はじめに
オウンドメディアとは、企業や団体が自ら運営するWebメディアのことです。近年、多くの企業がオウンドメディアを活用し、ブランディングや見込み客の獲得に役立てています。本記事では、オウンドメディアの成功事例を15選ピックアップし、各メディアの特徴や成功のポイントを詳しく解説します。
オウンドメディア成功の3つの秘訣
1. 明確な目的とターゲットの設定
オウンドメディアを成功させるには、まず明確な目的とターゲットを設定することが重要です。メディアの運営目的は、ブランディング、集客、顧客育成など様々ですが、目的に合わせてターゲットを明確にし、最適なコンテンツを制作・発信することが求められます。
2. ユーザー視点に立ったコンテンツ設計
オウンドメディアでは、ユーザーが求める情報を提供し、共感を得ることが重要です。そのためには、ユーザーのニーズを的確に捉え、ペルソナを設定した上で、ユーザー目線に立ったコンテンツを設計する必要があります。
SEOを意識した記事の最適化
オウンドメディアでは、SEOを意識した記事の最適化も欠かせません。ユーザーが検索しそうなキーワードを適切に選定し、記事の構成や見出しに反映させることで、検索エンジンからの流入を増やすことができます。
3. 継続的な運用と改善
オウンドメディアは一度作って終わりではなく、継続的な運用と改善が必要です。PDCAサイクルを回し、定期的にデータを分析して改善点を洗い出すことが重要です。
効果検証に基づく施策の最適化
オウンドメディアの運用では、KPIを設定し、効果検証に基づいて施策を最適化していくことが求められます。A/Bテストなどを活用し、より効果的なコンテンツや導線の設計を行うことが成功のカギを握ります。
業種別の成功事例一覧
1. BtoB企業の事例
事例1: サイボウズ式(サイボウズ株式会社)
サイボウズ式は、チームワークの向上を目的としたグループウェアを開発・販売するサイボウズ株式会社が運営するオウンドメディアです。「働き方」や「組織文化」をテーマに、同社が大切にしている価値観を発信しています。
同メディアの特徴は、自社製品のPRを控えめにし、ユーザーにとって有益な情報を中心に発信していること。社員自身が情報発信者となり、ユーザーとの対話を重視しながら、長期的な視点でメディアを運営している点も特筆すべきポイントです。
事例2: ばね探訪(東海バネ工業株式会社)
ばね探訪は、自動車用シートやエンジン部品などに使われる精密ばねを製造する東海バネ工業株式会社のオウンドメディアです。同メディアでは、ばねという非常にニッチな領域に特化し、業界の最新動向や技術情報を深く掘り下げて発信しています。
自社製品の紹介は最小限に留め、顧客企業の事例紹介などを通じて、同社の技術力や問題解決能力をアピールしている点が特徴です。専門性の高い情報を提供することで、顧客との信頼関係構築に成功しています。
2. BtoC企業の事例
事例3: となりのカインズさん(株式会社カインズ)
となりのカインズさんは、ホームセンターチェーン「カインズ」を運営する株式会社カインズのオウンドメディアです。「ホームセンターを遊び倒す」をコンセプトに、ユーザー参加型のコンテンツを多数展開しています。
例えば、「こんなものまでカインズで買えちゃうの?」という企画では、ユーザーから寄せられたアイデアを実際に店舗で試すなど、ユニークな取り組みが話題を集めています。また、商品の使い方や、DIYのアイデアなども豊富に掲載し、ユーザーの生活に寄り添ったメディアとなっています。
事例4: 北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)
北欧、暮らしの道具店は、北欧雑貨のオンラインショップを運営する株式会社クラシコムが、自社ECサイトと併設する形で立ち上げたオウンドメディアです。北欧のライフスタイルを提案するコンテンツを通じて、同社が目指す世界観を表現しています。
同メディアでは、商品の背景にあるストーリーや、使い方のアイデアなどを詳しく紹介。読者に北欧の暮らしを身近に感じてもらうことで、商品購入への意欲を高めています。記事の最後には、関連商品へのリンクを設置し、自然な導線設計も行っています。
3. 金融業界の事例
事例5: SMBC日興証券株式会社 FLOGGY
FLOGGYは、SMBC日興証券株式会社が運営する株式投資をテーマとしたオウンドメディアです。株式投資に関する情報を積極的に発信し、投資家教育に力を入れている点が特徴です。
同メディアの最大の特徴は、メディア内で取り上げた銘柄の取引ができること。記事の最後にある「FROGGY取引」ボタンを押すと、SMBC日興証券の証券口座から記事内の銘柄をそのまま売買できます。メディアと取引が直結することで、ユーザーの利便性が大幅に向上しています。
4. 製造業の事例
事例6: TECH-COMPASS(山洋電気株式会社)
TECH-COMPASSは、冷却ファンや電源バックアップ装置などを製造・販売する山洋電気株式会社が運営するオウンドメディアです。同社の製品や技術に関連する課題を解決するための情報を発信しています。
掲載記事は、設計や開発に役立つ高度な技術情報が中心。専門性の高さが際立っており、エンジニアを中心とした読者を獲得しています。自社製品の紹介も行いつつ、課題解決のためのノウハウを丁寧に解説する点が特徴です。
事例7: KEYENCE バーコード講座(株式会社キーエンス)
バーコード講座は、センサーや測定機器などを製造・販売する株式会社キーエンスが運営するオウンドメディアです。バーコードに関する基礎知識から、読取り技術、機器の選定方法など、バーコードに関するあらゆる情報を網羅的に解説しています。
同メディアでは、バーコードの基本原理から応用例まで、非常に専門的な内容を分かりやすく説明。記事の最後には、自社製品の資料請求ページへの導線を設けることで、リード獲得にも役立てています。
5. 教育業界の事例
事例8: 侍エンジニア塾ブログ(株式会社侍)
侍エンジニア塾ブログは、プログラミングスクールの「侍エンジニア塾」を運営する株式会社侍のオウンドメディアです。プログラミング学習に関する情報を、初心者向けに分かりやすく発信しています。
同メディアでは、SEO対策に力を入れており、検索上位表示を狙ったキーワード選定や記事構成を行っています。その結果、月間300万PVを超えるアクセスを集め、スクールへの集客に大きく貢献しています。初心者向けの情報を丁寧に解説し、ユーザーの問題解決に役立つ点が人気の理由です。
事例9: ベネッセ教育情報サイト(株式会社ベネッセコーポレーション)
ベネッセ教育情報サイトは、教育事業を手がける株式会社ベネッセコーポレーションが運営する教育情報の総合メディアです。同社が長年にわたって蓄積してきた教育に関する知見を、保護者や子供向けに幅広く発信しています。
同メディアの特徴は、教育に関する情報を非常に網羅的に扱っている点。子育てや受験など、保護者の悩みに寄り添ったコンテンツが充実しており、専門家によるアドバイスなども好評です。また、子供向けのゲームや動画なども提供し、楽しみながら学べる工夫も凝らしています。
失敗事例から学ぶ教訓
オウンドメディア運営では、以下のような失敗パターンがよく見られます。
1. 目的やターゲットが不明確
オウンドメディアを始める際に、運営の目的やターゲットを明確にしていないケースがあります。その結果、焦点の定まらないコンテンツになってしまい、ユーザーに刺さらないというケースが少なくありません。
2. ユーザーニーズとズレたコンテンツ
自社の都合ばかりを優先し、ユーザーが求める情報を提供できていないケースもあります。自社製品の宣伝ばかりに偏ったり、ユーザーの関心事から外れたトピックを取り上げたりすることで、読者の離脱を招いてしまうことがあります。
3. 継続的な更新ができない
オウンドメディアを始めたものの、人的リソースや予算の不足から、定期的な更新ができないケースも見受けられます。更新頻度が低下することで、読者の興味を維持できなくなり、SEO上のパフォーマンスも下がってしまいます。
4. PDCAサイクルが回せていない
オウンドメディアの運営では、PDCAサイクルを回し、継続的な改善を行うことが重要です。しかし、効果検証や分析を怠り、問題点の把握や施策の最適化ができていないケースがあります。その結果、成果が伸び悩み、運営の継続が難しくなってしまいます。
これらの失敗を避けるためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
明確な目的とターゲットの設定
オウンドメディアの運営目的を明確にし、ターゲットとする読者像を具体的にイメージすること。目的に合ったコンテンツを制作し、ターゲットユーザーのニーズに応えることが求められます。
ユーザー視点に立ったコンテンツ設計
自社の都合ではなく、ユーザーが求める情報は何かを常に考えること。ユーザーの関心事や悩みに寄り添い、問題解決に役立つコンテンツを提供することが重要です。
運営体制の整備と継続的な更新
オウンドメディアの運営には、一定の人的リソースと予算が必要です。社内の体制を整え、安定的に記事を更新できる仕組みを構築しましょう。外部ライターの活用など、リソース不足を補う工夫も有効です。
データ分析に基づく改善の実行
アクセス解析ツールを用いて、ユーザーの行動データを定期的に分析すること。どのようなコンテンツが人気で、どこから読者が離脱しているかを把握し、施策の改善に生かしていくことが求められます。
オウンドメディア運営のTips
効率的な記事制作の方法
オウンドメディアでは、いかに効率的に質の高い記事を量産できるかが重要なポイントとなります。以下のようなTipsを参考に、最適な記事制作フローを構築しましょう。
制作フローの最適化
記事の企画から公開までの一連の流れを見直し、非効率な部分がないか確認します。社内の承認プロセスを簡略化したり、外部ライターを活用したりするなど、無駄な工程を省略することで、スピーディーな記事公開が可能になります。
ライターの育成・活用方法
オウンドメディアの運営目的や方針をしっかりと理解したライターを育成・活用することが重要です。社内ライターには、定期的な勉強会やフィードバックを行い、スキルアップを図ります。外部ライターに関しても、ガイドラインを整備し、方針に沿った記事制作を依頼することが求められます。
外注の有効活用
記事制作のすべてを社内で行うのではなく、外注を活用することも効果的です。得意分野の異なるライターに依頼することで、幅広いジャンルの記事を安定的に確保できます。ただし、コストと品質のバランスを考え、適切な発注先を選定することが肝要です。
SNS活用のコツ
オウンドメディアの記事をより多くの人に届けるためには、SNSの活用が欠かせません。以下のようなコツを押さえ、効果的なSNS発信を行いましょう。
SNSの特性の理解
FacebookやTwitter、Instagramなど、各SNSにはそれぞれ特性があります。ユーザー層や投稿の形式、エンゲージメントの取れ方などを理解し、メディアの目的に合ったSNSを選択することが重要です。
最適な発信方法
SNSでの発信は、テキストだけでは目立ちません。画像や動画を活用し、ビジュアル的な訴求力を高めることが効果的です。また、フォロワーを巻き込むような問いかけを投稿文に盛り込むなど、エンゲージメントを意識した工夫も必要です。
外部メディアとの連携
オウンドメディアの認知度を高めるためには、外部メディアとの連携も重要な施策となります。以下のような方法で、外部メディアとwin-winの関係を築きましょう。
外部メディアとのwin-winの関係構築
外部メディアと共同で企画を実施するなど、互いにメリットのある関係を築くことが大切です。例えば、外部メディアの記事にオウンドメディアのコンテンツを提供する代わりに、外部メディアから自社メディアへのリンクを獲得するなどの施策が考えられます。
効果的なPRの方法
オウンドメディアの取り組みを外部メディアに取り上げてもらうことで、メディアの認知度を高めることができます。プレスリリースの発行や、記者への個別アプローチなど、効果的なPR活動を展開しましょう。
コラム:オウンドメディアの未来
オウンドメディアを取り巻く環境は、今後さらに変化していくことが予想されます。以下のような点に注目しながら、オウンドメディアの可能性を探っていきましょう。
オウンドメディアの進化の可能性
AIを活用した自動記事生成など、新たな技術の導入により、オウンドメディア運営の効率化が進むことが期待されます。また、VRやARなど、没入感の高い新しいフォーマットの登場により、ユーザー体験がさらに豊かになる可能性もあります。
AIの活用による運営の効率化
記事の自動生成だけでなく、ユーザーの行動分析やコンテンツのレコメンドにもAIを活用することで、より最適なユーザー体験を提供できるようになるでしょう。AIを活用した運営の自動化により、人的リソースを最適配分できる可能性も高まります。
新たなフォーマットの登場
VRやARなどの新しい技術を活用することで、オウンドメディアの表現の幅が広がります。没入感の高いコンテンツにより、ユーザーとのエンゲージメントを深められる可能性があります。また、音声コンテンツなど、新しいフォーマットへの対応も求められるでしょう。
FAQ
オウンドメディアの始め方は?
まずは目的と達成マイルストーンを明確にし、ターゲットとする読者像を細かくイメージすることから始めます。そして、メディアを通じてどのようなメッセージを伝えるのかを練り上げ、コンテンツ設計に反映させていきます。メディアの運営体制や予算なども合わせて検討し、実現可能な計画を立てることが重要です。
運営に必要な体制は?
オウンドメディアの運営には、企画・制作・運用の各フェーズに携わるメンバーが必要です。社内の関連部署からメンバーを集め、役割分担を明確にしましょう。編集長などの全体統括者を置き、PDCAサイクルを回せる体制を整備することが求められます。
効果が出るまでどれくらいかかる?
オウンドメディアの効果が表れるまでの期間は、一概には言えません。記事数の増加とともに、検索流入が徐々に伸びていくケースが一般的です。一定のボリュームの記事を公開してから3〜6ヶ月程度で、効果が現れ始めることが多いようです。ただし、競合サイトの状況や、運営体制によって変動するため、一概には断言できません。
外注する際の注意点は?
記事作成を外注する際は、オウンドメディアの目的や方針をライターにしっかりと伝達し、認識のズレを防ぐことが重要です。記事の構成やトーン&マナーなど、具体的な指示を行い、納品物の品質をチェックする体制を整えましょう。また、機密情報の取り扱いにも気をつけ、守秘義務契約を交わすなどの対策が必要です。
まとめ
本記事では、オウンドメディアの成功事例を15選紹介し、それぞれの特徴や成功のポイントを詳しく解説しました。オウンドメディア運営では、目的とターゲットを明確にし、ユーザー視点に立ったコンテンツ設計を行うことが重要です。
加えて、ターゲットユーザーに合わせた情報発信の工夫やSNSの特性を理解した効果的な活用、記事制作の効率化などのポイントを押さえ、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を行っていくことが求められます。
また、業種別の特徴や、各社の事例から学べるノウハウもあります。自社の強みを生かしつつ、ユーザーの課題解決に役立つ情報を提供するという基本姿勢を忘れずに、オウンドメディア運営に取り組んでいきましょう。
オウンドメディアの立ち上げや運用でお困りの際は、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後になりましたが、イノーバではオウンドメディアの戦略立案から構築・運用まで、トータルでサポートするサービスをご用意しております。オウンドメディア運営のお悩みやご相談がございましたら、ぜひ一度お問い合わせください。私たちが培ってきたノウハウを活かし、御社のオウンドメディア運営の成功をサポートいたします。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
オウンドメディアの全体像を知りたい方は、こちらをお読みください。
オウンドメディアの事例や活用法を知りたい方は、こちらをお読みください。