ブランドは成長・変化する-「リブランディング」について理解しよう

経営・ビジネスハック

企業の販売活動を有利に進める上で、強い武器となるブランディング。しかし、ブランドは「一度確立させてしまえばそれで終わり」というものではありません。

この記事ではブランドの再構築、すなわち「リブランディング」について、基本的な事柄を解説します。

 

リブランディングとは

リブランディングはブランディング(Branding)に「再び」を表す接頭辞の「Re-」を付加した言葉です。和英辞典には「商標変更」と言う語意が紹介されていますが、マーケティングの文脈では「ブランド再生」「ブランドの再構築」といった意味合いで用いられることが多いといえます。

「ブランド」とは、簡単に言えば、ある商品を別の商品から識別するための一連の要素の組み合わせです。ブランドを市場に根付かせるためには、市場における製品のポジションを明確にした上で、それを消費者に認識してもらうために商品名やロゴ、パッケージデザイン等を組み合わせてブランドのコンセプトを表現します。
このようにして打ち出されたブランドが消費者に受け入れられるとその製品は対象市場において有利な立ち位置を獲得し、宣伝広告費の削減やリピート率の向上、ロイヤリティの高い顧客の獲得といった様々なメリットを享受できるようになります。

しかし、一度ブランドを市場に根付かせればそれで終わりかというと、そういうわけではありません。なぜなら、市場の状況は時々刻々と変化し、顧客の心理状態も時とともに移り変わっていくからです。

こうした市場や顧客の変化に応じてブランドの在り方を見直し、その時々に合った形に再構築するのがリブランディングの目的です。

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リブランディングはいつ行うのか?

リブランディングはその名の通り、既にあるブランドを再構築するという活動です。このため、新規にブランドを立ち上げるのに比べてコストやリソースが抑えられる傾向にありますが、既存のイメージを刷新することに伴う難しさもつきまといます。

リブランディングを行うタイミングとしては、次のような状況が考えられるでしょう。

ブランドを展開してみたが、今ひとつ成果が上がらない

新規にブランドを立ち上げてはみたものの、ターゲット市場から好ましい反応が得られない場合、ブランドコンセプトを見直すことでテコ入れができることがあります。ただし、ブランドが市場に根付くまでには長い時間がかかるのが普通です。単に売上が上がらないから、といった局所的な理由ですぐにNGを出すのではなく、あらかじめ定めた指標を観察しつつ、中長期的な視野で判断する姿勢が大切です。

これまでうまくいっていたブランドが、ある時期から低迷しはじめた

対象市場でそれなりにうまく機能していたブランドが、ある時期を境に低迷し始めることがあります。景気の低迷や競合製品の登場、ターゲット顧客のライフスタイルの変化など様々な原因が考えられますが、いずれにしてもこのような場合は、現在の市場の状況を踏まえてブランドコンセプトの見直しを行う必要があります。

たとえば、対象市場に競合製品が増えたことによりブランドの特異性がぼやけてしまったのであれば、競合と差別化するためのポイントを見つけ出し、それを顧客に伝えられるようにリブランディングを行います。

ある市場で展開していたブランドを別の市場に投入する

既にある市場でうまく機能しているブランドを、別の市場に投入する場合にもリブランディングを行います。たとえば、二十代女性向けのダイエット食品のブランドを四十代男性の市場に投入するような場合、パッケージや商品名、キャッチフレーズなどをターゲットにあわせて調整することで、より受け入れられやすくなります。

 

リブランディングでは何を行うのか?

リブランディングではブランドロゴや商品名、パッケージ、ブランドスローガンなどの変更を行います。といっても、単なる思いつきでロゴや商品名を付け替えるだけでは、リブランディングの成果を上げることはできません。

ブランドは企業経営の根幹に深く関わる要素です。特に、ブランドと企業名が強く結びついているようなケースにおいては、リブランディングは慎重に行わなくてはなりません。リブランディングによって既存の顧客が離反してしまったり、企業イメージがダウンしてしまったりしては元も子もありません。

このため、リブランディングを行う際には対象となるブランドの市場における評価を正しく把握し、ブランドが抱える課題を抽出した上で、この先進んでいくべき新たな方向性を決定する必要があります。方向性を決定し、新たなブランドコンセプトを明確化した上で、コンセプトに基づいてロゴやパッケージ、商品名、パンフレットなどの個々の要素を見直していく…というのがリブランディングの基本的な流れとなるでしょう。

 

リブランディングの事例

リブランディングの目的は、既存のブランドを見直すことによって「より効果的なブランド」に生まれ変わらせることにあります。したがって、リブランディングを行った結果、却って売上が落ちてしまった…というような事態に陥るのはなんとしても避けたいところです。

とはいえ、現実的にはリブランディングに失敗してしまうことも少なくありません。基本を守りつつ他社事例なども参考にして、リブランディングに伴うリスクを抑えるよう心がけましょう。

以下、リブランディングの事例をいくつかご紹介します。

湖池屋

ポテトチップスやポリンキーなどのスナック菓子で有名な湖池屋は、2016年に「総合スナックメーカー・湖池屋リブランディング」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは既存のポテトチップスに加えて「KOIKEA PRIDE POTATO」のラインを新たに投入しました。シンプルでありながら高級感あるパッケージやこだわりを感じさせるフレーバー等で人気を呼び、発売直後には品切れ状態となる程の話題を呼んだといいます。

ヤンマー

「僕の名前はヤン坊、僕の名前はマー坊」のCMソングで知られるヤンマーは、2013年の創業100週年を契機にステップアップするため、リブランディングプロジェクトに取り組みました。

次の100年に向けてヤンマーのブランドをグローバル市場に打ち出していくため「ヤンマーといえばヤン坊・マー坊」のイメージから脱却し、デザインやクリエイティブの力でプレミアムなイメージを表現しました。

かっぱ寿司

カッパ・クリエイト株式会社が展開する「かっぱ寿司」では、回転寿司のリーディングカンパニーとしてのポジションを再び奪取するため、2016年10月にリブランディングに着手しました。「安心してたくさんお寿司を楽しんでもらいたい」「ネタの新鮮ドに対する自信」「価格は安くとも商品・サービスにはこだわりがある」といった思いを表現するために新しいロゴをデザインし、全国330店舗の看板を刷新するなどの大掛かりな変更が行われました。

コカ・コーラの『ニュー・コーク騒動』

少々古い事例ですが、リブランディングの失敗事例としてよく知られているのがコカ・コーラ社の『ニュー・コーク騒動』です。

競合ペプシ・コーラの登場により15年に渡って横ばいの売上を記録していたコカ・コーラ社が、1985年にコカ・コーラの味を変更すると発表し、消費者からの猛反発を受けました。

コカ・コーラ社としては味の変更によりテコ入れをし、コカ・コーラブランドとコーラ市場に活気を取り戻す狙いがあったようですが、この試みは失敗し、わずか79日後に元のコカ・コーラが市場に再導入されました。

失敗の最大の要因は従来のコカ・コーラの味を愛する消費者感情を読み切れなかったことですが、これにより消費者の「コカ・コーラ愛」に気付けたことは、同社にとっての大きな学びとなったことでしょう。

 

リブランディングは新規ブランド立ち上げ以上に慎重に

以上、この記事ではリブランディングの基礎を解説し、成功事例・失敗事例をご紹介しました。

既に確立したブランドの再構築は新規ブランドの立ち上げに比べてコストやリソースが少なくて済むと言われていますが、その一方で気を配る点については、むしろリブランディングの方が多いといえるかもしれません。

これからリブランディングに取り組まれる方は、ぜひその点を理解した上で、慎重にプロジェクトを進めるよう心がけてください。

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