近年急増したオウンドメディア。自社のコンテンツを成功させるポイントは?
オウンドメディアは、デジタルマーケティング施策の中で重要な役割を担っています。特にコロナ禍によって加速したビジネスのデジタル化とともに、オウンドメディアの価値が改めて注目され、その必要性は高まるばかりです。ある調査では、企業の85.3%がコロナ禍の3年以内にオウンドメディアをスタートさせ、73%が現在も運用中であると回答しています。
Q.オウンドメディアを運営している期間をお答えください。(単数回答)n=300
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000388.000006978.html
Q.あなたの会社ではオウンドメディアを運営していますか。(単数回答)n=300
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000388.000006978.html
このようにオウンドメディアの導入は進んでいますが、始めたもののなかなか結果が出ない、配信するコンテンツの選択に迷う、と悩みを抱える担当者も多いようです。
オウンドメディアを成功させるには、戦略的なコンテンツ作成が重要です。本記事では、配信するコンテンツの種類や、オウンドメディア運用の成功事例、具体的な戦略などを解説します。自社に合ったコンテンツの選択や戦略、実践的なステップを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
オウンドメディアとは何か
オウンドメディアの定義:
オウンドメディアとは、企業や組織が自ら所有し、運営するメディアのことを指します。自社のウェブサイト、ブログ、SNSアカウントなどが代表的な例です。オウンドメディアは、自社の情報を直接発信できる貴重なチャネルであり、ブランドの認知度向上やエンゲージメントの強化に役立ちます。
オウンドメディアがマーケティングにおいて重要な理由
- ブランドストーリーを自由に発信できる
- ターゲットオーディエンスとの直接的なコミュニケーションが可能
- 長期的な資産として蓄積できる
- 他のマーケティング施策との相乗効果が期待できる
オウンドメディアとホームページの違い
オウンドメディアとホームページはどちらも自社が所有するメディアですが、主な違いは以下の通りです。
目的: ホームページは企業情報の発信が主目的だが、オウンドメディアはコンテンツを通じた関係構築が主目的
更新頻度: オウンドメディアはホームページに比べて高頻度な更新が求められる
コンテンツ: オウンドメディアはストーリー性やエンターテイメント性の高いコンテンツが中心
オウンドメディアで配信するコンテンツの種類と特長
オウンドメディア運用では、ブランドのメッセージや価値観をどんなコンテンツを使ってどう伝えるかが重要です。そのためには、自社のユーザーにあったコンテンツを選定しましょう。それぞれコンテンツの特長にあった内容を制作することが成功のポイントになります。
以下では、オウンドメディアで一般的に使用されるコンテンツの種類とその特長を説明しています。自社にあったオウンドメディア戦略の設計に役立てていだだけると幸いです。
1. SEO流入が期待できる「ブログ」
ブログは、業界のトレンド、製品情報、業界内の洞察やハウツー記事などを提供するための一般的なコンテンツです。
定期的なブログ投稿は、SEO(検索エンジン最適化)の観点からも有効です。検索エンジンでの可視性を高め、オウンドメディアへのトラフィックを増加させます。また、専門知識を共有することでブランドへの信頼を構築するのにも役立ちます。
2. 直接交流を実現する「ウェビナー」
ウェビナーとは、オンラインでのセミナーやワークショップのことです。リアルタイムでの対話や質疑応答といった、参加者との直接的なコミュニケーションを可能にします。
専門的な知識や洞察を共有するのに最適な方法で、参加者からの即時のフィードバックを得られる点も大きなメリットです。
3. リード獲得やリード育成に役立つ「ホワイトペーパー」
ホワイトペーパーとは、あるトピックについての詳細な報告書やガイドのことです。
専門的な知識や研究結果といった深い洞察やデータを提供することで、業界内での権威の確立や顧客の関心を高める(リード育成)につながります。また、ホワイトペーパーはリード獲得にもつながり、ダウンロード時にユーザー情報を収集することで、見込み顧客のデータベース構築にも役立ちます。
4.視覚的魅力の高い「インフォグラフィックス」
インフォグラフィックス(図版)とは、複雑なデータや情報を、図を用いて一目で分かりやすく表現したものです。色彩豊かで見やすく理解しやすいレイアウトを用いて、統計データやグラフ、チャートなどを表現します。
情報を簡潔かつ迅速に伝えるのに効果的で、視覚的な魅力が高いことから、ユーザーの注意を引きつけやすく、特にソーシャルメディアやウェブサイト上での共有に効果的です。
5.ストーリーを感情的に伝える「動画」
動画コンテンツは、情報やアイデアを映像と音で伝える方法です。ブランドストーリーを伝えたり、製品をどのように使うかを示したり、何か新しいことを教えたりするのに役立ちます。映像と音声を使うことで、複雑な内容を分かりやすく伝えられる点でもおすすめの手法です。動画は人々の感情に訴えかけやすく、ブランドや製品の特徴を親しみやすい方法で表現できます。
また、YouTubeやソーシャルメディアなどで簡単に共有でき、たくさんの人の目に触れやすいプラットフォームを利用できる点もメリットです。動画は視聴者の記憶に残りやすく、共有される可能性も高いため、効果的なマーケティングツールとなります。
ここで紹介したコンテンツは、それぞれオウンドメディアを通じてブランドのメッセージを効果的に伝え、ターゲット見込み客との関係を強化するのに役立ちます。コンテンツを特定の目的や見込み客に合わせてカスタマイズしたり、コンテンツの種類を複数組み合わせて発信したりすることで、より広範な戦略を実現できるのです。
成功事例:オウンドメディアとコンテンツで成功した企業事例5選
では、先ほど紹介したコンテンツの種類を踏まえて、実際にオウンドメディアで成功した企業事例を5つみてみましょう。
成功事例①ボクシルマガジン(スマートキャンプ株式会社)
スマートキャンプ株式会社は、ブログ形式のオウンドメディア「ボクシルマガジン」を運営し、SaaS関連のお役立ち情報を提供しています。顧客の課題解決に向けた情報を提供することで信頼関係を構築。自社サービスへの集客の強化につなげています。
成功事例②グーネットマガジン(株式会社プロトコーポレーション)
株式会社プロトコーポレーションは、ブログ形式のオウンドメディア「グーネットマガジン」を運営しています。自動車に関わる情報を提供し、記事内に関連製品を購入できる導線を設定。コンテンツを顧客獲得の成功につなげています。
成功事例③DSPACE(三菱電機株式会社)
三菱電機株式会社は、ブログ形式のオウンドメディア「DSPACE」を運営。宇宙開発に関するコンテンツを幅広く発信しています。三菱電機といえば一般的に家電の製造販売というイメージがありますが、オウンドメディアを通じて家電だけでなく宇宙関連の事業も手がけていることを知ってもらい、同社のブランディングにつなげています。
成功事例④安全知識.comほか(株式会社キーエンス)
株式会社キーエンスは、ホワイトペーパーを活用したリード獲得に成功しています。同社は製品ジャンルごとに複数のオウンドメディアを運営し、それぞれにホワイトペーパーのダウンロードページへの導線を整備。流入したユーザーを逃さず見込み客に変えることができる、コンテンツマーケティングの理想的な運用形態です。
成功事例⑤モチベーションクラウド(株式会社リンクアンドモチベーション)
株式会社リンクアンドモチベーションは、組織改善クラウド「モチベーションクラウド」のサービスサイトでホワイトペーパーを活用し、リード獲得に成功しています。
ご紹介した事例は、オウンドメディアが情報を提供するだけでなく、ブランドの取り組みを広めたり、流入したユーザーを見込み顧客に変えたりといった、ブランドと顧客との深い関係構築に役立つことを示しています。オウンドメディアの効果的な運用は、デジタル時代における企業の成長と成功に不可欠な要素です。
スタートアップ、BtoB企業……業界によって異なる戦略のポイント
前の章では、さまざまな業界のオウンドメディア成功事例をご紹介しました。
デジタル時代では、ビジネスの規模や種別の異なる多くの企業がオウンドメディアを運営していますが、それぞれ独自のニーズと課題を持っています。オウンドメディアの設計やコンテンツの運用においては、自社のビジネスの規模や顧客を考慮して戦略を立てることが必要不可欠です。この章では、オウンドメディア運用の戦略を、業界別に紹介します。
1. スタートアップや中小企業の場合
以下の3つのポイントをおさえましょう。
①低コストのテストを実施
限られた予算内で効果的なコンテンツ戦略を実行するため、短いブログ記事やソーシャルメディア投稿を活用するのがポイントです。Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを利用して、どのコンテンツが最も反響を得ているかを分析し、戦略を調整しましょう。
②ブランド認知度の向上
企業のミッションやビジョンを強調するストーリーを通じて、ブランドのオリジナリティを前面に出し、親近感を演出しましょう。
③リード情報の収集
ターゲット層に響く無料の資料(チェックリスト、ガイドなど)を提供し、訪問者の情報収集につなげましょう。
2. BtoB企業の場合
企業間取引が主なビジネスである場合は、以下のような戦略が効果的です。
①専門知識の共有
業界のトレンドやニュース、技術的な内容を掘り下げた詳細な記事を提供しましょう。専門性を示すことで、信頼性と権威を築きます。
②教育的なコンテンツの提供
ホワイトペーパー、ケーススタディ、研究報告書などのコンテンツを通じて、業界の知識や解決策を提供しましょう。
③ウェビナーとイベントの開催
ライブイベントやオンラインセミナーで直接顧客と交流する機会を設けましょう。リアルタイムでの質疑応答なども効果的です。
3. BtoC企業の場合
一般消費者を顧客とするビジネスの場合は、感情に訴えかけるようなものや、視認性が高いコンテンツを用いる戦略がおすすめです。
①ブランドストーリーの活用
製品の背後にあるストーリーや、使い方、顧客の体験談を発信する手法です。ユーザーと感情的な関係を構築し、興味や共感を引き起こすことができます。
②ビジュアルコンテンツの展開
図版、動画、写真など視覚的に興味を惹かれるコンテンツを用いて、製品やサービスを魅力的に紹介しましょう。
③ソーシャルメディアの活用
見込み客との関係構築とエンゲージメント向上のために、ソーシャルメディアの活用も効果的です。インタラクティブ(双方向的)な投稿やコンテストを実施すると、話題作りにもつながります。
この章では、業界別の戦略を具体的に紹介しました。オウンドメディアを最大限に活用し、デジタル時代の波を乗りこなす上での重要なポイントとなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
オウンドメディアのコンテンツ戦略を立てる際の課題と対策
前の章では企業の規模や想定顧客別の戦略を紹介しましたが、ここからは、すべてのオウンドメディアのコンテンツ制作において共通する課題とその対策を紹介します。
共通する課題
オウンドメディアのコンテンツを作成する際の課題として、以下のような点が挙げられます。
-
①見込み客の理解
- 顧客のニーズを理解し、コンテンツに反映できるかが課題です。
-
②コンテンツの多様性
- 幅広い読者にアプローチするためには、多様なコンテンツが必要になります。
-
③コンテンツの一貫性と品質
- コンテンツの多様性を保ちつつブランドのメッセージと価値観を一貫して伝えることは大切ですが、難易度の高い課題です。
-
④エンゲージメントの維持
- 読者の関心を持続させ、エンゲージメント(注:消費者の関心、参加、そして相互作用の度合い)を高める工夫が求められます。
課題への対策
先ほど挙げた課題点は、以下のようなポイントをおさえて戦略を立てることで対処することができます。
-
①ペルソナの詳細な定義
- 見込み客の詳細なペルソナ(ユーザー像)を設定しましょう。詳しくペルソナを定義することで、ニーズや関心に合わせたコンテンツの提供が可能になります。
-
②コンテンツの多様化
- テキスト、図版、動画など、異なる種類のコンテンツを組み合わせることで、さまざまな好みを持つ見込み客へのアプローチを実現します。
-
③コンテンツのカスタマイズ
- 年齢、職業、趣味など、ペルソナの特性に合わせてコンテンツをカスタマイズすることも、成功のポイントです。
-
④品質と一貫性の維持
- コンテンツを提供する際は、品質を高く保ちましょう。また、ペルソナにしたがったコンテンツを提供し続けることで、発信するブランドストーリーに一貫性が生まれ、信頼感を醸成します。
-
⑤インタラクティブな要素の導入
- 読者との対話を促進するための要素(アンケート、コメント機能など)をコンテンツに組み込みましょう。
課題への対策を把握しておくことで、どの業界においても効果的なオウンドメディアとコンテンツ戦略の構築が可能になります。見込み客のニーズに寄り添いながら、ブランドのメッセージを効果的に伝えることが成功の鍵です。
【FAQ】オウンドメディア運用に関するよくある質問
オウンドメディアとSNSの違いは?
オウンドメディアとSNSはどちらもコンテンツを発信するためのプラットフォームですが、主な違いは以下の通りです。
- 所有権: オウンドメディアは自社で完全に所有しているが、SNSは運営企業に依存する
- コントロール: オウンメディアは自由にカスタマイズできるが、SNSはある程度の制約がある
- データ: オウンメディアは訪問者データを自社で管理できるが、SNSはプラットフォーム側に管理される
オウンドメディア運用に必要な体制は?
規模や目的にもよりますが、一般的なオウンドメディア運用に必要な体制は以下の通りです。
- コンテンツ企画・制作: ライター、編集者、デザイナー
- ウェブ管理: ウェブ担当者、エンジニア
- マーケティング: マーケター、アナリスト
- 全体統括: ディレクター、プロデューサー
オウンドメディアの効果はどう測定すればいい?
オウンドメディアの効果測定には、目的に合わせたKPIの設定が重要です。代表的なKPIには以下のようなものがあります。
- 認知度: PV数、UU数、滞在時間
- エンゲージメント: いいね数、シェア数、コメント数
- リードジェネレーション: CVR、リード獲得数、リード育成率
- SEO: 検索順位、流入キーワード数、オーガニック流入数
オウンドメディア運用を外注するメリットは?
オウンドメディアの運用を外注するメリットは以下の通りです。
- 専門的なスキルやノウハウを活用できる
- 社内リソースを他の業務に振り向けられる
- 運用コストを変動費化できる
- 客観的な視点からの提案が得られる
ただし、外注先選定には十分な注意が必要です。実績や専門性、コミュニケーションの質などを総合的に評価しましょう。
オウンドメディアとコンテンツ戦略を効果的に実行するための5つのステップ
ここまで、オウンドメディアで提供するコンテンツの種類をおさらいし、それぞれのビジネスに応じた戦略を紹介してきました。また、すべてのオウンドメディアに共通する課題点と、その対処法も見てきました。
デジタルマーケティングの成功は、戦略的な計画と実行にかかっています。この章では、オウンドメディアを効果的に運用するための実践的なステップを、5段階に分けて具体的に紹介します。
ステップ1:目標の設定
- 達成すべき事柄が明確で、測定可能な目標を設定するのがポイントです。例えば、ウェブサイトのトラフィック増加、リードの獲得数、販売数の増加などが考えられます。
- 目標には具体的な数字や期限を含めましょう。SMART(具体的、測定可能、達成可能、経営目標に関連、明確な期限)のフレームワークを用いると、効果的な目標設定に役立ちます。
ステップ2:見込み客の分析
- 見込み客のニーズ、関心、行動パターンへの理解を深める施策を実践しましょう。
- 見込み客への洞察を深める施策には、データ分析、アンケート、市場調査などが挙げられます。
ステップ3:コンテンツカレンダーの作成
- 一貫性を保ちながら定期的にコンテンツを公開するために、制作期間や公開予定日の計画を立てましょう。
- コンテンツの管理には、テーマ、公開日、コンテンツの種類(ブログ、動画など)を記載したカレンダーの運用が便利です。
ステップ4:SEOとの組み合わせ
- 検索エンジンでの可視性を高めるために、SEOコンテンツを取り入れることも重要です。
- 流入が期待できるキーワードの分析を行い、それらをコンテンツ内に組み込みましょう。また、ブログコンテンツでは、メタデータ、画像の最適化、内部リンクの設定も重要です。
ステップ5:効果測定と戦略の最適化
- コンテンツのパフォーマンスを定期的に測定し、必要に応じて改善しましょう。
- Google Analyticsなどのツールを使用して、トラフィック、エンゲージメント率、コンバージョン率などを測定し、効果を検証します。データに基づいて目標達成のためにコンテンツ戦略を調整しましょう。
このような計画的なアプローチと継続的な評価によって、オウンドメディアにおけるコンテンツ戦略を効果的に実行することで、目標達成が効率的に実現します。
【チェックリスト】自社に合ったオウンドメディア戦略を立てるために
自社に最適なオウンドメディア戦略を立案する際は、以下のチェック項目を確認しましょう。
- 自社の強みと独自性は何か?
- ターゲットオーディエンスのペルソナは明確か?
- コンテンツの目的とKPIは設定されているか?
- 配信プラットフォームは最適か?
- 運用体制とPDCAサイクルは整っているか?
各項目について具体的に落とし込めているかを確認し、不明点があれば追加の議論や調査を検討しましょう。
まとめ
デジタル時代に求められるオウンドメディアとコンテンツ戦略の重要性は今後ますます高まるでしょう。自社のビジネスに適した戦略の構築と運用によって、ブランド価値の向上と見込み客との強固な関係構築を実現しましょう。
効率的で質の高いコンテンツ制作に悩まれている方は、ぜひイノーバの無料ダウンロード資料「コンテンツ大量消費時代における効率的なコンテンツ制作の進め方」をご覧ください。
また、オウンドメディアの立ち上げから運用、改善提案まで、イノーバではマーケティング担当者様の課題解決を幅広くサポートしています。
など、オウンドメディアに関するあらゆるニーズにお応えします。
オウンドメディアの全体像を知りたい方は、こちらをお読みください。