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宗像 淳 / イノーバCEO2025/01/24 14:06:522 min read

生成AI × BtoBマーケ②|AIをマーケティングにどう活用すべき?

目次

▶前回の記事を読む

デジタルマーケティングの進化とともに、BtoB企業のマーケティング手法も大きく変化しています。その中でも、近年注目を集めているのが「生成AI」の活用です。生成AIをマーケティング戦略に組み込むことで、多くのメリットが生まれています。

しかし、単にAIを導入するだけでは、十分な効果を得ることはできません。本記事では、BtoBマーケティングにおける生成AIの活用方法を具体的に解説し、企業がどのようにAIを活かして競争力を高めるべきかを考察します。

 

AI技術の発展がマーケティングにもたらす影響

近年、AI技術の進化により、文章生成、画像生成、音声認識などの技術が急速に発展しました。これにより、BtoBマーケティングにおいても、以下のような変化が生まれています。

  • マーケティング施策の実施スピード向上:AIを活用することで、コンテンツ制作の時間を短縮し、迅速に市場の変化に対応できる
  • データに基づいたマーケティングの加速:AIが顧客データを分析し、より精度の高いターゲティングやパーソナライズ対応を可能にする
  • コスト削減:マーケティング業務の一部をAIに置き換えることで、人的リソースを最適化し、コストを抑える

このように、AIを上手く活用することで、業務の効率化や精度向上が期待できますが、一方でAIの出力結果をそのまま鵜呑みにするのは危険です。たとえば、ハルシネーション(AIが事実ではない情報を生成してしまう現象)への注意が必要ですし、データの偏りによって分析結果が意図しない方向に傾く可能性もあります。こうしたリスクを理解した上で、適切にAIを活用することが重要です。

▶関連記事:生成AI × BtoBマーケ③|AIは万能ではない?注意点と効果的な活用法

BtoBマーケティングにおけるAIの活用領域

では、マーケティングのプロセスにおいて、具体的にはどのように生成AIを活用することができるのでしょうか?実は、生成AIの活用領域は特定の業務に限られず、マーケティングの全領域に渡ります。

マーケティングプロセス

生成AIの活用方法

1. 市場調査・分析

• 大量のマーケットデータの分析と洞察抽出
• 競合情報の自動収集と分析
• トレンド予測とレポート生成

2. ターゲット設定

• 理想的な顧客プロファイル(ICP)の生成
• セグメンテーションの最適化提案
• ペルソナ作成の支援

3. コンテンツ企画

• キーワード分析と最適化
• コンテンツアイデアの生成
• コンテンツカレンダーの自動提案

4. コンテンツ作成

• ブログ記事、ホワイトペーパーの下書き作成
• 画像生成によるビジュアル素材の作成
• 製品説明や機能紹介の文章生成

5. チャネル選択・最適化

• マルチチャネル戦略の効果予測
• 各チャネルのパフォーマンス分析
• 最適な配信スケジュールの提案

6. リード獲得

• パーソナライズされたメールの作成
• チャットボットによる初期対応の自動化
• リードスコアリングモデルの最適化

7. リードナーチャリング

• カスタマイズされたフォローアップメッセージの生成
• 行動ベースのコンテンツレコメンデーション
• リードの行動予測と最適なアプローチの提案

8. セールス連携

• 商談サマリーの自動生成
• 個別顧客向け提案書の下書き作成
• セールストークスクリプトの生成

9. 顧客維持・育成

• カスタマーサクセスストーリーの自動生成
• 解約リスク予測と防止策の提案
• アップセル・クロスセル機会の特定

10. 分析・最適化

• キャンペーン効果の詳細分析と可視化
• A/Bテスト結果の解釈と改善提案
• ROI予測モデルの構築と最適化

このように、生成AIは、マーケティングのさまざまな領域で活用することができます。

しかし、現実的にはすべての領域で一度に導入するのは難しいのが実情です。システムとの連携や運用リソースの確保といった課題もあり、どこから取り組むべきか迷う方も多いでしょう。そのため、まずは比較的導入しやすい領域から試していくことをおすすめします。

そこで本記事では、 「顧客ニーズの深掘りと細分化」に焦点を当て、具体的に生成AIをどのように活用できるかをご紹介します。

生成AIを活用した顧客ニーズの深掘りと細分化のステップ

マーケティングの成果を最大化するためには、シリーズ第1回でも解説した通り、顧客ニーズをより深く理解し、細分化することが欠かせません。従来のセグメントやペルソナ設計に加え、生成AIを活用することで、より精緻で実践的なマーケティング戦略が可能になります。

1. 顧客ニーズの細分化

従来のマーケティングでは、年齢や業種などの大まかなセグメントに基づいて顧客を分類していました。しかし、生成AIを活用することで、より詳細な顧客像を把握することが可能になります。

  • 従来の大まかなセグメントから、より詳細な顧客像へ
  • 生成AIによる多角的なデータ分析と洞察抽出
  • 結果:よりリアルで生々しい顧客ニーズの把握

 

2. ABM(Account Based Marketing)への進化

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、特定のターゲット企業ごとに最適なアプローチを行う戦略ですが、生成AIを活用することでその精度を大幅に向上させることができます。

  • 個別アカウントに特化したマーケティング戦略の策定
  • 生成AIによる取引先ごとの詳細な分析と戦略提案
  • 結果:高度にパーソナライズされたアプローチの実現

 

3. 複数キーマンに対応するペルソナ作成

BtoBマーケティングでは、意思決定者が一人ではなく、複数のキーマンが関与するケースが一般的です。そのため、一つのペルソナだけでは不十分であり、役職や部門ごとに適切なメッセージを設計する必要があります。

  • 従来の1種類から、複数の意思決定者に対応したペルソナへ
  • 生成AIによる役職・部門別の特性分析と自動ペルソナ生成
  • 結果:より精緻な顧客理解と効果的なコミュニケーション

このように、生成AIを活用することで、顧客理解の精度が向上し、よりターゲットに最適化されたマーケティング施策を展開することができるのです。

 

生成AI活用事例

では、実際にどのように生成AIを活用すればよいのでしょうか?ここからは、顧客ニーズの深掘りと細分化において、実際のプロンプトと生成AIの回答をあわせてご紹介します。

例1:業種別のマーケティング課題と役職ごとのニーズ

■プロンプト

イノーバはBtoBマーケティング支援会社です。BtoBマーケティングのニーズがありそうな業種を網羅的に洗い出して。それぞれの業種がどういう観点でBtoBマーケティングを必要としているのか?彼らの社長、営業責任者、マーケ責任者、CTOがどういうニーズを持っているのかをまとめて。

 

■生成AIの回答

1.IT・ソフトウェア業界

BtoBマーケティングの観点:

  • 複雑な製品やサービスの価値訴求
  • 長期的な顧客関係の構築
  • 技術的優位性のアピール

各役職のニーズ:

  • 社長:市場シェア拡大、ブランド価値向上、新規市場開拓
  • 営業責任者:質の高いリード獲得、商談成約率向上、顧客維持率改善
  • マーケティング責任者:効果的なコンテンツマーケティング、デジタルマーケティング戦略の最適化、競合他社との差別化
  • CTO:技術トレンドの把握、製品開発方向性の決定、技術的優位性の訴求支援

2.製造業

BtoBマーケティングの観点:

  • 産業用商品の専門性訴求
  • グローバル市場への展開
  • サプライチェーン最適化

各役職のニーズ:

  • 社長:生産性向上、新製品開発、国際競争力強化
  • 営業責任者:大口顧客の獲得、長期契約の締結、クロスセル・アップセル
  • マーケティング責任者:産業展示会の効果的活用、技術白書等の専門コンテンツ制作、ターゲット業界別のマーケティング戦略
  • CTO:IoT・AI技術の活用、生産プロセスの最適化、品質管理システムの強化

■解説

このプロンプトでは、「BtoBマーケティングが必要な業種の特定」 から始まり、「業種ごとの課題」、さらに「各役職ごとのニーズ」へと掘り下げています。これにより、ターゲット企業全体のマーケティング課題だけでなく、社長・営業責任者・マーケティング責任者・CTOなど、意思決定者ごとの関心事の違いを明確にできます。

このように、生成AIを活用すると、業種ごとのマーケティング課題と、役職ごとの関心事を短時間で整理できるため、ターゲティングやメッセージ設計がより的確になります。プロンプトを自社向けにカスタマイズすれば、貴社のターゲット市場を深掘りし、戦略を明確化することも可能です。ぜひ試してみてください。

 

例2:利用用途と訴求方法、キーマンの洗い出し

■プロンプト

弊社は、動画制作会社です。LOB(※)別に利用用途を洗い出してください。その際に、訴求すべきユースケースや事例などを洗い出してください。実際に訴求する際のキーマンが誰になるかも洗い出してください。

(※)LOB(Line of Business): 企業の主要な事業部門や製品ラインのこと



■生成AIの回答

1.マーケティング部門

利用用途:

  • ブランド認知向上動画
  • 商品・サービス紹介動画
  • キャンペーン告知動画

ユースケース/事例:

  • SNS向けの短尺動画広告
  • 製品の使用方法やメリットを紹介する動画
  • 顧客の成功事例インタビュー動画

キーマン:

  • マーケティング部門長
  • ブランドマネージャー
  • デジタルマーケティング担当者

2.人事部門

利用用途:

  • 採用促進動画
  • 社員研修動画
  • 企業文化紹介動画

ユースケース/事例:

  • 新卒向け会社説明会動画
  • オンボーディング用の会社概要動画
  • ダイバーシティ&インクルージョン推進動画

キーマン:

  • 人事部長
  • 採用担当マネージャー
  • 研修・育成担当者

3.営業部門

利用用途:

  • 商談用プレゼンテーション動画
  • 製品デモンストレーション動画
  • 顧客教育動画

ユースケース/事例:

  • 営業担当者が使用する商品説明動画
  • オンライン商談での活用動画
  • 顧客向けウェビナーでの活用動画

キーマン:

  • 営業部長
  • セールスイネーブルメント他党者
  • 主要アカウント担当マネージャー

 

■解説

このプロンプトでは、「企業の主要事業部門(LOB)ごとの動画の利用用途」 を洗い出し、「具体的なユースケースや事例」、さらに「訴求すべきキーマン」 まで整理することを目的としています。

生成AIの活用によって、こうした部門別の利用用途やキーマンが短時間で整理できるため、「どのターゲットに、どのユースケースで訴求すれば効果的か?」 を迅速に明確化できるのが大きなメリットです。もちろん、AIの出力内容は一般的な傾向に基づいているため、自社の状況に合わせて微調整することは必要ですが、大まかな方向性を短時間で把握するには非常に有効な手法といえます。

このように、プロンプトを工夫することで、特定の業種・業界に応じたターゲットごとの動画活用の可能性を可視化し、「課題訴求型」マーケティング施策に活かすことができるのです。

イノーバの生成AI活用支援サービス

イノーバでは、生成AI活用についてのご支援もおこなっています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

また、現在AI活用講座も準備中です。リリース時にはこちらの記事内やコーポレートサイト上でもお知らせいたしますので、お楽しみに!

まとめ

本記事では、BtoBマーケティングにおける生成AIの活用方法について詳しく解説しました。生成AIの発展により、コンテンツ制作やデータ分析、ターゲット設定の精度向上など、多くの領域で効率化と高度化が可能になっています。

特に、顧客ニーズの深掘りと細分化においては、従来の大まかなセグメントでは捉えきれなかった詳細なニーズを明らかにし、よりパーソナライズされたマーケティング戦略を構築できることが分かりました。また、実際のプロンプト事例を通じて、業種ごとのマーケティング課題や役職ごとの関心事を迅速に整理する手法も紹介しました。

しかし、AIの活用には注意点もあります。ハルシネーションやデータの偏りといったリスクを理解した上で、適切に活用することが求められます。また、全てのマーケティング領域に一度に導入するのは現実的ではないため、まずは比較的試しやすい領域から取り組み、実際の業務に即した形で活用方法を最適化していくことが重要です。

ぜひ、本記事で紹介したプロンプトや活用事例を参考に、貴社のマーケティング活動にも生成AIを取り入れてみてください。

次回「AIは万能ではない?注意点と効果的な活用法」の記事では、生成AIの特性と限界、効果的な活用法について掘り下げて解説します。

▼生成AI × BtoBマーケシリーズ

生成AI × BtoBマーケ①|「課題訴求型」コンテンツの必要性

生成AI × BtoBマーケ②|AIをマーケティングにどう活用すべき?

生成AI × BtoBマーケ③|AIは万能ではない?注意点と効果的な活用法

生成AI × BtoBマーケ④|AIが変えゆくBtoBマーケティングの未来

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携をまとめた。 2011年6月にコンテンツマーケティング支援の株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。