Webサイトを管理・運営するCMSツールは世界中にありますが、近年は簡易性と軽量なシステム面に魅力を持つ「Grav」に注目が集まっています。
GravはフラットファイルCMSとして多くのメリットを持つツールで、幅広いシーンでWebサイトの構築に役立っています。
以下ではGravならではの特徴と、その魅力を解説します。
Gravとは?
Gravは、Webコンテンツの作成を高速・効率化するCMSツールです
日本で広く使用されているWordPressと違い、データベースを使わずにテキストファイルですべてのデータを管理する「フラットファイルCMS」であることが特徴となっています。
フラットファイルCMSはWebサイトの環境を作るためのセットアップが簡単で、必要なデータのバックアップも容易です。
簡単かつ利便性の高いその特徴が認められ、2016年には「ベストオープンソースCMS」に選別され、2017~2020年の4年間は「ベストフラットファイルCMS」に選ばれています。
Gravはオープンソースであるため誰でもすぐに利用できるため、日本でも多くの企業で利用されはじめています。
Gravのメリット
Gravはその特徴的なシステムによって、多くのメリットをユーザーに与えてくれます。
以下からは、Gravならではのメリットを解説します。
フラットファイルCMSである
GravはフラットファイルCMSであるため、セットアップが簡単になるほかにも、サーバー負荷が少なくなって全体のパフォーマンスが軽くなるなどのメリットがあります。
MySQL(データベース管理システム)が必要ないため、コストを削減できるのもメリットです。
ほかにもサーバーの引っ越しが必要な場合でも、FTPを使ってデータを丸ごと移動できます。
バックアップも管理画面から簡単にzipでダウンロードでき、コンテンツを丸ごと管理・保存が可能です。
Webサイトに何か問題が発生したときも、FTPで簡単にアップロードして復元することができます。
柔軟にWebサイトの問題に対応できるため、フラットファイルならではの安定感がメリットになるでしょう。
直感的操作による簡易性
Gravは、直感的な操作によって動かせる簡易性も特徴です。
Gravのサイトからzipファイルをダウンロードして解凍後、アップロードするだけでオリジナルWebサイトは完成します。
特別な使い方を覚えたり、インストールに準備を必要としないため、簡単にサイトの運用を開始できるでしょう。
CMSツールとしての機能も非常にシンプルなので、お試しでWebサイトを作成して具体的なイメージを膨らませたり、サイト作りの練習を行ったりといった使い方も可能です。
シンプルな機能性は普段の操作が軽くなるメリットにもつながり、ストレスなく利用できるようになります。
管理画面なども素早く表示されるので、やりたいことにすぐに手をつけられるのも魅力です。
CMSツールにとって「操作が軽い」というメリットは、長期的に利用する理由にもなるでしょう。
さらにGravは標準でMarkdown記法に対応しているため、簡単な表記でHTMLを生成できます。
テキスト表記によるシンプルな入力でWebサイトを構築でき、後から何かしらの変更が必要になったときも簡単に修正を加えられます。
Markdownで簡易的にWebサイトの作成を行える点も、Gravのメリットになるでしょう。
拡張機能が豊富
Gravは拡張機能の豊富さでも、メリットの多いCMSツールです。
Gravは標準で搭載されている機能以外にも、プラグインを追加していくことでさらに便利な環境を構築できます。
Webサイトのオリジナリティを高めたい場合や、もっと便利にCMSツールを使用したいときなどは、プラグインを追加していくことがおすすめです。
Gravのプラグインには、例えばGoogleのアクセス解析が確認できたり、記事の中に特定のアイコンを使用できるようにしたりと、さまざまな拡張性に期待できます。
Gravを使う際には、積極的にプラグインを導入していくことがポイントです。
Gravのデメリット
Gravはさまざまなメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットもあります。
実際に使用を開始する前に、Gravのデメリットも確認しておきましょう。
海外産なので日本語の情報が少ない
Gravは海外産のCMSツールであるため、日本語で確認できる情報源が少ないというデメリットがあります。
「〇〇のように使いたいけど、どうすればいいか分からない」
「使用中に〇〇の状態になってしまったので、解決方法が知りたい」
そういった目的の達成やトラブルの解決時を目指すときに、日本語で解説している記事を参考にするのが難しいでしょう。
英語でのコミュニケーションになりますが、Gravにはコミュニティサイトが存在するので、不明点はGoogle翻訳等を通してこちらで質問してみることも考えられます。
WordPressの方が使いやすいケースも
Gravはその簡易性と軽さから、数ページでコンテンツが完成するサイトやサービスの簡単な紹介サイト、クリエイターのポートフォリオサイトなどに向いています。
そのため自社コンテンツがわずかなページ数・情報量で完成するとはじめから決まっている場合には、Gravの利用がおすすめされるでしょう。
一方で、ECサイトや会員登録を必要とするサイトなど、ある程度の機能が必要だったり将来的に規模の大きくなる可能性のあるサイトの場合には、Gravの機能だけではカバーしきれない可能性があります。
企業として大きなメディアサイトを運営する場合には、GravよりもWordPressの方が便利に使えるでしょう。
なんのためにWebサイトを作成するのか、どんなサイトを作るのかを明確にした上で、CMSツールを選ぶのがポイントです。
Gravの機能について
Gravは簡易性と拡張性が特徴となっていますが、CMSツールとしての機能も充実しています。
例えばCMSツールの基本とも言える下記のような機能は、標準で利用が可能です。
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記事の作成および並び替え機能
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サイト内検索機能
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問い合わせフォームの設置
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新着情報の表示機能
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カスタムフィールド機能
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サードパーティCSSフレームワークの使用
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SEO機能の強化
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簡単なバックアップと復元
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画像の自動キャッシュによるサイズ変更やトリミング機能 など
基本的な機能がそろっているので、特別な機能追加を行わなくてもある程度充実したWebサイトを作成できます。
もちろん必要に合わせてプラグインを追加していくことで、より想定通りのシステムを持つサイトを構築できるでしょう。
シンプルに機能がまとまっているCMSツールなので、Webサイト作りの入門としても需要があります。
企業のサービス・製品を簡単に紹介するサイトや、自社への連絡を促すための広告サイトなどを作成するのなら、まずGravで簡単に作ってイメージを分かりやすく形にしてみるのもおすすめです。
Gravの料金体系について
GravはオープンソースのCMSツールなので、インストールや利用に料金は発生しません。
とりあえずお試しで使ってみるということも可能なので、「無料利用可能」という点もメリットになるでしょう。
Gravでフラットファイルならではのメリットを利用する
Gravは、フラットファイルタイプの珍しいCMSツールです。
フラットファイルならではの軽さや使いやすさが魅力となっているので、現在使用しているCMSツールに不満がある場合には一度Gravを試してみてはいかがでしょうか。
サンプルページ、プラグイン、構成を含んだ「スケルトンパッケージ」も利用できるので、すぐにでもまとまったWebサイトを作成可能です。
スケルトンパッケージはこちらのページで確認できるので、Gravを利用する際にはWebサイト作りの参考になるようにチェックしてみてください。
また弊社イノーバでは、CMS選定やサイト制作支援を行っております。サイトリニューアルをお考えでCMS選びに迷っている、どんなサイトにすればいいか迷っているという方は、ぜひ、お問合せください。
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番外編:「フラットファイルCMSの歴史と種類」
フラットファイルCMSの誕生の背景
フラットファイルCMSは、従来のデータベース駆動型CMSの複雑さと、静的サイトジェネレーターの柔軟性のなさという2つの問題を解決するために生まれました。
データベースを使用せずにコンテンツを平文テキストファイルとして保存することで、システムをシンプルに保ちつつ、CMSとしての利便性も提供できるというコンセプトが、フラットファイルCMSを誕生させたのです。
初期の頃はMovable TypeやTextPatternなどが登場し、2000年代後半からはJekyllやMiddlemanなどの静的サイトジェネレーターも人気を集めました。しかし、CMSと静的サイトジェネレーターの間を埋めるソリューションとして、2010年代にフラットファイルCMSが本格的に広まっていきました。
Grav以外のフラットファイルCMS(Kirby、Statamic等)の特徴比較
Grav以外にも、いくつかの優れたフラットファイルCMSが存在します。それぞれに特徴があるので、プロジェクトの要件に合わせて選定することが重要です。
- Kirby(キルビー):
- PHP製。シンプルでエレガントなコードが特徴。
- 機能を絞り込んでいるため、軽量で学習コストが低い。
- 有料ライセンスだが、無期限で使用可能。
- Statamic:
- Laravel(PHPフレームワーク)ベースで作られている。
- アドオンやテーマが豊富で、カスタマイズ性が高い。
- 管理画面がモダンで洗練されている。
- 有料ライセンスだが、デベロッパーライセンスもあり。
- Pico:
- シンプル・簡潔がコンセプト。余計な機能を削ぎ落とした設計。
- 外部依存がほとんどなく、導入が非常に簡単。
- プラグインによる拡張が可能。
- オープンソースで無料。
- Bolt:
- オープンソースのPHP製CMS。
- コンテンツタイプや分類を柔軟に定義可能。
- バックエンドUIがモダンでユーザーフレンドリー。
- 活発なコミュニティによるサポート体制が手厚い。
上記のように、それぞれのフラットファイルCMSには得意分野があります。シンプルなWebサイトを素早く構築したい場合はPicoやKirby、高度なカスタマイズ性が必要な場合はStatamicやBoltが適しているでしょう。
フラットファイルCMSの今後の可能性
昨今の「Jamstack」(JavaScript、API、Markup)の流行により、フラットファイルCMSは再び脚光を浴びつつあります。
WordPressのような従来型CMSは、動的なページ生成とバックエンドのデータベース管理に伴うパフォーマンスやセキュリティの問題を抱えています。一方、HTML、CSS、JavaScriptを中心としたシンプルなフロントエンドに特化し、APIでコンテンツを配信するJamstackの考え方は、Webサイトの高速化とスケーラビリティ向上に寄与します。
フラットファイルCMSは、Jamstackと親和性が高く、ヘッドレスCMS(APIベースのCMS)としても活用できる柔軟性を持っています。今後は、フラットファイルCMSとヘッドレスCMSを組み合わせたWebサイト構築が主流になっていくと予想されます。
また、フラットファイルCMSはプログラミングの知識を必ずしも必要としないため、小規模なWebサイト制作やプロトタイピングにも適しています。気軽に使えるCMSとして、個人開発者やデザイナーにも選ばれていくでしょう。
シンプルさと柔軟性を兼ね備えたフラットファイルCMSは、Jamstackの時代にマッチしたシステムだと言えます。導入事例を重ねながら、さらなる進化を遂げていくことが期待されています。