「CMO」とは? <マーケティング用語解説>

コンテンツマーケティング

欧米においてCMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)という役職が存在感を増しています。事実、アメリカのビジネス誌Fortuneが選ぶトップ企業500社の最新データ(2015年)によると、500社のうち約3割がCMOのポストを設けているようです。いかにマーケティングが、事業や経営戦略に欠かせない重要な役割を担っているかを指し示すデータだといえるでしょう。

一方、経済産業省の調べでは、日本の時価総額上位300社において、CMOを任命している企業の割合は0.3%しかありません。欧米と日本でこのように大きな差が生じているのはなぜでしょうか。

本稿では、CMOが求められるようになった背景を探るとともに、日本と欧米で状況が異なっている要因、そして今後CMOに期待される役割を考えます。

CMOの定義

神岡太郎氏(現・一橋大学商学研究科教授)らの著作「CMOマーケティング最高責任者」によると、CMOとは「企業におけるマーケティングの最高責任者(あるいはそのポジション)」のこと。

「企業のマーケティング活動そのものに責任を持つだけでなく、経営チーム(役員)の一員として、マーケティングの視点から組織全体の方向性や戦略立案に携わることが求められる」と定義されています。

CMOが果たす役割

それでは、CMOに期待される役割とは何なのでしょうか。5つの異なる相手に対する役割をみていきましょう。

1.マーケティング部門に対する役割

日本企業は「現場主義」が強いという特徴があります。マーケティング活動においても、それぞれの現場が独立に判断し、その範囲内において最適だと思われる行動をとってしまうことがあるようです。その結果は、企業やブランド全体としての統一性がない、という残念な事態を招くことにつながりかねません。

この悪循環を是正することがCMO には求められます。具体的には、人、モノ、資金、情報・知識、ブランドといった企業の資源を最適に使うために、マーケティング戦略の立案からその実行まで、マーケティング機能を統合するリーダーとなるのです。

2.経営に対する役割

マーケティング部門が取り扱う「ブランド」は、企業価値の最も重要な要素です。そのため、経営の意思決定をマーケティングに反映したり、マーケティングの視点を経営に織り込んだりするといった「経営との融合」が本来的には求められます。

しかし、前述したようなマーケティング戦略と現場活動の不統一感などにより、経営層にとってマーケティングはブラックボックスであるとみなされることも。CMOは、マーケティングの戦略や活動の透明性を高めるといった説明責任を担い、経営戦略をマーケティング戦略に反映していくことが求められます。

3.他部門に対する役割

顧客や市場との関係を中心に利益の仕組みを考えるカスタマーセントリック(顧客中心主義)の浸透により、顧客や市場とのコミュニケーションの窓口となるマーケティング部門は、社内における重要性が増しているといえます。顧客へ提供する価値を最大化するために、商品開発や人事、ITといった他部門と連携する、その旗振り役になることがCMOに求められるのです。

4.社員に対する役割

顧客との関係性やブランドの重要性について正しく理解し、日々の業務に反映していく必要があるのは、マーケティング部門の人間に限った話ではありません。

ブランドへの理解、企業文化への理解、企業アイデンティティへの認識を全社員間で統一するために、社内でのコミュニケーションを醸成していく中心的な役割もCMOに期待されています。

5.社外に対する役割

CMOは「企業のマーケティングの顔」として、対外的にもイニシアチブをとっていくことが求められます。PR会社、事業パートナー企業、競合他社、株主といったさまざまなステークホルダーと一貫性のあるコミュニケーションをするために、現場でバラバラに対応していたやり取りをCMOに集約し、統一性をもって対話していくことが重要です。

  • 参考:CMO マーケティング最高責任者(神岡太郎/ベリングポイント戦略グループ著、ダイヤモンド社)

日本にCMOが浸透しない理由

多くの役割を担うべきCMOが日本には未だ少数しかいない背景には、日本のものづくり神話に代表される「いいものを作れば自然と売れる」という考え方が根底にあるといえます。

すなわち、「あくまでも製品やサービスそのものが価値の中心で、マーケティング部門はそれを広く伝えることが使命である。製品にすでに価値があるのだから、伝え方や向き合い方に工夫などいらない」という考え方が、CMOの存在を軽視していることにつながっているのです。

また、マーケティング部門の業務が広告・宣伝に限定されていたり、営業部門から依頼された市場調査をこなしたりするだけになっているなど、受動的な役回りに終始している企業が多いことも要因の1つといえるでしょう。

こうした風土を変えていくことが、CMOが日本に根付いていくためには必要不可欠です。

デジタル時代のCMOに求められる資質

それでは、今後増えることが期待される日本のCMOのポストには、どのような人材がマッチするでしょうか。また、CMOにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。

アメリカのContent Marketing Instituteの記事をもとに、5つの備えるべき資質をみてみましょう。

1.データサイエンティストであれ

CRM(Customer Relationship Management)やBI(Business Intelligence)ツールの発達により、マーケティングに必要なデータを集めることは容易になりました。それらを有効に活用するには、マーケターやCMOがデータに対するアレルギーを持たないことがとても重要です。実際に、VolvoのCMOであるTassos Panas氏はデータを駆使したフィードバックシステムを構築し、積極的に活用しているのだとか。

本職のデータサイエンティストほどの高度な解析技術は不要であるものの、データに対するリテラシーはある程度持ち合わせることが求められているといえるでしょう。

2.起業家精神を持て

起業家精神とは「アイデアをビジネスに転換する力」「時間や人的・物的リソースを最大限活用する力」「パフォーマンスの高いチームを作り上げる力」「顧客と良好な関係を築く力」などが挙げられます。

これらは、そのままCMOに求められる素養です。マーケティング部門のパフォーマンスを向上させ、顧客の声に耳を傾け、その声を営業部門や商品開発部門へ届けることで、イノベーションの促進を後押しする。こうしたサイクルを回していくことが、CMOには求められるのです。

3.ソーシャルメディアに精通せよ

デジタルメディアの浸透により、SNS上での製品やサービスに対するコメントは増殖し続けています。これらの声をリアルタイムに拾い集め、ビジネスに活かしていくために策を講じることもCMOの役割です。欧米ではCSO(Chief Social Officer)という役職もうまれているようですが、日本では当分の間この役割をCMOが果たすことが期待されるでしょう。

4.リサーチャーであれ

CMOは、カスタマー・エクスペリエンス*をふかんして捉えることが大切です。部分ではなく全体を見てサイクルの改善を図っていくプロセスは、リサーチのプロフェッショナルが常に行っていることと似ています。

プロのリサーチャーは膨大な量の顧客情報をうまく処理し、顧客はなぜこのように行動したのかといった意味を見出すことが得意です。「顧客の振る舞い」と「実際の行動」の間のギャップを埋め、そこから次につながる意味を見出せるように、CMOはリサーチャーのメソッドから学ぶ必要があるといえます。

*顧客が商品・サービスとの最初の接触から、購入・利用後のサポートに至るまでの経験を通じて感じる価値。および、企業がその経験全体を通じて顧客満足を実現するアプローチ。

5.カスタマー・エクスペリエンスのプロであれ

カスタマー・エクスペリエンスに対する貢献は、CMOの最大のミッションともいわれています。顧客を最大限に理解するために、アメリカではカスタマー・サービス部門の責任者を兼任するCMOも増加しているようです。

まとめ

いまはまだ、日本の取締役会にCMOの席がある企業は多くありません。しかし、デジタル化が進み、顧客との価値共創がより一層重要となっている社会に対応していくために、CMOが果たす役割は間違いなく大きなものになるはずです。

冒頭で紹介したFortune500選出の企業では、マーケティング担当の役員はセールスやコミュニケーションのほか、ストラテジー(戦略)の責任者を兼任することが多いことがわかりました。マーケティング部門は社内の下請け的なプロモーション部隊ではなく、企業戦略に直結した役割を担うことが求められるという事実があらためて浮き彫りになったデータだといえるでしょう。