前回は、オウンドメディアを続けるか畳むかを判断する5つの指標を示した。今回から第2部「診断編」に入る。
サイトのアクセス数が減ると、特定の記事の順位やトラフィックの増減に目が向きがちだ。しかし、個別の記事を追いかけるだけでは、構造的な課題は見えてこない。
AIが検索の役割を置き換えていく今、問うべきはそのコンテンツが、自社サイトに存在すべき独自の価値を持っているかだ。汎用的な情報を扱う記事のリライトに力を注ぐのではなく、より本質的な価値を持つコンテンツへリソースを集中させなければならない。
本記事では、自社の全記事を評価し、注力すべき領域を見極めるための具体的な手順を解説する。作業量は多いが、初回でおおむね1日、2回目以降は半日で回せる。年1回の棚卸しとして定例化することを前提に設計している。
手順1:全記事の現状を把握する
まず、自社メディアにある全記事の状態を一覧にする。リストには次の項目を含める。
- URL、公開日、最終更新日
- 過去一定期間(例:12か月)のクリック数
- 被リンクの状況
- 社内での活用状況(営業資料としての利用実績など)
Search Consoleの管理画面では取得できる行数に上限があるため、全記事を対象にする場合はBigQueryへの一括エクスポート〔1〕などを活用し、全データを取得する。
なお、評価の主軸には「表示回数」ではなく「クリック数」を使う。2025年9月にGoogleが検索結果の表示件数を指定する「&num=100」パラメータを廃止した影響で、多くのサイトでSearch Console上の表示回数が大きく減少しており〔2〕、前年同期との表示回数の比較は成り立たなくなっている。クリック数はこの影響を受けていない。
手順2:検索意図を分類する
次に、各記事が狙っている主要な検索キーワードの「検索意図」を分類する。
- ToFu(Top of Funnel:トップ・オブ・ファネル)=情報収集
基礎知識や手法の検索(例:「〜とは」「〜のやり方」) - MoFu(Middle of Funnel:ミドル・オブ・ファネル)=比較・検討
サービスや手法の比較(例:「〜の比較」「〜の選定ポイント」) - BoFu(Bottom of Funnel:ボトム・オブ・ファネル)=確認・意思決定
具体的な検討段階(例:「〜の事例」「〜の料金体系」「企業名」)
手順3:AIに代替されるかを判定する
分類したキーワードについて、生成AI(AI OverviewsやChatGPTなど)の回答状況を確認する。判定方法は単純で、そのキーワードをAIに投げ、自社記事を読まなくても十分な答えが返ってくるかどうかを見る。
Googleが公開しているAI機能向けのガイダンスでも、独自性・専門性・一次情報を備えたコンテンツを評価する方針が示されている〔3〕。一般的な定義や手順は「AIに代替されやすい」と判断する。一方、自社の具体的な事例、独自の見解、業界特有の専門的な知見を含む情報は「AIに代替されにくい」と判断できる。
手順4:3つのカテゴリーに仕分ける
手順2と3の評価を組み合わせ、記事を次の3つに仕分ける。
| 分類 | 該当するコンテンツ | 方針 |
|---|---|---|
| 対象外 | AIで十分に回答できるToFu全般と、一般論にとどまるMoFu記事 | 統廃合・削除の検討対象(処置は第8回) |
| 厳選維持 | AIでは代替しにくく、専門性や独自性が高いMoFu記事 | 絞り込んだうえで更新を続ける |
| 注力領域 | 事例、料金、進め方など、BoFuに直結する記事 | 投資を集中させる |
実際にやってみると、既存記事の半分以上が「対象外」に入ることも珍しくない。この比率に驚く必要はない。ここで行うのは仕分けまでで、実際の処置は第8回で段階的に進める。
手順5:トラフィックの状況と照らし合わせる
仕分けが済んだら、そこに現在のトラフィックの状況を重ねる。各記事を、次の4つの状態のいずれかに区分する。
3つの分類と4つの状態を掛け合わせると、優先順位が決まる。最優先で直すのは「注力領域 × 減衰」の記事で、その要因の分析が第6回のテーマだ。逆に、最も判断が難しいのが「対象外 × 集客のみ」の記事である。
この組み合わせの記事は、表示回数が保たれてもクリック数は減っていく現象(Great Decoupling)〔4〕の影響を最も受けやすい。海外でも、製品と関連の薄い記事群が一斉にトラフィックを失った事例が報告されている〔5〕。
こうした記事は、すぐに削除するのではなく、ブランドとの接点としての価値や被リンクの状況を見ながら、段階的に対応を決める(具体的な処置は第8回で解説する)。
手順6:問い合わせと紐づける
手順5の「A」と「B」を見分けるには、記事と問い合わせを紐づけるデータが要る。棚卸しと並行して、次の計測を整えておきたい。
- アクセス解析:ランディングページ別のコンバージョン(キーイベント)を確認できる状態にする
- フォーム:初回接触したページのURLを、問い合わせフォームの送信データに保持させる
- CRM:商談レコードに「初回接触ページ」を持たせ、商談への貢献まで追えるようにする
この紐づけがないと、棚卸しは「クリック数の多い順に並べ替えただけ」の作業に終わる。逆にこれが整えば、第4回の問1(商談の何割がメディア経由か)にも同じデータで答えられる。
イノーバの棚卸しの結果
参考として、私たち自身の数字を公開する。直近12か月(2025年9月〜2026年9月)のアクセス解析で閲覧数の上位40ページを抽出したところ、そのうちブログ記事は13本だった。
| 記事グループ | 本数 | 閲覧数(12か月) | コンタクト化 |
|---|---|---|---|
| AI業界ニュースの週次連載 | 6本 | 13,621 | 0件 |
| 一般的なフレームワーク解説(ファイブフォース、PPM、5W1Hなど) | 6本 | 11,340 | 0件 |
| BtoB営業の実務記事(コールドコール) | 1本 | 801 | 0件 |
| 合計 | 13本 | 25,762 | 0件 |
上位のブログ記事13本で約2.6万回閲覧されていながら、そこを起点としたコンタクト化は0件だった。直帰率はいずれも87〜99%である。同じ期間に、問い合わせページ(4,647回閲覧)からは533件の送信と326件のコンタクト化が生まれている。
つまり、私たちのメディアで最もトラフィックを稼いでいた記事群は、そのまま「対象外 × 集客のみ」に入っていた。第4回で示した「上位20本のうち完全一致は35%」という評価と、この数字は同じ現実の裏表である。
数字が出た時点で私たちが向き合ったのは、「どの記事が落ちたのか」ではなく、「この記事群は、そもそも自社サイトに存在させるべきだったのか」という問いだった。次回は、残すと決めた記事のうち流入が減っているものについて、その要因を切り分ける手法を解説する。
▶ 前回
第4回 そのオウンドメディア、続ける?畳む?──方向性を判断する5つの指標
▶ 次回予告
第6回 流入減少の犯人は競合か、AIか──要因を切り分ける「4つの分類」
流入が低下しているキーワードを4つの要因に分類し、リライトが有効な領域とそうでない領域を見極める方法を提示する。
参考文献・出典:
- 〔1〕Google 検索セントラル. Search Console の一括データ エクスポート(2023年2月提供開始、BigQueryへの全量エクスポート)
https://developers.google.com/search/blog/2023/02/bulk-data-export - 〔2〕Search Engine Land. 77% of sites lost keyword visibility after Google removed num=100: Data(2025年9月、num=100の廃止でSearch Consoleの表示回数が広く減少した件の分析)
https://searchengineland.com/google-num100-impact-data-462231 - 〔3〕Google 検索セントラル. Google 検索の Google AI エクスペリエンスでコンテンツのパフォーマンスを高めるための主な方法(2025年5月)
https://developers.google.com/search/blog/2025/05/succeeding-in-ai-search?hl=ja - 〔4〕Search Engine Roundtable. The Great Decoupling Of Clicks & Impressions From Google Search(表示回数は維持・増加する一方でクリックが減少する現象)
https://www.seroundtable.com/google-search-great-decoupling-39524.html - 〔5〕Ahrefs(執筆:Mateusz Makosiewicz、レビュー:Ryan Law). 9 Surprising Takeaways From Analyzing HubSpot's SEO Strategy(製品と関連の薄い記事群のトラフィック減少)
https://ahrefs.com/blog/hubspot-seo-case-study/
宗像 淳 / イノーバCEO
1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。
2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。
2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
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