Skip to content
Close
宗像 淳 / イノーバCEO2026/11/04 10:00:021 min read

AIが書いたペルソナは、なぜ誰にも刺さらないのか ── 生々しさの手に入れ方|イノーバ×スマートキャンプ共催セミナー再録 第4回

連載|ナーチャリングが効かなくなった本当の理由(全4回)第4回・最終回

本稿は、2026年9月8日(火)に開催したスマートキャンプ株式会社との共催セミナー「自社の機会損失はいくら?放置リードから商談数を最大化するナーチャリングの仕組み」のうち、イノーバのパート(登壇:宗像淳)の内容をもとに、加筆・再構成したブログ記事です。当日使用したスライドの一部を掲載しています。

〈全4回の構成〉
・第1回:リードは集まる。商談は増えない
・第2回:「ザ・モデル」は、本国ではもう古い
・第3回:全員に同じメールを送るのを、今日でやめる
・第4回:AIが書いたペルソナは、なぜ誰にも刺さらないのか(この記事)

スマートキャンプ株式会社との共催セミナー第2弾が決定しました。詳しくは、下のバナーをクリックしてください。

11月26日(木)12:00〜13:00 オンライン・参加無料。イノーバ×スマートキャンプ共催セミナー「一律CPA管理から抜け出す BtoBマーケティング予算ポートフォリオ」

 

はじめに

前回の最後に、逃げずに向き合いたい問いを置いた。生成AIがあれば「コンサルなんて要らない」と言われる時代に、どうやって選んでもらうのか。

顧客理解が大事だと言っても、その作業自体がAIでできてしまう。ペルソナもカスタマージャーニーも、数分で、それなりの見た目のものが出てくる。ならば、我々は何で選ばれるのか。私の答えを書く。

 

AIが書くペルソナは、なぜ差がつかないのか?

落とし穴:AIが書くペルソナ・カスタマージャーニーの罠。表面的なペルソナは誰でも、AIでも書ける。結果、他社と同じような資料やメルマガが並ぶ

AIでペルソナやカスタマージャーニーを作る会社は増えた。セミナーでは、こう話した。

「AIを使ってペルソナやカスタマージャーニーを作ると、差がつかないんですね。表面的にそれっぽい資料、コンテンツ、インサイドセールスのスクリプトができていきますので、やっぱり生々しさ、個別のお客さんに合わせたところを、どう作っていくかだと思っています」

AIが書くペルソナは、間違っているわけではない。むしろよくできている。ただ、AIは公開されている情報から答えを作る。同じ業界を狙っている競合3社が、それぞれAIにペルソナを書かせれば、出てくるものはほぼ同じになる。

その結果、顧客の受信箱には、書いた会社を隠したら区別がつかないメールが並ぶ。AIで顧客理解を効率化した会社ほど、他社と区別がつかなくなる。効率化した結果、差別化を失うという構造だ。

 

生々しさは、どうやって手に入れるのか?

生々しさをどう手に入れるか:見込み顧客を徹底的にインタビューする

イノーバが実際に経験した案件を紹介したい。非常に技術的な商材を扱う企業の案件で、商材が難しすぎるという相談を受けた。そこで、私はこう提案した。「じゃあ、お客さんを呼んで聞いてみよう」。

そうして、大手メーカーで購買の立場から関わっている方に、インタビューすることができた。製品の話ではなく、顧客の側の話を聞いた。どういうタイミングで課題が出てくるのか。どうやって製品を選んでいるのか。

その結果、非常に生々しい資料とホームページを作ることができた。

想像だと外れる。ぼやけていると当たらない。的が見えていないまま矢を放っても、当たらないのと同じだ。AI分析で留まらず、AIが出せないところに価値がある。お客さん一人ひとりの課題とタイミングを、解像度高く把握していくことが重要だと考えている。

 

AI分析だけと、顧客インタビューは何が違うのか?

AI分析だけと、実際のターゲット顧客インタビューの比較。課題の解像度、提案の個別性、コンテンツ、コスト・速度の4観点で対比


速くて安い方法は、競合も同じように使える。だから、そこで差はつかない。顧客インタビューは時間もコストもかかるが、そこで得た言葉は自社にしかない資産になる。競合がAIに聞いても、絶対に出てこない。

 

AIの正しい使い方とは?

正しいAIの使い方は、「AIに書かせる」ことではなく「一次情報をAIに展開させる」こと

誤解のないように書いておくと、「AIを使うな」という話ではない。もちろん、AIを当たり前に使う時代だ。問題は、使い方が逆になっていることにある。

多くの会社は、AIに「書かせて」いる。入力するのは、公開情報とざっくりした指示だけ。出てくるのは平均値で、競合と同じものになる。逆にすればいい。

一次情報を集めるのが人間の仕事。それを展開するのがAIの仕事。

顧客インタビューの記録をAIに読ませ、論点を抽出させ、ステージ別・セグメント別のコンテンツ案に展開させる。この使い方なら、AIは速い。しかも入力が自社にしかない一次情報だから、出力も自社にしかないものになる。イノーバでも、こうした工夫をして、開封率が上がったり、商談になりやすくなったりした事例がある。

つまり、AIは差別化の源泉にはならないが、差別化の増幅装置にはなる。

 

明日から始める、3つのこととは?

まとめ:明日から始める3つのこと。購買プロセスの可視化、見込み顧客へのインタビュー、リードの棚卸し

1. お客様の購買検討プロセスを、可視化する。誰が起案し、誰が比較し、誰が承認し、誰が拒否権を持つか。営業とマーケが同じ部屋で、1枚に描く。

2. 見込み顧客に、実際にインタビューする。既存顧客ではなく、これから検討する側の人に。想像だと外れる。

3. リードを、企業の規模や検討のステージで棚卸しする。ほとんどのマスが空白で、一箇所にだけ全部が詰まっているはずだ。まずそれを直視する。

どれも大きな投資ではない。ツールの入れ替えも、組織変更も要らない。要るのは、営業とマーケが同じ部屋に入ることと、顧客に会いに行くことだ。

 

セミナー当日のQ&Aから:一次情報は、どうやって作ればよいのか?

当日のQ&Aでは、司会の方から次の質問をいただいた。

Q. 一次情報をもとにしたコンテンツ作りで、そもそもリサーチや情報をどう作っていけばよいのか。

A. 「刺さる」とは何かを考えると分かりやすい。刺さらないのは、自分の関心の対象外のことと、言われなくても知っていることだ。逆に言えば、関心の対象でありながら、まだ知らないこと、気づきがあることが刺さる。

そのために、リサーチの視点をいくつか持っている。日本は情報源が限られるので、あえて英語で海外を調べる。AIで変化が速くなっているので、この2年で毎月・四半期ごとにどんな影響が出てきたかを分析し、今後を考える。

お客さんへのインタビューは、デパ地下の試食のようなものだ。やってみると、なぜやっていなかったのかと思う。それくらい、分かっていないのだと思う。

もう一つ付け加えると、KPIを「何件かけたか」にすると、ゴミカードをたくさん集めて山札に入れるようなものになる。見込みの高いお客さんを常に持っているから、数字が達成できる。そのためには、お客さんと話すことそのものが評価される設計が必要だ。

 

経営視点から考える、ナーチャリングのあるべき姿

4回にわたって書いてきた。一貫して書いてきたのは、ナーチャリングが効かなくなったのは、施策が下手だからではない、ということだ。買い手が変わったのに、我々の設計が変わっていない。だから効かない。

お客さんがAIで武装して、売り込まれないぞと構えている。だからこそ、たくさん作ればいい、たくさんメールを送ればいい、たくさんウェビナーをやればいい、という形ではなく、質にこだわる時代が来たのではないだろうか。

逆に言えば、設計を変えれば効く。そして設計を変えるのに、大きな予算は要らない。地味な話で申し訳ないが、私はこれがいちばん効くと考えている。


連載「ナーチャリングが効かなくなった本当の理由」全4回を、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本連載は、スマートキャンプ株式会社との共催セミナーでお話しした内容を、4回に分けて加筆・再構成したものです。まだお読みでない回があれば、こちらからどうぞ。

・第1回:リードは集まる。商談は増えない
・第2回:「ザ・モデル」は、本国ではもう古い
・第3回:全員に同じメールを送るのを、今日でやめる
・第4回:AIが書いたペルソナは、なぜ誰にも刺さらないのか(この記事)

 

スマートキャンプ株式会社との共催セミナーは、第2弾も開催します。テーマは「来期のマーケ予算」です。一律のCPA管理から抜け出し、「何に・いくら・なぜ」を経営に説明できるBtoBマーケティング予算の組み方を解説します。11月26日(木)12:00〜13:00、オンライン・参加無料です。ぜひご参加ください。

11月26日(木)12:00〜13:00 オンライン・参加無料。イノーバ×スマートキャンプ共催セミナー「一律CPA管理から抜け出す BtoBマーケティング予算ポートフォリオ」

 

avatar

宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。

2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。

2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
最新刊 旧作1 旧作2