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宗像 淳 / イノーバCEO2026/10/14 10:00:011 min read

リードは集まる。商談は増えない ── ナーチャリングが効かなくなった本当の理由|イノーバ×スマートキャンプ共催セミナー再録 第1回

連載|ナーチャリングが効かなくなった本当の理由(全4回)第1回

本稿は、2026年9月8日(火)に開催したスマートキャンプ株式会社との共催セミナー「自社の機会損失はいくら?放置リードから商談数を最大化するナーチャリングの仕組み」のうち、イノーバのパート(登壇:宗像淳)の内容をもとに、加筆・再構成したブログ記事です。当日使用したスライドの一部を掲載しています。

〈全4回の構成〉
・第1回:リードは集まる。商談は増えない(この記事)
・第2回:買い手が変わった15年。ザ・モデルは本国でどう更新されたか
・第3回:全員に同じメールを送るのをやめる。4つの打ち手
・第4回:AIが書いたペルソナはなぜ刺さらないのか。生々しさの手に入れ方

 

はじめに

先日、スマートキャンプさんと共催でオンラインセミナーを開いた。参加してくれたのは、B2Bマーケティングに何年も取り組んできた会社の方々だ。予算も人も入れている。MAも入っている。コンテンツも作り続けている。

それでも、「うまくいっている」と言い切れる会社は少ない。リードは集まるのに、商談が増えない。

私はその原因を、顧客の側にあると考えている。ただしその話をする前に、まず自分たちの足元を見なければならない。第1回は、そこから始める。

セミナー表紙「ナーチャリングは、なぜ効かなくなったのか ── 答えは顧客の検討プロセスにあり」

 

課題は10個ある。いくつが自社に当てはまるか?

今回のセミナーに向けて、B2Bの企業さんが抱えている課題を整理してみた。全部で10個ぐらい出てきた。

現状認識1/2:リードは集まるが商談化率が上がらない、メルマガの開封率が下がる、ウェビナーの参加率が落ちる、展示会リードが音信不通になる、架電がつながらない

現状認識2/2:MAが高いメール配信ツールになっている、コンテンツを惰性で作り続けている、休眠リードが活用できていない、営業からリードの質に文句を言われる、リード獲得単価が上がり続ける

リードは頑張って集めているのに商談化しない。営業がフォローしてくれない。メルマガの開封率やクリック率が下がっている。ウェビナーの参加率が落ちている。展示会や比較サイトで集めても、その後につながらない。インサイドセールスの電話がつながりにくくなっている。MAを入れたのに、メールの発射台になっている。

この10個を、社内で別々の問題として扱っている会社は多いだろう。メルマガの開封率はマーケの問題、架電がつながらないのはインサイドセールスの問題、商談化率は営業の問題、というふうに。

そして10個に共通していることが、一つある。どれも「入口」の問題ではない。リードは集まっている。問題が起きているのは、全部そのあとだ。

 

課題は一見バラバラだが…

10個の症状を並べて考えていくと、私は、根っこはたった一つだと思い当たった。

セミナーでは、こう話した。

「リードを取って育成する、というところが全く機能していないんじゃないか。ちょっと厳しい言葉を使わせていただくと、マーケティングをやったつもりになっている、お客さんに全く届いていないんじゃないか、というのが今日の問題提起です」

課題は一見バラバラだが、根は一つ。獲得したあとの「育てる工程」が機能していない。

ナーチャリングという言葉は、日本のB2Bマーケティングにすっかり定着した。MAを導入し、シナリオを組み、スコアリングを設定する。ここまでは多くの会社がやっている。

だが、その工程が本当に顧客を「育てて」いるかと問われると、答えに詰まる会社が多いのではないだろうか。やってはいる。動いてはいる。ただ、顧客の側で何かが変わった形跡がない。

 

なぜナーチャリングは量の勝負になってしまったのか

きっかけの一つは、「ザ・モデル」だと私は考えている。非常にいい本だ。私も読んだ。ただ、それを機械的に実施してしまったところがあって、量で解決するマーケティングになってしまった。

不都合な事実:「ナーチャリング」と言いつつ、量で解決しようとしてきた。電話をかけまくる・メールを送りまくる・ウェビナーを開催しまくる・ブログを書きまくる。

電話をかけまくる。メールを送りまくる。ウェビナーを開催しまくる。ブログを書きまくる。「育てる」と言いながら、実際にやっていたのは量を増やすことだった。

厄介なのは、短期的には数字が上がることだ。配信数を倍にすれば、開封率が半分に落ちてもクリック数は変わらない。架電数を増やせばアポは増える。今月の目標は、たしかに達成できる。だから続けてしまう。

だが、その裏で起きているのはリストの疲弊だ。開封率が年々下がっているのは、件名が下手になったからではない。読まれ続けるに値しないメールを、読まれ続けるに値しない頻度で送ってきた結果だと、私は見ている。そして一度疲弊したリストは、簡単には戻らない。

 

ファネルの水漏れ

海外のデータを見ていると、この問題は海外でも起きていた。「リーキーファネル(ファネルの水漏れ)問題」と呼ばれるものだ。指摘されているのは、3つの漏れである。
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・問題1:マーケからのリードの受け渡しが早すぎる。見込みの低いリードで、営業が時間をロスする
・問題2:営業がリードを選り好みする。時間のかかるリードをフォローせず、機会ロスを生む
・問題3:商談にならなかったリードの分を補うために、新しいリードを取り続けなければならず、マーケティングの支出がかさむ

問題3が、経営にはいちばん重い。リードが商談化しないぶん、リードをどんどん取り続けなければならない。するとマーケにお金を使っている割に成果が出ているのかと、経営側から叩かれる。次の予算が削られ、打ち手が減り、さらに効かなくなる。

つまり、育成できていない、あるいは受注できていないことが、すべての問題の根っこになっている。集客が下手になったのではなく、持っているリードを活かせていないのだ。

 

担当者の努力不足の話ではない

誤解のないように書いておくと、これは担当者の努力不足の話ではない。メールを送りまくった人も、ウェビナーを回し続けた人も、ブログを書き続けた人も、全員が真面目に仕事をしている。むしろ、真面目に量をこなした会社ほど、いまリストが疲弊しているのかもしれない。

では、なぜ量が効かなくなったのか。答えは我々の側ではなく、買い手の側にある。この15年で、B2Bの買い手の行動は構造的に変わった。次回は、そこを見ていく。

 

次回(第2回):「ザ・モデル」は、本国ではもう古い ── 買い手が変わった15年を、1枚の年表で

 

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。

2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。

2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
最新刊 旧作1 旧作2