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【セールス編02】買い手は営業に会わずに決め、最初に声をかけた一社を選ぶ
宗像 淳 / イノーバCEO2026/10/22 17:54:281 min read

買い手は営業に会わずに決め、最初に声をかけた一社を選ぶ|セールス編02

 


 

今回の概要

連載「営業という職業の作り直し」の第2回。前回、買い手がAIで武装した瞬間に営業の情報価値が消えると書いた。では買い手は、営業に会わずにどう決めているのか。米調査会社Gartnerの調査では買い手の67%が営業を介さない購買体験を望み、米AI企業6senseの購買調査では、購買プロセスの約7割が進んだ時点で初めて営業に接触していた。しかも81%の買い手は営業と話す前に本命を決めており、その本命は8割超の確率で選ばれる。勝負は商談の前についている。会って関係を築くことから始める従来型の営業は、買い手が決めた後に着くことになる。

1. 買い手の67%は、営業なしで買いたいと答えている

67%のB2B買い手が、営業を介さない購買体験を望んでいる

(Gartner、2026年3月公表。2025年6月公表の前回調査では61%)

米調査会社Gartnerが2026年3月に公表した調査によれば、B2Bの買い手の67%が、営業を介さない購買体験を望むと答えている。2025年8〜9月に買い手646人へ行った調査だ。2025年6月に公表された調査(2024年8〜9月、買い手632人)では、この割合は61%だった。同調査は、買い手の多くがデジタルチャネルでの独自調査を好むことも報告している。

私がこの数字で驚いたのは割合の大きさではない。買い手が営業を避けているのではなく、営業がいなくても検討を進められる手段をすでに持っている、という点だ。前回書いたAIは、その手段を一段強くしただけである。

2. 営業と話す前に、8割超が本命を決めている

営業と話す前に本命を決めている買い手は81%。その本命は、8割超の確率で選ばれる

(6sense、2024年版)

もう一つの調査がある。米AI企業6senseが、買い手を対象に毎年行っている購買体験の調査だ。2024年版(買い手2,509人)の数字はこうだった。買い手が営業と接触する前に、購買プロセスの69%が進んでいる。81%の買い手は営業と話す前に本命のベンダーを決めており、その本命は8割を超える確率で受注する。翌2025年版も、買い手が最初に話した相手が最終的な勝者である割合は、従来の調査で8割超だったと書いている。

買い手は候補を絞り終えてから営業に会う。会う時点で、心はほぼ決まっている。営業が「初回訪問」だと思っている面談は、買い手の側から見れば最終確認の場だ。

勝負は商談の前についている。営業が商談で何を話すかではなく、商談に呼ばれる会社であるかどうかで決まる。

ここに日本の営業組織の設計と、決定的にずれる点がある。日本の営業のKPIは訪問件数と商談数だ。営業の努力は「会ってから」に集中している。だが買い手は「会う前」に決めている。営業が努力している場所と、買い手が決めている場所が、ずれている。

3. 「会って情報交換から」では遅い

この調査結果を、日本の営業現場の日常に当てはめてみる。

従来、買い手は営業と会うことで情報を集めてきた。複数の会社に会って話を聞き、他社の取り組みも尋ねてみる。営業は、買い手にとって情報源の一つだった。

用事がなくても足を運んでくれる、まめな営業もいた。「特に案件はないけれど、一度会って情報交換しておくか」と、買い手が時間を取る。関係を築いておけば、何かあったときに声をかけてもらえる。これが、長く機能してきた営業の型だ。

 

AIの登場で、この前提が崩れた。

他社の動向も、比較の視点も、買い手は自分でAIに聞けば数分で手に入る。発注先の選び方は、年々合理的になっている。買い手が出してくる提案依頼書(RFP)が、明らかにAIで作られたものだと感じた経験のある経営者は、すでに多いのではないか。

買い手が、情報を得るために営業と会う理由は、もう残っていない。関係づくりのために会う時間を、合理的になった買い手はわざわざ取らない。従来型の関係構築型の営業、定期接触型の営業が入り込める余地は、確実に狭まっている。営業が会って関係を築こうとする頃には、本命の座はもう埋まっているのだ。

4.最初の一社になるために

では、最初に接触される一社は、どうやってその座を取ったのか。買い手が自分で調べている時間に、その会社の情報が買い手の目に入っていた。課題について書かれた記事、比較の視点、価格の目安、導入企業が自分の言葉で語った事例。買い手はそれを読んで候補に入れ、7割まで進めてから声をかけた。

つまり、最初の一社になるための仕事は、営業が会いに行く前に終わっている。この仕事は営業ではなく、マーケティングの領分だ。接点はマーケティングが作り、営業は営業だけをする。この分け方が必要になる理由がここにある。この分け方は第4部で詳しく書く。営業が呼ばれる会社になるかどうかは、営業部の外で決まっている。

結論

買い手は営業に会わずに検討を進め、購買プロセスの7割まで進んだ時点で初めて営業に接触する。81%の買い手は営業と話す前に本命を決めており、その本命が8割超の確率で選ばれる。営業が努力している「商談」は、買い手にとって最終確認の場でしかない。

日本の営業組織は「会えば売れる」を前提に組まれている。訪問件数を追い、関係づくりのために会いに行く。だがその努力は、買い手が決めた後の場所に注がれている。営業が弱いのではない。営業が努力する場所を、会社が間違えている。

診断2: 直近の受注10件について、買い手が最初に声をかけた会社は自社だったか。そして買い手は、声をかける前にどこまで検討を進めていたか?

明日やる一手。直近に受注した顧客のうち、話しやすい一社に電話をかける。聞くことは二つだけ。「うちに声をかける前に、他社と話していましたか」「うちを知ったきっかけは何でしたか」。営業担当者ではなく、経営者であるあなたが聞く。答えは、自社が最初の一社だったのか、最終確認に呼ばれただけなのかを教えてくれる。

前回・次回

前回: 顧客がChatGPTで10分調べた内容に、あなたの営業は勝てますか。買い手がAIで武装した瞬間、情報を運ぶ営業の価値は消えた。

次回: 若手が営業を辞める本当の理由は、給料でも上司でもない。顧客が要らないと言う仕事を、働き手はどう見ているか。若手が営業に感じている四つの不満は、甘えではなく物売り営業の正確な描写だ。


参考文献・出典:

- Gartner Sales Survey Finds 67% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Experience(Gartner、2026年3月9日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2026-03-09-gartner-sales-survey-finds-67-percent-of-b2b-buyers-prefer-a-rep-free-experience
- Gartner Sales Survey Finds 61% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Buying Experience(Gartner、2025年6月25日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-06-25-gartner-sales-survey-finds-61-percent-of-b2b-buyers-prefer-a-rep-free-buying-experience
- The B2B Buyer Experience Report for 2024(6sense、2024年10月9日)
https://6sense.com/science-of-b2b/2024-buyer-experience-report/
- The B2B Buyer Experience Report for 2025(6sense、2025年11月12日)
https://6sense.com/science-of-b2b/buyer-experience-report-2025/

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。

2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。

2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
最新刊 旧作1 旧作2