スタンフォードの心理学教授に学ぶ子供の教育方法

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最近、世の中的に育児がブームである。僕の周りでも育児をする男性、イクメンが増えているし、親ばかを売りにする親ばか芸人も増えている気がする。
僕自身も、5才と3才の娘がいるのだが、子どもがいる親が共通して抱えている悩み、それは、子どもをどうやって教育するのか?という事だろう。
一般には、褒めて育てて行くのが良いと言われるけれど、あまり褒めると調子に乗ってしまうし。やはり、昔のように厳しく叱って育てるのがいいのだろうか?などと親の悩みは尽きない。
実は、このような子育ての悩みを長年研究しているスタンフォード大学の心理学教授がいる。キャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)という人だ。以下、彼女の書籍(原著 Mindset 邦題『「やればできる!」の研究』)から、子供の褒め方のコツを紹介したい。
目次
心理学から見た子供のタイプ
ドゥエックが子供を対象に研究を進める中で、気付いた事があった。それは、学ぶことが大好きで何にでも挑戦しようとする子供がいる反面、失敗する事をおそれ、新しい事に挑戦するのを避ける子供もいるという事である。
そして、彼女が行った研究で、衝撃的な事実がわかった。親が子供をどのように褒めるかで、子供達の性格(努力型か、失敗回避型か)が変わってくるというのである。
子供の褒め方が性格にどう影響を与えるのか?
ドゥエックが行った実験はこうだ。
思春期初期の子どもたち数百人を対象に、知能検査のかなり難しい問題を10問やらせた。ほとんどの生徒がまずまずの成績。終わった後で、褒め言葉をかけた。
褒めるにあたっては生徒を二つのグループに分け、一方のグループではその子の能力を褒めた。「まあ、8問正解よ。良く出来たわ。頭がいいのね。」といった具合だ。
もう一方のグループでは、その子の努力を褒めた。「まあ、8問正解よ。良く出来たわ。頑張ったのね。」といった具合である。
グループ分けをした時点では、両グループの成績はまったく等しかった。
そして、子供達に、新しい問題を見せて、新しい問題に挑戦するか、同じ問題をもう一度解くのか、どちらかを選ばせるという実験を行った。すると二つのグループの間で、明確に差が現れた。
まず、頭の良さを褒めたグループは、新しい問題を避け、同じ問題を解こうとする傾向が強くなった。ボロを出して自分の能力を疑われるかもしれないことは、いっさいやりたがらなくなった。一方、努力を褒められた生徒達は、その9割が、新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。
つまり、努力した過程を褒めると、子供は努力する事に喜びを感じるようになるのだ。
子供が難しい課題とどう向き合うか?
さらに、生徒全員になかなか解けない難題を出した。
頭の良さを褒められたグループは、難問を解くことにフラストレーションを感じ、自分はちっとも頭が良くない、こんな問題を解いても楽しくない、と思うようになった。そして、自分は頭が悪いのだと考えるようになった。
努力を褒められたグループは、難問をだされてもいやになったりせず、むしろ、難しい問題の方が面白いと答える子供が多かった。なかなか解けない問題があったとしても、イライラしたりせず、「もっと頑張らなくっちゃ」と考えたのだ。
すなわち、努力を褒められた子供は、積極的に難しい事に挑戦できるようになるのだ。
褒め方は知能にも影響を与える
その後のテストでも驚くべき結果が出ている。
難問が出された後、頭の良さを褒めたグループは、成績ががくんと落ち、再びやさしい問題がだされても回復しなかった。自分の能力に自信がなくなり、スタート時よりも成績が落ちてしまったのだ。
一方、努力を褒めたグループの出来はどんどん良くなっていった。難問に挑戦した事で、スキルに磨きがかかり、その後、ふたたびやさしい問題がだされたときには、すらすら解けるようになった。
ドゥエック教授の研究によると、以下のような関係が判っている。
能力を褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると生徒の知能が上がる。
子供を褒める時のコツ
ドゥエックによると、子供を褒める方法には、以下のようなコツがあるという。
してはいけない子供の褒め方
- 「そんなに早く覚えられたなんて、あなたは本当に頭がいいのね!」
- 「マーサ、あの絵を見てごらん、あの子は将来のピカソではないだろうか?」
- 「あなたはすごいわ。勉強しなくてもAが取れたんだから」
励ましているつもりが、相手には違うメッセージを送っている。
子供達が受け取るのは、次のようなメッセージだ。
- はやく覚えられなければ、頭が良くないんだ。
- なにか難しいものを描こうとしないと、ピカソとは思ってもらえないんだ。
- 勉強しない方がいい、さもないと、すごいと思ってもらえない。
正しい子供の褒め方
- 「ずいぶん長い時間、一生懸命に宿題をやってたな。集中して終わらせる事が出来てえらいぞ」
- 「この絵、きれいな色をとても沢山使って書いたのね。色の使い方の事を話してくれる?」
- 「この作文には自分の考えが書いてあるね。シェークスピアが別の角度から見えてくる」
- 「心をこめて弾いてくれて本当にうれしいわ。ピアノを弾いている時ってどんな気分?」
すなわち、褒めるときは、子供の能力をではなく、努力して成し遂げた事を褒めるべきだという事である。
能力ではなく努力を褒める
以上の通り心理学的には、子供とコミュニケーションを取る時には、能力を褒めてはいけない。努力を褒めるべきなのだ。
親としては自分の子供に、学ぶ事が好きな子供に育って欲しいと思うはずだ。
更には、先行きの見えない社会の中で、自分の生き方を自分で切り開いていけるように育って欲しいと願っているのではないだろうか?
今回の研究は、学ぶのが好きで、しなやかに生きていく子供を育てるヒントになるはずだ。参考にしてほしい。
記事執筆:(株)イノーバ。
参考図書:「やればできるの研究」
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