CX(カスタマーエクスペリエンス)とは? 顧客ロイヤリティを育成し、収益に繋げる

デジタルマーケティング

CX向上によって、顧客が企業への「信頼」や「愛着心」を高め、感情的満足度の面からも収益向上に繋げている企業が増えています。BtoBのマーケティング活動においても、さまざまな背景の変化により、顧客を起点としたマーケティング施策の設計が重要視されてきています。

ここでは、CXの概要、およびCX戦略による企業の成功事例、CX施策取り組みにあたって必要なノウハウをご紹介いたします。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客ロイヤリティを育成し、収益向上に繋げる

CXとは?

CXとは、Customer Experience(カスタマー・エクスペリエンス)の略称で、「顧客体験」あるいは「顧客体験価値」と定義されています。

CXでは、顧客が製品・サービスを購入した瞬間にとどまらず、購入前の検討段階から購入後のサポートまでの、顧客が自社製品・サービスに関連して体験した全てのプロセスを対象とし、それぞれの顧客視点における体験の向上に努めることが重要とされています。

顧客満足度とCXはしばしば混同されがちですが、顧客の製品・サービスへの満足度は、製品やサービスの合理性に満足しているにとどまる場合があり、CX向上とは、やや異なります。

CXは、顧客ロイヤリティ向上と相関しており、これは製品やサービスの合理的満足度だけでなく、製品やサービスを「知人や周囲へ推薦したいか、否か」といった支持レベルの感情的満足度を目標とした施策です。

UX・UIとの違い

ここでは、CXの理解を深める上で必要となる、UXとUIとの違いについて解説していきますが、まずはその大前提となるカスタマーとユーザーという用語の概念の違いについて解説します。

・カスタマーとユーザーの違い

カスタマーとは、製品やサービスを購入する顧客を指し、ユーザーは、そのサービスや製品を使用する人全般を指しています。サービスや製品によっては、顧客とユーザーは異なる場合があります。

例えば、従来の物理的な製品においては、カスタマーとユーザーが同一であるケースが多いです。書籍を購入すれば、ギフトという特例を除き、一般的に購入者であるカスタマーがユーザーになります。

しかし、IT テクノロジーを使ったサービスが増加し、カスタマーとユーザーが異なるというケースが増加しています。例えば、顧客管理システム(CRM)などを販売する企業が、顧客である企業へ製品を販売する場合、購入者は企業のIT部門や購買部となりますが、このシステムを実際使用するのは、企業の全部署の従業員になり得ます。

このように、サービスによっては、購入者であるカスタマーと使用者であるユーザーは異なる場合があります。こういった変化により、カスタマーとユーザーは同一とは限らず、かつ「異なるニーズ」を持っているという視点を持つことが重要になってきました。


・UX

UXとは、User experience(ユーザー・エクスペリエンス)の略称で、ユーザーがサービスや製品に触れて使用する中での全ての体験を指します。UXは、物質的な製品・サービスとデジタル製品・サービスの両方に存在する概念です。

UXにおいては、ユーザーが製品を認知し、購入、支持、リピートするまでのカスタマージャーニーで発生する悩みや課題に対して、解決策、またはより快適な体験を提供することが重要となります。徹底したユーザー目線で、カスタマージャーニー全体の顧客接点で、ユーザーの体験価値を向上させるための設計をすることが目的です。

・UI

UIは、User Interface(ユーザー・インターフェイス)の略称で、ユーザーがサービスや製品を使用する際のコミュニケーション窓口となる場所です。

UIは、主にデジタル製品・サービスに適用される概念で、ユーザーと製品・サービスの視覚的接点となりえる場所になります。ウェブサイトであれば、バナーや、CTAボタン、グローバルナビゲーション。ウェアラブル時計であれば、操作画面などが該当します。

ユーザーが操作しやすい、したいと感じてもらえるように、フォント・色・ボタン・アニメーション・画像などを使って制作し、ユーザーへ視覚的に快適なコミュニケーション窓口を提供することを目的とします。

・UXとUIがCXでなぜ重要なのか?

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カスタマー・エクスペリエンス(CX)とは、顧客の体験(UX)と顧客とサービス・製品の接点(UI)の繰り返し、集合体によって形成されています。

具体的に、ウェラブル時計のAIDASを用いたカスタマージャーにマップで解説してみましょう。

A:認知

Instagramのウェブ広告でウェラブル時計のデジタル広告をデザインを見る(UI)

I:興味

広告をクリックしてウェブサイトのデザインや機能、情報の取得容易性から受ける印象(UX)

D:比較・検討

店頭で商品を手に取ったデザイン(UI)や使いやすさを知る(UX)

店頭の雰囲気や店員の印象からの体験(UX)

A:購入

専用ECサイトで購入する(UX)

S:シェア

アフターサービスへのアクセス(UI)とストレスのないデジタルでの対応(UX)

このように、カスタマージャーニーマップの中で、顧客はUIとUXを重ねていることを包括してCXと定義しています。

CXの向上には、あらゆる顧客接点において顧客視点で設計されたUIとUXが重要であることが言えます。

CXが重要になってきた背景

近年、CXという言葉を頻繁に耳にするようになっていますが、なぜ今、CXの重要性が説かれるようになっているのか、その背景を3つのポイントから解説します。

1.タッチポイントの増加・多様化

1つ目に、企業と顧客のタッチポイントが増加・多様化していることがあげられます。

ITテクノロジーの進化により、企業と顧客は、電話営業・対面営業だけでなく、デジタルの世界を通じてコミュニケーション接点を持てるようになり、そのタッチポイントはますます多様化しています。

一般的なBtoBビジネスにおける、顧客の購買フェーズごとのタッチポイントを下記一覧にまとめています。


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各購買フェーズには複数のチャネルやコンテンツを組み合わせた、複数のタッチポイントが存在しています。

特にスマートフォン・SNSの普及により、顧客自身が簡単に情報発信をする側に立てるようになったことで、企業と顧客の双方向の情報交換、コミュニケーションが高まってきています。デジタル上とリアルの接点を通して、顧客は購買フェーズを回遊し、意思決定フェーズ(購入)まで進むことが可能になっています。

2.顧客の価値観の変化

タッチポイントの増加・多様化と同時に起こっていることが、「モノ」から「コト」へという顧客の価値観の変化です。

ITテクノロジーを含めた技術の進歩は、市場の成熟度やライフサイクルの速度を加速させてきました。これによって、同じような機能をもった製品やサービスが市場に大量に溢れかえる、製品やサービスのコモディティ化が促進されました。

コモディティ化によって、消費者は、製品やサービスを機能的な価値だけで判断することが難しくなり、その他の価値観を比較・検討の際に重要視するようになってきています。

これが、モノからコトへという消費者の価値観の変化を生み出した背景です。

顧客の購買に対する価値観は、機能的価値だけを求める「モノ」から、体験を通した感覚的な価値や心理的価値に重きをおく「コト」へと変化しました。


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上記の表のように、消費者は製品の実利的な機能だけでなく、使用する中で直面する課題をどのように快適に解決してくれるか、使用するなかで心地よい体験ができたかといった体験価値を求めるようになってきました。

BtoBビジネスのデジタル上の重要なタッチポイントはウェブサイトになります。訪問者は、製品やサービスの比較検討段階で訪問したウェブサイトにおける、見やすさやわかりやすさなどの外観や、問い合わせ対応の迅速さや、きめ細やかさなどが、顧客の非物質的価値として認識されています。

3.購買サイクルの長期化・複雑化

3つ目は、購買サイクルの長期化・複雑化が挙げられます。

企業は、製品やサービスを提供することだけを目指すのではなく、購入前の認知、比較検討段階、購入後のサポートまでの長期にわたる顧客の全体プロセスにおいて、顧客の維持、紹介の獲得のため各タッチポイントにおける戦略に気を配る必要があります。

特に、BtoBにおいては、BtoCと比較して、購買サイクルは年単位になることも珍しくありません。その背景には、企業における意思決定者が6人〜10人と多く、それぞれの意思決定者グループでは、独自に情報を収集しており、グループ同士が製品やサービスに関する情報の認識を調整をしながら進めなければない点などがあります。

昨今では、新たなテクノロジーを使った製品やサービス導入が増加していることもあり、製品の購入には、製品・サービスの理解や、導入後の実益や導入プロセスなどを検討する必要があり、従来の購買サイクルよりも複雑化・長期化しています。例えば、大企業へCRMサービスを導入することになれば、IT部門やマーケティング部門における意思決定者のサービス理解はさほど困難ではありませんが、購買部や経営部門の意思決定者へのサービス理解には時間を要します。

実際、米Gartnerが実施した調査では77%のBtoBバイヤーが、最近の製品の購買が複雑で難易度が高かったと回答しています。

CX向上によるメリット

CX向上は、企業に多くのベネフィットをもたらします。

顧客体験の向上は、ユーザーの製品・サービスに対する感情的な満足度を向上させ、これが「好感度」や「愛着」、「信頼」といった感情を生み出し、顧客ロイヤリティの育成がなされていきます。

ロイヤリティの向上によって、ユーザーは製品・サービスを長期的に使用したいと感じるようになり、再購入や類似商品の購入したり、知り合いに製品やサービスを紹介する口コミに派生していきます。また、ロイヤリティの高い顧客は、他社製品・サービスへの乗り換えを検討する確率が低く、顧客離れの率を下げる効果もあります。

上記のことから、ロイヤリティの向上は、収益性向上との強い相関関係があります。

ロイヤリティ向上は、リピート顧客の増加、一社当たりの購入額の増加、顧客離れの防止に繋がります。これにより、顧客のライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が向上します。

ライフタイムバリューとは、顧客が企業と取引を開始してから終了するまでの期間に、企業に対してもたらした利益の総額を算出するための指標です。「平均購買単価×購買頻度×購買期間」という計算式からもわかるように、一社あたりの顧客の継続期間が長く、購入金額、購入頻度が高いほど収益性が上がる仕組みです。新規顧客の獲得には、既存顧客の約5倍の労力、つまりコストがかかると言われる通り、既存顧客のロイヤリティを向上することで、営業コストを削減していくことが収益性向上の一つの理由です。

また、ロイヤリティの高い顧客による口コミ推薦は、新規顧客の製品・サービス取引開始の障壁を下げる傾向にあり、新規獲得のための営業コスト削減にも貢献していきます。

CXを向上させた成功事例

ここからは、CX向上によって成功した企業についてご紹介していきます。

スターバックス

スターバックスは、リピーターを大切にし、パーソナライズされた経験を提供する事で、素晴らしいCXを提供し続けています。良いCXを提供できている理由は、コアビジネス活動が「人」を起点に設計されていることに起因します。実際の施策をご紹介していきます。

・コーヒーをテイクアウトする場所から一日中快適に過ごせる場所へ

2002年に無料Wi-fiサービスを開始したことで、スターバックスはただの「コーヒーをテイクアウトする場所」から「コーヒーと無料Wi-fiと共に一日中快適に過ごせる場所」という価値提供がされる場所に変化しました。

・ミレニアム層へはゲームで楽しい体験を提供

米スターバックでは「ボーナススタービンゴゲーム」というサービスを開始しました。一回のオーダーにつき、一つのゲームをする事によってポイントを稼ぎ、そのポイントでスターバックス商品と交換出来るシステムです。これがミレニアム層にはまり大きなヒットとなりました。

日本では「Starbucks Rewardプログラム」の名称で、商品を54円購入するごとに1スター貰え、スターバックス商品に交換出来るシステムで展開されており、各国や地域の顧客の価値観やベネフィットを考慮したプログラムにローカライズして展開しています。

このリワードプログラムは、2018年、160万人ものメンバーに達するなど、ロイヤリティの高いファンを増やし続けています。

・音声認識システムで簡単オーダー

アマゾン社との提携により、飲み物を音声認識システムAlexaプラットフォームでオーダーできるサービスを開始しました。

顧客は、良いカスタマーエクスペリエンスが体験出来れば、コーヒーなどには最大18%までの特別料金を払う顧客行動があるという傾向を踏まえ、スターバックスは、技術投資には積極的な姿勢を見せています。

スターバックスは、リピーターとの関係性を強固にすることで、顧客のニーズ、行動パターンをデータから集積できる仕組みを構築し、これらのデータをさらなるCX向上に活用しています。

Southwest airline(サウスウェスト航空)

サウスウェスト航空は、顧客ロイヤリティを測る指標であるNPSにおいて62点を獲得する、CX戦略に成功している企業です。

競合航空会社のデルタ航空41点、ユナイテッド航空10点、アメリカン航空3点と比較するとわかるように、サウスウェスト航空は、群を抜いて高いスコアを取っています。

サウスウェスト航空では、「従業員を大切にする」ことが一番のCXに繋がると定義しています。従業員が職場に満足していれば、自然と顧客に対しても良い対応が出来、その接客を受けた顧客が満足できれば、リピーターになってくれます。リピーターが増えることで、売上や利益は増加します。それが株主や投資家達に良い影響を与える事に繋がることは間違いありません。

顧客のために価値提供をしていることが、実は従業員に対してしている価値提供の起点となっているという考えです。そのため、サウスウェスト航空が従業員を採用する際は、応募者の能力よりも人格を見て決めています。

サウスウェスト航空では、YouTubeや機内雑誌において素晴らしい経験をした顧客やスタッフの体験を紹介しており、こういったロイヤリティの高い顧客(推薦者)の声が新規顧客の呼び込みにも繋がっています。

参考記事https://www.cmo.com.au/article/646669/what-southwest-airlines-doing-retain-cx-leadership/

サウスウェスト航空では、誰かを特別扱いするのではなく、全ての乗客に対して同じ質のサービスを提供しつつ、搭乗時の混雑緩和に努め、搭乗時間を短縮させたいという課題がありました。

解決策として、難しいテクノロジーを導入するのではなく、顧客が搭乗前にどのような行動を取っているのかという行動学(Behavioral Science)を使って分析をし、3つの鍵となる顧客行動パターンと改善のための要因を発見し、対策を取る事が出来ました。

結果、搭乗時の混雑緩和や乗客からの不満の解消を実現し、搭乗にかかる時間を4分短縮する事に成功しました。これは飛行機が着陸してから次の乗客が搭乗し始めるまでに通常25分かかる事を考えると大きな進歩です。

ソニー損保

ソニー損保では、「顧客利益を最優先することが結果的に自社の収益向上に繋がる」と言う考えのもとCX戦略を進めています。

ソニー損保はどのようにCXを改善したかを公開しています。透明性の高い、ありのままをステークホルダーに知ってもらい、最終的な意思決定を顧客に任せることで双方向の信頼関係を構築しました。顧客の利益を最優先させたことが、優れたCXの提供に繋がっています。

上記の施策は、短期的な視点において、一時的に収益を圧迫する恐れがありますが、長期的には、信頼関係の強い顧客だけが取引を継続していくため、収益効果を高める好結果を生みだすことになります。

また、ソニー損保では、顧客体験における課題を効果的に解決するために「構造化」を実施しました。課題の背後にある「お客様の心理」から発生している問題を、グルーピングし、ツリー状に構造化していくことで、根本的な原因となるボトルネックを特定する事が出来ます。

これによって、部門間での課題に対する認識の違いや価値観の隔たりが減少し、結果、顧客への対応がスムースに出来るようになりました。

また、ロイヤリティの低い顧客(批判者)に対しては、部門長クラスによる即時ヒアリングを電話で実施しています。

管理職による行動は、会社が、お客様の顧客体験に対して真剣に取り組んでいることを示す事になり、当初は批判的であっても、電話ヒアリングによる真摯な対応を行うことで、不満を解消するだけでなく、企業に対する信頼感の獲得に繋がっています。

任天堂

任天堂では、CXという言葉が今のように世に出る前から、日本古来のお客様第一主義の商売哲学で、創業当時から様々な「神対応」と言われる顧客体験を提供してきたことで有名です。

現在でも、顧客満足度が高く、幅広い年齢層でロイヤリティの高い顧客を保持しています。

ゲーム機メーカーはハードを購入後はソフトを繰り返し購入してもらうことで収益を上げる収益構造となっているため、顧客ロイヤリティが特に重要な業種の一つです。

近年では、プレイステーション、スマホのゲームアプリなど多くの競合ソフトがある中で、新製品であるSwitchを選んでもらう事が一つの鍵であり、任天堂は、CX施策としてコミュニティを活用しました。

コミュニティには、製品を購入する前の認知・検討段階から、購入後のサポートまでを自社のファン同士がサポーターとなって体験価値を創出する効果があります。

コミュニティには、任天堂へのロイヤリティの高いコアなファンが存在します。顧客同士が製品やサービスを推薦したり、解決策を創出し合う体験の場となっています。それだけでなく、製品の新たな使い方を開発したり、製品やサービスに対する提言だけでなく、企業の善策を多く生み出してくれる場にまで発展しています。

コミュニティがあることで、任天堂が一方的に製品の体験価値を語らずとも、Switchを使用した実際のユーザーやファンの発信、推薦によって、購入者やリピーターが生まれています。

近畿大学 

近畿大学は近年、技術革新を取り入れ、教育機関においては革新的なCX施策を実施してきました。

2014年には、アマゾンジャパンと連携協定を結び、学生がアマゾン上で教科書を手軽に購入できる特設ページ「近畿大学 教科書ストア」を開設、シラバスのオンデマンド印刷も可能にし、わざわざ学校に行かなくともオンライン上で必要なものが入手できる仕組みを実施しました。

また、2020年には、Slack上で学生からの質問に「バーチャルTA」であるAIが24時間体制で答えるプログラムを導入しました。バーチャルTAが回答出来なかったり、学生が満足できなかった質問はバーチャルTAが教員とTAに通知し、後日教員、TAから学生に正しい回答を送信する仕組みで、コロナ禍で気軽に教員に質問ができなかったり、オンライン授業による生徒の消化不良の問題を解決するために、オンライン上での場を提供しました。

これは、学生側の体験を向上させただけでなく、「同じような質問が同時に多数来る」、「学生の質問に費やす時間が多い」などの教員の負担も解消することにも繋がりました。

CX向上に取り組むにあたって

CX向上に取り組むにあたっての成功の秘訣や注意点について解説していきます。

CXを推進するに当たって、まずは徹底した顧客目線に立つためにも、明確なターゲット設定が必要です。そして、このターゲットに対して企業が提供したい顧客体験価値を明確にした上で、社内で共有し、従業員全体で一貫した提供価値を発信していくことが大切です。

手段としては「ミッションステートメント」「ペルソナ」「カスタマージャーニー」の設定がありますが、これまで、顧客中心で設計されずに開発された製品やサービスの場合、これらを再設定する中でビジネスモデルを再定義する必要性が見えてくるケースもあります。

ミッションステートメント

目標設定としてCX活動のためのミッションステートメントを設定しましょう。

多くの企業がすでにミッションやビジョン、企業の提供価値を策定しているかもしれません。CXにおけるミッションステートメントでは、これらを顧客へ伝わりやすく、感情に訴えかけられるステートメントへ改編する必要がある場合もあります。

・ブランドが顧客に約束していること

・どんな体験価値が提供できるのか

・企業は顧客に製品やサービスを使用してどういった感情を抱いてほしいのか

・企業のミッションがどのように製品やサービスと結びついているのか

上記のような視点で、自社のCXにおけるミッションステートメントが現存のミッションやビジョンのままでよいのかを検討してみてください。

ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの作成

ターゲットを決めるには、ペルソナ設定を実施しましょう。ターゲットをより具体的に描くためのプロセスです。年齢や職業や住まいなどの属性や、ペルソナにとって重要な価値やライフスタイルなどの心理的属性などを掘り下げていく作業です。

詳しくは弊社記事「【サンプルあり】ペルソナとは?マーケティングを組織的にスムーズに進める秘訣はここにあり!」を参照ください。

次に、設定したペルソナが、製品やサービスを認知し、購買に至るまでの購買フェーズ別のマップを作成します。これをカスタマージャーニーマップと言います。ペルソナの購買フェーズ別に抱える課題や疑問を探ることで必要なコンテンツを具体化したり、タッチポイントとなるチャネルを設計することに役立ちます。

詳しくは「カスタマージャーニーとは?意味とマップの作り方を徹底解説」を参照ください。

カスタマージャーニーでは、全ての購買フェーズにおいて、企業のCXミッション・ステートメントにある顧客体験価値を一貫して体験してもらえることをイメージしながら作っていくことが、良いジャーニーマップを作るコツです。

「ミッションステートメント」「ペルソナ」「カスタマージャーニー」の情報整理が終わったら、それぞれの施策が整合しているかどうかを確認します。

前述したように、これまで顧客視点でマーケティング施策を設計していなかった企業の場合は、この3つが整合せずに、ミッション・ステートメントをペルソナに合わせて変更したりする必要も出てきます。

整合しないままにCX施策を進めると、顧客ロイヤリティの向上に繋げることが難しくなるため、この施策設計フェーズでは、社内で時間を十分にとり、議論をし、一貫性のあるCX施策を設計することをおすすめします。

タッチポイントの最適化

明確な目標が設定されたのち、企業と顧客とのタッチポイントを最適化していく必要があります。

全てのタッチポイントにおける施策を、カスタマージャーニーマップに沿ってまず仮設計します。

一旦仮設計で進め、施策開始後、顧客との接点を重ね、ウェブサイト上での行動履歴、メールやデジタル経由での問い合わせなどのお客様の声や、カスタマーサービスにおける満足度サーチやフィードバックなどの定量・定性データを収集し、PDCAを回しながら施策の精度を上げていく必要があります。

CXの精度を上げていくためには、顧客との窓口となる営業担当者へ積極的な権限移譲を推進することがポイントです。

トップダウン式のガチガチで柔軟性のないCX施策は、従業員と顧客との接点におけるコミュニケーションの方法や受け答えの選択肢が限られてしまい、関係性の育成が難しくなります。「弊社ではお客様のご要望に沿った対応は会社の方針で対応できかねます」といった、マニュアル通りしか回答できない担当者に顧客は間違いなくがっかりします。

企業側の窓口となる担当者がミッションステートメントを達成するために、お客様の視点に寄り添ったコミュニケーションをとることが、顧客のロイヤリティ構築に繋がり、ついてはCX向上へと繋がります。

企業と顧客の全てのタッチポイントを網羅することは難しいですが、できる限り多くのタッチポイントで、従業員全体で、顧客に対してミッション・ステートメントに沿った一貫したコミュニケーションを展開していくことが、CXを向上する上で非常に重要となります。

社内文化の醸成、実行力の強化

前述したように、CXの推進においては目標となる「ミッション・ステートメント」、CX施策のターゲットとなる「ペルソナ」、そしてターゲットの購買フェーズごとのタッチポイントや課題、全体の行動パターンを理解する「カスタマージャーニーマップ」を社内全体に浸透させることが、CX戦略の成果を上げることに繋がります。

見込み客や顧客との接点が多い営業やカスタマーサポートだけでなく、経営管理各部への浸透も重要となります。特に、経営陣にはCX施策の重要性、必要性を理解してもらい、CX施策にコミットしてもらうことも重要です。CX施策は、顧客の製品・サービスの購入前から購入後におけるタッチポイントへの働きかけとなるため、製品サイクルが長期化しがちなBtoBビジネスにおいては、短期的プランや一部の顧客接点における局所的な施策では効果がでないため、ある程度の人材と予算、実行期間が必要です。

一方で、CXといった比較的新たな概念を経営層に納得させることが難しい企業も多く存在します。その場合におすすめしたい説得材料がNPS(ネットプロモータースコア)です。NPSとは、「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化することができ、事業の成長率との高い相関性があることから、欧米企業の3分の1以上が活用しているとも言われています。

先述したようにCX施策による顧客のロイヤリティ向上は、企業の収益性と強い相関関係があり、多くの企業はNPSをCX向上の指標として活用しています。

経営陣には、CX向上はNPSによって数値的に成果を計測できることが可能である点、そして、実際の成功事例を交えて説得していくことをおすすめします。

また、社内の経営陣や顧客との直接の接点がない故にCX戦略の価値を感じにくいR&Dや製造部門、人事や経理といったバックオフィスの部署への説得材料としても効果的です。

CX施策は、社内全体で理解を得たうえで、全社的に実施していくことが成功の要となります。CX戦略室を設置した上で、経営層および社内の全体機能を横断して協力を仰ぎ、さまざまなエビデンスや指標を活用して、社内マーケティングをし、CX施策の実行力を高めていきましょう。

まとめ

CXを推進する目的は、顧客にとって真の価値ある体験とは何かを突き詰めることにあります。

CXは、顧客がカスタマージャーニーマップ上におけるタッチポイントにおいて、共通の体験をすることによって成果が醸成される施策であるため、打ち手式の部分最適では効果が出ません。

今後、企業と顧客とのタッチポイントはますます多様化し、複雑化していくことが予測されます。CX施策は短期的なものではなく、企業の経営者および従業員が施策、目標設定に同意し、長期的に実施していく施策です。

企業イメージの維持・浸透から顧客体験の向上に繋げるためには、従業員一人ひとりが自発的かつ一貫性・統一性のあるコミュニケーションの展開することで重要です。