BtoB企業の多くが、リード獲得やブランディングの強化を目的に自社サイトを構築しています。しかし、「どのようなページ構成がベストかわからない」「サイトを作ったものの問い合わせが増えない」と悩む企業も少なくありません。そこで本記事では、BtoBサイトの役割から具体的な構築ステップ、成果を上げるための導線設計までを徹底解説します。
さらに、BtoBサイト構築の現場で活躍するプロフェッショナルへのインタビューも実施。初心者から実務担当者まで、すぐに活用できる“サイト構築の秘訣”を深掘りします。
「成果につながるBtoBサイト」とは何か、その本質を探っていきましょう。
※本記事では、BtoBビジネスを行っている企業が情報発信のために構築・運営しているWebサイトのことを「BtoBサイト」と表現します。
目次
TABLE OF CONTENTS
BtoBサイトの役割と目的
BtoBサイトは、企業の情報発信やブランドの顔となるだけでなく、営業やマーケティングの成果に直結する重要な役割を担っています。では、具体的にどのような役割を果たし、どんな成果を期待できるのでしょうか?
主に、以下の4つのポイントがBtoBサイトの重要な役割として挙げられます。
1.自社サービスの理解促進
BtoBの購買担当者は、製品やサービスの特徴を深く理解したうえで意思決定を行います。そのため、サイト上で製品の機能・強み・導入メリットを分かりやすく伝えることが不可欠です。適切な情報提供を行うことで、「どのような課題を解決できるのか」「競合製品と比べて何が違うのか」を明確に伝え、購入検討の後押しをすることができます。
2.リード獲得
BtoBの購買プロセスは長期化しやすいため、顧客は「この企業がどのような製品・サービスを提供しているのか?」という情報を集めながら、徐々に購入の意思を固めていきます。適切なコンテンツや導線設計が施されたBtoBサイトであれば、ターゲットに適した情報を提供しながら、問い合わせや資料請求といったアクションへと自然に誘導することが可能です。
3.関心を高める情報コンテンツの提供
すぐに問い合わせをしない顧客も、適切なコンテンツを継続的に提供することで、徐々に自社のサービスに興味を持つようになります。例えば、業界のトレンド記事や、製品の活用事例を紹介するコンテンツを定期的に更新することで、「今すぐではないが将来的に導入を検討している」顧客との関係を深めることができます。
4.ブランディングの強化
特にBtoB企業の場合、競合との差別化がしにくいことが多く、「この会社はどんな強みを持っているのか?」「信頼できる企業なのか?」といった判断基準が、購買プロセスの中で大きな要素になります。サイト全体のデザインや発信するコンテンツの質によって、「この会社なら安心して取引できる」と思ってもらうことが、ビジネスの成功につながるのです。
このように、BtoBサイトは単なる企業紹介ページではなく、売上につながるマーケティング・営業の重要なツールです。適切な設計と運用を行えば、見込み顧客を引きつけ、長期的な関係を構築し、競争の激しい市場で信頼を獲得することができます。つまり、BtoBサイトを戦略的に活用することで、企業の成長を加速させることができるのです。
BtoBサイトがもたらす成果
BtoBサイトとBtoCサイトでは、ターゲットや購買プロセスが大きく異なります。BtoCサイトは直感的に商品を購入できる設計が求められるのに対し、BtoBサイトは比較・検討の期間が長く、複数の意思決定者が関与するため、です。より詳細な情報提供や信頼性の訴求が必要です。
では、実際に成果を上げるBtoBサイトとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?BtoBサイトの成功を測るうえで重要なポイントとして、次の3つが挙げられます。
1.問い合わせや資料請求の増加
優れたBtoBサイトは、訪問者が「この企業の製品・サービスについてもっと知りたい」と思うような情報を提供し、問い合わせや資料ダウンロードといった具体的なアクションへとつなげます。
2.営業プロセスの効率化
BtoB営業は一般的に、商談の回数が多く、検討期間が長い傾向にあります。しかし、サイト上で十分な情報を提供できれば、見込み顧客は営業担当と接触する前にある程度の理解を深めることができ、商談の質を高めることが可能です。
3.既存顧客との関係強化
BtoBサイトは新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度向上にも活用できます。例えば、導入後のサポート情報や活用事例をサイト上で発信することで、顧客がサービスをより有効に活用できるようになり、結果的に継続的な取引へとつながります。
これらの成果は、単なる数字の改善以上の価値をもたらします。問い合わせ数の増加は売上向上の機会を生み、営業プロセスの効率化は人的リソースの最適活用を実現し、そして顧客との関係強化は安定的な収益基盤の構築につながります。つまり、BtoBサイトの適切な構築と運用は、ビジネスの持続的な成長を支える重要な投資となるのです。
BtoBサイトに最低限必要なページと機能
BtoBサイトがもたらす成果を最大化するためには、訪問者が求める情報を適切に提供することが不可欠です。 どれだけ魅力的なデザインやコンテンツが揃っていても、ユーザーが必要な情報をスムーズに見つけられなければ、問い合わせや資料請求にはつながりません。
そこで重要になるのが、BtoBサイトに必要なページの構成です。ここからは、購買担当者がどのような情報を求めているのかを整理し、それに応じた最適なページ設計について解説していきます。
ユーザーが求める情報とは?
BtoBサイトの訪問者は、一般的に以下のような情報を求めています。
訪問者が求める情報 |
具体的なニーズ |
1.課題解決につながるソリューション情報 |
- 自社の課題を解決できる具体的な方法を知りたい - どのような機能・サービスがあるのかを比較検討したい |
2.自社と同じ業界の導入事例 |
- 実際に導入した企業の事例を見て、成功のイメージを持ちたい - 「他社も使っているのなら安心だ」と確信を持ちたい |
3.製品・サービスの価格や詳細 |
- 予算感を把握し、導入の判断材料としたい - 競合製品と比較するための情報を得たい |
4.企業の信頼性を示す情報(実績、パートナーなど) |
- この企業は信頼できるのか?長期的に付き合えるのか? - どんな企業と取引しているのか?実績や認証情報を知りたい |
こうした情報を訪問者がスムーズに見つけられるように、BtoBサイトでは必要な情報を適切に分類し、直感的にアクセスできるページ構成を設計することが重要です。
BtoBサイトに必須の基本構成
では、具体的にどのようなページが必要なのでしょうか?以下に、最低限必要なページとその役割を解説します。
ページ名 |
役割・ポイント |
1.トップページ |
訪問者が最初に目にするページ。企業の提供価値や強みを端的に伝え、興味を引くことが重要。 |
2.サービス・製品ページ |
製品やサービスの詳細を紹介。単なるスペック説明ではなく、「どのような課題を解決できるか」を重視する。 |
3.事例・導入実績ページ |
導入企業の業種・課題・成果を具体的に示し、信頼性を高める。訪問者に「この企業も使っているなら安心」と思ってもらう設計が重要。 |
4.資料ダウンロード・お問い合わせページ |
リード獲得の要となるページ。カタログ・ホワイトペーパー・無料相談の導線を最適化し、アクションを促す。 |
5.会社情報ページ |
創業年・事業内容・取引実績・主要パートナーを明記し、企業の信頼性と安定性を示す。 |
6.採用ページ(オプション) |
企業文化や働き方を伝え、優秀な人材を引きつける。リード獲得が主目的のBtoBサイトでも、採用強化のために活用可能。 |
BtoBサイトは、訪問者が求める情報を適切に提供し、スムーズに意思決定へと導くことが求められます。適切なページ構成を整えることで、企業の信頼性を高めるだけでなく、リード獲得や営業効率の向上にもつながります。 単にページを揃えるのではなく、それぞれの役割を意識しながら、ユーザーにとって価値のある情報設計を行うことが重要です。
また、+αの要素として、業界別や課題別の課題解決方法を提示するページや、ブログ、自社が顧客に選ばれる理由のようなページを追加することもおすすめです。
BtoBサイトの構築フロー
BtoBサイトの基本構成を理解したところで、次に「どのような手順でサイトを構築すればよいのか?」を考えていきましょう。BtoBサイトは単にページを並べるだけでなく、ターゲットに合わせた戦略設計や、訪問者がスムーズにアクションを起こせる導線設計が欠かせません。 ここでは、BtoBサイト構築の5ステップを初心者の方にもわかりやすく解説します。
ステップ1:戦略設計(ターゲット設定・目的整理)
① ターゲットの明確化
まず最初にやるべきことは、「どのような顧客に向けたサイトなのか?」を明確にすることです。BtoBサイトはBtoCとは異なり、購入までに複数の意思決定者が関わるため、具体的にどの業種・企業規模・職種の人がサイトを見るのかを明確にし、それに適したコンテンツを用意することが重要です。
例えば、以下のような観点から考えてみましょう。
- 業種:製造業向け?IT企業向け?小売業向け?
- 企業規模:大手企業の経営層向け?中小企業の現場担当者向け?
- 職種:経営者?マーケティング担当者?購買担当者?
② サイトのゴール設定
次に、サイトの目的を明確にします。以下のような目的のうち、どれを優先するのかを決めておきましょう。
サイトの目的例 |
具体的な指標(KPI)例 |
リード獲得 |
問い合わせ件数、資料ダウンロード数 |
ブランド認知 |
サイト訪問数、SNSシェア数 |
営業効率化 |
商談化率、サイト経由の成約数 |
③ 競合分析(差別化ポイントを見極める)
さらに、BtoBサイトの成功には、競合との差別化が不可欠です。競合サイトをリサーチし、デザイン、コンテンツ、導線設計などの強み・弱みを分析しましょう。特に、「競合サイトにはない、自社ならではの強み」を打ち出すことが重要です。
こちらの資料の中に、競合サイトと自社を比較するワークシートをご用意しております。ぜひご活用ください。
ステップ2:ワイヤーフレーム(基本レイアウト)の設計
① 主要ページのレイアウト設計
戦略が固まったら、次はサイトの設計を行います。各ページのレイアウト(ワイヤーフレーム)を作成し、訪問者が求める情報にスムーズにたどり着けるように構成を考えます。
例えば、BtoBサイトの典型的なトップページの構成は以下のような形です。
エリア(ページ内の主な部分) |
役割・ポイント |
ヘッダー(ページの最上部) |
企業のロゴと主要なメニューを配置し、訪問者がすぐに目的の情報へアクセスできるようにする。例:「製品情報」「導入事例」「お問い合わせ」など。 |
ファーストビュー(ページを開いた瞬間に見える部分) |
訪問者の関心を引くキャッチコピーを表示し、すぐにアクションを促すCTAボタン(例:「無料資料ダウンロード」「お問い合わせはこちら」)を設置する。 |
製品・サービス紹介 |
自社の主要な製品・サービスを簡潔に紹介し、訪問者が「自分に関係があるかどうか」を判断しやすくする。詳細なページへのリンクを設置すると効果的。 |
事例・導入実績(社会的証明のエリア) |
すでに導入した企業の成功事例や顧客の声を掲載し、「この企業なら安心して導入できる」と思ってもらえるようにする。 |
これはBtoBサイトの一般的な構成例ですが、業種やターゲットによって最適なレイアウトは異なります。そのため、自社のビジネスモデルや顧客の行動パターンに合わせて柔軟に設計を調整するのがオススメです。
② ユーザーの行動フローを考慮した導線設計
次に、訪問者がどのような流れでページを閲覧し、最終的に問い合わせや資料請求へ至るのかを考え、適切な導線を設計します。例えば、
- トップページ → サービスページ → 事例ページ → 資料ダウンロード
- ブログ記事 → 関連するお役立ち資料(ホワイトペーパー) → 問い合わせフォーム
適切な導線設計を行うことで、訪問者は迷うことなく必要な情報にたどり着き、スムーズに問い合わせや資料請求といったアクションを起こせるようになります。ゴールに直結する導線を意識的に設計することで、「せっかくサイトに来たのに何もせず離脱する人」を減らし、問い合わせや資料請求といった具体的な反応を増やすことができます。
③ CTAの設計・配置
BtoBサイトでは、CTA(Call to Action=ユーザーに具体的な行動を促すための要素。資料ダウンロードやお問い合わせのリンクなど)の配置が成果を大きく左右します。各ページに、「次のアクション」を明確に示すCTAを設置することが重要です。
効果的なCTAの例:
- 「今すぐ無料相談」
- 「導入事例をダウンロード」
- 「カタログ請求はこちら」
CTAの配置を最適化することで、訪問者が次に取るべき行動が明確になり、迷うことなく、スムーズに問い合わせや資料請求につながる確率が高まります。 適切なCTAを設置することは、サイトの訪問者を「見込み顧客」へと変える大きなポイントとなるのです。
ステップ3:コンテンツの作成・デザイン
① ユーザーの悩みを解決するコンテンツを用意
BtoBサイトのコンテンツは、「企業が伝えたいこと」ではなく、「顧客が知りたいこと」をベースに作成すべきです。以下のようなコンテンツを準備すると効果的でしょう。
コンテンツの種類 |
役割 |
製品ページ |
製品・サービスの特長を説明し、ターゲットに合った導入メリットを明示する。 |
導入事例 |
実際に活用している企業の成功事例を紹介し、信頼性を高める |
ブログ記事 |
業界トレンドや課題解決のヒントを提供 |
ホワイトペーパー |
導入を検討する企業向けに詳細情報を提供 |
動画コンテンツ |
製品の操作方法や活用シーンを視覚的に伝える |
インフォグラフィックス |
数字やデータを用いた図解で、自社の優位性や特長を直感的に伝える |
マンガ・ストーリーコンテンツ |
サービス導入前後の変化をストーリー仕立てで紹介 |
ウェビナー |
特定の課題に対する解決法を専門家や社内担当者が解説し、エンゲージメントを高める |
FAQ(よくある質問) |
顧客が抱く疑問を事前に解決し、問い合わせのハードルを下げる |
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② 読みやすく、視認性の高いデザインを採用
BtoBサイトでは、訪問者がストレスなく情報を得られるよう、視認性を高め、直感的に理解しやすいデザインを採用することが重要です。特にBtoBの意思決定者は短時間で判断するため、「伝えたいことがすぐ伝わる」サイト設計が成果を左右します。以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 見出しや画像を活用し、情報を整理
長い文章だけでは伝わりにくいため、見出しを適切につけて情報をブロック化し、画像や図表を活用することで直感的に理解しやすくする。 - レスポンシブデザインでスマホでも快適に
PCだけでなく、スマホやタブレットでも最適に表示されるように設計。特にCTAボタンやフォームは、タップしやすいサイズに調整する。 - コントラストを強調し、CTAを目立たせる
CTA(Call to Action)ボタンは、背景と区別しやすい色を使い、訪問者が迷わずクリックできるように設計。 「無料ダウンロード」「お問い合わせはこちら」など、行動を具体的に示す文言も効果的。
デザインは単なる見た目ではなく、情報の伝わりやすさを左右し、サイトの成果に直結する要素です。 読みやすく、使いやすいデザインを意識することで、訪問者のストレスを減らし、問い合わせや資料請求の増加につながります。
ステップ4:実装と公開
戦略設計やデザインが固まったら、いよいよサイトの実装と公開に移ります。ここでは、運用のしやすさ・ユーザビリティ・パフォーマンスを意識することが重要です。ここでは、スムーズにサイトを立ち上げ、訪問者に快適な体験を提供するためのポイントを解説します。
① CMSの選定
CMS(Content Management System=Webサイトのページや記事を簡単に作成・更新できるシステム)を導入することで、専門知識がなくても効率的にサイトの更新・運用が可能になります。BtoBサイトでは、以下のようなCMSがよく使われます。
CMS |
特徴・メリット |
WordPress |
汎用性が高く、豊富なプラグインで機能拡張が可能。多くの企業で利用されており、情報も多い。 |
HubSpot |
直感的な操作性と柔軟なカスタマイズ性を備えたCMS。ドラッグ&ドロップ編集に対応し、コーディング不要でページを作成・更新できる。SEO最適化機能やパフォーマンス分析ツールも標準搭載されており、BtoBサイトの運用効率を高める。 |
Movable Type |
セキュリティが強く、大企業や官公庁でも採用実績が多い。カスタマイズ性も高い。 |
イノーバでは、HubSpotの導入支援サービスを実施しております。ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
② パフォーマンス最適化
BtoBサイトでは、訪問者が求める情報にすぐアクセスできることが重要です。ページの読み込み速度が遅いと、訪問者が待ちきれずに離脱する原因になります。特にGoogleはページ速度をSEO評価の要素にしているため、最適化は必須です。
- 画像の圧縮:大きすぎる画像を圧縮し、ページの読み込みを高速化
- キャッシュの活用:同じ訪問者が再度ページを開いたときに、読み込み速度を向上させる
- サーバーの最適化:安定した高速サーバーを選定し、サイトのパフォーマンスを維持
このような施策でページの速度を向上させることで、訪問者のストレスを軽減し、問い合わせや資料請求といったアクションにつながりやすくなります。
実装フェーズでは、運用のしやすさ・ユーザー体験の向上・サイトの高速化が重要なポイントになります。適切なCMSを選び、スマホ対応やページ速度を最適化することで、より多くの訪問者を惹きつけ、スムーズにリード獲得へとつなげることができるでしょう。
ステップ5:運用・改善
BtoBサイトは「作って終わり」ではなく、公開後の運用・改善こそが成果を左右します。訪問者の行動を分析し、コンテンツを最適化しながらサイトの効果を高めていくことを意識しましょう。
① 定期的なコンテンツ更新
BtoBサイトでは、定期的なコンテンツ更新がSEO対策やリード獲得の面で大きな役割を果たします。更新頻度が低いと、検索エンジンからの評価が下がり、見込み顧客の流入が減少してしまうリスクも。サイトの価値を高め、継続的にターゲット顧客と接点を持つためには、定期的な情報発信が欠かせません。
例えば、ブログ記事を定期的に更新し、業界のトレンドや課題解決の方法を発信することで、見込み顧客の関心を引くことができます。特に、具体的な解決策を示すコンテンツは検索エンジンの評価も高まり、ターゲット層の訪問を促します。
また、導入事例の追加も有効です。実際の成功事例を紹介することで、訪問者に信頼感を与え、導入を検討する企業の不安を軽減できます。BtoBでは意思決定に慎重なため、第三者の実績が購買の後押しにつながるでしょう。
② 運用パフォーマンス分析
サイトを改善するためには、まず訪問者がどのようにサイトを利用しているのかをデータで把握することが重要です。以下のようなツールを活用し、サイトの課題を特定しましょう。
ツール名 |
目的・分析ポイント |
Google Analytics |
訪問者数、直帰率、滞在時間、コンバージョン率を分析し、どのページが成果を上げているのかを確認する。 |
ヒートマップツール(Mouseflow、Crazy Egg など) |
訪問者がページのどこで離脱しているか、どのエリアに関心を持っているかを視覚的に把握する。 |
フォーム解析 |
問い合わせフォームのどこで離脱しているかを分析し、項目数の最適化やUI改善を検討する。 |
こうしたデータをもとにサイトの改善点を特定し、訪問者が迷わず目的の情報にたどり着けるようにすることで、問い合わせや資料請求の増加につなげます。
BtoBサイトの構築には、計画的な戦略設計から始まり、適切なコンテンツ配置、デザイン、実装、そして継続的な運用・改善が必要です。このフローをしっかり押さえることで、「作って終わり」ではなく、成果につながるサイトを構築できるでしょう。
しかし、すべてを内製で進めるのが難しい場合は、専門的な知見を持つ外部のパートナーに依頼するのも一つの手です。 必要に応じて外注を活用し、戦略的に進めることで、より効果的なサイト運用が可能になります。
外注パートナーの選び方については、以下の資料でも詳しく解説しています。
プロに聞く!成果を出すBtoBサイト設計
ここまで、BtoBサイトの基礎知識から実践的な構築ノウハウまでをご紹介してきました。では、実際にBtoBサイトを成功に導くには、具体的にどのような点に気をつければよいのでしょうか?弊社イノーバのウェブ制作チームのプロフェッショナル、Sにインタビューを行いました。BtoBサイトの戦略設計から実制作まで数多くの案件を手がけてきた経験を活かし、成果を生むサイト構築の秘訣をたっぷり語ってもらいました。
質問1:BtoBサイトの「成果」をどう定義するべきですか?
S:BtoBサイトの成果は、目的や目標の設定によって変わると思います。リード獲得なのかブランディング目的なのかによって変わりますが、リード獲得型サイトにおいてはKPI(問い合わせ数、CVR、滞在時間など)が達成できて、受注や売上に貢献しているかが成功のポイントになると思います。それに加えて、リードの質(問い合わせ件数だけでなく、実際に商談化しやすいリードがどれだけ獲得できているか。)、顧客との関係構築(サイト上で提供したコンテンツが、潜在顧客や既存顧客の信頼感向上につながっているか)、ブランド認知(サイトを通じた情報発信が、社名や製品・サービスの「選ばれる理由」づくりに貢献しているか)、という観点で捉えることも重要です。
一般的なKPI(問い合わせ数、CVR、滞在時間など)では測れない、より本質的な指標としては、
- リードの質(商談化・受注までの期間)
- ユーザーのロイヤリティ・エンゲージメント(再訪率・NPSなど)
- ブランド指名検索・SNS評価
- 購買プロセスの短縮度合い
- 既存顧客の利用状況やアップセル・クロスセル
といったような、中長期的に事業・ブランド価値にどう貢献しているかを測る指標をあわせてモニタリングすると、「サイトがどのように事業成長を支えているか」をより明確にとらえることができると思います。
質問2:競合と差別化するために、サイト構築で何を意識すべきでしょうか?
S:多くの情報発信しているものの、サイトのトップやサービスページで自社の強みを端的に表現できていないサイトが非常に多いです。おそらく、自社の強みを深堀りし、言語化できていないのではと思います。お客様からも「自社の強みがわからない」という声をよく聞きますが、それを見つけるには、
- 「なぜ当社を選んでいただけたのか」
- 「どんなところに満足していただいているか」
- 「お客様の感謝の声」
というようなお客様の声を集め、その中から共通するキーワードや評価ポイントを見つけ出し、そこから見えてくるパターンを自社の強みとして言語化すると、自社の本当の強みが見えてきます。
この強みを、トップページやサービス紹介ページで分かりやすく表現することで、競合他社との差別化が自然と生まれてきます。多くの企業が「情報量」では充実したサイトを持っていますが、その中から「本質的な強み」を端的に伝えることができていません。このようなプロセスを踏むことで、より説得力のあるサイトづくりが可能になります。
また、コンテンツ設計においては、日々の業務に関するお役立ち情報だけでなく、業界の先を行く情報(ソートリーダーシップ)を発信することは有効だと思います。ユーザーに示唆を与えるようなコンテンツを発信することで、企業の専門性やブランド力を高め、見込み客との持続的な関係構築やSEO効果、営業支援まで幅広いメリットをもたらします。BtoB領域では、単に製品情報を伝えるだけでは差別化が難しいため、「業界をリードする知見」「顧客課題に対する洞察」を発信することで、「最も信頼できる相談相手」「共に未来を創るパートナー」と認識してもらうことができると思います。
質問3:リード獲得につながる導線設計のベストプラクティスは何ですか?
S:サイト内の導線を見直すことをお勧めします。コラムからお役立ち資料や関連サービスページ遷移がしっかりと貼られていないケースが多いです。導線設計を行う場合にもユーザーがサイト内でどのように情報を収集するか購買ファネルに基づいたユーザーフローを考えて設計する必要があります。
CTAの配置やフォーム設計においては、
- トップページにお問い合わせやお役立ち資料、資料請求などのCTAが目立つように設置する。
- ページ内にCTAを設置しているか?(ユーザーはページを全て読まないので。)
- ブローティングバナーやポップアップなど、導きたいCTAを視覚的に目立たせて設置する
- フォームの項目を見直す(入力する項目が多いケースが多いです。項目が多いとめんどくさくなって離脱するので、5項目程度に絞れるといいです。)
このあたりが有効な施策かなと思います。劇的にリード獲得できる特効薬のようなものはないので、地道な施策の積み重ねが重要ですね。
質問4:BtoBサイトでのコンテンツ活用はどのようにすべきですか?
S:ユーザーは業者に会う前に57%の情報収集をしているといわれています。
営業マンに会う前にある程度サービスや会社について理解していて、声をかける業者も決めているといわれています。したがって、ユーザーが業者選定前に欲しいと思う情報(会社情報、サービス情報、他社との違い、価格、課題解決に必要なお役立ち情報、事例、よくある質問等)など基本的な情報は掲載すべきでしょう。その際は、お客様に一方的にサービスの情報を発信するのではなく、お客様の課題を起点に自社のサービスがどのように課題を解決するのかというソリューション提案の視点でサイトを構築することが重要です。
最近は多くのコラムやお役立ち資料を掲載している企業が多いですが、コンテンツの量が多くなりすぎてユーザーが選択しにくいというお悩みも多く聞きます。何のテーマのコンテンツなのかわかりやすくするため、カテゴリーやタグ機能を活用するのは有効だと思います。検索性を高めるために、絞り込み検索機能を付けるなど、業界や規模、導入サービス、サービスカテゴリーなどで情報を検索したり絞り込める機能なども有効です。また、古い情報や成果につながっていないコンテンツを定期的に棚卸することも必要だと思います。
絞り込み検索機能例
- https://www.idnet.co.jp/download/
- https://jp.sansan.com/case/
導線設計においては、一般的なユーザーの動き(下図を参照)を念頭に、その流れで作るといいと思います。(右の図は某クライアントの提案書に入れた資料です。)
質問5:サイト運用・改善の最適な体制とはどんなものでしょうか?
S:サイト運用については、一般的に日々のサイト更新する専任の方を置くケースが多いです。ただ、マーケティング部門ではサイト以外にも施策を複数担当することもあるのと、コーディングやデザインの専門知識がある人がいないケースが多いので、定型的な更新は社内で対応し、テクニカルな更新(HTMLやCSSといったコーディング知識やセキュリティなどの専門知識が必要な作業)は外部パートナーを活用することをお勧めします。
全て内部で対応しようとすると、質・スピードが落ちるのと、社内人材を育成する場合も学習コストがかかるので、プロに依頼することをお勧めします。外部パートナーを活用した分、重要な施策に注力するほうが、コストと成果のバランスはよいと思います。また、内部では気づけないサイトの課題や改善施策を外部パートナーから指摘してもらうこともおすすめです。プロは圧倒的な数のサイトを見ていますので、外部のプロに頼ってノウハウを吸収することも成果を上げるポイントの一つです。
最小限のリソースで最大の成果を出すには、「社内ですべきこと」「社内でできること」「社内でできないこと」「社外と共同で行うこと」などを明確にすることが重要です。それを行った上で、専門知識が必要であったり、質が高くスピードが早いものは外部パートナーを活用するといいでしょう。単純にコストだけに目を向けるのではなく、戦略や施策、社内の組織体制を勘案し、注力すべき重要な施策に社内リソースを充てることで効果的な運用を実現することができると思います。また、外部のプロのノウハウを活かして共同で行うことで、施策の効果の最大化や社内人材のレベルアップにもつながります。
質問6:BtoBサイトのPDCAをどう回せばよいですか?
S:まず「何を指標とし、どのような数値を目標にするか」を明確にすることが大切です(Plan)。たとえば問い合わせ数やホワイトペーパーダウンロード数など主要な指標をKPIに定めます。そして、GA4やMAツールなどでフォームの離脱率やページ閲覧データを解析し、現状の課題を洗い出します。
次に、仮説を立てたうえで実際に施策を実行し、フォーム項目の削減やCTA配置の変更など、小さな改修を進めます。小さな改修から始めることでリスクやコストを抑えることができます。施策後は定量データを収集して成果を検証します。コンバージョン率やページ滞在時間だけでなく、営業部門が得る問い合わせ内容の質など定性情報も確認することで、より正確に効果を見極めることができます。
最後に、成功施策は他のページへ横展開し、期待通りでなかった場合は原因を探って次のプランに反映させます。こうしたサイクルを繰り返すことで、サイトは段階的に最適化され、問い合わせ数や商談化率の向上に加え、ブランド認知やリードナーチャリングにも貢献しやすくなります。
質問7:経営層・営業部と連携しながらサイトの成果を最大化するにはどうしたらよいでしょうか?
売上や受注額、商談数など、経営層や営業部が最も関心を寄せる指標と関連づけるといいでしょう。ROI(投資対効果)を示すことも重要です。
また、定量面だけでなく、定性的効果、たとえば「競合と比較してどう評価されたか」「ブランド認知度が高まっている証拠はあるか」「商談の質が上がったか」など、営業担当者や顧客の声を盛り込み、具体的なエピソードで伝えるといいでしょう。他には、競合他社事例や業界平均と比較して、「自社サイトが業界平均よりもCVRが高い/低い」など、客観的な数値を示すと説得力が増すと思います。
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まとめ
BtoBサイトは、単なる企業紹介の場ではなく、リード獲得・商談化・ブランディングを強化する重要なビジネスツールです。適切なページ構成や導線設計、継続的な運用改善を行うことで、サイトは企業の成長を支える資産へと進化します。
とはいえ、戦略設計からデザイン・開発・運用改善まで、すべてを社内で完結させるのは容易ではありません。 実際、多くの企業が「リソース不足」や「専門知識の欠如」に直面し、サイトの更新が滞ったり、成果が出にくい状況に陥っています。
このような課題を解決するには、自社で取り組むべきことと、外部の専門家に任せるべきことを明確に切り分けることがポイントです。
「自社に最適なBtoBサイトの設計は?」「成果を最大化する運用体制とは?」こうした疑問をお持ちの方は、BtoBサイト構築のプロフェッショナルと連携し、戦略的に進めることをおすすめします。
今こそ、BtoBサイトを“会社の顔”から“成果を生むマーケティング資産”へと進化させましょう。
