310億円の赤字を出したLEGO、ブランドを救ったのは「原点回帰」

経営・ビジネスハック

世界中で愛されるブロック玩具のLEGO。子どものころに夢中で遊んだという経験を持つ方も多いのではないでしょうか?

LEGOは今から80年以上前に、デンマークの小さな町で誕生しました。もともと家具店を営んでいた木工職人が、1932年に子ども向けの木製ブロックを作ったのがその始まりです。小さな町工場で生まれた木製ブロックはその後プラスチック製のブロックへと進化し、現在では米国マテル社が販売するバービー人形と並ぶ世界的な人気玩具へと発展しました。

3月1日に発表された決算報告によると、2015年12月期にLEGOは過去最高益を記録しました。今でこそ順風満帆なLEGOですが、実は10年ほど前には経営不振で倒産寸前にまで追い込まれた過去を持っています。LEGOはどのようにしてその逆境を乗り越えることができたのか、今回はその快進撃に迫ります。

類似商品とデジタル玩具のダブルパンチ

世界を代表する玩具メーカーとして躍進したLEGOの経営に陰りが見え始めたのは創業から半世紀ほど経った1980年代後半のこと。各国で基本特許が切れ、競合他社が相次いで廉価な類似品を販売しはじめたことにより、自社製品の売上が減少したのです。

さらに追い討ちをかけるように、1980年代後半から90年代前半にかけて、スーパーファミコンやゲームボーイなどのデジタル玩具が相次いで流行。子どもの遊びに革命的な変化を起こしたデジタル玩具は、従来の玩具メーカーにとって最大の脅威となりました。

テーマパーク、テレビゲームなど新規事業で310億円の大赤字

顧客が廉価な商品や新しい技術に流れ出すのに従い、LEGOもこれに追従する形で新事業に手を染めます。しかし、テレビゲーム開発やテレビ番組作成、テーマパーク開設などの新事業の多くは、収入源となるどころか負債を膨らませる結果をもたらし、2004年にLEGOは当期損失約310億円の大赤字を抱えてしまいます。

原点回帰がターニングポイントに

2005年にCEOに就任したクヌッドストープ氏は当時を振り返り、「急激に事業の多角化を進めた結果、LEGOは何が強みで、何を目指すべきか、誰もわからなくなっていた」と述べています。

このような泥沼から脱却するために、彼はLEGOは何のために存在する会社か」という問いを投げかけました。

議論を重ねた末、クヌッドストープ氏は子どもたちの成長を助けることが自社の存在意義であると確信します。さらに、「子どもたちに最高のものを」という創業当時の理念こそが目指すべき方向を表していると気づいた彼は、従業員に向けて次のようなメッセージを発信しました。

「我々は自分たちが思っているほど、偉大なブランドではもはやない。売れない製品を作り続けて、果たして本当に子どもたちの成長を助けていると言えるのだろうか」

クヌッドストープ氏の呼びかけは、それまで事業を取り巻く環境の変化に対して安穏と構えていた従業員の心を揺さぶりました。そして、彼の想いが徐々に社内へ浸透した結果、LEGOのビジネスは再び軌道に乗り始めます。

ブロック玩具の商品企画に全精力を注ぐ

こうしてLEGOはテレビゲーム開発やテレビ番組作成、テーマパークの開設からは一旦撤退し、これらの新事業の運営を第三者に委託することを決断します。その結果、LEGOは従来の強みであった商品企画に全精力を注ぐことができるようになりました。

「廉価な類似商品やデジタル玩具には提供することができない、LEGOならではの価値とは何か」

「プレイテーマ」シリーズ

そのような問いから「プレイテーマ」と呼ばれるLEGO独自の商品シリーズが誕生します。
例えば、「フレンズ」「シティ」といった商品は子どもたちの「ごっこあそび」を再現した人気の商品です。また、スターウォーズやホビットなどの映画を再現した商品は、子どものみならず大人をも虜にするほどのリアルな世界観を持っています。

このように子どもたちが関心を持ちそうなテーマごとにLEGO独自の精密な商品を展開することで、LEGOはブロック遊びの新たな楽しみ方を伝えることに成功しました。

MITと共同開発の教育版レゴ「マインドストーム」

また、LEGOは教育玩具としての強みを生かした商品の企画にも注力します。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)との共同研究によって開発したマインドストームというプログラミングロボット教材がその一例です。
ブロック遊びの延長として子どもが簡単にプログラミングを体験できるマインドストームは、子どもたちの創造力を養う教材として、詰め込み型の教育で創造性が生まれにくいと言われるアジア市場で特に人気を集めています。

このようにプレイテーマやマインドストームに代表される独自の商品展開は、性別や年齢、さらには国境を超えた幅広いLEGOファンを魅了しています。

「子どもの創造力を伸ばす」ブランドメッセージをFacebookで発信

ブロック遊びの可能性を突き詰めていく中で、LEGOは壁に直面します。「LEGOは決まった手順に従ってブロックを組み立てる遊びである」という一部の大人が持つ概念が、子どもたちの創造する力を妨げてしまうと感じたのです。

そこでLEGOは昨年4月にFacebookを通じて以下のような動画広告を配信しました。

 

(動画)https://www.facebook.com/LEGO/videos/10152901123888403/

LEGO WHAT IS A KRONKIWONGI from Vee Pinot on Vimeo.

“Kronkiwongi” というのは、どの国の辞書にも存在しない造語。しかし、世界各国の子どもたちにLEGOを渡し、 “Kronkiwongi” を作ってごらん、と問いかけると、それぞれの子が想像力を働かせて十人十色の答えを出します。

「子どもたちは創造する力を持っている。LEGOはその才能を伸ばしたい」というメッセージが込められたドキュメンタリーは、母親世代を中心とした人々の共感を呼びました。我が子の日々の成長ぶりをFacebookに投稿し合う親世代にとって、子どもの持つ才能や想像力は関心が高いトピックであったため、この動画は結果的に2700万人もの人々へ瞬時に拡散されました。

こうして、LEGOは子どもたちの成長を助ける企業として認知され、世界のトップ玩具メーカーへと返り咲くことができたのです。

会社は何のために存在するか、改めて問直すことがブランド復活の鍵

刻々と変化する市場環境の中で、一時はマーケティングの方向性を見失ったLEGO。しかし、企業の存在意義を問い直すことで、老舗玩具メーカーとしての頂点に再び立つことができました。日本のものづくりにも通ずる点があるLEGOのマーケティングからは、学べることが数多くありそうです。

photo:Sean and Steph Mayo


参考: