USPとは?実例や考え方について解説

経営・ビジネスハック

USP(ユーエスピー、ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition:)とは、かんたんにいうとビジネスや提供サービスの「強み」「売り」です。

安さ、品質、特徴的なサービスなど、他にはないメリット、自分だけが提供する価値を明らかにすることによって、効果的な広告文を作成できます。

この概念は、1961年にアメリカの広告の巨匠ロッサー・リーブスがまとめたもので、その基準を以下のように定めました。

  • 広告は顧客に対して何かを提案をしなければならない

単なる言葉の羅列や宣伝文句ではなく、「この商品を買えば、こういう利益を手にする」と伝えるべきである。

  • 競合が提案していないものであること

競合が「できない」あるいは「しない」ものでなければならない。

  • その提案は多くの人を動かす力があること

提案には、多数の人を動かすほど強力である必要がある。

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USPの例

USPがどのようなものかをより具体的にイメージできる、マーケティング戦略が成功した国内外の参考になる事例を紹介します。

ドミノピザ

「ホットでフレッシュなピザを30分以内にお届けします。もし、30分以上かかったら、ピザの料金はいただきません」

これはドミノピザがかつて用いていたキャッチコピーです。当時、すでに30分以内にピザを届ける宅配業者は存在していましたが、明確に「30分以内にお届け」と謳ったのはドミノピザが初めてでした。このメッセージが、ピザの到着時間に対して不満をもつ多くの顧客の心を捉え、ピザ宅配業界のトップの地位を築きあげたのです。

M&Ms

「お口でとろけて、手にとけない」(‘Melts in your mouth, not in your hand’

このキャッチコピーがUSPの最初だと言われています。もともとM&Msは、アメリカ陸軍兵士の「口の中で溶けて、手に溶けないチョコレートを開発してほしい」という要望から開発されたものです。砂糖菓子でチョコレートがコーティングされているため、夏場でもチョコレートが溶けず、手を汚さずに食べられるのが特徴となっています。

このわかりやすいフレーズは、母親たちの共感を得ることに成功し、子どもたちからも熱い支持を受けるようになりました。

稲葉製作所

「100人乗っても大丈夫」

稲葉製作所が製造する「イナバ物置」は、厚い鉄板を用いた堅牢な製品で、荷重試験や雨水侵入試験など厳しい耐性試験をパスしています。このキャッチフレーズを使ってCMが制作されたのは1987年。物置の上に実際に100人が乗っている映像情報は、一目で製品の丈夫さが伝わるものでした。

ASKUL

「明日来るASKUL! オフィスに必要なモノやサービスをスピーディに「明日」お届けします」

事務用品を中心に扱う通販会社のASKUL。幅広いアイテムのなかから必要なものを「明日」届けてくれるというスピードの速さを謳ったサービスと、そのサービスを表す企業名が広く知られるようになりました。シンプルなキャッチフレーズと社名によって、サービスの便利さを印象付けられたのが理由で成功したと言えるでしょう。

QBハウス

「10分の身だしなみ」

ヘアカット専門店のQBハウス。所要時間10分、価格は1,000円(税別)でヘアカットを提供するという、従来のヘアサロンや理容店にはない新しいサービスを展開しました。「速く、安く」カットしてほしいという顧客ニーズを満たすUSPを確立して、1996年に創業してから2016年までで、すでに店舗数500店舗以上、来客者数およそ1,600万人という大規模なビジネスに成長しています。

ニトリ

「お、ねだん以上。」ニトリ

インテリア小売業大手のニトリ。「お、ねだん以上。」というコピーでは、つけられている値段以上の価値がある、デザインなど質の良い製品を提供するというUSPを伝えています。質の良いものが欲しいが費用は抑えたいという、多くの消費者のニーズに応える提案で、年々店舗を増やし、現在は海外も合わせて300店舗以上のチェーンストアを展開しています。

USPの重要性

ほかが真似できない自社だけの価値を提案できれば、多くの競合のなかで際立った存在になれます。優れたUSPによって、多くの消費者があなたのサービスに注目するようになります。

そのためには、「なぜ、あなたから買うべきなのか?」「なぜ、無数に存在する類似サービスのなかからあなたのサービスを選ぶ意味は?」といった質問に即座に答えられなければなりません。それは、つまりあなたのビジネスの独自性であり「売り」とも言えるものです。

企業の規模が小さいほど、数多くの競合企業を出し抜いてナンバー・ワンになるのは困難です。価格や品質で真っ向から勝負することはできないし、広告・宣伝にコストをかけることもできません。いかにして、効率よく顧客をひきつけ、説得するかが重要となります。つまり、マーケティングに重要なのは、「ナンバー・ワンであることではなくユニークであること」です。

USPを作るときの考え方

USPは、概念としてはシンプルですが、果たして自分のビジネスにUSPがあるのか、頭を悩ませてしまう人も多いのではないでしょうか。USPを探すには、まずは以下の項目に関して自社の提供する製品・サービスの特徴を整理してみるとよいでしょう。

  • 価格
  • 品質の高さ
  • スピードの速さ
  • サービスの充実
  • カスタマイゼーション可能性
  • 保証は充実度
  • ラインアップの広さ
  • 利便性
  • 専門性

上に挙げたなかでUSPとなりそうなものがあれば、それを具体的な形にしていきます。作り方の例として、スピードに自信がある場合、ただ「早い」「速い」ではなく、ドミノピザのように「30分」と明確に分かりやすい形にした方が効果的で独自性が出ます。USPを考える際の7つのコツ・ポイントを以下にご紹介します。

1.  ユニークな個性であること

基本的でありもっとも重要なことです。ほかの人が簡単に真似できる価値であっては、USPとはなり得ないからです。

製品自体の独自性や機能の高さにおいてユニークさを実現するのは簡単ではないと思われるかもしれません。しかし、市場のニーズは絶えず変化し、それに合った新しいサービスは常に求められています。例えば、QBハウスは既存の美容院・理容店に存在する充実したサービスを取り除くというアプローチでユニークさを実現しました。

2.  複数の考えを掛け合わせること

1つの考えに固執せずに、複数の考えを掛け合わせることで、新たな価値が生まれることがあります。例えばCCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が展開する蔦屋書店は、本屋とカフェ空間が掛け合わされて生まれた新たな価値であると言えます。

3.  ニッチな市場をターゲットとし、ニッチ分野での専門性を売りにすること

狭い市場のなかで、専門性を活かすことがUSPになります。例えば、あなたの会社がWeb制作会社だったとして、医薬品通販専門のWeb制作サービスを提供する、あるいは、あなたが弁護士だったとして、セクハラ被害専門の弁護士になるなどです。消費者や発注する側の心理としては、自分が抱えている問題の解決に特化している専門家を選びたいものです。

4.  全員に喜ばれようとしないこと

すべての顧客に喜ばれる商品やサービスを追求すると、結果として標準的でつまらないものとなってしまいます。自分が提供するユニークな価値を求める一部の顧客を喜ばせることが重要です。一部の顧客と強い結びつきを築きあげることで、より速いスピードでその影響力を広めることができるからです。

5.  新しいビジネスの場合は、タイミングをはずさないこと

これまでに世の中になかった新しいビジネスを始める場合は、USPをなるべく早い段階で決めて、同じビジネスを他社が始める前に、タイミングよくそのUSPを広めるのが成功のカギです。あなたの会社が最初に始めたビジネスであっても、USPを決めるのが遅ければ、あとから同じビジネスを始めた企業がインパクトの強いUSPを発信した場合、その会社のほうが消費者に強い印象を与え、そのビジネスのリーダー的存在とみなされてしまう可能性があります。

6.  商品の機能の高さはUSPではない

技術開発に力を入れている場合は、自社商品の持つ優れた品質・機能がUSPであると考えてしまいがちです。しかし、たとえどんなに優れた品質でも、消費者にとって価値あることと認識されなければ、USPではありません。実は消費者は独自性の高い機能よりも、安さ、便利さなど別の価値を求めているかもしれません。

7.  USPは製品・サービス開発の指針になる

企業側がUSPだと思っている提案が消費者のニーズとマッチしない場合は、製品・サービス自体に問題がないか見直す必要があるでしょう。消費者に刺さる価値を指針に製品・サービスを開発・改善すれば、USPがどこにも見当たらないサービスを開発してしまうリスクが減らせます。

まとめ

USPは言うなれば、あなたのビジネスのアイデンティティーとも言えるものです。上記で紹介した例でも、どれも強い個性やメッセージ性があることを感じられるでしょう。

USPを決めることに足踏みしている必要はありません。ビジネスを進めながら、じっくりと磨きをかけていけばよいのです。USPとは、自社の価値を伝えるためのツールです。あなたが何者でほかの人にはできない何が提供できるのか?数多くの競合他社が存在する環境の中で行動し、その答えが見えれば、成功に一歩近づいたと言えるのではないでしょうか。

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