成功企業が実践しているブランディング手法とは?

経営・ビジネスハック

ブランディング手法と聞くと、高級、高品質、高価格といった特徴を持つ製品を想起されるのではないでしょうか? これは、競合他者との差別化ポイントを製品やキャッチコピー、ロゴやメッセージを通して発信する製品ブランディングという手法の一つです。実は、これ以外にも、企業や個人、消費者ではなく従業員にフォーカスしたブランディング活動で、ブランド認知を深めていく手法もあります。 

ここでは、ブランディング手法を知るための基礎用語とブランディング手法別 成功事例をご紹介します。また、ブランディングについて、正しい理解を深めるために、混同されがちなブランディングとマーケティングの違いについても解説します。

  

ブランディング手法を理解するための4つの用語

ブランディングの手法は、なにをブランディングするかによって異なります。まず、ブランディングを大きく分ける4つの用語について解説します。

 

1. 製品ブランディング/サービスブランディング

製品やサービスのブランドイメージを消費者に認知してもうらブランド活動

例:ロゴ、製品キャッチコピー、製品開発を通して消費者に提供する価値やイメージ

 

2. 企業ブランディング

企業のブランドイメージをステークホルダー(従業員、株主、行政、地域社会、取引先)に認知してもらうブランド活動

例:ミッション・ステートメント、コーポレートサイト、コーポレートカラー、企業文化、社会に提供する価値やイメージ

 

3. パーソナルブランディング

企業に所属する一個人のブランドイメージをステークホルダー(従業員、株主、行政、地域社会、取引先)に認知してもらうブランド活動

例:個人のビジョン、パッション、コミットメント、社会に提供する価値やイメージ

 

4. インターナルブランディング

企業の従業員に向けたブランド活動

例:従業員への顧客志向の向上、従業員の満足度の向上と愛社精神の向上、仕事への誇りやモチベーションの向上、企業が目指す姿の一元化による一体感の醸成など

 

一般的に知られている社外に向けたブランド活動は、エクスターナルブランディングと呼び、従業員を除くステークホルダーや消費者に向けたブランド活動を指します。

 

  

ブランディング手法別 成功事例

それでは、上記でご紹介した4つのブランディング手法の中から3つのブランディング手法を取り上げ、ブランド認知に成功した企業をご紹介します。

 

【製品ブランディング】セブン・イレブン

「セブンカフェ」は、製品ブランディングが認知されたことによって、初年度売上1年強で累計販売数7億杯を突破し、成功をおさめました。

 

セブン・イレブンが、ブランディングに力を入れ始めた当時(2010年頃)、セブン・イレブンはすでに業界トップの地位を獲得していたものの、メディアではコンビニ飽和論が取り沙汰され、コンビニ業界における差別化を図る必要性が高まっていました。また、顧客の中心は男性に偏っており、新たなターゲットである女性客や高齢者に向けた製品ブランディングが課題となっていました。

 

まず、セブン・イレブンは、従来の取扱商品を、「デイリー」「プレミアム」「ゴールド」にランク分けし、ロゴを一新しました。その後、セブン・イレブンオリジナルの雑貨ブランド「ライフスタイル」を立ち上げ、段階を経てセブン・イレブンの製品にプレミアム感を付与し、女性や高齢者でも立ち寄りたくなる、新たなコンビニのイメージを発信していきました。

これらのブランディング活動により、プレミアム感のあるコンビニというイメージが少しずつ認知されはじめたころに、「セブンカフェ」がリリースされました。コンビニでは、これまで提供し得なかった、品質の高いコーヒー、シンプルでおしゃれなコーヒーマシーンなどを使った「セブンカフェ」は、プレミアム感を確実なものにし、課題となっていた女性や高齢層などのターゲット層に見事に共感を得、大きく売上を伸ばしました。

 

【企業ブランディング】オムロン

オムロンと聞くと、健康やヘルス・ケア製品といったイメージを想起するのではないでしょうか?実は、オムロンは、世界初の電子式自動感応信号機の開発、日本初の自動改札機の開発を手がけ、多くのイノベーションを起こしてきたBtoBビジネスも展開する企業です。オムロンは、近年、グローバルに向けた企業ブランディングに力を入れています。 

まずは、オムロンが企業ブランディングを成功させるために実施した、組織作りについてご紹介します。

オムロンは、2013年以降、各カンパニーが独自に持っていた広報機能を集約し、コーポレート・コミュニケーション部という部署を新設しました。これは、社内・外、国内・外に分けて情報を発信するという考えを取っ払い、発信情報源を統一し、従業員を含むステークホルダーに一貫性のある、オムロンが届けたい正しい情報をリーチさせることを目的としています。

2016年には、社内広報と報道広報を兼任性にし、社内・外のコンテンツやメッセージの完全一致を図っています。こういった透明性の高い情報発信は、ステークホルダーにポジティブな印象を与え、企業イメージ向上に繋がっています。

 

次に、企業ブランドのイメージをステークホルダーに浸透させる、新企業ブランディングキャンペーン「人間は、もっとやれる」キャンペーンを実施しました(2015年)。

これは、創業者である立石一真氏の社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」に基づき、「これからも更なるイノベーションを起こし、社会の発展と人々の生活をより向上する」という企業理念にコミットするオムロンの姿勢を、社会に発信することを目的としています。

コンテンツは、テレビCM、ラジオ、新聞、雑誌、屋外看板、展示会場、自社ウェブサイト、オンラインメディアを通じて、日本だけでなくグローバルに向けて発信されました。コンテンツでは、オムロンの事業が、ステークホルダーの生活で実際に、どういった価値を提供しているか、そして将来どのように価値を提供していきたいかが表現されています。

 

これらの企業ブランディング活動により、2018年ブランドコンサルティング大手の米インターブランドが行った「グローバルブランド価値ランキング(日本企業部門)」で、オムロンは39位に初ランクインし、海外でのブランド認知度をアップさせることに成功しました。

【インターナルブランディング】スターバックス

どこのスターバックスにいっても、スターバックスらしい雰囲気を感じます。これを作り上げている一つがスターバックスの従業員です。従業員のサービスやカラーには一貫性があり、スターバックスのブランドイメージを顧客に認知させるための重要な要素となっています。

 

このようなブランドイメージは、スターバックスが積極的に行っているインターナルブランディングが肝になっています。

創業者のハワード・シュルツは、「従業員がスターバックスで働くことに誇りを持ち、満足度の高い職場環境で働くこと」を、「顧客満足度」以上に重要視しました。従業員満足度の向上が、顧客満足度の向上に繋がることを理解していたからです。

 

この意志は、ミッション・ステートメントにも明確にされています。

スターバックスのミッション・ステートメント(英語版)には、 Our coffee, Our Partner, Our Customer, Our Store, Our neighborhood, Our Shareholdersの順でそれぞれに向けたメッセージが発信されています。

Our Partner(私達のパートナー(従業員)へ)は、Our Customer(私達のお客様へ)よりも上位に位置付けられており、従業員満足度を重要視したい、ハワード・シュルツの意図がここからも感じられます。

 

Our Partnerに向けたメッセージを要約すると、「スターバックスでは、従業員をパートナーと呼んでいます。なぜなら、従業員はただ仕事をこなすためにいるのではなく、スターバックスのパッションの源であるからです。」そして、「それぞれのパートナー(従業員)が、輝いて働くことのできる場所を創造して多様性を受け入れること。お互いを尊敬し、尊厳をもって働こう。」と示されています。

これを実践するために行われている社内活動が、人材育成のための研修です。明確な時間はリリースされていませんが、他の企業に比べて多くのリソースを研修に割いています。ここでは、スターバックスで販売している製品やバリスタになるためのコーヒーに関する細やかな基本知識が丁寧にレクチャーされますが、柱となっているものは、スターバックスのミッション・ステートメントを実践できるマインドをもった人材の育成です。

これをスタースキルと呼んでおり、「自身を保ち、さらに高めていく」、「相手の話を真剣に聞き、理解する努力を怠らない」、「困った時は助けを求める」の3つで構成されています。実は、スターバックスにはマニュアルは存在せず、このスタースキルを身につけることで顧客満足度の高いサービスを体現しています。

その他にも、健康保険とストックオプションを週20時間以上勤務するパートタイマーにも適用し、従業員が自社に高いロイヤリティをもつ動機を提供しています。

 

スターバックスは、これらのインターナルブランディングの強化により、企業文化を統一することに成功しました。その結果、一貫した顧客満足度の高いサービスが提供され、高いブランド力の獲得に繋がっています。

 

マーケティングとブランディングの違い

「消費者視点」、「顧客中心」のマーケティング概念が浸透して以来、マーケティングとブランディングの概念は重なり合う部分が大きくなり、密接な関係性が生まれています。マーケティングの書籍や記事を読めば、マーケティング活動の一部としてブランディング活動が書かれていることに気づきます。その逆もしかりです。そのため、マーケティング活動の中で、気づかないうちにブランディングもできていた、なんてこともあり得ます。

しかし、より戦略的に、ブランディングとマーケティングを攻略していきたいのであれば、それぞれの概念や違いを正しく理解する必要があります。

 

マーケティングとブランディングではまず位置付けが異なる

ブランド戦略は、経営戦略により近く、マーケティング戦略の上流に位置しています(下図参照)。ブランド戦略とは、経営戦略で決められた企業理念や行動指針に紐付いています。これらを基に、企業や製品がもつアイデンティティを具体的にし、企業や製品・サービスが社会や消費者に提供できる価値を明確にするステップです。これを社会や消費者に浸透させるプロセスが、マーケティング戦略やマーケティングのプロモーションの部分と重なりあう場合があり、概念を複雑にしています。

ブランディングはターゲットに届けたい価値を心情に訴えかける方法を考える

ブランディングでは、企業や製品・サービスが消費者やステークホルダーに、どういった価値を提供できるかを発信しますが、実利的な価値だけでなく、感情、体験、共鳴してもらうことで相手の感情にインパクトを与え、ポジティブな印象を持ってもらうことが目的です。

 

マーケティングは、売ること、儲かることを目的に売るための戦略・戦術を立てる

マーケティングとは、消費者のニーズを顕在化させ、そのニーズを満たす製品やサービスを開発、販売、販促、販売する場所などを含んだ、消費者に届けるまでの効果的な工程を見つけ出し、売上、利益を向上させるための戦略を指しています。この戦略を立てる際に、ブランディング戦略で明確にした差別化ポイントや提供価値は、市場優位性、継続した売上の維持を底支えするエッセンスになります。

 

ブランディングとマーケティングを並列に考えると、違いを見極めることが難しくなります。ブランディング戦略は、マーケティング戦略の前段階に必要なプロセスであり、かつ双方には密接な関係性があるものであると捉えることがポイントです。

実際に、ブランディング戦略とマーケティング戦略の両方を正しいプロセスで、戦略を立案している企業は多いとは言えません。だからこそ、この双方の戦略を実施することで、市場優位性を獲得する可能性が高いことも言えます。

 

まとめ

ブランディング手法のパターンは、ここでご紹介した4つに大きく分類されますが、これらの手法を組み合わせたり、オンラインやオフライン、さまざまなメディアを組み合わせることで無数にわたる手法が挙げられます。

自社の企業理念や企業イメージ、製品・サービスイメージを明確にし、ターゲットに的確にリーチする組み合わせを模索していきましょう。

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