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イノーバマーケティングチーム2024/02/02 17:31:181 min read

デジタルトランスフォーメーション成功事例10選から分かる、DX成功のための3つのポイント

2018年9月、経済産業省が公開した「DXレポート」から2年経った2020年12月、中間取りまとめとして「DXレポート2」が公開。このなかで、2020年10月時点で調査を行った9割以上の企業がデジタルトランスフォーメーションに未着手もしくは散発的な実施に留まっているとの結果が出ています。そこで、今回はそもそもデジタルトランスフォーメーションとはどういったものなのか、その概要を改めて確認したうえで、実際に取り組みに成功している企業事例、そして、成功を収めるために必要な3つのポイントをお伝えします。

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デジタルトランスフォーメーションとは?

そもそもデジタルトランスフォーメーションとはどういったものなのでしょう。ここでは、経済産業省が公開したDXレポートに記載されている、「DXの定義」を基にその概要を紹介します。

DXレポートでは、クラウドやビッグデータ、ソーシャル技術など第3のプラットフォームを駆使し、新たな製品・サービス、ビジネスモデルを通して価値を創出することによる競争優位性の確立をDXと定義。そして、DXを実現させるには顧客や市場の変化に、「企業の組織」「文化」「従業員の変革」を持って対応することが欠かせないとも指摘しています。

また、DXレポートの定義のなかでは言及されていませんが、デジタルトランスフォーメーションを進めていくうえでは、他企業や団体、大学の研究施設などと積極的な協業も重要です。双方で足りない部分を補いつつ、新たな技術開発を進めていくことも欠かせません。

ただ、これだけ定義が明文化されているにもかかわらず、デジタルトランスフォーメーションは思ったように進んでいません。2020年10月時点で調査を行った9割以上の企業が未着手、散発的な実施に留まっている背景には次のようなケースが考えられます。

  • そもそもデジタルトランスフォーメーションを詳しく理解していない
  • 現時点で競合に優位性を確保しているのでデジタルトランスフォーメーションの必要性を感じていない

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、顧客や市場はこれまで以上に大きく変化しつつあります。そのため、今、レガシー企業文化から脱却しないとすでにデジタルトランスフォーメーションを進めている企業と大きな差が生まれてしまうことは明白です。

国内企業のデジタルトランスフォーメーション事例10選

デジタルトランスフォーメーションへの早急な着手が必須となっている今、しかし現時点で未着手の企業にとっては、何から手を付けるべきかで足が止まっているのではないでしょうか。そこで、ここでは参考としてすでにデジタルトランスフォーメーションを成功させている企業事例を紹介します。

1.   小松製作所―すべての建設機械にGPSを標準装備し、競争優位性を確保―

建設機械メーカーである株式会社小松製作所。同社では、盗難防止を目的として1998年頃より、建設機械にGPSや通信機能をオプションとして搭載(KOMTRAXシステム)。このシステムは、「建設機械の位置」以外にも「稼働中か休止中か」「燃料の残量はどれぐらいか」など建設機械のあらゆる情報を取得するものです。そして、2001年に新たに取締役社長に就任した坂根氏の号令のもと、全建設機械にKOMTRAXを標準装備。

当時は創立以来最大の赤字を抱えていたものの、将来を見据えたこの施策は、建設機械の盗難防止はもちろん、「部品交換やメンテナンスを事前にセンサーで感知し知らせることでの保守費用サービス削減」「世界中で稼働する建設機械のデータ収集」なども実現。競合他社に対し大きな競争優位性の確保に成功しています。

2.   アサヒグループホールディングスー新商品パッケージ案や陳列棚確認をAIやVRで実現―

飲料メーカーであるアサヒグループホールディングス株式会社。パッケージデザインのできで売上が大きく変わる清涼飲料水やアルコール飲料。また、良いデザインであっても実際に店舗で陳列される際、ほかのメーカー商品と比較した際の見栄えも売上に重要なポイントです。

これまでは過去の実績、データやデザイナーの経験・勘を頼りにしていたパッケージデザインに、AIを使い自動生成を可能にしました。また、完成したパッケージデザインを実際に陳列棚に並べ見栄えを確認するには、競合商品の模型作成も必要なため、大きなコストと時間を要します。これもVR技術を用い、わずか2~3時間で作成可能に。これにより、デザインから見栄えの確認まで大幅なコストと時間削減を実現します。

3.   鹿島建設―建設業界が抱える課題をデジタルトランスフォーメーションで解決―

少子高齢化の影響もあり、多くの業種で人材不足が慢性化していますが、それは建設業界においても同様です。そこで、建設メーカーである鹿島建設株式会社では、人材不足問題の解決を目的に、「鹿島スマート生産ビジョン」を策定。このビジョンでは、「作業の半分はロボットと」「管理の半分は遠隔で」「すべてのプロセスをデジタルに」の3つのコンセプトで、業務効率化を実現。人材不足解消に大きく貢献しています。

4.   日清食品ホールディングスー3つの施策でデジタルトランスフォーメーションを推進ー

食品メーカーの日清食品ホールディングス株式会社では、3つの施策でデジタルトランスフォーメーションを推進しています。1つは省人化・自動化を徹底した工場運用を実現する、「次世代スマートファクトリー」。2つめは老朽化したITシステムの8割超削減を行った、「レガシーシステム終了プロジェクト」。そして、3つめは、コロナ禍において食の安定供給という社会的責任を果たすべく、テレワークを中心とした、「新たな働き方」の実現です。

5.   東レ―AIを駆使し、製品の品質・生産性向上を実現―*

繊維メーカーの東レ株式会社。社長自らが指揮をとり、「TDX推進委員会」を立ち上げ、デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。生産と研究開発の高度化を目的とし、AIを活用した工場での不良品検知のほか、2020年7月にはNECと協業で製品の品質情報をサプライチェーンで共有する品質データ基盤の構築。さらなる品質向上を目指しています。

6.   富士フイルムホールディングスー医療業界への技術提供や積極的なDX人材育成でデジタルトランスフォーメーションを推進ー

デジタルカメラやフィルム、光学デバイスなどの製造販売を行う富士フイルムホールディングス株式会社。「自社の画像管理システム「SYNAPSE」をベースに医師の画像診断や医療現場のワークフロー支援を行うAIプラットフォームの開発・提供」「データサイエンティストの育成に向けた社内研修プログラムの充実化」「全社員による最新のICTツール活用」など、全社を挙げて積極的にデジタルトランスフォーメーションに取り組み成果を上げています。

7.   グンゼー既存技術や設備を活用した新規事業の創出でデジタルトランスフォーメーションを実現ー

アパレルメーカーのグンゼ株式会社では、既存のアパレル技術を生かし、メディカル衣料を拡大させる、「ナイチンゲールプロ」。各部門で保有している技術をミックスし、顧客ニーズ解決を実現するビジネスの創造、「エジソンプロ」のほか、医療型ウェアラブルへの取り組みなど、既存技術を生かしさまざまな新規事業を創出しています。

8.   AGC―VRやMIといった先端IT技術を用い全社体制でデジタルトランスフォーメーションを実行―

ガラスや土石製品の製造を行っているAGC株式会社では。2017年~2020年をフェーズ1、2020年以降をフェーズ2としてデジタルトランスフォーメーションを実行。フェーズ1ではデジタルトランスフォーメーション実現に向けた基盤をつくり、2020年から本格的に取り組んでいます。

具体的には、VRやMI(Materials Informatics:AIやシミュレーションを材料工学に取り入れたもので、従来手法に比べ新規材料や代替材料の探索速度が上がる)を活用。バーチャル空間でプロトタイプの見栄えを確認しつつ、製品開発スピードを劇的にアップさせています。

9.   JFEホールディングスー鉄鋼とエンジニアリング事業の双方でデジタルトランスフォーメーションを実現ー

鉄鋼メーカーのJFEホールディングス株式会社では、持続的かつ安定的な収益基盤の確立を目的としてデジタルトランスフォーメーションに着手。鉄鋼事業では、ビッグデータ・AI活用による設備異常予兆監視を実行し、設備稼働率の向上を可能にしています。

また、エンジニアリング事業でも、「河川水位予報情報配信サービス」「廃棄物発電プラントの自動運転」などこれまでの技術やノウハウ、データに最新IT技術を掛け合わせ新たな価値の創出を実現しています。

10. 大日本印刷―4つの領域において、デジタルトランスフォーメーションによる新たな価値を提供―

出版、情報イノベーション事業を主軸にさまざまな事業を行っている大日本印刷株式会社。「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」の4つを成長領域として掲げ、デジタルトランスフォーメーションによる新たな価値の提供を行っています。

また、2021年4月からは、株式会社イシダと協業による、スーパー、ドラッグストア、家電量販店など店舗のデジタルトランスフォーメーションにも着手。さらなる進化を続けています。

デジタルトランスフォーメーションを成功させる3つのポイント

国内企業でのデジタルトランスフォーメーション成功事例を紹介してきましたが、ここでは、これからデジタルトランスフォーメーションに取り組む企業に向け、成功させるために欠かせない3つのポイントを紹介します。

1.   トップの旗振りから始め、社内全体の意識改革が行われていること

デジタルトランスフォーメーションは、場合によっては働き方やビジネスモデルの大変革が求められます。そのため、ボトムアップで進めていくことは簡単ではありません。前項でもいくつかの企業では、社長が自ら率先してデジタルトランスフォーメーションを進めているように、基本的にトップダウンで社内全体の意識改革から始めることが重要です。

2.   DX人材の活用が肝なこと

DXを進めていくには、AIやVR、ビッグデータなどを扱える先端IT人材の獲得が欠かせません。そこで重要となるのは次の4点です。

  • ジョブ型人事の導入

従来の職能型人事では、刻々と変化する社内外の変化に追いつけなくなってしまうリスクがあります。特に先端IT人材を新たに雇用・維持していく場合、社歴や職務遂行能力だけで等級や報酬を決めるのではなく、職務価値の大きさ、社外視点を取り入れた報酬制度などが重要です。

  • 常に学び続ける姿勢を持っている人材の採用

常に変化するニーズや状況に合わせ、学び続けるマインドを持ち合わせた人材でないと、変化のスピードについていけなくなるでしょう。

  • 専門性を評価する仕組みやリカレント学習の仕組みの導入

業績や能力はもちろん、先端ITにかんする専門性を評価する仕組みの導入はDX人材の活用に必須といえます。また、DXでは他社や団体などのほか、大学や研究施設などとの産学連携も珍しくありません。そのため、リカレント学習の仕組みや機会を増やすことも重要なポイントの一つです。

  • 一定の人材流動性の容認

現在、先端IT人材は大きく不足していて、この状況は今後さらに拡大していくと予測されています。そのため、先端IT人人材はどの分野、業界でも引く手あまたの状況です。そこで、自社で雇用する場合でも、兼業や副業など、一定の人材流動性は容認したほうが結果として、人材維持の可能性が高まるでしょう。

顧客を起点にデジタルトランスフォーメーションを捉えることが成功のポイント

デジタルトランスフォーメーションは、単純に先端ITを駆使し、業務効率化・生産性向上を実現させる。または新たな製品、事業の創出を行うことが目的ではあるものの、それ以上に重要な点があります。それは、顧客に対して新たな価値の提供を行うことです。

どれだけ新規性があろうと、顧客にとって価値のないものであれば意味がありません。実際、今回紹介したデジタルトランスフォーメーションを成功させた企業はどれも、顧客にとって役に立つ、有益な価値の提供を行ったからこそ、成功を収めています。

そのため、「社会に貢献する」「顧客が求めている価値を提供する」といった顧客を起点とすることを忘れずにデジタルトランスフォーメーション戦略を進めていけば成功につながるでしょう。

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