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【マーケ編01】「検索されなくなる日」はもう来ている。AIが答えを出す世界で、あなたの会社は引用されるか
宗像 淳 / イノーバCEO2026/10/01 10:00:032 min read

「検索されなくなる日」はもう来ている。AIが答えを出す世界で、あなたの会社は引用されるか|マーケ編01

 

CEO自らが語る新連載

AIが検索を代替し、買い手の行動を変え、マーケティングの主役は人の勘からデータへと移りつつある。この変化に気づいていながら、多くの日本のB2B企業が対応を先送りしている。私はこの状況に危機感を持っており、経営者自身がこの変化を語らなければ、現場は動かないと考えている。この連載では、私自身の見解として、海外の現在地と日本の先送りの実態、そして今しかない理由を、38回・3部にわたって述べていく。

  • 第一部(01〜15回) 海外では、もうこうなっている
  • 第二部(16〜28回) 日本のB2Bが、先送りし続けていること
  • 第三部(29〜38回) 3年後・5年後から逆算すると、今しかない

 


 

今回の概要

米国では検索結果の上にAIの回答が表示され、企業サイトへのクリックが目に見えて減った。買い手はもう「調べてから問い合わせる」のではなく、AIに「どのベンダーがいいか」を聞く。そこで名前が出なければ、存在しないのと同じだ。SEOの延長線上では戦えない理由と、AIに引用される会社になるために今日から何を始めるかを書く。

1. クリックが消えた

結論から書く。「検索で見つけてもらう」という前提は、すでに崩れ始めている。

Googleは2024年5月、米国で検索結果の最上部にAIが生成した要約を表示する「AI Overviews」を全面展開した。2025年にはさらに踏み込み、検索そのものを対話形式で完結させる「AI Mode」を出した。検索窓に課題を打ち込むと、答えが先に出る。リンクは、その下だ。

この変化が何を起こしたか。Pew Research Center が2025年に公表した調査では、AI要約が表示された検索でユーザーが従来型のリンクをクリックした割合は約8%で、AI要約が出なかった検索の約15%と比べておよそ半分だった。しかも、AI要約内に示された出典リンクをクリックした人は1%程度にとどまった。

数字はこれだけだ。だが意味は重い。答えが画面の上に出るなら、人はその下まで降りない。ページを開かない。あなたの会社が何年もかけて磨いた「検索1位の記事」は、答えの材料として消費され、読まれずに終わる。

Gartnerは2024年の時点で、AIチャットボットや仮想エージェントの普及によって、2026年までに検索エンジンの利用量が25%減ると予測していた。この数字の妥当性は議論があるが、方向は間違っていなかったと私は思う。

2. 買い手は「調べる」のをやめ、「聞く」ようになった

私が本当にぞっとするのは、クリック率の低下そのものではない。買い手の行動の型が変わったことだ。

かつてB2Bの買い手はこう動いた。課題に気づく。検索する。5社ほどのサイトを読む。比較表を作る。問い合わせる。企業サイトのコンテンツは、この「読む」段階のために作られてきた。

今の買い手は違う。ChatGPTやPerplexity、あるいはGoogleのAI Modeに、こう聞く。「製造業向けの在庫最適化ツールで、中堅企業に合うのはどこか」。AIは数社の名前を挙げ、理由をつけて返す。買い手はその数社しか見ない。

ご存じだろうか。この「AIが名前を挙げる数社」に入っていなければ、あなたの会社は検討の土俵にすら上がらない。検索順位が3位でも10位でも、以前なら誰かが見てくれた。AIの回答に名前がなければ、ゼロだ。

私はこれを「引用される会社」と「引用されない会社」の分岐だと考えている。引用されない会社は、どれだけ良い製品を持っていても、買い手の視界に入らない。存在しないのと同じである。

3. SEOの延長では戦えない

「ならばAI向けにSEOをやればいい」という声が出る。生成エンジン最適化(Generative Engine Optimization、以下「AI向け最適化」)という言葉も広まった。私はこの発想に、半分賛成で、半分違和感を覚える。

賛成なのは、AIも情報源を選んでいるという点だ。AIは何もないところから答えを作るのではない。ウェブ上の情報を読み、信頼できると判断したものを組み合わせて答える。だから「AIに読まれる情報」を用意する努力は意味がある。

違和感を覚えるのは、これを「小手先の技術」だと思ってしまう空気だ。キーワードを埋め込めば上がる、というSEOの古い成功体験を、そのままAIに持ち込もうとしている。

AIが引用するのは、こういう情報だ。誰が言っているかが明確で、主張が一貫していて、他の信頼できる場所でも同じことが語られていて、構造がはっきりしている。つまり、専門性と一貫性と評判である。これはテクニックではない。会社の発信の蓄積そのものだ。

Googleは自社の品質評価ガイドラインで、経験・専門性・権威性・信頼性を重視すると長年言い続けてきた。AIの時代は、この基準が「建前」から「本当の選別基準」に変わったのだと私は見ている。

AIに引用されるかどうかは、あなたの会社が「その分野で語る資格がある」と、ウェブ全体から見なされているかどうかで決まる。

4. 日本のB2Bサイトは、AIから見て「何も言っていない」

日本のB2B企業のサイトを、AIの目で読んでみてほしい。製品名と機能一覧。導入事例。「お問い合わせください」。それだけだ。

この会社は何の専門家なのか。どんな課題に、どんな立場で答えるのか。業界の論点について、どう考えているのか。AIが「この分野ならこの会社」と判断する材料が、ほぼない。

さらに悪いことに、代理店に丸投げして作った「SEO記事」が大量にある。誰が書いたかわからず、どこの会社でも書けそうな一般論で、他社のサイトにも似た記事がある。AIはこれを「信頼に足る情報源」とは見なさない。人間の読者でさえ見なさなかったのだから、当然だ。

海外の先進的なB2B企業は、自社の専門領域について「見解」を出し続けている。調査を公表する。経営者や技術者が実名で語る。業界の論点に旗を立てる。それがウェブ上に蓄積され、AIから「この分野の声」として引用される。日本との差は、技術ではない。発信の姿勢と量の差だ。

結論

AIに引用される会社になるのは、SEO以上に時間がかかる。一晩では作れない。だからこそ、後から追いつくのは難しい。

始め方は小さくていい。自社が「この課題ならうちだ」と言える領域を一つ決める。その領域について、実名で、見解を込めた記事を書く。製品説明ではなく、買い手の課題と選択肢を語る。月に一本でいい。それを一年続ける。

今日、ChatGPTに自社の領域の質問をしてみてほしい。自社の名前は出ただろうか。出なかったなら、それが現在地だ。そこから始めればいい。


参考文献・出典:

- New generative AI experiences in Search(Google、2024年5月14日、AI Overviews発表)
https://blog.google/products-and-platforms/products/search/generative-ai-google-search-may-2024/
- Expanding AI Overviews and introducing AI Mode(Google、2025年3月、AI Mode発表)
https://blog.google/products/search/ai-mode-search/
- Do people click on links in Google AI summaries?(Pew Research Center、2025年7月22日)
https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/
- Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents(Gartner、2024年2月19日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-02-19-gartner-predicts-search-engine-volume-will-drop-25-percent-by-2026-due-to-ai-chatbots-and-other-virtual-agents
- Search Quality Rater Guidelines(Google、2025年9月11日版)
https://guidelines.raterhub.com/searchqualityevaluatorguidelines.pdf

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宗像 淳 / イノーバCEO

福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。

1998年に富士通に入社し、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、楽天で物流事業、ネクスパス(現トーチライト、博報堂DYグループ)でソーシャルメディアマーケティング事業の立ち上げを担当。ネクスパスでは、事業開発部長として米国のベンチャー企業との提携を主導した。

2011年、マーケティング支援会社である株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。日本におけるコンテンツマーケティング/BtoBマーケティングの第一人者として、15年以上にわたり5000社以上の経営課題やマーケティング・営業課題を分析し、幅広い業界で企業の事業成長に貢献。「事業を伸ばすには実行力が重要であり、実行力とは組織・人である」という哲学で、人にこだわった支援会社づくりに取り組んでいる。

2026年2月、最新刊『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)を上梓。著書に『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みを作る』(日経BP社)、『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(インプレス)。
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