USPとは?その正しい作り方と成功事例を解説

経営・ビジネスハック
USPとは
USP(ユーエスピー、ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition:)とは、かんたんにいうとビジネ
USP(Unique Selling Proposition:ユニーク・セリング・プロポジション)とは、提供する商品やサービスの「強み」「売り」を意味するマーケティング用語です。
単なる“セールスポイント”ではなく、他社にはない、安さ・品質・特徴的なサービスなど、自社だけが提供できる価値や競争力を指します。
独自性のある価値を明確に伝えることによって、競争の激しい市場の中で差別化を図ることができ、マーケティングや広告制作に活かすことができます。
この概念は、1961年にアメリカの広告の巨匠ロッサー・リーブスが提唱したもので、その後のマーケティング戦略や広告業界の発展に大きな影響を与えました。
USPは60年以上の時を経た今もなお、顧客を獲得するために不可欠な考え方として活用されており、消費者の価値観やニーズが多様化した現代においては、ますます重要になっています。
USPの重要性
USPは商品やサービスを他社と区別し、消費者にとってのベネフィットを提案するものです。他社には真似できない自社だけの価値・魅力を提案できれば、多くの競合の中で際立った存在になれます。優れたUSPによって、多くの消費者が貴社の商品やサービスに注目するようになります。
そのためには、「なぜ、これを買うべきなのか?」「無数に存在する類似サービスの中からこのサービスを選ぶ意味はなにか?」といった質問に迅速かつ明確に答えられなければなりません。競合他社と比較して、その商品やサービスがどのように独自的なのか、その特徴が消費者にとってどのような利点があるのかを明確に示すことこそがUSPの重要な概念です。
企業の規模が小さいほど、数多くの競合企業を出し抜いてナンバー・ワンになるのは困難です。価格や品質で真っ向から勝負することはできないし、広告・宣伝にコストをかけることもできません。いかにして、効率よく消費者をひきつけ、説得するかが重要となります。マーケティングに大切なことは、「ナンバー・ワンであることではなくユニーク(独自性)があること」です。
独自性により顧客をひきつけることができれば、USPを強調するマーケティングを通じて、顧客獲得やロイヤルティの向上が叶います。独自の価値を理解してもらうことで商品やサービスの需要喚起を図り、さらには、口コミによる認知度の拡大やリピーターの獲得、ブランディングにもつながり得るのです。
USPの3つの基準
ロッサー・リーブスはUSPの基準を以下のように定めました。
<Benefit/顧客の利益>
■広告は顧客に対して何がベネフィットかを提案をしなければならない
言葉の羅列や宣伝文句ではなく、「この商品を買えば、こういう利益を手にする」と伝えるべきである。商品やサービスが消費者のどのような問題を解決し、どのようなニーズを満たすのかを明確に示す必要がある。
<Unique/独自性>
■競合が提案していないものであること
競合他社が「できない」あるいは「しない」特徴や要素を持つ商品やサービスでなければならない。他社と差別化できる独自の機能や特徴、他社との違いを明確に示す必要がある。
<Strong/強力>
■提案は多くの人を動かす強い力があること
その提案は、消費者に対して大きな印象を与え、多数の人を動かすほど強力である必要がある。
ロッサー・リーブスは、その商品やサービスによって消費者が得る利益、独自性、強力さを強調することを重視しています。
USPを作るときの考え方
USPは、概念としてはシンプルですが、果たして自社のビジネスにUSPがあるのか、頭を悩ませてしまう方も多いのではないでしょうか。USPを探すには、まずは以下の項目に関して自社の提供する商品・サービスの特徴を整理してみると良いでしょう。
- 価格
- 品質の高さ
- スピードの速さ
- サービスの充実
- カスタマイゼーション可能性
- 保証の充実度
- ラインアップの広さ
- 利便性
- 専門性
上に挙げた中でUSPとなりそうなものがあれば、それを具体的な形にしていきます。作り方の例として、スピードに自信がある場合、ただ「早い」「速い」ではなく、具体的な時間に例えるなど明確に分かりやすい形にした方が効果的で独自性が出ます。
次に、それらの要素を踏まえ、4P・4Cを用いて自社の強みや環境の分析を行うことも重要です。
では、USPを考える際の9つのコツ・ポイントを以下にご紹介します。
1. ユニークな個性であること
ユニークであること、個性的・独自性があることはUSPを考える上での基本であり、もっとも重要なことです。他の人が簡単に真似できる価値であっては、USPとはなり得ないからです。
商品自体の機能において独自性や個性を実現するのは簡単ではないと思われるかもしれません。しかし、市場のニーズは絶えず変化し、それに合った新しいサービスが常に求められています。
固定概念を払拭することによって、あるいは視点を変えてみることによって、新しい用途やサービスの開発につながり、独自性を発揮することができるかもしれません。
例えば、QBハウスは既存の美容院・理容店に存在する充実したサービスを取り除くというアプローチでユニークさを実現しました。
2. ニッチな市場をターゲットとし、ニッチ分野での専門性を売りにすること
狭い市場の中で、専門性を活かすことがUSPと言えます。例えば、あなたの会社がWeb制作会社だったとして、医薬品通販専門のWeb制作サービスを提供する、あるいは、あなたが弁護士だったとして、セクハラ被害専門の弁護士になるなどです。消費者や発注する側の心理としては、自分が抱えている問題の解決に特化している専門家を選びたいと思うものです。
3. 全員に喜ばれようとしないこと
すべての顧客に喜ばれる商品やサービスを追求すると、結果として標準的でつまらないものとなってしまいます。自分が提供するユニークな価値を求める一部の顧客を喜ばせることが重要です。一部の顧客と強い結びつきを築きあげることで、より速いスピードでその影響力を広めることができるからです。
4. 新しいビジネスの場合は、タイミングをはずさないこと
これまでに世の中になかった新しいビジネスを始める場合は、USPをなるべく早い段階で決めて、同じビジネスを他社が始める前に、タイミングよくそのUSPを広めることが成功の秘訣です。
あなたの会社が最初に始めたビジネスであっても、USPを決めるのが遅ければ、あとから同じビジネスを始めた企業がインパクトの強いUSPを発信した場合、その会社の方が消費者に強い印象を与え、そのビジネスのリーダー的存在とみなされてしまう可能性があるからです。
5. USPは商品・サービス開発の指針になる
企業側がUSPだと思っている提案が消費者のニーズとマッチしない場合は、商品・サービス自体に問題がないかを見直す必要があるでしょう。消費者に刺さる価値を指針に、商品・サービスを開発・改善すれば、USPがどこにも見当たらないサービスを開発してしまうリスクを減らすことができます。
6. 複数の考えを掛け合わせること
1つの考えに固執せずに、複数の考えを掛け合わせることで、新たな価値が生まれることがあります。
例えば、CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が展開する蔦屋書店は、本屋とカフェ空間が掛け合わされて生まれた新たな価値であると言えます。
商品やサービスを“個”として考えるのではなく、自社の中の他の商品やサービス、あるいは他社の商品やサービスと組み合わせることによって、差別化を図ることができるかもしれません。
7. 商品の機能の高さはUSPではない
技術開発に力を入れている場合は、自社商品の持つ優れた品質・機能がUSPであると考えてしまいがちです。しかし、たとえどんなに優れた品質でも、消費者にとって価値あることと認識されなければ、USPではありません。実は消費者は独自性の高い機能よりも、安さ、便利さなど別の価値を求めているかもしれません。
8. ブランドメッセージは端的に
USPを伝えるためには、簡潔で明確なメッセージとして表現される必要があります。消費者が瞬時、または短時間で理解できるようなシンプルな表現を心がけ、特徴や利点を具体的かつ魅力的に伝えることが大切です。
9. 他社より「強い」言葉にする
USPに基づく広告表現を考える場合、他社よりもインパクトのある、強い表現が効果的と考えられます。多くの消費者の目にとまり、認識しやすく、記憶に残る言葉を取り入れることが重要です。
USPの例
USPがどのようなものかをより具体的にイメージするために、マーケティング戦略が成功した国内外の事例を紹介します。
ドミノピザ
「ホットでフレッシュなピザを30分以内にお届けします。もし、30分以上かかったら、ピザの料金はいただきません」
これはドミノピザがかつて用いていたキャッチコピーです。当時、すでに30分以内にピザを届ける宅配業者は存在していましたが、明確に「30分以内にお届け」と謳ったのはドミノピザが初めてでした。このメッセージが、ピザの到着時間に対して不満をもつ多くの顧客の心を捉え、ピザ宅配業界トップの地位を築きあげたのです。
M&Ms
「お口でとろけて、手にとけない」(‘Melts in your mouth, not in your hand’)
このキャッチコピーがUSPの最初だと言われています。もともとM&Msは、アメリカ陸軍兵士の「口の中で溶けて、手に溶けないチョコレートを開発してほしい」という要望から開発されたものです。砂糖菓子でチョコレートがコーティングされているため、夏場でもチョコレートが溶けず、手を汚さずに食べられるのが特徴となっています。
このわかりやすいフレーズは、母親たちの共感を得ることに成功し、子どもたちからも熱い支持を受けるようになりました。
稲葉製作所
「100人乗っても大丈夫」
稲葉製作所が製造する「イナバ物置」は、厚い鉄板を用いた堅牢な商品で、荷重試験や雨水侵入試験など厳しい耐性試験をパスしています。このキャッチフレーズを使ってCMが制作されたのは1987年。物置の上に実際に100人が乗っている映像情報は、一目で商品の丈夫さが伝わるものでした。
ASKUL
「明日来るASKUL! オフィスに必要なモノやサービスをスピーディに「明日」お届けします」
事務用品を中心に扱う通販会社のASKUL。幅広いアイテムのなかから必要なものを「明日」届けてくれるというスピードの速さを謳ったサービスと、そのサービスを表す企業名が広く知られるようになりました。シンプルなキャッチフレーズと社名によって、サービスの便利さを印象付けられたのが理由で成功したと言えるでしょう。
QBハウス
「10分の身だしなみ」
ヘアカット専門店のQBハウス。所要時間10分、価格は1,000円(税別)でヘアカットを提供するという、従来のヘアサロンや理容店にはない新しいサービスを展開しました。「速く、安く」カットしてほしいという顧客ニーズを満たすUSPを確立しており、1996年に創業してから2022年時点で日本国内の店舗数は591店舗、来客者数およそ1,665万人という大規模なビジネスに成長しています。
ニトリ
「お、ねだん以上。」ニトリ
インテリア小売業大手のニトリ。「お、ねだん以上。」というコピーでは、つけられている値段以上の価値がある、デザインなど質の良い商品を提供するというUSPを伝えています。質の良いものがほしいが費用は抑えたいという、多くの消費者のニーズに応える提案で、年々店舗を増やし、現在は海外も合わせて900店舗以上のチェーンストアを展開しています。
パタゴニア
We’re in business to save our home planet./私たちは地球を救うためにビジネスをしています。
USPによって、パタゴニアは単なる衣料品小売業者ではなく、社会的に意義のある企業としての地位を確立しました。環境への配慮で消費者の興味をひき、購入することによる社会的な役割を消費者にアピールすることに成功し、競合他社と一線を画すブランドに成長したのです。
Shopify
The platform commerce is built on.
Shopify(ショッピファイ)は、オンラインショップのツールを提供するeコマースWebサイトです。現在、175カ国の何百万もの企業がこのサービスを利用しています。Shopifyは、信頼性とセキュリティに優れ、ECサイトに必要な機能を網羅、全体的に使いやすく、多様なサポートサービスを提供するというUSPで注目を集め、市場で卓越した地位を築き、幅広い人気を獲得しました。
Canva
Empowering the world to design.
Canva(キャンバ)は、あらゆるユーザーのデザインプロセスを簡素化するオンラインのグラフィックデザインツールです。そのUSPは、使いやすさとWebブラウザを介してオンラインで利用できるマルチプラットフォーム対応です。それらのサービスが、Canvaが初心者からプロまで幅広いユーザーに対応しているというメッセージを強化しています。
USPのマーケティング活用方法
USPをPPC広告で活用する際、広告コピーでは、広告の見出しまたは冒頭でUSPを強調することをおすすめします。
多くの広告主は、顧客のベネフィットよりも、商品の機能についてアピールしたいと思うものですが、これは初歩的な間違いです。つくり手、供給者の思いよりも、消費者が得る利点を強調することで、問題を解決したいという見込み客に訴求できます。
ただし、USPをPPC広告に取り入れる場合は、広告ごとに1つの具体的なニーズをターゲットにするべきです。1つの広告で見込み客すべての問題を解決しようとすると、その強みが薄まり、コンバージョンが低下します。
また、広告専用のランディングページを作成することで、いくつかの方法でUSPに焦点を当て、商品やサービスのベネフィットを強調できます。広告ごとにランディングページを作成し、各ランディングページには、USPのさまざまなメリットを強調し、購買等を促すフレーズを含める必要があります。
まとめ
USPは、ビジネスにおけるアイデンティティーとも言えるものです。
ここに紹介した例でも、どれも強い個性やメッセージ性があることを感じられるでしょう。
USPを決めることに足踏みする必要はありません。強みや優位性を抽出し、正確な専門知識を取り入れながら、じっくりと磨きをかけていけば良いのです。
USPとは、自社の価値を伝えるためのツールです。他の企業にはできない何が提供できるのか?数多くの競合他社が存在する環境の中で行動し、その答えが見えれば、成功に一歩近づいたと言えるのではないでしょうか。
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