月19日、AI Overviews月間利用者数25億人を公表)
https://blog.google/innovation-and-ai/sundar-pichai-io-2026/ - 〔7〕総務省. 令和7年版 情報通信白書「個人におけるAI利用の現状」(2025年7月公表、国内生成AI利用経験率26.7%・米国68.8%・中国81.2%)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html - 〔8〕総務省. 令和8年版 情報通信白書(概要)(2026年7月24日公表、国内生成AI利用経験率58.8%・米国/ドイツ75.6%・中国93.6%)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001082851.pdf - 〔9〕ICT総研. 2026年2月 生成AIサービス利用動向に関する調査(2026年2月20日、直近1年以内の生成AIサービス利用率54.7%)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000019182.html - 〔10〕Cloudflare. The crawl before the fall… of referrals: understanding AI's impact on content providers(2025年7月1日)
https://blog.cloudflare.com/ai-search-crawl-refer-ratio-on-radar/
Cloudflare. The 2025 Cloudflare Radar Year in Review(Googleの比率が年間を通じて変動した推移データ)
https://blog.cloudflare.com/radar-2025-year-in-review/ - 〔11〕Search Engine Journal. Judge Says Google/Publisher AI Situation "Seems Really Unfair"(2026年8月、Penske Media Corporation v. Google LLC 審理報道)
https://www.searchenginejournal.com/judge-in-penske-vs-google-says-ai-situation-seems-really-unfair/587216/ - 〔12〕CNBC. Chegg sues Google for hurting traffic as it considers alternatives(2025年2月24日、Chegg v. Google LLC 提訴報道)
https://www.cnbc.com/2025/02/24/chegg-sues-google-for-hurting-traffic-as-it-considers-alternatives.html - 〔13〕Semrush. AI Search Is Reshaping SEO Traffic — Data from Our Study(2025年7月21日)
https://www.semrush.com/blog/ai-search-seo-traffic-study/ - 〔14〕Adobe Digital Insights. How AI referrals are reshaping web traffic(2026年、AIトラフィックトレンドレポート)
https://business.adobe.com/resources/sdk/ai-traffic-trends-report-august-2026.html
宗像 淳 / イノーバCEO
1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。
2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。
2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
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