2億円の泥臭い教訓、僕が実体験から学んだベンチャー企業の成功のコツ

経営・ビジネスハック

南場智子さんの「不恰好経営」が日本で大きな反響を呼んでいる一方、アメリカでは、ある起業家のベンチャー経営の「失敗」に関する記事が話題をさらっている。

2億円もの失敗を経て学んだ教訓、ということで、確かな重みのあるリアルなアドバイスとなっている。著者のPablo Fuentesに翻訳許可をもらったので、ご紹介したい。

僕に意見を求めるな!

過去にいくつもの失敗を繰り返してきた僕だが、たまに起業の相談を受けることがある。
そんな時、一番困る相談内容がこれだ。

相談者「今○○ってサービスを考えているんだけど、君はどう思う?」

僕「僕は君のサービスのターゲットユーザーなのかい?」

相談者「いや、そうではないけれど、君の意見も聞いておきたいんだ。」

僕「もし僕が君のターゲットユーザーじゃないなら、君は僕の意見なんて求めるは必要ないよ。僕じゃなくてユーザーの声を聞いてきな。あと、早くCross-10を実践するといいよ。」

Cross-10を実践せよ

「Cross-10って何?」
そう思った方もいることだろう。

Cross-10とは、「早めに製品化し、自分の商品・サービスを10人に売ってみる」というスタートアップの手法である。10人にすら売れないものは、1億人に売れる商品・サービスには絶対になり得ない。その場合、さっさと商品・サービスの開発を止めるべきだろう。

早めに見切りをつけること以外にも、この手法にはメリットがある。買ってくれた10人のリアルユーザーからフィードバックを得ることで、その商品・サービスの課題が見つけ、早めに改善策を立てることができるのだ。

「早めに製品化し、顧客のフィードバックを取り入れ、改善していく」
リーン・スタートアップの普及もあって、このコンセプト自体は理論として受け入れられつつある。

しかし、その実情はどうだろう?
僕の経験上、20人に1人の起業家しかこれを実践していないのが現状である。

延々と売れもしない商品・サービスを開発し、時間とお金を無駄にしないように、このCross-10アプローチだけは絶対に実践して欲しい。

試作品の未熟さを恥じないこと

Linkedinの創業者レイド・ホフマンはこう言った。
「もし”試作品”を世に出した時に恥ずかしい気持ちが湧いてこなければ、そのローンチのタイミングは遅過ぎた、と考えるべきである。」

通常、試作品は酷く、恥ずかしいものだ。誤作動が多ければ、デザインも悪い、欠陥だらけなのが普通だ。だが、とにかく大切なのは、早い段階でユーザーのフィードバックを得ることなのだ。

近年の事例を挙げよう。Tinderというメッセージアプリの試作品は、本当に酷いものだった。なにせ、肝心のメッセージ機能で誤作動が多発し、到底サービスと言える代物ではなかった。

しかし、そんなのは問題じゃない。

Tinderは醜い段階であろうと、ちゃんと早い段階で試作品を出した。そして、ユーザーからのフィードバックを反映させ、随時に機能を改善していった。

その努力もあり、今では多くのユーザーを抱え、立派なサービスとして成立している。

試作品が醜かったことなど、この成功を前にどうでもいいことではないだろうか?

ロイヤリティーの高いユーザーを獲得せよ

サービスの立ち上げ時、ユーザー数を増やすことに躍起になってしまう場合が多いのではないか?

しかし、ここに大きな落とし穴がある。
サービス立ち上げ時においては、ロイヤリティーの高いユーザーを獲得することも念頭に置かなければならない。

ロイヤリティーの高いユーザーは、エヴァンジェリストとしてあなたのサービスをPRしてくれる。そこから波及して、結果的にユーザー数を増やしていくことも可能だろう。

また、差別化の図りにくいサービスでは、競合サービスの出現などによって、あっと言う間にユーザー数が激減してしまう場合がある。ユーザーの「量」だけに着目し、その「質」を軽視するようであれば、たった1週間でサービスが廃れる、という恐ろしい事態も起こり得るのだ。

競合サービスにユーザーを取られ、瞬く間に寂れていったサービスを、あなたも思い浮かべることができるのではないか?

100人からの「これじゃなきゃダメ!」>>>1億人からの「なんとなく、これ」

2011年末から2012年末にかけて、SocialCamやViddyなどのソーシャルビデオサービスが活況を呈していた。それらのサービスは、Facebook Open Graphのプラットフォームを活用し、莫大な数のユーザーを獲得することに成功した。そして、莫大な利益も生み出したことだろう。

しかし、その成功は儚いものであった。Facebookが仕様を変更すると、そのほとんどのユーザーは、それらのサービスから離れて行き、ユーザーが返ってくることは二度となかった。

なぜだろう?

それはユーザーが、それらのサービスを「なんとなく気に入っていた」に過ぎないからだ。彼らは、サービスに愛着を持ち、「これじゃなきゃダメ!」と思ってくれていた訳ではないのだ。

ユーザーから本当に気に入られるサービスを作らなければ、ほんの少しの変化で、彼らは簡単に去っていってしまうだろう。

一方で、本当に気に入ってもらえるサービスを作れば、ユーザーはそのサービスを使い続けてくれ、エヴァンジェリストとしてPRを手伝ってくれることもあるだろう。

1億のユーザーに「なんとなく気に入られる」サービスではなく、100人のユーザーであれ「これじゃなきゃダメ!」と言ってもらえるサービスを目指そう。

机上の空論は今すぐ止めよ

ここでもう1度、ユーザーの声を聞くことの重要性を訴えたい。

僕はかつて、ユーザーの生の声を聞くのが怖かった。まだ質の低い、プロトタイプの状態で、僕のサービス、そして僕の能力を評価されるのが嫌だったからだ。

その代わりに、市場調査などで得たデータを元に、ホワイトボードを使い、チームで延々とディスカッションを繰り広げていた。

しかしだ、ユーザーと違ってホワイトボードは何も言い返してはくれない。黙って僕らの意見を受け止めるだけだ。

僕たちが、いくら勝手な解釈で暴論を述べようとも、「それは違う!」と言ってくれることは決してない。

課題解決のヒントを与えてくれるのは、市場調査でもディスカッションでもない。自分たちのユーザーの率直な意見。これこそが、成功に導くヒントを与えてくれるのだ。

ちなみにだが、僕のホワイトボードには今、こんな方程式が書かれている。

「ユーザーの生の声を聞く15分間=オフィスでのディスカッション10時間」

本当にサービスを成功させたいなら、躊躇せずにユーザーの声を聞いてみることだ。

事前登録ユーザーの罠 パート1

これこそが、いま最も多くの起業家を悩ませている問題なのではないかと思う。

僕「もうローンチしたのかい?」

起業家「いや、まだだよ。僕は完璧主義者なんだ。僕の優秀なエンジニアたちも、完璧な商品目指して3か月に渡ってサービスを詰めている。でも、あと3週間程度でローンチできるかと思うよ。」

僕「なんだって!!?? それじゃあどうやって、自分が正しいものを作っているかを判断するっていうんだよ?そんな机上の空論こねてないで、さっさとユーザーの声を聞いて何をすべきか考えるんだ!」(ここまでは普段通りの説教である)

起業家「おいおい、君は分かってないな。僕らはもう既に1万人の事前登録ユーザーを獲得してるんだ。これをローンチした時には、少なくとも1万人もユーザーがいるんだぜ?」

僕「何を言ってるんだ君は…。そのユーザーは、“リアルなユーザー”なんかじゃない。彼らは君のサービスを1回も使ったことはないし、お金を払ったこともない。ただ単に、君のサービスの“聞こえの良い紹介文”に反応して事前登録しただけなんじゃないか?君のサービスがローンチされてみろ。彼らの期待するサービスと、君の実際のサービスが同じだって保証は一切ないし、そこに落差があれば一瞬にして彼らは去っていくぞ?」

最後にもう一言付け加えておく。事前登録のユーザーなんてあてにせず、実際にサービスを使ってくれる「リアル・ユーザー」を一刻も早く獲得することだ。

事前登録ユーザーの罠 パート2

事前登録ユーザーにはもう1つ罠がある。

冒頭にも述べたが、「100人のリアル・ユーザーすら獲得できないサービスが、1億人のユーザーを獲得できるなんてことは絶対にない。」

事前登録で1万人のユーザーを獲得しても、その後自然な成長曲線を描くことなんてあり得ない。ともかく、最初に100人の、本当にそのサービスを愛してくれるリアル・ユーザーを獲得して欲しい。これこそ、僕が2億円かけて学んだ大事な教訓だ。

結束の薄い事前登録ユーザーを大量に獲得したところで、その後無駄な対応に追われ、疲弊していくのは後々わかるだろう。

何度も口を酸っぱくして言うが、自然かつ健全な成長曲線を描くためには、リアル・ユーザーの獲得が必須だ。これさえできれば、1万人のユーザーは後から付いてくるはずだ。

5歳児でもわかるサービスか?

少し話を変えよう。
あなたは今、どんな風に自社のサービスを説明しているだろうか?

もしそれが、5歳児にも理解できないようなものであれば、おそらくあなたは自社のサービスの強み・特徴を十分理解できていない。

「このサービスは、マルチプラットフォームのP2Pシェアリングコミュニティーでありまして…」なんて言い出したら黄色信号、いや、もはや赤信号だ。

サービスに自信がないがゆえに、頭の良さそうな言葉で誤魔化している可能性がある。
そんなサービスが、はたして成功するだろうか?

もう1度、素直になって、自分のサービスの強み・特徴を考えてみて欲しい。(そして、可能なら5歳児に説明してみよう。)

同じ過ちを繰り返さない

さいごに、起業家にとって一番必要なスキルを教えたいと思う。

それは、10回ノックダウンされても11回起き上がるスキル、である。

起業には多くの失敗要因があるし、私自身すべてわかっている訳ではない。失敗しても、次に同じ場所で躓かないように、方針を変え、もう1度挑戦するのだ。

そして、願わくは、今回の記事を参考に、僕と同じ失敗は繰り返さないで欲しい。

どうだっただろう?

1.ユーザーの率直な意見を聞きに行く
2.早い段階で、リアル・ユーザーを獲得する
3.試作品の未熟さを恥じないこと
4.「これじゃなきゃダメ!」と言われるサービスを作る
5.事前登録ユーザーを過信しない
6.自社のサービスの強みを正しく理解する
7.10回ノックダウンされても11回立ち上がる情熱を持つ

これら7か条を心に留め、自社のサービスを見つめ直してみてはいかがだろうか。

記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/

参考元:Seven dirty, gritty, real startup lessons that cost me $2 million
Photo: Some rigths reserved by 401(K) 2012, flickr