小さな組織とIKEA(イケア)の異色コラボ!犬の里親探しプロジェクト「Home for Hope」

コンテンツマーケティング

世界最大の家具チェーン「IKEA(イケア)」。日本に進出してからも数年がたち、一度ならず何度も足を運んだという人も多いだろう。

値段がリーズナブルなこともあり、特に、新生活を始めた若者層・小さな子どものいる家族に人気が高い。

以前、当サイトでは、「IKEAのコンテンツマーケティングに学ぶ、ウケる動画作りに必要なワザとは」(IKEAのスタッフが閉店後の店内に100匹の猫を放ち、その様子を撮影した動画がテーマ)という記事を紹介した。今回は、犬がテーマだ。

シンガポールのIKEAが、保護されている犬たちの里親を探すために、2つのアニマルシェルター、「SAVE OUR STREET DOGS」「ANIMAL LOVERS LEAGUE」とタッグを組んだのだ。

宣伝力のある企業と、小さな組織のコラボで何が起きたか? 以下、このコラボによる「Home for Hope」というプロジェクトをご紹介しよう。

IKEAの店内に、犬の原寸大の写真を配置

原寸大にした犬たちの写真を厚紙にプリントしたものが、IKEAの店内に置いてある。

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出典:動画~IKEA「Home for Hope」厚紙にプリントした犬の写真が置いてあるIKEA店内の様子

その犬たちの首の部分には、QRコードのついたタグがついており、買い物客がそれをスキャンすると、その犬の情報が動画などで得られる仕組みになっている。オンラインとオフラインを結ぶ、O2Oの応用例と言える。

動画そのものは、こちら。

IKEA「Home for Hope」

既存客が、別の分野では見込み客に

カーペットの上やソファの上に「お座り」している犬たちを見ると、顧客は、「犬のいる生活」を想像することができる。

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出典:動画~IKEA「Home for Hope」犬の写真に興味を持つIKEA顧客の様子

IKEAの買い物客は、新生活を始める人も少なくないので、新しい家族(ペット)に興味を持ってもらい、「里親になる」という選択も考えてもらえる。家具を買う顧客が、別の分野では、見込み客になりえるという良い例だ。

通常、犬を保護しているシェルターでは、ソーシャルメディアなどを通じて里親探しを実行しているが、その場合フォロワーのほとんどが、すでにペットを飼っている人々であるため、里親探しは難航している。

「DO SOMETHING.ORG」によると、生まれてくる犬で、生涯を「家」で暮らせる犬は、10匹中わずか1匹。

アニマルシェルターに収容しきれなくなった犬や猫は、世界中で毎年300~400万匹殺処分されている。アニマルシェルターにいる犬の多くは、飼い主がさまざまな理由で捨てた犬と、ブリーダーやペットショップなどで売れ残った犬たちだそうだ。

「IKEAは犬を助けている」というイメージアップ

もちろん、ほとんどの買い物客は、犬の里親にはならない。プロジェクトのホームページに掲載されている犬は36匹で、里親が決まったのは8匹だという。

しかし、世界的な認知度を持つ会社がこのようなプロジェクトを行うことによって、多くの犬たちがアニマルシェルターに保護され、家族を必要としているという情報を世間に浸透させることに成功した。

人々のなかには、「ペットは、ペットショップでしか買えない」と思っていた人もいるかもしれない。新しいペットを迎えるとき、里親になるという選択肢もあるのだ。

「TODAY」「CTV News」「Yahoo! Philippines」「Trend Hunter」など、大手メディアもこのプロジェクトを取り上げたことにより、「IKEAは犬を助けている」という認知が高まり、ペットフレンドリーな人にとって、IKEAはイメージアップにもつながった。

プロジェクトは、アメリカや他企業でも

さらに、この活動は、シンガポール外へも展開された。

アメリカのアリゾナ州フェニックス店も、このプロジェクトに参加している。アリゾナ・ヒューメイン・ソサエティーで保護されている6匹の犬たちの厚紙が、店内でディスプレイされているそうだ。

また、IKEAのこのプロジェクトへの協力がきっかけとなり、「Foundry」 や「Grafunkt」といった家具分野の他の有名ブランド会社も、スポンサーとして参加し、ショールームで同じように犬のディスプレイを行っている。

まとめ

環境省によると、日本では年間約16万頭の犬や猫が殺処分されている。2014年6月には、将来的にゼロにするための行動計画を発表されたが、日本でも同様のプロジェクトを行えば、1匹でも多くの犬や猫に、「我が家」という居場所を与えられるだろう。

また、予算などの関係でPR力の足りない組織と、宣伝力のある企業がコラボしてプロジェクトを進めるという意外な組み合わせは、このようなチャリティイベント以外にも、いろいろと応用できそうだ。

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