新型コロナ感染症拡大で人との面談が制限されて以来、オンラインでのミーティングやウェビナー開催が一般的なものとなりました。オンラインでのウェビナー開催は経費も節減でき効率的ではありますが、一方で参加者(顧客)の反応が今ひとつ把握し難いことも指摘されています。では、ウェビナーを効率的に開催し、かつ当初の目的を達成していくためにはどのような工夫が必要になるのでしょうか?今回は、ウェビナーの効果と質を高めるためのKPI設定について解説していきます。
KGIとKPI
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。またKPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されることが多い言葉です。KGIとKPIは主にビジネスで使われ、KGIはビジネスのゴール(最終的な目標)を定量的に示した指標となります。
たとえば「****年度の売上○○○億円」や「業界シェア**%達成」などといった、大きな目標としてKGIを設定することもありますが、一般的には企業単位や事業部単位ではなく、部単位やグループ単位でKGIを設定することが多いと思われます。これにはいくつかの理由がありますが、大きくて遠くに見える目標であればあるほどチャレンジするメンバーは自分事としてとらえることが難しくなり、達成への意欲がわかなくなってしまうからともいわれます。つまり、現在業界シェア1%にも満たない商品を「今年度中にシェアトップに持っていく!」などと、達成する姿が想像できないような目標を立てても、誰もが懐疑的な目でしか目標を見られなくなってしまうのです。はじめから達成が難しいと思われる目標には、なかなか注力することができないのが人間です。したがってKGIは「達成できる可能性がある」と、誰もが思える目標である必要があります。また、この達成できる可能性があるKGIを下支えするのがKPIです。
KPIを立てる重要性
ビジネスのゴール(最終的な目標)であるKGIに対し、KPIはKGI達成までの各プロセスの達成度を測るものです。つまりKPIは、ゴールまでの中間指標だと考えれば良いでしょう。KPIを設定するためには、KGI達成の要素をバラして確認することが大切です。簡単にいえば、今までの目標(KGI)を達成できていない要因は何か?正確に現状を把握する必要があるのです。
極端な例ではありますが「A商品の売り上げを10%アップさせる」というKGIを立てるならば、A商品を買う人を10%増やすか、今までA商品を買ってくれていた人に10%多くA商品を買って貰うか、A商品を10%値上げするなどの方策が考えられます。現在A商品を買っている人は、今までも自分にとって必要な数を買っているのであって、10%多く買って貰うことは容易なことではありません。また商品を値上げすれば、かえって購入する人を減らしてしまうことや買い控えにもつながりかねません。となれば、A商品を買う人を10%増やすためにはどのような戦術を立てるべきかとなり、この戦術の評価指標がKPIになります。
またKPIを立てることは、効率的にKGIを達成することにもつながります。ゴールを達成する方法がいくつか考えられる場合、最短ルートとなる方法でゴールできれば良いのですが、人によっては効率的でない方法を選んだり、場合によってはゴールにたどり着かないような方法を行ったりする人が出てくるかもしれません。KPIはゴールに向かう道筋を表す役目を持っており、適切に設定されたKPIは事業の効率にも影響を及ぼします。
KPIは目標達成にチャレンジするメンバー全員が理解しやすく、目標として共有しやすいものが適切です。一般的には一個のKGIに対して、数個から10個程度のKPIを設定します。上記のようなプロセスを経て設定されたKPIがすべて達成されたのに、KGIが達成されない、またはその逆である場合にはKPIの設定が適切でないと考えましょう。
ウェビナーで設定すべきKPIとは?
新型コロナ感染症の拡大を契機に普及したウェビナーでは、顧客の反応や満足度がわかりにくいといった問題あり、結果として開催効果が不明瞭だといわれています。ただしウェビナーも事業に資するものとして行われている以上、やはり適切なKPIを設定し、KGI達成に寄与させるべきでしょう。ではウェビナーでは、どのようなKPIを設定すれば良いのでしょうか?ウェビナーの内容と設定されたKGIにもよりますが、一般的にウェビナーでは以下のようなKPIを設定します。
- ウェビナーへの申込率
開催案内のメールやWebでの告知、封書での案内などに対する申し込みの数です。実際にウェビナーに参加するかどうかはまだわかりませんが、ウェビナーの内容に対して興味を抱く人がどれだけいるかの指標にもなります。
- ウェビナーへの出席率
上記の申込数を母数とし、ウェビナーへの出席数から出席率を割り出します。リアルなイベントと違い、ウェビナーは交通事情や天候に影響を受けないので、出席率はそのまま顧客の関心を示す指標となります。
- ウェビナーの満足度
開催したウェビナーの内容が期待通りだったか、参考になったか、商品やサービスを扱うウェビナーであれば、興味があるか、購入を検討するか、等の質問を設定しアンケート調査を行います。アンケートはウェビナーの終了後に任意で行うことが多く、顧客の満足度を測ることを目的とします。
- ウェビナー後のアポイント率
ウェビナー後のアンケートで「満足度が高い」、もしくは「商品やサービスに興味がある」、「購入を検討したい」などと回答した顧客にアポイントを申し入れます。アポイントが取れ、実際に面談につながった顧客をアポイント率として計算します。
- リード獲得数
顧客と面談後、明確に自社商品やサービスに興味を持つ顧客を「リード顧客」としてカウントします。リード顧客の獲得数は、リアルな展示会などでもその商品やサービスへの関心度の高さを表す指標として必ず用いられるものです。
- SNS拡散数
ウェビナー開催前後のSNSでの拡散数を調査します。公式ページなどでの案内に対して、どの程度SNS上やネット上に拡散が行われたかで世間での興味を知る指標となります。これらを調査するには、テキストマイニングツールやデータマイニングツールと呼ばれる専用のSNS分析ツールを用いることがほとんどです。
- 案件化率
リード顧客をその後、案件化できたか否かの指標となる数値です。一般的に案件化は、面談後に見積書を提出したかどうかで判断していきます。
- 受注率
案件化したもののうち、どの程度の案件が受注に至り、受注金額・利益はいくらかを最終的に計測します。KGIが売上や利益の達成などであった場合、受注金額や利益の合計がKGI達成の判断基準となります。
KPIの結果を見ながらPDCAを回していくのが重要
一個のKGIに対して数個のKPIを設定した場合、すべてのKPIを達成することは簡単ではありません。達成できていないKPIがあったとしても、場合によってはKGIが達成されることもあります。ただしこの場合でも、達成できなかったKPIが不要なものと決まったわけではありません。大切なことは、不達成となったKPIの要因を分析し、そのKPIが適切だったかどうか、またKPIの目標設定が正しかったのかも検討しなければなりません。不達成の要因が分析できたら次は解決の方法を検討し、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していくことが何より重要です。
KPIは多すぎるとコントロールが難しくなりますが、適切な数のKPIであれば改善策が立てやすくなります。自社の状況とウェビナーの内容に合わせて適切なKPIを設定し、メンバー全員でKGIの達成を目指しましょう。
KGI達成のためにはPDCAを回し続けることが大切
ビジネスの最終目標であるKGI達成のためには、適切なKPI設定とPDCAを回していく改善活動が何より大切です。オンラインで顧客の反応がわかりにくいウェビナーこそ、しっかりとしたKPIを設定し、目標達成を実現しましょう。