月1000件以上のリードを生み出すコンテンツマーケティングの効果測定とKPI管理まとめ【管理シート付】

インバウンドマーケティング
コンテンツマーケティングの実践において、その成果を最も左右するのが効果測定です。
特に中・長期的に取り組むことでコンテンツが積み上がり、コンテンツ資産の蓄積効果が発生する特性がありますので、PDCAサイクルをいかに速く回すかが施策全体の重要なポイントになります。
コンテンツマーケティングを実践もしくは、導入を検討されている方の多くは「何を効果指標にすればいいのか…」「SEOや流入以外に何か指標あるの?」という悩みや疑問を持っているのではないでしょうか。
今回は、コンテンツマーケティングによって月1000件以上のリードをWebから獲得しているイノーバを例に、効果測定のポイントやKPI例をご紹介します。
※記事でご紹介するKPI管理のテンプレートを記事最下部からダウンロードいただけます。
コンテンツマーケティング実施企業が最も苦労する点は「効果測定」
日本でも2013年以降徐々にコンテンツマーケティングが浸透し、中には大きく成果を出している企業もあれば、壁にあたっている企業も散見されるようになりました。
企業のマーケティング活動の一部としてコンテンツマーケティングに取り組むにあたり、多くの導入企業が困っているのが「効果がでているか」を測定することです。
参考:グルーバー、広告主のコンテンツマーケティング実施動向調査を実施 | 事業創造プラットフォーム オプトホールディング
調査では「効果をはかる指標がない」という課題が挙げられていますが、その裏にある要因は導入時に「コンテンツマーケティングの目的(ゴール)はなにか」という部分の設定を間違えていることにあります。
ここからはイノーバでの実際の計測項目を例に、KGI(目的・ゴール)とKPIの設定について見ていきましょう。
イノーバで実際に使用しているKPIとKGI例
イノーバでは、マーケティング部門・インサイドセールス部門・フィールドセールス部門で構成される「新規顧客開拓チーム」が、最終的な目的を売上額(受注単価×成約数)とした上で基本的には同じKPIをみています(細かいサブKPIは別途それぞれのチーム内で管理)。
このファネルが示す「新規顧客開拓チーム」が展開するマーケティングプロセス全体の中でも、コンテンツマーケティングに取り組むマーケティングチームがカバーするのは主に認知獲得とリードジェネレーション(見込み顧客創出)部分となります。
イノーバでは、マーケティングチームの活動の目的=マーケティングゴール(KGI)をリード数(MQL:Marketing Qualified Lead)と定めています。
コンテンツマーケティングを実施する上でKW順位や流入数を指標とするケースがよくありますが、それはあくまでも枝葉のKPIです。
ブログやebookなどの各コンテンツの評価を行うときには、細かいKPIを管理していきますが、まずは大きな数字で全体のマーケティング戦略がうまくいっているかを確認することが大切です。
チェックを行うときには、「目的を達成するためにはどの数字を伸ばすのが効果的か?どこから改善するのか?」という視点が重要になります。
細かいKPIをじっくり見るのは、この「どこからマーケティングアクションを実践するか」を決めてからでも遅くありません。
- マーケティングゴール、ビジネスゴールに紐づく”必ずチェックする主要KPI”を確認する
- 主要KPIを更に伸ばす or 改善するポイントをきめる
- そのKPIに紐づく枝葉のKPIなどを確認し、新規コンテンツ制作やコンテンツ改善に活かす
という流れを忘れないでください。
例えば、MQLからISQLへの遷移率が低い場合は、情報収集層や比較検討層向けのメールプログラム(ステージに合わせた情報提供やセミナー・資料案内など)を実施します。
具体的には、”eBookを1本ダウンロードしてくれたけれど、その後数週間にわたってアクションにつながっていない”といった場合です。
コンテンツマーケティングだと、常に「ブログや記事でなんとかせねば」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ターゲットペルソナの購買ステージや必要な情報に合わせて、適切なチャネルとコンテンツを準備していきます(セミナーのようにオフラインのコンテンツも活用します)。
コンテンツマーケティングでリードを創出するまでにみるべき主要なKPI例
それでは上記ファネルにて紹介した各KPIを
- 言葉の意味
- 意義
- 管理方法
の3つの視点から確認していきましょう。
マーケティングチームで追うKPI
MQL(Marketing Qualified Lead)
言葉の意味:個人や企業情報を獲得できた数
意義:特にオウンドメディア(Webサイト・ブログなど)から獲得できた情報は、自社のビジネス領域に興味を持つ、質の高い個人情報です。
次のマーケティング施策(メール配信、セミナー案内、インサイドセールス対応)などが可能になるため、マーケティングチームのゴール・目的(KGI)としています。
数値の管理の方法:マーケティングオートメーションツールやCRMツール、Google Analyticsの目標設定など
PMQL(Pre-MQL ※イノーバの造語です)
言葉の意味:MQLが発生するページ(主にフォーム設置ページ)への訪問数
意義:ブログやWebサイトのコンテンツからMQLを生み出すページヘどれだけ誘導できているかを表す数値。特に、お問い合わせや資料請求しかないサイトはここの数字が伸びない傾向にあります。ここをどれだけ豊富に用意できるかで、上記のMQLの数字が大きく変動します。
※参考:イノーバのMQL獲得ポイント(2015年8月21日現在、Web公開分のみ)
- ebook: 3冊
- 事例集:3冊
- コンテンツマーケティング お役立ちテンプレート:4種類
- 書籍試し読みPDF:1冊
- 自社・共催セミナー:3−5つ(時期により変動)
- 資料請求、Cloud CMO 無料デモ、お問い合わせ:計3つ
合計MQL獲得ポイント数:20−23
数値の管理の方法:マーケティングオートメーションツールやGoogle Analyticsのページ別訪問数(PV・UUなどで管理する企業も)
PMQLからMQLへの遷移率
言葉の意味:PMQLからMQLへ転換した割合
意義:MQLを獲得するページが、どれだけ効率良くリードを獲得できているかを確認する数値。ただフォームを設置するだけではなく、その資料やebookがどんな価値を提供しているのかを説明できているかも遷移率を大きく左右します。
他にも流入経路や誘導元などが何か、フォームの入力項目が適切かどうかなどで遷移率(CVR)が大きく変動しますが、それは改善の際に細かくチェックする際のKPIなので詳細は割愛します。
数値の管理の方法:マーケティングオートメーションツールやGoogle Analyticsの数字をCSVなどでエクスポートし、遷移率を計算
流入数やUU
言葉の意味:サイトにどれだけ集客できているかを示す数字
意義:この数値については多くのマーケターの方が管理していると思います。次のPMQL・MQLの基盤となる数字で、特に中・長期的にのばすことで、将来のMQL増加に大きく影響します。
数値の管理の方法:マーケティングオートメーションツールやGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツール
PMQLへの遷移率
言葉の意味:サイトへの集客からPMQLへ転換した割合
意義:サイトに集客した人がどれだけ自社のサービスや提供ビジネス領域に深い興味を抱いているかの1つの目安です。
例えばオウンドメディアでうまく集客していても、ebookダウンロードページなどへの遷移率が低い場合は、集客するコンテンツとダウンロードコンテンツの内容が合っていない or 導線が悪いなどの原因が考えられます。また、集客している層の質がサイトに合っていない場合もこの数値が低下します。
※参考:特にバイラルコンテンツ(ソーシャルメディアで”バズる”コンテンツ)などが発生すると、流入は増えるが遷移率は悪化するケースが多くなります。
使用するコンテンツの特徴と数値の関係性を予め把握し「どこの数字に効果があるものなのか」を意識して施策を打つようにしましょう。
ここまで読んで、参照元や検索順位・直帰率・新規率などは見なくていいのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。結論としては見るのですが、マーケティングの全体施策をチェックするときにはまだ見ません。
まずは、どこがボトルネックでマーケティングプロセスにハードルを発生させているさせているのかを確認することが先決です。
その上で、なぜそのハードルがあるのかを考える際に、チャネルが悪いのか、キーワードとコンテンツの内容が一致していないのか、などをじっくり検証していきます。
社内のマーケティングリソースは有限です。つねに、
- 短期的にはどこの数字を改善するべきか?
- 中・長期的にはどこの数字を改善するべきか?
という意識を持ち、優先順位を見極めることが重要です。
細かいKPIを最初から追いかけるとあれもこれも気になってしまい、最も生産性の高いところにリソースを投資できなくなります。最初からすべてを改善しようとするのは、十分なリソースがあってはじめて成立するということを忘れないでください。
特にGoogleアナリティクスをはじめとするアクセス解析ツールなどは、ログインするとMQL等のゴールに近い数字ではなく、流入数などのゴールから最も遠い数字から目に入ってしまうので注意が必要です。
ゴールに近い数字をチェックする習慣を意識的に持つようにしてください。
新規顧客開拓チーム(マーケティングチーム含む)でみる数値
下記はマーケティングチームだけでなくインサイドセールス・フィールドセールスと一緒にみる数値です。
コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングがうまく回りだすと、今までとリードの質や数、入り口が大きく変わります。
ISQL(Inside-Sales Qualified Lead)
言葉の意味:インサイドセールスがSQL(案件・商談)につながる可能性が高いと判断したリード数
意義:MQLの中にも「近いうちに商談につなげることができるリード」を判別します。
MQLの中には、「メールやセミナー、インサイドセールスが継続的にアプローチすべきリード」が混在しているのでその中からフォローすべき対象を選別する役割があります。
数値の管理の方法:SFAやCRM、Excelによる管理表
※イノーバではインサイドセールスを組織的に導入するためのセミナーも実施しております
SQL(Sales-Qualified Lead)
言葉の意味:実際に営業が訪問し、提案する案件数(商談数とカウントする企業も)
意義:ここはアポイント数ではありません。実際に営業が提案できると判断した商談のみが計測されます。
もし訪問して、「これはまだインサイド or マーケティングがフォローすべきだ」となれば、その理由をチームにシェアし、インサイドセールスから商談にする基準などを見直すようにします。
数値の管理の方法:SFAやCRM、Excelによる管理表
受注
言葉の意味:案件の中から実際に受注した数
数値の管理の方法:SFAやCRM、Excelによる管理表
受注率
言葉の意味:SQLから受注に転換した割合
意義:MQLやISQLからのリード受け渡しが問題なかったか、営業活動方法が適切かどうかを振り返る重要な数字です。
数値の管理の方法:SFAやCRM、Excelによる管理表
企業としてのビジネスゴールを達成する場合には
- どこから来た or どのコンテンツを経由したMQLがISQLや商談(SQL)につながりやすいか
- どこから来たMQL・ISQLは受注につながりやすいか
をインサイドセールス・セールスチームと一緒に横串で確認する必要があります。
イノーバでも2015年よりインサイドセールス部門を新設し、この3部門間の情報共有は特に意識的に行っています。
マーケティングやセールスが分断されるのではなく、互いに連携とフィードバックからマーケティング・コンテンツ戦略をブラッシュアップすることで、リード獲得の効率化を進めています。
よくある失敗につながる効果測定例
その1: SEOや流入数のみを目的にしてしまう
流入以後の設計がおろそかになる場合が多いので、「流入は増えたけどマーケティングゴールに貢献しない」という事態に陥りがちです。
特に日本ではSEOのアルゴリズム変更をうけてコンテンツマーケティングが流行したため注意が必要です。
参考:アメリカと日本で、コンテンツマーケティング活用度合いはどの程度違うのか 〜BtoC企業のコンテンツマーケティング調査の日米比較より〜 | Ginzametrics
「流入は増えたけど売上につながらなかったから辞めちゃった」
という話をお伺いする機会も増えてきましたが、実際は「つながらなかった」ではなく「つなげられなかった、つなげようともしなかった」ケースも散見され、非常にもったいないと感じています。
コンテンツマーケティングはコンテンツを活用した「マーケティング」です。最初から完璧な設計をする必要はありませんが、マーケティングゴールを意識した上で、
- 認知
- 興味・関心
- 比較・検討
- 導入可否判断
の4ステージでコンテンツ戦略とKPI設定・効果測定を考える必要があることを忘れないでください。これはBtoBでもBtoCでも違いはありません。
その2:問い合わせや売上に固執する
BtoB企業に多いのは、「問い合わせや売上を増やす」のがWebマーケティングのゴールだと思っているケースです。上記のイノーバの例では、コンテンツマーケティングでのゴールは「良質なMQLの獲得」としています。
問い合わせだけでなく、様々な打ち手から商談につながるようなリードを増やすという視点に立つと、Webの運営方法を考えるときにも問い合わせに固執しなくなります。(もちろん、コンテンツマーケティングをつづけると問い合わせも増える傾向はあります)
また、「売上」は企業活動の「総和」であることも忘れてはいけません。
プロダクトやサービスの質も大いに関係しますし、PMQLからMQL・ISQL・SQLとステップを踏んでいく中で、マーケティング施策・セールス施策をどれだけ充実できるかで決まります。
直接売上につながる広告施策などは別ですが、一般的なBtoB企業であればWebをはじめとするマーケティング活動からそのまま売上が発生することは少ないはずです。
セールスチームやプロダクトチームと連携し、企業や事業部としてどうすれば売上に貢献できるか(マーケティングであればリード数など)という視点でKPIを設定・追求しましょう。
その3:短期での成果がでないとすぐに諦める
KPIや目的がきちんと定まっていても、成果を図るスパンがあまりにも短すぎると適切な効果測定はできません。
例えば、初期のコンテンツ戦略でリード獲得のためにebookを用意しようと決断します。
制作に1ヶ月、公開後2ヶ月で効果を測定しようとしましたが、ブログも同時並行で進めていたため公開が1ヶ月半遅延。測定が2週間しかなく、効果が少ないと判断されてあえなく施策打ち切り……
とならないように注意が必要です。全く流入がない場合は先に集客施策、次にリード獲得施策。流入があるけどリード獲得ポイントが少ない場合は、MQLを増やすために先にホワイトペーパーやebookを準備。
など、施策の優先順位とともに、ある程度のあるべき形がそろった段階での施策振り返り(効果測定含む)を実施することが重要です。
そのためにも予めざっくりでもよいので、
- 認知
- 興味・関心
- 比較・検討
- 導入可否判断
の4つのステージのどの部分が手薄なのか、どこから手をつけるべきか、その際の指標は?測定期間は??ということをマーケティングチームや上長と確認しておくことが必要です。
KPI設定や効果測定にはコンテンツマーケティング戦略全体で管理を
コンテンツマーケティングの効果を測定するには、マーケティングゴール(目的)とそれに紐づくKPIをトータルで管理することが重要になります。
下記から、イノーバでもCloud CMOやSFAを使って測定しているコンテンツマーケティングの大きなKPIを管理するシート(のExcel版)をダウンロードできます。
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コンテンツマーケティング効果測定・KPI管理シート
今後、細かいコンテンツのKPIや改善のポイントなどもご紹介していきますのでぜひ楽しみにしていてください。
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