マーケティングに使える6W2H<ケース・スタディ3選>

経営・ビジネスハック

W2Hは、マーケティング戦略、コンテンツ制作や社内でのプレゼンやコミュニケーションに至るあらゆるビジネスシーンにおいて使える、5W1H「When、Where、Who、What、Why、How」の派生系フレームワークです。

聞き手を納得させられる、説得力あるプレゼンテーションを作りたい、3C分析、STP分析、4P分析などのマーケティングのフレームワークで戦略を練るものの、思考が行き詰まってしまっている時に、この6W2Hは有用です。6W2Hのフレームワークに沿って、シンプルなストーリーで、抜け漏れのない論点から思考を整理することで、新たな問題解決の糸口を見出すことが可能です。

 

今回は、マーケティングにおける6W2Hの基本知識と強み、そして3つの成功企業のケース・スタディを紹介します。

マーケティング戦略における6W2Hとは?

6W2Hは、5W1Hに「Whom(だれに)」と「How much(いくら)」を追加し、下記のそれぞれの頭文字をとった略称です。 

When: いつ

Where: どこで

Who: だれが

Whom: だれに

What なにを

Why: なぜ

How:どのように

How much:いくらで

 

5W1Hでは、「Who」の要素で、自社と顧客、競合などの関係者すべてを含めて分析しますが、6W2Hでは、「Who」を自社の関係者、「Whom」をターゲットや競合の関係者に分けて分析します。抜け漏れを防ぎ、マーケティング戦略に必要な要素を一つ一つ丁寧に分析していくことができます。

この6W2Hには、マーケティングフレームである4P分析(Product、Price、Place、Promotionの視点からターゲット市場を分析するという考え方)が含まれています(下図参照)。

6w2h.png

4P分析を何度も繰り返すうちに戦略が断片化してしまった場合、この6W2Hを使って一つのまとまったストーリーで思考を整理することができます。また、4P分析や3C分析、STP分析を行き来している内に、混乱してしまった場合にも、必要な要素からシンプルに見直すことができ、問題点が明らかになります。

 

また、全てのW(問い)はそれに関連する論点に置き換えることができ、汎用性の高さが5W1H派生系フレームワークの特徴です。それでは、マーケティング戦略における、5W2Hのそれぞれの役割について具体的に解説していきましょう。

6w2h_2.png

When: 販売期間

製品の販売開始時期、販売期間や期限、キャンペーンの開始時期、消費者が製品を求めている時期やタイミングなど、あらゆる「When(いつ)」を分析します。自社製品だけでなく、競合他社の製品の販売期間やキャンペーンの期間、消費者の年間イベントに伴う消費者行動などから最適なタイミングを探し出します。

Where: 販売するチャネル

製品を消費者に届けるための販売チャネルや流通経路を分析します。実店舗やネット通販、または、これらを組み合わせる手法(オムニチャネル)など、ターゲットとなる消費者が利用しやすいチャネルがどこであるのか、どういった場面やシチュエーションであるのかを分析します。

Who: 自社側の人物

マーケティング戦略を実行する自社側の中心人物や、組織、グループ、チーム員、人数といった要素を分析します。オペレーション部隊となる人材や人員が適正であるかを事前に分析することによって、実現性の高いマーケティング戦略を立案します。

Whom:ターゲットになる人物(ペルソナ)

企業が製品をだれに売りたいのか、購買に意思決定者はだれか、どういった消費者属性を持った人物が製品を購入したいと考えるのかを分析するのが「Whom」です。ターゲットのみに囚われず、プロジェクトに関わるあらゆる「Whom」を分析することも可能です。製品開発チーム、マーケティングチームやセールス部門、ディストリビューターや小売店に至るまで、ターゲットの手に届くまでに関わる人物を分析することで、他のマーケティングフレームワークでは分析しきれなかった問題点やアイディアを発見することができます。 

What: 製品・製品価値

実際に売る製品やサービスを分析する「What」です。また、現在のマーケティング戦略では、製品本体だけでなく、「製品が顧客に提供する価値」についての分析にも注目が必要です。ご存知の通り、現代の消費者は製品を買うことで自身にもたらされる価値の有無によって購買行動を起こす傾向があるため、顧客に価値を創造する「What」は重要な論点になります。逆を辿れば、企業がその製品を通じてターゲットにどんな価値を提供したいのかを明確化することになります。

Why:目的・ゴール、ターゲットの購買理由

製品やサービスを販売する目的やゴールを分析するのが「Why」です。製品を市場に展開する企業の背景や意義は、製品価値にもつながる論点です。顧客目線に置き替えると、市場や消費者がなぜその製品を欲しているかという論点の掘り下げであり、市場のニーズを分析することができます。

How:販促や集客のためのプロモーションや手段

ターゲットに製品を知ってもらい、実店舗やサイトに訪問してもらうための最適な販売促進や集客方法について分析します。例えば、マスメディアを使った広告でのアプローチ方法、既存顧客リストを使ってDMを発送し告知する方法やソーシャルメディアを使ったキャンペーンの展開、はたまた全てのメディアを駆使したクロスメディアでのプロモーションなどその手段はさまざまです。媒体や頻度、予算や社内の体制についても最適な方法を選択するために分析し、定義していきます。 

How much:価格戦略

高いプライシングでいくのか、値引きをするのかといった価格設定など、資金計画も含めたお金に関わる戦略を分析します。欧米では、量の要素も取り入れることがありますが、日本では価格戦略に関わる要素を分析することが主流です。料金の回収方法、支払い場所や支払い時期、支払い方法、人件費や材料費などのコストについても分析します。How muchは、5W2Hの中でも唯一収益に直接つながる要素になるため、ビジネスの継続性や成長プランと合わせて戦略を練る必要があります。

 

他のマーケティングフレームにはない6W2Hの強み 

6W2Hは、「Who(だれが)」「Whom(だれに)」をあえて別々の分析要素に分解しています。

「Who」である、プロジェクトチームの中心人物やメンバーとなる人材、役割や仕事量など実行部隊のオペレーションを細かく分析していくことが可能です。オペレーションと人材を絡めた工程表を作り上げることは、立案したマーケティングプランが、自社のリソースで実現可能であるか、そうでないのかを明確することに役立ちます。プランに具体性を増すことで、オペレーションの課題が表面化していきます。 

マーケティングプランを実施したのちに、計画通りに進んでいない、作業が止まっている、思った効果が現れていないといった事態は、よくあることです。多くの原因は、戦略を実施するフェーズを具体的に想定して、プランが立てられていない場合です。そういった事態を未然に防ぐためにも、6W2Hを使って、自社のリソースや、それぞれの役割、仕事量を事前に分析する必要があります。

 

6W2Hを使ったケース・スタディ3選

ここまで解説してきた6W2Hを使って、下記の3つの企業をケースにマーケティングの成功要因を分析し、解説します。

コンテンツ・マネジメント・システム(WordPress.org)

Automattic 社が運営するWordPress.orgは、世界中のウェブサイトの29%に使われているコンテンツ・マネジメント・システム(以下、CMS)です。圧倒的なシェアを誇るWordPress.orgのサービスについて、5W3Hで分析します。  

When    オンライン上で24時間365日

Where  オンライン

Who   テーマ開発者、プラグイン、翻訳は世界各国のボランティア

Whom   世界各国のウェブサイト、アプリ、ブログを構築するユーザー

What   オープンソースのウェブサイト、アプリ、ブログテーマ、プラグイン、

Why   ユーザーに完全に自由なソースを提供する(ライセンスの再配布を制限することを禁止)

How   オープンソースのテーマやプラグインを多く提供する(無料で提供されているテーマは2,500個以上、3,000万個以上のプラグイン)

How much テーマとバージョンアップは無料、カスタムテーマやドメイン名、容量などの拡張機能は有料

 

多くのユーザーがWordPress.orgを使う最大の理由は、無料であることです。しかしなぜそれが可能なのでしょうか?上記の通り、WordPress.orgの開発者(Who)は、世界各国のボランティアで構成されており、これによってサービスの無料提供が実現しています。世の中にはオープンソースによって、世の中をより良くする製品やサービスを開発したいというモチベーションの高い人材がいて、そういった人々が作品を公開したり、共有するためのコミュニティとしてもWordPress.orgは存在しています。

 

エキナカ(JR東日本)

近年、新たな販売チャネルとして登場したエキナカは、ユーザーにとっての駅のあり方を大きく変えました。従来も、駅の中には、蕎麦屋やキオスクはあったにも拘らず、利用しにくい店構えや雰囲気であったため、利用者が減少する一方でした。JR東日本は、どういったマーケティング戦略でエキナカを成功に導いたのでしょうか。 

When    通勤時や駅利用時、待ち時間、隙間時間

Where  駅構内

Who   エキナカプロジェクトチーム

Whom   駅利用者、駅近辺に用のある人(ビジネスマン・居住者)

What   改札の中にある商業施設

Why   利便性だけでなく、スタイリッシュさや暖かみを取り入れた空間を提供

How   暖かい明るいイメージを取り入れたインテリアに改装 

         テナントに人気ブランドを誘致

      ファッションや食以外にも、ヘアカットなどの日常的に必要なサービスも出店

     価格帯、サービスの早さ、品物のサイズをエキナカ仕様にカスタマイズ

How much 安価な価格帯の製品やサービスがメイン

 

JR東日本のエキナカプロジェクトチームは、従来顧客が潜在的に持っていたニーズを読み解き、顧客が満足できる商業施設を作り上げました。仕事帰りに、美味しい夕飯のおかずが購入できるお惣菜屋さんや、女性一人でも立ち寄りたくなるようなおしゃれなカウンター式の飲食店など、利便性だけでなく、立ち寄りたくなる空間作りを実現したことが成功要因の1つでしょう。

 

書店(代官山T—SITE 蔦屋本屋)

カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する「代官山蔦屋書店」。今では、代官山の代表的なスポットの1つです。オンラインショッピングや、電子書籍が浸透し、書店が軒並み閉店する中、T—SITE芦屋書店が系列店舗をオープンさせているのはなぜか、6W2Hで分析します。

When    午前7時から午前2時

Where  実店舗、代官山

Who   30名以上のコンシェルジュとその他の従業員

Whom   情報感度の高いプレミアエイジ(団塊世代の前後)、若者層

What   生活提案型商業施設(書籍、DVD、文具を販売し、敷地内にカフェ、レストランを併設、イベントも開催する)

Why   大人がくつろげるような「家」、森の中の図書館、落ち着いた環境の中で趣味に勤しめるような空間、を提供する

How    商品を手にとってゆっくりと読める環境作り

     施設内に併設するカフェで、購入せずに書籍が読める

     近隣住民のアンケート結果から欲しい施設を詰め込んだ小さな街を再現し、散策コースにしたくなる空間を作った。

How much 併設する施設の単価は高価格帯が中心であるが、若者向けに低価格なカフェなども提供する

代官山芦屋書店のターゲットであるプレミアエイジは、趣味や知識、経験値も豊富な世代です。そんなターゲットの個々の要望に対応できる人材としてコンシェルジュが導入されています。コンシェルジュは、それぞれの分野の深い専門知識を持ち、商品選びの提案や、ちょっとした雑談相手、イベント開催なども取り仕切るポジションです。顧客にとって、代官山芦屋書店でなければ受けられないこういった付加価値の高いサービスが、リピーターを増やす1つの動力になっています。

 

まとめ

6W2Hは、8つの要素からマーケティング戦略を一つ一つ丁寧に分析することで、実現性の高い戦略の立案が可能です。3C分析、STP分析、4P分析などのマーケティングのフレームワークで思考が行き詰まってしまっている時には、5W1Hの派生系フレームワークでシンプルに一連のストーリーに沿って分析することが、新たな問題解決の糸口を見出すことに繋がります。

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