Facebookの会員10億人の突破の原動力、ユーザーグロースチームとは?

デジタルマーケティング

全世界で10億人のユーザーを抱えるFacebook。日本でもユーザー数が1000万人を突破するなどユーザー数を拡大している。

全世界で10億人というのは驚くべき数字であるが、彼らはいかにしてこのような驚異的な成長を成し遂げたのであろうか?実は、その成功の秘訣は、Facebook(フェイスブック)の中に、会員獲得に責任を持ち幅広い権限を持つ専任チームの努力による所が大きいのである。彼らは、ユーザーグロース(User Growth)チームと呼ばれている。

Facebookのユーザーグロースチームの活動内容について、米国のQ&AサイトQuoraにユーザーグロースチームについての投稿があったので紹介しよう。

Facebookの会員10億人の突破の原動力、ユーザーグロースチームとは?

ユーザーグロースチームの仕事は、「毎月のアクティブユーザーを10億人以上にまで増やす方法を理解する」ことだった。ユーザー数を拡大していくために必要なプロセスを明確する事で、ユーザー数の拡大に向けて必要なものを最適化していくのだ。具体的には、以下が領域に関して取り組んでいた。

1 ビックデータの分析

ビックデータの分析は、ユーザーグロースチームの最も重要な仕事である。なぜなら、ユーザーグロースチームの仕事の多くは、データに基づく細かなテストの繰り返しであり、膨大な量のデータを分析する事で初めて可能になるからだ。

具体的には、以下のようなプロセスから成っている。

により可能だ。ユーザーグロースチームは、データサイエンスチームと親密に機能する。目的は、何が成長を促すのか考えることで、そのために彼らはデータを集め、テストを決める。

  1. ユーザー数を伸ばすためのドライバー(成長のために効果がある要素、成長変数)が何なのかについて仮説を構築する
  2. 仮説を検証するために必要なログ・データを集めるプログラムを書く
  3. データが集まったら、それを分析をする
  4. 一部の要素を変更したり、改善した場合にどのような影響が出るか、テストを行う
  5. テストの結果を測定する
  6. 再び最初から行う

2 ダイレクト・アクイジション

グロースチーム内には、インターネットマーケティングを通じた顧客獲得に取り組んでいるチームがある。これらは、ユーザー数を直接獲得する施策なので、ダイレクト・アクイジションと呼ばれている。

具体的には、以下の通りだ。

  1. SEO(検索エンジン最適化) 検索結果の上位に表示されるようにする
  2. PPC(クリック課金型広告) Google のリスティング広告などによるユーザー獲得
  3. Eメールマーケティング   ユーザーにメールを配信する事でユーザーを獲得する

彼らは、これらを最適化し、より多くのユーザーと、より多くの広告主を確保すべく仕事を行っている。

3 製品開発

グロースチームは、Facebookのプロダクトそのものに関しても重要な役割を持っている。具体的には、以下分野に関して、グロースチームが関与を行う。

  • ログアウト状態で表示される全てのFacebookページ(注:ログアウト状態で表示されるページは一種の広告スペースであり、ユーザー獲得に利用出来るからである)
  • 新規ユーザー獲得に関するフロー、ユーザーの体験(UX)
  • 新規ユーザーの登録フロー
  • Facebookの内での通知・広告(A/Bテストを繰り返し最適化する)
  • その他、ユーザー数の増加に影響を与えるもの全て

最後の部分に関してだが、ユーザー数の増加に関わるものであれば、あらゆるものに関わっている。例えば、スマートフォンやガラケー向けの携帯サイト、携帯アプリ、プラットフォーム本体の改良、Facebookクレジットなどだ。これらに関して、グロースチームが実験用のプロトタイプを開発することもあるし、他のチームが作ったプロダクトを最適化する事もある。

4 組織風土

成長にフォーカスした組織風土を確立することもグロースチームの非常な仕事である。Facebookの社内には、定量的な目標を持つチームと定性的な目標を持つチームがある。彼らの間で問題解決や製品設計のための共通の考え方、枠組みを提供するのもグロースチームの大事な仕事だ。なぜなら、組織の中では、データ重視の考え方と設計思想・哲学を重視する考え方が対立する事があるからだ。

グロースチームは、データ重視の考えを会社全体に押し広げ、問題の解決や製品開発を行う際に、積極的にリスクを取って実験する風土を作っている。これによって、会社全体が、大きな目標に向かって進み、なぜ、Facebookが成長しているのか、あるいは、していないのかを定量的に説明し、議論できるのである。

5 人材採用

ユーザーグロースチームの功績は、人材採用にも及んでいる。なぜなら、Facebookが順調にユーザー数を伸ばしていれば、他の企業を辞めてFacebookに転職したいと思う人材が増えるからだ。このようにして他社から優れた人材を獲得する事が出来るのである。数千万人、数億人のユーザーを獲得していれば、そのような会社に参加したい人が増えるからである。

6 マネタイズ施策とモバイル

グロースチームは、広告主の獲得、そして、ガラケー(フィーチャーフォン)やスマートフォンを利用するモバイルユーザーの獲得にも影響を与えている。なぜなら、ユーザー獲得とマネタイズは、非常に大きな共通があるからだ。ユーザーグロースは、突き詰めると、正しい発想(マインドセット)を持つ事と、それを実践するための方法論に行き着く。これらは、類似の問題に適用できるのだ。

7 小さな改善の積み重ね

今日まで、ユーザーグロースチームは、facebook.com、スマートフォンやフィーチャーフォン向けのモバイルサイト、スマートフォンアプリに関して、半百、何千ものテストを行ってきた。彼らが与えてきた影響を理解するには、ファイナンスにおける投資とリターンについて考えると分かりやすい。ユーザーを成長させるのは、元々の元本(スタート時点での製品)を使って、毎年利益を生み出すような複利型のリターンを生み出す事だからである。

では、単純なモデルを見てみよう。元本が一定で、毎年一定額の金利が付く投資である。(これを単利と呼ぶ)伸びが直線的であることが分かるだろう。 

次に複利型のリターンを考えてみる。例えば、もしログアウト状態で表示されるWebサイトのデザインを変更する事で、今までよりも5%多い新規ユーザー登録を獲得できたとする。これは、以下のグラフのように、複利で増えていく事になる。伸びが曲線的になっていくことが分かるだろう。 

ユーザー数の増加は、上記の投資の例えのように、曲線的にユーザーが伸びるような改善ポイントを探す事によって達成される。長い間に渡って、金利が積み上がり、雪だるま式にユーザーが増えるからである。実は、ユーザーを伸ばすための特効薬は存在しない。しかし、多数の小さな最適化を積み重ねる事は出来る。例えば、たった5%の改善を行う施策でも、そのような施策を10個見つけて実行するのである。なぜなら、そのような改善の積み上げが3年後に大きなユーザー数の増加をもたらすからだ。

もちろん、そもそものプロダクトが優れている事は大前提である。なぜなら、元本の価値が低ければ、いくら工夫しても増やしていくのが難しいからだ。

まとめ

どうだろう?参考になっただろうか?

私は、特に最後の部分、小さな改善を積み重ねるという部分が重要だと感じてる。実は、Facebookが10億人のユーザーを達成する原動力になったのは、小さな改善を積み重ねる事が出来る優秀な人材、そして、それを突き進めるデータ重視のカルチャーなのだ。

また、僕が非常に面白いなと思ったのは、この改善重視、数字重視の考え方が、トヨタのカイゼンの思想にも通じるという事である。僕は、これまでの仕事でトヨタ生産方式に関わる仕事をした事があり、個人的にも本を読んだりして勉強したのだが、やはり一番重要なのは、自発的に改善のサイクルを回す事が出来る人材であり、組織風土であると考えていた。まさに、Facebookは、改善サイクルを社内に定着させていて、それが成長の原動力になったと言える。

どうだろう?あなたのビジネスで改善サイクルを回すにはどうしたらいいだろうか?Facebookから学ぶべき点はあるだろうか? Photo Credit:aldoaldoz

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