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イノーバマーケティングチーム2024/03/26 9:57:233 min read

CRM導入の失敗事例から学ぶ、成功への7つのステップ

 

はじめに

近年、顧客との関係性を築き、ビジネスの成長を加速させる上で、CRM(顧客関係管理)システムの重要性が増しています。CRMを導入することで、営業活動の効率化、顧客満足度の向上、そしてマーケティングと営業の連携強化など、様々なメリットを得られるでしょう。

その一方で、CRM導入プロジェクトには多くの落とし穴が潜んでいるのも事実です。実際、CRM導入プロジェクトの失敗率は決して低くありません。明確な目的を持たずに導入を進めてしまったり、現場の要望を十分に汲み取れなかったりと、様々な要因が絡み合って、プロジェクトが頓挫してしまうケースがあるのです。

CRMは、単なるITツールの導入ではなく、業務プロセスの改革や、社内のチームワークなど、組織全体に関わる一大プロジェクト。その実現には、入念な準備と関係者全員の理解と協力が欠かせません。

しかし、そんな困難な道のりにも、乗り越えるための道しるべは存在します。それは、他社の失敗事例に学び、成功へのヒントを見出すこと。本記事では、数多くのCRM導入プロジェクトの失敗事例から、プロジェクトが頓挫する5つの理由を徹底的に解説します。そして、それらの落とし穴を避け、CRMの真価を引き出すための7つのステップを、具体的な方法論とともにお伝えします。

CRM導入の現状と課題

 

CRM市場の拡大と導入企業の増加

 

近年、デジタル化の進展とともに、顧客データを活用したマーケティングの重要性が高まっています。その中で、顧客管理システム(CRM)の導入が加速しています。実際、国内のCRM市場規模は2021年に前年比15.1%増の1,323億円に達し、2025年には2,692億円になると予測されています(出典:IDC Japan)。大手企業を中心に導入が進み、CRMは顧客との関係構築に欠かせないツールになりつつあります。

 

高い失敗率の実態

 

しかし、その一方でCRM導入プロジェクトの失敗率の高さも指摘されています。ガートナー社の調査によると、CRM導入プロジェクトの失敗率は50%にのぼるといいます。せっかく多額の投資をしても、期待した効果を得られないケースが少なくありません。その背景には、目的の不明確さ、現場のニーズとの乖離、業務プロセスの見直し不足、利用者の巻き込み不足、データ管理体制の不備など、様々な要因があります。

 

CRMを導入すれば顧客管理や営業活動が自動的に改善すると考えるのは早計です。CRM導入を成功させるには、しっかりとした準備と、関係者全員の巻き込みが欠かせません。本記事では、CRM導入の失敗事例から学ぶべき教訓を整理し、成功に導く7つのステップを具体的に解説します。

 

CRM導入が失敗する5つの理由

 

1. 目的と目標の不明確さ

 

失敗事例:目的を見失った大手メーカーのケース

 

このメーカーでは、CRM導入の目的が「営業の生産性向上」という抽象的な表現に留まっていました。具体的にどの業務をどのように改善するのか、数値目標も設定されていませんでした。

結果、営業現場では、

CRMを使っても業務プロセスが変わらず、従来のやり方が踏襲された

・システムの入力が業務の付加となり、現場の負荷が増大した

・得られたデータを営業活動に有効活用できなかった

など、CRMの意義が十分に浸透せず、形骸化が進んでしまったのです。

曖昧な目的設定が、現場の目的達成へのコミットメント不足を招き、CRM活用が表面的なものに終始した典型例といえます。

 

教訓:目的明確化のためのワークショップの重要性

 

CRMの導入目的を曖昧にしたまま進めると、この事例のように失敗のリスクが高まります。目的を関係者全員で共有し、明文化するためのワークショップを導入前に開催しましょう。経営課題に基づいて導入の目的を議論し、解決したい課題を洗い出します。そこから、具体的な目標と評価指標(KPI)を設定します。曖昧な目的設定がプロジェクト失敗の第一歩だということを肝に銘じるべきです。

 

2. 現場のニーズと乖離したシステム選定

 

失敗事例:営業現場で使われない高機能CRMを導入した商社

 

この商社のCRM選定の失敗要因は、現場の意見を聞かずに、ITベンダー任せで高機能なシステムを選んでしまったことにあります。営業担当者へのヒアリングやシステムのトライアル利用もなく、経営層とITベンダーのみで選定が進められました。

その結果、

・現場の営業プロセスに即していない画面構成で使い勝手が悪く、習熟に時間がかかった

・必要のない機能が多数あり、かえって利便性を損ねた

・スマートフォンでの利用を考慮しておらず、外回り先からのアクセスが不便だった

など、営業現場にそぐわないシステムが出来上がってしまいました。

まさに「絵に描いた餅」のような高機能CRMは、現場での受け入れられず、導入も進みませんでした。

 

教訓:要件定義におけるエンドユーザー参加の必要性

 

CRMを実際に使うのは現場の営業担当者です。彼らの日々の営業活動を最もよく知っているのは彼ら自身であり、システム選定にも関わるべき重要なステークホルダーです。要件定義の段階から営業担当者を巻き込み、現場の意見を十分に吸い上げましょう。

 

加えて、現場の声を代弁できるキーユーザーを選定するのも効果的です。彼らには、営業現場の課題や要望をシステム側に的確に伝え、新しいシステムへの現場の理解と協力を促すという重要な役割が期待されます。営業部門と密に連携しながら、現場視点でのシステム要件をまとめ、ベンダー選定につなげましょう。

 

3. 業務プロセスの見直し不足

 

失敗事例:既存プロセスをそのまま移行した中堅企業の事例

 

この企業のCRM導入では、業務プロセス改革の必要性が十分に認識されていませんでした。

CRMを既存の業務プロセスに単に上乗せしただけに終わってしまったのです。

その弊害として、

・非効率な業務フローがシステム化されてしまい、生産性が向上しなかった

・他部署との連携業務のプロセスが整理されておらず、社内の協働が進まなかった

・属人的な営業スタイルがシステム上でも温存され、ナレッジの共有が進まなかった

など、CRM導入だけでは解決できない構造的な問題が表面化しました。

本来なら、CRMを入り口に、業務プロセスの抜本的な見直しと最適化を図るべきでしたが、そこに至らなかったのが敗因です。

 

教訓:CRM導入を機に業務フローを最適化するチャンス

 

会社によっては、長年にわたり変わらない古い業務プロセスが温存されているケースがあります。 CRMの導入は、そうした古い業務プロセスを見直し、本来あるべき姿に最適化する絶好の機会です。

 

例えば、非効率な業務をゼロベースで見直し、ムダな作業をなくす。システム化の視点から業務プロセスを整理統合する。CRMと連携するために別システムのデータをクレンジングする。これらの地道な取り組みこそ、CRMの効果を最大限引き出すカギとなります。業務プロセスの最適化には多大な労力が必要ですが、CRM導入と並行して取り組む価値は十分にあるのです。

 

4. 利用者の巻き込み不足とトレーニング不備

 

失敗事例:マニュアル配布のみで社内浸透に失敗した小売企業

 

CRM導入にあたって、この企業は利用者教育を完全に軽視していました。

トップダウンでCRMを導入したものの、現場への説明は「マニュアルを読んで」の一言だけ。導入の狙いも運用ルールも、周知されないままでした。

加えて、システムの操作指導も管理者任せで、体系的なトレーニング機会は設けられませんでした。

結果、現場では、

CRMの使い方がわからず、放置する営業担当者が続出した

・システムへの入力が業務外の余計な作業と受け止められ、社内の不満が募った

・属人的な営業スタイルから脱却できず、ナレッジの共有やチームでの顧客対応は進まなかった

など、社内浸透は程遠い状況に。せっかくのCRM導入も、絵に描いた餅に終わってしまったのです。

CRMは単なるITシステムではなく、営業のやり方そのものを変える基盤です。

それを利用者に理解してもらい、実践で使いこなす力を身につけてもらうための教育は、導入の成否を握る重要な鍵なのです。

 

教訓:キーユーザー選定とトレーニング・伴走支援の重要性

 

CRMを使いこなすのは現場の利用者です。新しいシステムを習得するためには、十分な教育と訓練の機会が必要不可欠です。操作方法のレクチャーだけでなく、現場の業務にCRMをどのように組み込むかという点にも踏み込んだ実践的なトレーニングが求められます。

 

また、各部門のキーユーザーを巻き込むのも効果的な方法です。早い段階からプロジェクトに参加してもらい、利用者目線で導入計画を練ります。他の利用者への教育や支援の役割も担ってもらいます。こうすることで、CRMは現場に確実に浸透し、導入効果が最大化されるのです。

 

5. データ管理体制の不備

 

失敗事例:データ入力ルールがなく、システムが形骸化した事例

 

このケースでは、CRMにデータを入力するルールが皆無でした。

営業担当者に任された結果、

・顧客情報の入力項目や粒度がバラバラで、データの網羅性を欠いた

・商談情報の入力が後回しにされ、リアルタイムの案件状況が把握できなかった

・メモ欄が自由記述で活用されず、経緯や応対履歴の詳細が不明瞭だった

など、基幹データの品質は著しく低かったのです。

そのような状況では、営業活動の分析はおろか、日々の業務の遂行すら満足にできません。

CRMの存在意義が問われかねない事態に陥ってしまったのです。

こうした事態を招いた背景には、営業とシステム部門の連携不足、現場でのデータ活用方法の認識不足など、組織的な課題も見え隠れします。

データ入力は面倒な作業ですが、その積み重ねがCRMを価値あるものにするのだという意識を、全社で共有する必要があったのです。

 

教訓:データガバナンスの構築とデータ活用への道筋

 

CRM導入の目的の一つは、顧客データの一元管理とその活用です。しかし、単にシステムを導入すれば自動的にデータが集まると考えるのは早計です。データ入力は人の手で行われるため、ルールを設けて統制する必要があります。

 

CRM導入にあたっては、データ管理体制、いわゆる「データガバナンス」の構築が欠かせません。具体的には、入力項目や頻度のルール化、データフォーマットの統一、入力率の監視、データクレンジングの定期実施などです。こうしたルールの設定とその遵守によって、はじめて顧客データの有効活用が可能になるのです。

 

また、集めたデータをどのように顧客理解や営業活動に活用するのか、具体的な活用方法を示すことも重要です。データ活用の道筋が見えていれば、利用者のシステムへの入力モチベーションも上がるはずです。

 

CRM導入時には、入力から活用までデータのライフサイクル全体を見渡した管理体制の設計が必要不可欠です。データガバナンスの欠如はCRMの効果を大きく損ねる要因であることを認識しておきましょう。

 

以上、CRM導入が失敗する代表的な5つの理由を見てきました。いずれも重大な落とし穴であり、プロジェクトを頓挫させる深刻なリスク要因です。 では、こうした失敗を回避しCRM導入を成功させるには、どのような準備や工夫が必要なのでしょうか。次節では、7つのステップに分けてCRM導入の勘所をお伝えします。

 

CRM導入プロジェクトを成功に導く7つのステップ

 

Step 1: 経営課題の明確化とCRM導入目的の設定

 

効果的な目的設定のためのワークショップの進め方

 

前節で触れた通り、CRM導入の目的を明確にすることは極めて重要です。そのためには、CRM導入の背景にある経営課題を関係者全員で共有することが大切です。導入プロジェクトの立ち上げ時に、経営陣、営業部門、マーケティング部門、情報システム部門などの関係者を集めたワークショップを開催し、CRM導入の目的と目指すべきゴールについて議論を重ねましょう。

 

ワークショップでは、まず会社の中期経営計画における位置づけを確認します。そこから、顧客戦略の実現に向けた課題を洗い出します。顧客との関係構築や営業活動の中で、どのような問題や非効率が発生しているのかを議論し、優先順位をつけて整理します。そして、CRMを導入することでどの課題をどう解決するのか、解決後の理想的な状態はどういったものかをイメージします。

 

こうした議論を経て、最終的に目的とゴールを明文化します。同時に評価指標(KPI)も設定します。例えば、「営業の生産性を20%高め、一人あたり売上を150万円アップさせる」「見込み客の育成により、リードから受注までの期間を平均10%短縮する」など、具体的な数値目標を示すことが肝要です。この目的とKPIを起点に、CRM導入の要求事項が定義されていくことになります。

 

曖昧な目的設定は、システム機能過多やスコープの拡大を招き、プロジェクトを迷走させる危険性があります。CRM導入の羅針盤となる明確な目的・目標設定は、まさにプロジェクト成功の要諦といえるでしょう。

 

Step 2: 現場を巻き込んだ要件定義

 

エンドユーザーインタビューや観察の重要性

 

前述の通りCRMを実際に使うのは現場の営業担当者です。現場の巻き込みなしに要件を定義しても、使い勝手の悪いシステムになってしまうリスクが高まります。営業担当者へのインタビューや営業活動の観察を通じて、現場の意見を十分に吸い上げることが肝要です。

 

具体的には、インタビューでは普段の営業活動の進め方や顧客管理の実態を聞き取ります。システム化によって解決したい課題や、CRMに期待する効果についても率直に語ってもらいます。一方、観察では営業担当者に張り付いて行動を記録し、営業プロセスや顧客対応の流れを可視化します。

 

こうしたインタビューや観察を通じて、現場の生の要望を汲み取ることができます。これを基に業務要件やシステム要件を固めていきます。ユーザーの代表であるキーユーザーにも要件定義の議論に加わってもらい、営業部門の意見を集約・反映させていくことが重要です。

 

利用者の意見を反映させることで、現場に無理なく受け入れられ、使い続けられるCRMの実現が可能になるのです。

 

Step 3: 自社に最適なCRMの比較検討

 

比較検討時に確認するべき5つのポイント

 

CRMシステムと一口に言っても、提供される機能や特長は実に様々です。予算規模や導入目的、導入済みシステムとの連携可否など、自社に最適な製品を見極める必要があります。CRM選定時には、以下の5点を必ずチェックしておきましょう。

 

  1. 必要十分な機能の提供:不要な機能は利用を妨げる要因にしかならない
  2. 直感的な操作性:利便性を重視し、利用者の習熟負荷をミニマムに
  3. 柔軟なカスタマイズ性:自社の営業プロセスに合わせた柔軟な設定変更が可能か
  4. 他システムとの連携性:基幹システムやMAツールなど、他の社内システムとのデータ連携がしやすいか
  5. ベンダーの導入支援力:初期設定から運用まで、手厚いサポート体制が整っているか

 

これらのポイントを押さえつつ、複数のCRMを比較検討しましょう。キーユーザーを中心に、デモンストレーションを実施し、操作感や機能の充足度を確認します。TCO(総保有コスト)の視点からコスト試算も行い、費用対効果を見極めることも重要です。

 

自社のニーズを満たし、現場に受け入れられるCRMを選ぶことが、プロジェクト成功の大前提となります。安易な選定は厳に慎み、関係各所を巻き込んだ慎重な議論を重ねることが肝要です。

 

Step 4: CRM導入に合わせた業務プロセスの再設計

 

業務フロー見直しのコツと抵抗への対処法

 

CRM導入を機に、営業の業務フローを現場目線で見直すことが重要だと述べました。非効率な作業をなくし、顧客対応力を高めるためには、現行の業務プロセスの可視化と、あるべき姿の定義が欠かせません。

 

まずは現状の業務プロセスを可視化します。誰が、いつ、何を、どのように行っているのかを「見える化」するのです。ここではビジネスプロセスモデリング(BPM)の手法を用いるのが有効です。現場の営業担当者へのインタビューやワークショップを通じて、現状の業務内容や作業手順を洗い出し、フロー図として図式化します。

 

次に、理想的な業務プロセスを設計します。現行プロセスのどこにムダや非効率があるのかを分析し、解決策を検討します。業務のスリム化、システム化、自動化などにより、付加価値の低い作業を減らし、営業活動や顧客対応に注力できる体制を目指します。その際、CRMを最大限活用する視点を常に意識します。CRMによってどの業務がどう改善されるのか、具体的にイメージしながら理想の業務フローを描くことが重要です。

 

ただ、いくら良いプロセスを設計しても、現場の抵抗があっては絵に描いた餅に終わります。新しいやり方への不安や、変化を嫌う心理はどこの組織にもあるものです。丁寧な説明とコミュニケーションを重ね、現場の納得感を得ることが何より大切です。移行期には混乱も予想されますが、トップのリーダーシップとキーユーザーのサポートで乗り越えましょう。

 

業務プロセスの再設計には多大な労力を要しますが、CRMの真価を発揮するためには避けては通れません。二度手間を恐れず、改革に着手することが成功への近道なのです。

 

Step 5: 段階的な導入とキーユーザー育成

 

部門別、機能別の段階的導入の進め方

 

CRMを全社一斉に導入するのはリスクが高く、混乱を招く恐れがあります。段階的な導入によって、徐々に運用体制を整えていくことが肝要です。まずはCRMの効果が大きく、関心の高い部門から導入するのがおすすめです。

 

例えば、CRMによる営業支援への期待が大きい営業部門が最初の導入対象になることが一般的です。営業部門でCRMを使いこなすノウハウを蓄積し、徐々に他部門に展開していく方法です。あるいは、マーケティング部門からスタートし、見込み客の育成やキャンペーン管理にCRMを活用する戦略もあります。いずれの場合も、導入初期は機能を限定し、利用部門の習熟度に合わせて徐々に利用範囲を広げていくことが重要です。

 

また、各部門のキーユーザーを早期に選定し、育成することも肝要です。CRMの企画段階から関わってもらい、導入後は現場の先導役として活躍してもらいます。自部門の業務とCRMの使い方に精通したキーユーザーが各部門に存在することで、システムは確実に浸透していくのです。

 

Step 6: 導入初期の手厚いサポートとトレーニング

 

クイックウィンにつなげるトレーニングと伴走支援のあり方

 

CRMを定着させ、早期に成果を出すには、導入初期の手厚いサポートが欠かせません。操作方法をマスターするだけでなく、どのように業務で使いこなすかまで理解してもらう必要があります。そのためには、座学だけでなく、ロールプレイングなどの参加型トレーニングを組み合わせるのが効果的です。

 

個別指導にも力を入れましょう。利用開始直後は、利用者一人ひとりに寄り添った伴走支援が重要です。操作で躓いたり、うまく使えない場合は、すぐにフォローする体制を整えます。特にキーユーザーへの教育は念入りに行い、自部門のサポート役として機能してもらえるようにします。

 

さらに、導入後の早い段階でCRMの成功事例を生み出すことも重要なポイントです。いわゆるクイックウィンの実現です。例えば、CRMを活用して大口案件を受注した営業担当者を表彰したり、CRMのデータを基に効果的なキャンペーンを実施したりと、目に見える形で成果を示すのです。こうした小さな成功体験の積み重ねが、組織へのCRMの浸透を促し、本格的な活用へとつながっていくのです。

 

Step 7: 定着化に向けたデータマネジメントとPDCA

 

データ品質を高める管理ルールと活用プロセス

 

CRMを継続的に活用し、効果を引き出し続けるには、データマネジメントの仕組みづくりとPDCAサイクルの確立が不可欠です。とりわけ、顧客データの品質を高め、有効に活用する体制の整備が重要なポイントとなります。

 

まずは、データ品質を高めるためのルールを設定します。具体的には、データ入力の項目、タイミング、フォーマットなどを標準化し、徹底します。加えて、定期的なデータクレンジングの実施、入力率の監視、データ活用状況の可視化など、継続的にデータ品質を担保する仕組みを整えます。

 

そして、蓄積した顧客データを分析し、施策立案に活かすプロセスを確立します。単なるデータの集積所ではなく、CRMをマーケティングや営業戦略の司令塔として機能させるのです。データ分析チームを設置し、CRMデータとその他社内外データを組み合わせた高度分析を推進します。得られた顧客インサイトを経営や現場にフィードバックし、施策の立案と実行、検証と改善のサイクル(PDCA)を回していきます。

 

こうしたデータ主導のマネジメントサイクルを組織に根付かせることで、CRMは企業の業務プロセスと一体化し、事業の成長エンジンとして機能し始めます。単なるシステムの導入に留まらない、継続的な改善活動としてCRMを位置づけることが、真の定着と成功への鍵を握るのです。

 

CRM導入の成功企業に学ぶ

 

CRMの導入・活用で目覚ましい成果を上げている先進企業の事例を2つご紹介します。

 

ケーススタディ1CRMで営業改革を実現した老舗メーカーA

 

CRM活用の具体的なシーン・工夫

 

老舗メーカーA社は、長年の課題だった営業の属人化と非効率を解消するべく、CRMを全社に導入しました。まず、CRM上で商談の進捗管理を徹底。訪問記録や顧客の反応、次のアクションを営業担当者が漏れなく入力し、可視化を図りました。訪問後はスピーディなフォローを心がけ、CRMから顧客への対応履歴を Social

情報と併せて分析。担当者は最適なタイミングでの的確なフォローを実現しています。こうした属人的ノウハウのシステム化により、顧客対応品質は飛躍的に向上。受注率は2割増、売上高は3割増を記録しました。

 

加えて、CRMデータから導き出した顧客インサイトを営業戦略に活用。例えば、購買履歴や問い合わせ内容の分析から、利用シーンや抱える課題をより深く理解。これまで見過ごされていたニーズを捉えた新商品の投入や、課題解決型の提案営業を展開しています。顧客志向の営業スタイルへの変革が、着実に成果に結びついているのです。

 

ケーススタディ2MACRMの連携で顧客体験を向上させた地方銀行B

 

マーケティングとセールスの融合をCRMで進めた秘訣

 

地銀B社は、MAツールとCRMを連携させ、マーケティングと営業の融合による顧客体験の向上を実現しました。MAツールで見込み客の行動履歴を取得し、CRMにリアルタイムで連携。営業担当者は顧客の関心事項を踏まえたアプローチが可能になりました。

 

興味を示した商品の提案はもちろん、各種セミナーや相談会への参加履歴も CRMに集約。金融をテーマにしたセミナーに頻繁に参加していれば、投資への関心の高まりを見逃さず、適切な金融商品を提案するといった具合です。こうしたMACRMの連携を通じたリアルタイムマーケティングにより、的確なタイミングでの能動的な提案が可能に。 顧客の喜ぶ価値提供を実現し、預り資産は2年で1.5倍に拡大しました。

 

B社の成功の背景には、CRMを中核に据えたマーケティング・営業部門の強力なタッグがあります。両部門が一体となって顧客データを分析・活用する体制を構築。MAツールとCRMを介したデータ連携とともに、定例会議での情報共有や協働施策の立案など、部門の垣根を越えた取り組みを実践しています。ツールありきではない、真のOne to Oneマーケティングを追求する同社の姿勢は、CRMを入り口に組織や企業文化をも変革する好例といえるでしょう。

 

さいごに

 

CRMプロジェクトの勘所は「準備」と「巻き込み」

 

本記事で解説した通り、CRMプロジェクトの成否を分けるのは「準備」と「巻き込み」に尽きます。導入前の入念な準備と、全社的な巻き込みがあってこそ、CRMの真価が発揮されるのです。

 

経営課題や現場の要望をしっかりと見極め、自社に本当に必要なCRMを選ぶ。関係者の意見を丁寧に吸い上げ、実態にマッチした業務プロセスを設計する。キーユーザーを軸に社内の協力体制を固め、着実にシステムを浸透させる。こうした地道な取り組みの積み重ねが、立派なCRMの土台を築いていくのです。

 

失敗から学び、PDCAを回して成功体験を積み重ねよう

 

一方で、いくら周到に準備しても、多かれ少なかれ試行錯誤は避けられません。むしろ、失敗を恐れるあまりスモールスタートを心がけ過ぎるのは禁物です。まずは小さく始めて、PDCAを回しながら徐々に理想の形へと昇華させていく。そうした柔軟な姿勢と実直な積み重ねが、CRM定着への最短ルートとなるでしょう。

 

失敗を恐れず、スモールサクセスを重ねる中で、CRMと自社の業務がフィットする最適解を探っていく。時間はかかるかもしれませんが、そこで得られる学びと成功体験は、会社の大きな財産になるはずです。プロジェクトで避けられないつまずきも、粘り強く乗り越える中で、CRMは名実ともに「顧客との絆を育む強い味方」へと進化を遂げるのです。

 

CRMの導入は、スタートラインに立つことを意味します。アフターコロナを見据えた攻めのデジタル戦略として、CRMを企業変革の起爆剤と位置付け、トライ&エラーを厭わない果敢なチャレンジを期待したいと思います。

 

CRMの導入・活用においては、業界に精通した専門家のサポートが成功への近道となります。

イノーバは、BtoBマーケティングに特化した支援実績と知見を活かし、お客様の事業課題や組織特性に応じた最適なCRMの構築と活用をご提案します。

CRM導入後も、着実な成果創出へと導くためにBtoBマーケティング伴走型支援サービスを提供しています。イノーバとともに、CRMを企業変革の起爆剤として活用する取り組みを始めてみませんか。

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株式会社イノーバの「イノーバマーケティングチーム」は、多様なバックグラウンドを持つメンバーにより編成されています。マーケティングの最前線で蓄積された知識と経験を生かし、読者に価値ある洞察と具体的な戦略を提供します。