STP分析とは?BtoBにおける具体的な活用ポイントも解説

BtoBマーケティング
企業がマーケティング戦略を展開していくうえでは、さまざまな分析を実施する必要があります。その分析には多くのフレームワークが用いられていますが、そのうちの1つが「STP分析」です。
本記事では、STP分析の基本について詳しく解説し、メリットや注意点、具体的な分析手法を紹介していきます。STP分析は、企業がマーケティング戦略を策定するにあたって欠かせないものです。ぜひ参考にしてください。
また、弊社の具体的なBtoBマーケティング支援に関して知りたい方は、伴走型マーケティング支援サービスをご覧ください。
目次
STP分析とは何か?
STP分析は、企業のマーケティング戦略の基本的な方向性を決めるための分析手法です。現代マーケティングの第一人者として知られる「フィリップ・コトラー」が提唱しました。STPは、それぞれ次の頭文字から構成されます。
● セグメンテーション(Segmentation)
● ターゲティング(Targeting)
● ポジショニング(Positioning)
参照:フィリップ・コトラー|フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまりSTP分析では、自社がどの市場に参入し、どのようなターゲットに対し、どのような位置付けで戦うべきなのかを検討します。
そもそも、企業がマーケティング(市場)戦略を立案し実行するステップは次のとおりであり、一般的には「マーケティングプロセス」と呼ばれています。
1. 環境分析(内部・外部)
2. セグメンテーション(市場細分化)
3. ターゲティング(ターゲットの抽出)
4. ポジショニング(自社の立ち位置)
5. マーケティングミックス(4P/4C)
6. 実行・評価
上記1の環境分析においては、3C分析/SWOT分析/PEST分析/5F分析などが用いられます。これらの分析手法を耳にしたことがある人は少なくないはずです。
先ほど、STP分析は「企業のマーケティング戦略の基本的な方向性を決めるための分析手法」と述べました。これをさらにマーケティングプロセスにおける位置付けで考慮すると、企業において「市場に勝ち目がある」ことを分析したうえで、環境分析の結果をもとに「市場の攻め方」を決める「基本戦略」と定義できるでしょう。
STP分析はなぜ必要なのか?そのメリットとは
STP分析は、企業が市場競争において自社の利益を創出するために必要です。極端ですが、次のような例を考えてみます。
これから1人で起業しようとする人が、ハンバーガーレストラン事業を手がけようとしている。ハンバーガーレストランの市場は現在、マクドナルド(日本マクドナルドホールディングス株式会社)が最大手(トップシェアを持つ)である。
この例では、マクドナルドと同じ市場、同じターゲット、同じ立ち位置で戦うなら、自社が効率的に利益を創出することは簡単ではないでしょう。ましてやマクドナルドから顧客を奪うのは容易ではありません。もしハンバーガーレストラン事業を営むにしても、マクドナルドとの差別化が必要です。ハンバーガーレストラン事業を営む地域の企業や個人事業も、その地域に特化するなど何らかの差別化を図ったうえで、利益を創出しているはずです。
このように、STP分析は「企業が市場競争において差別化を図ることで自社の利益を創出する」ために必要なのです。以降では、STP分析を実施するメリットを紹介します。
顧客・市場を把握できる
STP分析では、顧客(市場)をセグメンテーション(細分化)します。これにより、自社がターゲットとする顧客や、参入市場を明確にできるのです。
ターゲット顧客や参入市場を把握できれば、実施するマーケティング施策も的確なものとなります。
ペルソナ設定のベースになる
ペルソナとは、自社の商品を買ってもらいたい理想的な顧客を、特定の1人の人物像として深堀りしたものです。
STP分析は、どのような顧客や市場をターゲットとするのかを明確にする意味合いも持ちます。STP分析の結果、自社がターゲットする顧客と市場を明確にできるため、そのターゲットをベースにペルソナを作り上げていくのです。
また、STP分析の結果である「顧客セグメント」をそのまま「ペルソナ」として設定してしまっているケースも少なくありません。しかしそれでは「本来のペルソナ」ではありません。なぜなら、セグメントは「ターゲット顧客である特定の1人」ではないからです。ペルソナであるというならば、ペルソナの「顔」がイメージできているか。ペルソナに「名前」はあるか。特定の一人を連想できるまで掘り下げることが、ペルソナ設定の理想であるといえます。
自社商品の優位性を明確にでき、競合回避や競合戦略を立てられる
STP分析のポジショニングの結果、自社商品の優位性を明確にしたうえで、競合を回避したり競合戦略を立てることが可能になります。先ほどの例でも述べましたが、マクドナルドと同じポジショニングでは、マクドナルドから顧客(シェア)を奪うことは難しいです。
自社がどの位置付けで市場に参入し戦うのか。他社にはない強みや独自性は何なのか。これらを明確にすることで、具体的なマーケティングの実行戦略(4P・4C)につなげられるのです。
具体的なSTP分析の方法(進め方)とポイント
STP分析の方法(進め方)を、ポイントを解説します。
セグメンテーション|顧客・市場をセグメント分けする
セグメンテーションとは、顧客や市場をセグメント分けすることです。「市場の細分化」とも呼ばれています。
市場細分化ですから、市場を細かく分けるための「切り口」が必要です。STP分析において、切り口は「変数」と呼ばれます。では、実際にどのような切り口で市場を細分化すれば良いのでしょうか。一般的なセグメンテーション変数を以下にまとめました。
BtoBにおいては、人物ではなく企業に置き換える必要があります。
●? デモグラフィック(人口統計的変数)
- 年齢(業歴)
- 性別
- 家族構成
- 学歴
- 職歴
- 業種
- 規模
●? ジオグラフィック(地理的変数)
- 国
- 人口密度
- 市町村
- 気候
- 文化
- 宗教
●? サイコグラフィック(心理的変数)
- 価値観
- 性格(社風)
- ライフスタイル
- 購入動機
●? ビヘイビアル(行動変数)
- 購入頻度
- 買い替えタイミング
- 使用用途
なお、正しくセグメンテーションができているかの判断基準に「4R」と呼ばれる指標があります。4Rについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:セグメンテーションとは? その基本と5分で学べるケーススタディ3選
ターゲティング|参入市場セグメントの選定
ターゲティングとは、細分化された市場において、どのセグメント(市場)をターゲットとするのかを選定するものです。セグメンテーションの結果をもとに、競争優位性のある参入すべきセグメントを選定します。
BtoBにおいては、「どのような業界・企業をターゲットとするのか」を選定するものです。
ターゲティングの方法は、一般的に次の3つがあります。
●? 無差別型ターゲティング
●? 差別型ターゲティング
●? 集中型ターゲティング
無差別型ターゲティング
細分化したセグメントを無視して、同じ製品・サービスを市場に投入することです。市場競争力や経営資源が豊富な大企業に向いている戦略ですが、必ずしも有効とは限りません。
差別型ターゲティング
細分化したそれぞれのセグメントそれぞれに対して、差別化した製品・サービスを投入することです。
スマートフォンの通信料金プランをイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。例えばNTTドコモは月間50GB以上使うヘビーユーザー層に対しては「ギガホ」を、月間5GB以下に抑えられるライトユーザー層には「ギガライト」を提供しています。
集中型ターゲティング
細分化したセグメントのなかで、参入セグメントを絞って製品・サービスを投入することです。経営資源が豊富でない中小企業にとって有効な戦略です。
大企業と中小企業が同じ市場と立ち位置で一騎打ちしても、中小企業が勝つ見込みはありません。勝つ見込みがあるのであれば、中小企業の経営資源を1点に集めて、大企業が経営資源を分散している場所で戦う方法です。
この考え方はランチェスターの法則にも通じます。ランチェスターの法則については以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:ランチェスターの法則をわかりやすく解説!弱者が取るべき戦略とは?
ポジショニング|競合との差別化
ポジショニングとは、参入するセグメント(市場)における自社商品・サービスの立ち位置を検討することです。多くの企業では、2軸のマトリックス図(ポジショニングマップ)を作成し、ポジショニングを検討します。
競合との差別化を検討するうえで、軸となるものをいくつか挙げます。ぜひ競合との差別化のため参考にしてください。
● 高価格/低価格
● 高品質/低品質
● カジュアル/フォーマル
● 大型/小型
● 軽い/重い
● 都会的/田舎的
● 高速/低速
● 屋内(アウトドア)/屋外(インドア)
● 固定設置/移動可能
● 大量/少量
● 子ども/大人
● 濃い/薄い
● 男性/女性
● 少人数/大人数
● オンライン/オフライン
● 朝/昼/夜
また、顧客が自社商品・サービスを利用することで、どのようなベネフィット(うれしさや利益・恩恵)を得られるのかといった視点を念頭に置かなければなりません。また、データに基づいて分析をおこなうことがポイントです。データに基づいて分析をおこなうことで、正確にポジショニングを検討できます。
まとめ:STP分析をきちんと実施すれば、効果の出る具体施策につながる
STP分析とは、企業が顧客・市場を把握し、競合戦略を策定するものでした。もっといえば、市場の攻め方を明確にするものです。
昨今では、企業のマーケティング戦略を策定するうえで、サードパーティデータの活用も重要視されています。サードパーティデータとは第三者が提供するデータのことです。BtoBマーケティングにおいては、顧客企業の売上増減や、システムの導入状況などが、第三者が提供するデータでわかるようになりました。
STP分析において、このようなサードパーティデータをうまく活用できれば、適切な軸を設定し、適切なデータをもとに良質な戦略を検討できます。
ぜひ、「競合に勝てる戦略策定」をおこなうために本記事を参考にしていただければと思います。
また、イノーバでは、BtoBマーケティングに課題や悩みを抱える方へ、伴走型マーケティング支援サービスを提供しております。よろしければご覧ください。
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