はじめに
近年、多くの企業がオウンドメディアを活用し、ブランディングや見込み客の獲得、採用など様々な目的を達成しています。オウンドメディアとは、企業が自社で保有するメディアのことを指します。企業のWebサイトやブログ、SNSアカウントなどが代表的な例です。
本記事では、オウンドメディアの運営で成果を出している企業の事例を目的別に紹介し、それぞれの成功のポイントを解説します。これからオウンドメディアを立ち上げる予定の方や、すでに運営しているが思うような結果が出ていない方は、ぜひ参考にしてみてください。
オウンドメディア運営の5つの目的と成功事例
オウンドメディアを運営する目的は企業によって様々ですが、大きく分けると以下の7つに分類できます。
1. ブランディング
オウンドメディアを活用して自社のブランドイメージを向上させている事例として、サイボウズ株式会社の「サイボウズ式」が挙げられます。同社は働き方・生き方やチームワークに関する情報を発信することで、多様な働き方を推進する企業としてのイメージを確立しています。
株式会社ファッションヘッドラインの「FASHION HEADLINE」は、ファッション業界の最新動向を独自の視点で発信するメディアです。中立的な立場からコンテンツを制作することで、同社の専門性の高さを印象づけています。
ブランディング目的の成功ポイント
- 自社の強みや独自の視点を活かしたコンテンツを制作する
- 読者目線でニーズに合った情報を発信する
- 自社色を押し出しすぎず、中立的な立場を保つ
2. リード獲得
見込み客の獲得を目的としたオウンドメディアの事例には、株式会社ベーシックの「ferret」があります。Webマーケティングに関する実践的な情報を発信することで、マーケティング担当者からの問い合わせを増やしています。
株式会社ベネフィット・ワンの「ボーグル」は、福利厚生に関する情報に特化したメディアです。企業の人事担当者のニーズを捉えたコンテンツを制作し、自社サービスの利用につなげています。
リード獲得目的の成功ポイント
- ターゲットとなる企業の課題やニーズを把握する
- 専門的な知識やノウハウを惜しみなく提供する
- 適切なタイミングで自社サービスの案内を行う
3. 採用ブランディング
優秀な人材の採用を目指して、自社の魅力を伝えるオウンドメディアを運営している企業もあります。株式会社メルカリの「mercan」は、社員へのインタビューを通して、同社の価値観や社風を伝えるメディアです。
採用ブランディング目的の成功ポイント
- 社員の生の声を積極的に届ける
- 求職者が知りたい情報を率直に公開する
- 自社の事業や職種の魅力を具体的に伝える
4. サービス利用者の増加
自社サービスの利用者を増やすことを目的としたオウンドメディアの運営事例もあります。アサヒグループ食品株式会社の「アマノ食堂」では、自社製品を活用したレシピを紹介することで、購買意欲を高めています。
株式会社クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」は、同社が運営するECサイトと連動したメディアです。北欧雑貨の魅力を伝えるコンテンツを通して、自然と商品購入につなげています。
サービス利用者増加目的の成功ポイント
- 自社製品やサービスの魅力や活用方法を具体的に紹介する
- ターゲットとなる客層のライフスタイルに寄り添ったコンテンツを制作する
- メディアとECサイトの導線を最適化する
5. 認知拡大
オウンドメディアを通して自社の認知度を高めている事例として、株式会社アイデムの「ジモコロ」が挙げられます。地方の魅力を伝えるユニークなコンテンツが話題を呼び、多くのメディアで取り上げられています。
株式会社BAKEの「THE BAKE MAGAZINE」は、同社のブランドコンセプトである"お菓子のスタートアップ"を体現するメディアです。お菓子業界の最新トレンドを発信することで、同社の存在感を高めています。
認知拡大目的の成功ポイント
- 他メディアで取り上げられるようなユニークさや話題性を持たせる
- 自社のブランドコンセプトを体現するようなコンテンツを制作する
- SNSでの拡散を意識した見出しやビジュアルを工夫する
オウンドメディア成功の8つの法則
ここからは、オウンドメディアを成功に導く8つのポイントを詳しく解説します。
1. 明確な目的とKPIを設定する
オウンドメディアを運営する上で、最も重要なのは明確な目的を設定することです。ブランディングなのか、リード獲得なのか、採用なのか。目的によって、コンテンツの方向性や配信方法が大きく変わります。
また、数値化された目標、つまりKPI(重要業績評価指標)を設定することも大切です。PVやUU、CVRなど、目的達成に向けた指標を定め、定期的に検証・改善していきましょう。
目的設定のフレームワーク
- ゴール(最終的に達成したいこと)を明確にする
- ゴールを実現するための、マイルストーン(中間目標)を設定する
- マイルストーンを評価するための定量的な指標(KPI)を設定する
KPI設定のポイント
- 目的達成に向けて、ユーザーにどのようなアクションを起こしてほしいかを明確にする
- GoogleアナリティクスなどのWEB解析ツールで測定可能な指標を設定する
- 短期的、中期的、長期的とスパンを変えて複数のKPIを設定する
2. ターゲットを深く理解する
オウンドメディアで成果をあげるためには、ターゲットとなる読者の属性や興味関心、行動特性などを深く理解する必要があります。ペルソナを設定し、ターゲットの気持ちに寄り添ったコンテンツを制作しましょう。
ペルソナの作り方
- 性別、年齢、職業など基本的な属性を設定する
- 日頃の生活や余暇の過ごし方、情報収集の方法などを想定する
- ターゲットが抱える課題や悩み、理想の状態を明確にする
【チェックリスト】ペルソナ設計に必要な10の要素
- 名前(複数名分作成する)
- 顔写真(架空人物でOK)
- 性別
- 年齢
- 家族構成
- 職業
- 日常生活の様子
- 趣味・関心事
- メディアとの接点
- 課題・悩み・理想
共感を生む"ペルソナストーリー"のつくりかた
ペルソナを深く理解するには、ストーリーを書いてみるのが効果的です。ペルソナに感情移入しながら、日常生活の中での行動や心の機微を想像してみましょう。リアリティのある具体的なストーリー設定がポイントです。
- ペルソナがどんな朝を迎え、どう一日を過ごすのかを想像する
- 日頃の情報収集行動やメディア接触のシーンを細かく書き出す
- 自社製品やサービスとの接点を見つけ、どんな課題解決ができそうかを考える
3. 独自の価値を提供する
オウンドメディアが他社と差別化するためには、オリジナリティのあるコンテンツが不可欠です。競合サイトにはない切り口や情報、自社ならではの視点を大切にしましょう。
他社との差別化ポイントの見つけ方
- 競合サイトのコンテンツを徹底的に分析し、自社にしかない強みを洗い出す
- 自社の商材・サービスに関して、他社があまり語っていないポイントを見つける
- ターゲットのニーズや興味関心と、自社の専門性が交わる部分を探す
4. 適切な記事フォーマットを選ぶ
オウンドメディアの記事フォーマットは、ターゲットの属性や記事の目的によって使い分ける必要があります。代表的なフォーマットには以下の8つがあります。
オウンドメディアの8つの記事フォーマット
- ハウツー記事
- 比較記事
- 事例紹介記事
- データ活用記事
- 対談記事
- インタビュー記事
- コラム記事
- ニュース記事
フォーマット選定の3つのポイント
- ターゲットが知りたい情報は何か?を起点に考える
- 自社の強みを活かせるフォーマットを選ぶ
- 目的に合わせて適切なフォーマットを使い分ける
5. SEOを適切に実施する
オウンドメディアを多くの人に届けるためには、検索エンジン最適化(SEO)の実施が欠かせません。基本的なSEO対策を抑えつつ、ユーザー目線を大切にすることが重要です。
SEO施策9つのチェック項目
- キーワードリサーチの実施
- 適切なページタイトルの設定
- 見出しタグの最適化
- メタディスクリプションの最適化
- オリジナルで良質なコンテンツの作成
- 内部リンクの最適化
- サイトの高速化
- スマホ対応(レスポンシブ化)
- アクセス解析の実施
【チェックリスト】オウンドメディアのSEO対策チェックリスト15
- キーワードリサーチを行い、ターゲットキーワードを選定しているか?
- 選定したキーワードを意識したページタイトル・見出し・本文になっているか?
- 一つの記事で狙うキーワードは1〜2個に絞れているか?
- オリジナルで有益なコンテンツになっているか?
- 文字数は最低1,000文字以上確保できているか?
- 画像に適切なalt属性が設定されているか?
- 適切な内部リンクが設定されているか?
- 外部リンクは信頼できるサイトにのみ設定しているか?
- ページの読み込み速度は3秒以内に収まっているか?
- スマートフォンでの表示は最適化されているか?
- 定期的にアクセス解析を行い、改善ポイントを洗い出しているか?
- Google Search Consoleでサイトの状態を確認しているか?
- 構造化データを適切に使用しているか?
- サイトマップは作成し、定期的に更新しているか?
- 重複コンテンツはないか確認しているか?
被リンク獲得のコツ
SEO対策において、自社メディアへの被リンク(外部サイトからのリンク)を獲得することは非常に重要です。以下のようなコツを押さえましょう。
- 記事の内容を充実させ、引用されるような価値ある情報を提供する
- 信頼性の高い外部サイトからリンクされやすいコンテンツを心がける
- ゲストポストや寄稿などを通して、他メディアに積極的に露出する
- ソーシャルメディアでの拡散を狙ったコンテンツを作成する
6. ユーザー体験を追求する
オウンドメディアを長期的に発展させるには、ユーザー視点に立ったコンテンツ設計が不可欠です。読者にとって価値ある情報を最適な形で届けることを心がけましょう。
オウンドメディアのUX改善ヒント11選
- ファーストビューで何のメディアかわかりやすく伝える
- ユーザーが探している情報へ導く、見やすいグローバルナビを設計する
- トップページやカテゴリートップで新着記事をわかりやすく示す
- 記事ページに関連記事を表示し、回遊を促す
- スクロールしても追従してくる目次や検索窓でユーザビリティを高める
- 適度な文字サイズとフォントで可読性を確保する
- 画像や動画を効果的に使い、視覚的な訴求力を高める
- モバイルでの表示速度と使い勝手を意識する
- コンテンツとマッチしたデザインで世界観を演出する
- ユーザーが次に知りたくなる情報へ効果的に誘導する
- ソーシャルメディアでのシェアを促すボタンを設置する
事例として、レッドブル・ジャパン株式会社の「Red Bull」は、アクションスポーツに特化した迫力ある動画コンテンツが特徴的です。PCでもモバイルでも直感的に操作でき、ストレスなくコンテンツを楽しめるユーザビリティの高さが好評を博しています。
7. SNS活用で拡散力を高める
オウンドメディアの認知度を高め、記事の拡散力を上げるには、SNSの活用が効果的です。メディアの特性に合わせたSNS運用を心がけましょう。
オウンドメディア×SNSの成功法則
- オウンドメディアのコンセプトに合ったSNSを選択する
- 記事のシェアだけでなく、オリジナルのSNS向けコンテンツも投稿する
- ハッシュタグを活用し、効果的に情報を拡散する
- ユーザーとのコミュニケーションを大切にし、交流を深める
- 有益な情報をタイムリーに発信し、フォロワーの信頼を獲得する
LINE株式会社の「OnLINE」は、同社のサービスに関するニュースをタイムリーに配信するメディアです。TwitterやFacebookと連動した情報発信により、記事はSNSでも大きな反響を呼んでいます。
8. PDCAサイクルを回し続ける
オウンドメディアを長期的に成功に導くには、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。仮説検証を繰り返しながら、継続的な改善を積み重ねていきましょう。
運用体制の最適化
- 社内の各部門と連携し、効果的な運用体制を構築する
- 定期的な編集会議を実施し、改善施策を話し合う
- 外部のライターやデザイナーなど、専門家の力も積極的に借りる
パフォーマンス分析と改善アクションのフレームワーク
- アクセス解析ツールを活用し、定量的なデータを把握する
- 記事ごとのPVやUU、滞在時間、CVRなどを分析し、改善ポイントを洗い出す
- ユーザーのサイト内での導線を可視化し、問題点を特定する
- 仮説を立てて施策を実行し、効果検証を行う
- 検証結果をもとに、次の施策につなげる
オウンドメディア運用でありがちな5つの失敗
オウンドメディア運営では、ありがちな失敗にも注意が必要です。以下の5つの失敗を犯さないよう、十分に気をつけましょう。
1. 目的やコンセプトの不明確さ
オウンドメディアの目的やコンセプトがはっきりしていないと、中途半端なコンテンツになってしまいます。ターゲットに刺さる明確なコンセプトを設定しましょう。
2. ターゲット設定のズレ
ペルソナ像とかけ離れたコンテンツを発信しても、読まれることはありません。ターゲットを深く理解し、リアルなペルソナ像を描くことが大切です。
3. SEO対策の不足
SEO対策が不十分だと、せっかく良質なコンテンツを作っても見つけてもらえません。基本的なSEO対策は必ず押さえましょう。
4. マネタイズへの性急さ
オウンドメディアを始めたばかりの段階から収益化を急ぐのは得策ではありません。まずはユーザーに愛されるメディアを目指しましょう。
5. 運用体制の弱さ
社内での役割分担があいまいだったり、コンテンツ制作の優先順位が定まっていなかったりすると、継続的な運用が難しくなります。しっかりとした運用体制を整備しましょう。
失敗しないためのヒント7つ
- 最初は小さく始め、徐々に規模を拡大する
- 無理のない更新頻度で、コンスタントに継続する
- 読者目線を忘れず、ためになる情報を心がける
- 自社の強みを活かし、オリジナリティを大切にする
- 定期的な効果検証とPDCAサイクルの実施を習慣化する
- 記事の質にこだわり、信頼される情報発信を心がける
- 社内での情報共有を密にし、一丸となって運営する
イノーバのオウンドメディア支援サービス
最後に、弊社イノーバがご提供しているオウンドメディア支援サービスについてご紹介します。
イノーバでは、オウンドメディアの立ち上げから運営までを一貫してサポートするサービスを提供しています。単なるコンテンツ制作の代行ではなく、御社の事業成長に資するオウンドメディア運営を、戦略的にサポートするのが私たちの使命です。
御社の状況に合わせて、戦略立案から記事制作、データ分析まで、必要な支援メニューを柔軟にカスタマイズ可能です。少しでもオウンドメディア運営に課題を感じている方は、ぜひ一度イノーバにご相談ください。
まとめ
本記事では、オウンドメディア運営の成功事例をもとに、目的別の運用ノウハウについて詳しく解説しました。
目的に合わせた事例に学ぶ
オウンドメディア運営では、自社の目的に合った先行事例を参考にすることが近道です。本記事で紹介した7つの目的別の事例を参考に、自社に適用できる学びを見つけましょう。
成功法則を自社に落とし込む
記事の後半では、オウンドメディアを成功に導く8つの法則について解説しました。明確な目的の設定から、ターゲットの理解、独自の価値提供、SEO、UX、SNS活用、PDCAサイクルの重要性について、自社の体制に合わせて取り入れていきましょう。
運用における課題にはサポートを活用
オウンドメディア運営では、コンテンツ制作や運用体制の整備など、さまざまな課題に直面します。必要に応じて外部の支援サービスを活用することで、効率的に課題を解決することが可能です。
小さく始めて、PDCAを回し続ける
最後に強調しておきたいのは、オウンドメディア運営はマラソンのようなものだということです。最初から完璧を目指すのではなく、まずは着手してみることが重要です。小さく始めて、PDCAサイクルを継続的に回していくことが、成功への一番の近道と言えるでしょう。
本記事が、これからオウンドメディアを始める方や、運用に悩んでいる方の一助となれば幸いです。
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